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第10話 空(うつほ)なる真実

孤島にて Episode:10

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「そうそう、あなたシエラの上級隊よね? そうしたらあとで、手合わせしてもらおうかしら」

 突然こういうことを言い出すあたりは、困りものだが。
 ただ、憎めないのも確かだ。

「ルーフェでもいいんだけど、お互いクセ知ってるのがねぇ。何よりあの子、嫌がって逃げちゃうし」

 それはそうだろうと内心思う。
 が、さすがに口にはしなかった。

 この人は気にはしなそうだが、あえてコトを荒立てる必要もない。

「あー楽しみだわ。久々に面白そう。なんなら今から外へ行く?」

 表情を見る限り、本気で手合わせしたいようだ。今が何時か、全く考えていない。

「あの、でも、もうそろそろ暗く……」
「あらそうだった。夜間訓練と洒落込んでもいいけど、今やることじゃないわね」

 意外にもあっさりと、この人が引き下がる。
 どういう思考回路かは分からないが、無事に私と同じ結論に達してくれたらしい。

「んじゃ、その件は後日として。
 ――あんまり、思い詰めないほうがいいわよ?」

 言いながらこの人が、私の額をつついた。

「はい」

 その通りかもしれない、と思う。
 悩んでかえって出口が見えなくなるのは、よくある話だ。

 私の顔を見て、ルーフェイアのお母さんは満足気に笑った。

「そうそう、そうこなくちゃね。じゃぁまた夜にでも、時間が取れたら遊びに来るわ」

 ひらひらと手を振りながら、この人が部屋を出て行こうとして……ドアの前で不意に立ち止まった。
 振り向いたお母さんと、視線が合う。

「それにしても、タシュアもタシュアだわね」

 なぜか面白がるような口調。

「実力はともかく、女心は分かんないし、他人に何かするってこともないし。ひねくれてるし毒舌だし、好き勝手だし」

「………」

 癪に触るのだが、すべて事実だから言い返せなかった。

「あなたのことも、パートナーとか言う割にはほったらかしだし。いっそ、別れたほうがいいんじゃない?」

 さすがにカチンと来る。

「ああいうのと一緒になると、苦労絶えないわよ?」

 からかうように言われて、もう我慢出来なかった。

「タシュアは、そういうんじゃない!」
「あらそぉ? その割には、あなたに嫌がらせばっかりじゃない。気づいてないからなお悪いわね」

 悔しいが言い返せない。そして言い返せない自分が、余計に悔しい。
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