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第9話 至高の日常
緊迫 Episode:11
しおりを挟む「キエーグのベルトを使えば、出来ます」
「――!」
この子の言うとおりだった。
浮遊石の嵌まったキエーグのベルトは、人を浮かせるだけの力がある。
危ないから施設の一定範囲でしか浮かないように制限かかってるけど、それさえ外せばどこでも使えるはずだ。
それにこれなら、すぐに用意できる。
この町のキエーグ場を片っ端から当たれば、十分な数が揃うはずだ。
「たしかにそれなら、行けるかも……。全員つけてれば、1羽で最低でも、3~4人は運べるだろうし」
ものすごいアイディアに舌を巻く。さすが戦場育ちの学年主席だ。
けど、手放しじゃ賛成できなかった。
「でもねルーフェ、危ないよ? いつ何されるか、わかんないんだよ?」
「あの子たちは、もっと危ないんです!」
この子にしては珍しい、強い口調。
本気だ。
この子は――本気だ。
「分かった。だけど、まず先輩たちに相談してから。いいね?」
「はい」
このへんは素直だから、あっさり納得してくれる。
それからあたしは、ルーフェを連れてイオニア先輩の所へ行った。
――もっともいる場所がまだ指揮所だから、行くっては言わないかも。
「あらなによ、まだこんなところにいたの? そんなに不合格になりたい?」
「先輩……」
ほんとになんでこの人、何でもこんなに高飛車なんだろ?
気を取り直して、大事なことを言う。
「この子が、方法を考えついたんです」
「方法? 役に立たない方法だったら、承知しないわよ」
「すみません……」
先輩の毒舌に、なんにも言わないうちからルーフェが謝っちゃうし。
「今謝ったって、しょうがないのよ。さっさと聞かせてもらえないかしら」
「ごめんなさい!」
すっかり萎縮しちゃってる。
「先輩、ダメですよ。この子すっかり、怯えちゃってるじゃないですか」
さっきも見たはずなのに、この子が繊細なの、なんで覚えられないんだろ?
「えっと、その、えっと……」
どうもルーフェ、先輩に気圧されたらしくて、上手く言葉が出てこない。
「怖くないって言ってるのに、なんでおびえるかしらね。
――じゃぁ、これでどぉ?」
さっきと同じように、イオニア先輩がルーフェを捕まえる。
「いい子ね。さ、お話聞かせてちょうだいね」
「……♪」
だからそれ、すごくアブない光景だってば。
けどルーフェはこれがいいみたいで、先輩の腕の中でうれしそうにしながら、話し始める。
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