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第10話 空(うつほ)なる真実

再び学院にて Episode:06

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「あたしもさっさと、隠居したいとこなんだけど。でもなかなか、そう上手くいかないのよねぇ。
 そういうわけだから、おばさんの話に付き合ってちょうだいね」

「遠慮します」

 間髪いれずに断る。

「あらそう、困ったわねー」

 口ではそう言っているが、カレアナが困っているようには見えなかった。
 どう見ても、面白がっているだけだ。

 曲がりなりにも重ねた年月、あるいは経験の差から来るモノだろうか。
 もしかすると単に、性格なのかもしれないが……。

 いずれにせよこの性格、前回で十分に理解したつもりだったが、それでも苛立つ。

「用はないようなので、失礼させていただきます」

 踵を返して、部屋を出ようと扉に手をかける。
 が、そこで声がかかった。

「聞く気がないんじゃ仕方ないわね。
 ――シルファの事だったんだけど」

 思わず足が止まる。
 相手の策に嵌められているのは分かるが、内容が内容だけに、無視も出来なかった。

「あの子いま、うちで預かってるのよねぇ」
「どういう意味です」

 タシュアの声から感情の色が消える。
 そんな反応を予想していたのだろう。カレアナは楽しそうに笑った。

「意味も何も、言葉どおりよ。
 迷い込んだようなもんだけど、かといってそのまま返すわけにはね。で、ここへ話に来たってわけ」

「さすがシュマー、やることが違いますね」

 おざなりな返答をしつつ、思索する。
 カレアナの話から判断すると、現状シルファがいるのは、シュマー関連の施設とみて間違いはない。

(先ほど調べたホテルの記録では、宿泊者が2人になっていましたね)

 そうなると、同行者はルーフェイアか。
 予定の日程を終える直前に、まだ夏休みが残っているためルーフェイアが誘った、と考えるのが妥当だろう。

(妥当ではありますが……)

 何かひっかかる。
 そもそもあのルーフェイアに、「誘う」などということが、出来るだろうか?

「あら、黙っちゃってどうしたの?」

 そしてもうひとつ引っかかるのが、このカレアナだ。

 見かけと言動はともかくとして、彼女は名実共にあのシュマーのトップだ。
 当然それだけの権力を――是非は別として――有している。
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