653 / 743
第10話 空(うつほ)なる真実
再び学院にて Episode:07
しおりを挟む
そのカレアナが、何故わざわざここまで出てくるのか。
たとえ派遣要請でも、シエラはお金が支払れたのさえ確認できれば、対面交渉せずに済むのだ。
むしろそうでなければ、有事のときに間に合わない。
それなのに、たかが「上級傭兵1人」に対してカレアナが来ると言うのは、大げさに過ぎる。
そもそもタシュアに用があるのなら、彼女の元に呼び出せば済む話だ。
カレアナは学院と、そういう契約を交わしている。
なのにわざわざ、ここへ来るというのだから、相応の理由があるはずだ。
(契約内容の修正、もしくは新規契約……)
いくつかの仮説が思い浮かぶ。
あの口のきき方からして、シルファのことも何か関係しているのは、間違いなさそうだ。
(もっとも、考えるだけ無駄かもしれませんが)
この女性に、理屈は通じない。
その場のノリと勢いだけで行動するような輩だ。
タシュアが思考に沈んだのを何か勘違いしたのか、カレアナが言った。
「言っておくけど、ここであたしに何かしても無駄なことくらい、頭のいいあなたなら分かるでしょ?
なにしろシルファの居場所、ここから遠いんだから」
言葉の裏に何があるのかは、聞かなくても分かる。
だがなお、タシュアは応えなかった。
(手を出せば、少なくとも私の気は晴れるのですがね。けれどまずは、シルファですか)
幾つかシミュレートしてみる。
シルファがルーフェイアと一緒という推測が正しいなら、シュマー関連の施設とはいえ、身に危険が及ぶことはないだろう。
一方でこの推測が外れていたとしても、カレアナがこの場でシルファの名前を出した以上、何らかの形で関わっているのは確かだ。
ならばやはり安全は、確保されていると見ていい。
人質は手元で生きていればこそ、人質になりうるのだ。
そしてシルファのことを持ち出す以上、カレアナの手の届く範囲に、切り札として置かれているはずだった。
――かといって安心できないのが、シュマーのシュマーたるところだが。
形を変えられるサイズ(大鎌)の件といい精霊の完全憑依の件といい、シルファはその筋の人間からすると、垂涎の的であるのは間違いない。
そしてシュマーは、「その筋」の人間ばかりだ。
たとえ派遣要請でも、シエラはお金が支払れたのさえ確認できれば、対面交渉せずに済むのだ。
むしろそうでなければ、有事のときに間に合わない。
それなのに、たかが「上級傭兵1人」に対してカレアナが来ると言うのは、大げさに過ぎる。
そもそもタシュアに用があるのなら、彼女の元に呼び出せば済む話だ。
カレアナは学院と、そういう契約を交わしている。
なのにわざわざ、ここへ来るというのだから、相応の理由があるはずだ。
(契約内容の修正、もしくは新規契約……)
いくつかの仮説が思い浮かぶ。
あの口のきき方からして、シルファのことも何か関係しているのは、間違いなさそうだ。
(もっとも、考えるだけ無駄かもしれませんが)
この女性に、理屈は通じない。
その場のノリと勢いだけで行動するような輩だ。
タシュアが思考に沈んだのを何か勘違いしたのか、カレアナが言った。
「言っておくけど、ここであたしに何かしても無駄なことくらい、頭のいいあなたなら分かるでしょ?
なにしろシルファの居場所、ここから遠いんだから」
言葉の裏に何があるのかは、聞かなくても分かる。
だがなお、タシュアは応えなかった。
(手を出せば、少なくとも私の気は晴れるのですがね。けれどまずは、シルファですか)
幾つかシミュレートしてみる。
シルファがルーフェイアと一緒という推測が正しいなら、シュマー関連の施設とはいえ、身に危険が及ぶことはないだろう。
一方でこの推測が外れていたとしても、カレアナがこの場でシルファの名前を出した以上、何らかの形で関わっているのは確かだ。
ならばやはり安全は、確保されていると見ていい。
人質は手元で生きていればこそ、人質になりうるのだ。
そしてシルファのことを持ち出す以上、カレアナの手の届く範囲に、切り札として置かれているはずだった。
――かといって安心できないのが、シュマーのシュマーたるところだが。
形を変えられるサイズ(大鎌)の件といい精霊の完全憑依の件といい、シルファはその筋の人間からすると、垂涎の的であるのは間違いない。
そしてシュマーは、「その筋」の人間ばかりだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
17
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる