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第10話 空(うつほ)なる真実

ノネ湖にて Episode:18

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 卒業生だけに事情をよく分かっている先輩が、笑った。

「そう言ってもらえると助かるよ。
 ――とりあえず、部屋へ戻ったほうがいい。そろそろ新しい部屋も、用意出来てるだろうし」

 ルーフェイアを連れてホテルへ戻ると、案の定「移る用意が出来ている」と知らされた。

「僕も手伝おう」

 部屋からルーフェイアが持ち出そうとした荷物を、先輩が持つ。

「ルーフェイア、先に先輩と、新しい部屋へ行っててくれ。私はその、細かい荷物を……詰めてから、行くから」

 さすがに干しておいた下着や何かを、先輩に見られるのは嫌だった。

「おいで、ルーフェイア。案内してあげるよ」
「はい」

 素直にルーフェイアが、先輩についていく。
 これならしばらくは、戻ってこないはずだ。

 なにしろルーフェイアは独りを嫌がる甘えん坊だし、先輩はタシュアと違って、それを邪険に出来る性格ではない。

 いまのうちにと、急いでいろいろ鞄にしまう。
 だが思いのほか早く、ドアがノックされた。

「入ってもいいかな?」
「あ、はい」

 手に持っていたものを慌てて押し込んで、口を閉める。
 入ってきたのは、先輩ひとりだった。

「ルーフェイアは……?」
「あの子なら、着替えてるよ。戦闘服のままだったからね」

 着替えには同席できなくて、こちらへ来たらしい。

 ――構わなかった気もするが。

 体型もまだまだ子供だし、カーテンを全開で着替えてしまうあたり、そういう感情もまだ育っていない。
 まぁあのままでは、先々困るだろうが……。

「荷物は、それだけかい?」
「あ、はい」

 私の荷物に手を伸ばして――先輩が、動きを止める。

「先輩?」
「その、前から君に言おうとは思ってたんだが……」

 なんだか深刻そうだ。

「えぇと、また、竜でも?」

 私の言葉に、先輩が苦笑した。
 何か的外れなことを言ったらしい。

「そういう話じゃないんだ。
 ――卒業したら、ここへ来ないか?」

「は?」

 何を言われたのか分からなくて、しばらく考える。

「ここへって……診療所の、手伝いですか? でも私は、医務官の授業はほとんど……」

 応急手当などはひととおり学んだが、それだけだ。

 何より人を相手にするのは、私は苦手だった。
 だがそれを、どう言ったらいいものか。

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