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第10話 空(うつほ)なる真実

ルアノンにて Episode:13

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「ルーフェイア……」

 先輩がそばへ来て、あたしのことを抱きしめる。

 何か言おうと思ったけど、言葉にならなかった。
 先輩の腕の中で、泣くことしかできなかった。

 どうしてあたし、いっしょに死ななかったんだろう……。

「ルーフェイア、ダメだ」

 先輩の腕に力が入る。

「死んだら、ダメだ」

 先輩の言いたいことは、よく分かった。

 でも、頷けない。
 自分だけ生きていくのは、辛すぎる。

 このまま消えてしまいたい。それが本音だった。

 誰も居ないところへ。
 何もないところへ。

 そうすれば二度と辛い思いを、せずにすむから……。

 そのとき、風が通り過ぎた。
 はっとして顔を上げる。

「どうした?」

 不思議そうに訊いてきた先輩も次の瞬間、驚いた表情になった。

「いま、何か……」
「……はい」

 気のせいだと言われれば、そうかもしれない。
 けど、そうじゃないと信じる自分がいた。

「それ、兄貴だろ。そゆこと、あるっつーし」

 イマドは気づいてるうえに、平然とした顔だ。
 しかもなぜか、手にしたシャベルで地面を掘り返している。

「なに、してるの……?」

 こんなものを持っていたのも謎だけど、やっていることはもっと謎だ。

「夕べ叔父さんがさ、そーゆー話ならこれ持ってって、植えてこいったんだよ」

 言って彼は、走竜に積んでいた袋から、何かの苗を出した。

「ここらじゃ、墓とかにこれ植えんだよな。白いきれいな花、咲くんだぜ?」
「そうなんだ……」

 手にとって見ると、たしかに白っぽい、大きなつぼみがついている。
 もう少ししたら、開きそうだ。

「ホントは植える時期じゃねぇんだけど、もともとこの森のモンだからだいじょぶだろって、叔父さん言ってた。
 ほら、お前も手伝えよ。先輩もやります?」

「あ、あぁ、そうだな」

 あたしと先輩も、シャベルを渡される。
 10個ちょっとの苗は、すぐに植え終わった。さいごに水筒で水を汲んで、たっぷりとかける。

「咲く、かな……?」
「咲くだろ。それに叔父さんとかもたまに、見に来きてくれるってたし」

 言って、イマドが笑った。

「落ち着いたみてぇだな」
「え? あ、うん」

 花を植えたのと、何よりあの風のせいだろう、と思う。

 あの時、風は囁いた。

 ――無事でよかった、と。

 ただの空耳かもしれない。
 あたしの思い込みかもしれない。

 でもその瞬間、感じた。
 兄さんが最期に願ったのは、そのことだったのだと。

 だから……思う。

 その願いに従おうと。
 生きていこうと。

 先輩が、あたしの頭をそっと撫でた。
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