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第10話 空(うつほ)なる真実

孤島にて Episode:12

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 ◇Tasha Side

 強引に学院から連れ出され、着いたのは小さな島だった。
 学院の本島より、まだ狭いだろう。

 カレアナの話ではケンディクから海を越えた、ワサールの南部ということだった。
 そこにシュマーの保養施設として、島を丸ごと買い取ってあるらしい。

 もっとも用心深いタシュアは、その話を鵜呑みにしたわけではない。
 だがカレアナが嘘をつく理由がないのと、自分で計測した太陽の角度などから、おそらくそうだろうと思っていた。

(念のため精霊を持ってきて、正解でしたか)

 普段から精霊を憑依させることをほとんどしないタシュアだが、持っていないわけではない。
 そもそも学院の傭兵隊には、無ければ貸し出しされるくらいだ。

 ただ上級隊ともなると、かなりの人数が自前の精霊を持っていた。

 実際には精霊を発見・捕獲した場合、学院側に報告・提出することになっているが、多くはそれを無視している。
 しかも学院のほうも、「その場合は何があっても自己責任」と、黙認していた。

 タシュアもまたその例に漏れず、手持ちの精霊は全て、自力で捕獲し未提出のままだ。
 その中で今は、飛行系の精霊を持ってきていた。

 多くの場合精霊は攻撃に使うが、それしか出来ないわけではない。
 実際これは、攻撃させずに限界時間を引き延ばすことで、巨鳥の代わりになる。

 もちろん、長時間は無理だ。
 だがこの小島から近くの陸地までなら、十分に持つだろう。

 シュマー関連の施設だからというだけではなく、こういった小島では気象条件次第では、簡単に孤島となりうる。
 さすがに食料などの備蓄はあるだろうが、脱出手段は多いに越したことはない。

 それに、タシュアをここに連れてきたカレアナにも、敵は多いのだ。
 一緒に居て、何かに巻き込まれる可能性も無視できなかった。

 桟橋は小さいが、造りはしっかりしていた。

 今乗ってきた船の他にも、学院で使っている連絡船のような、小型艇が泊っている。
 おそらくは最寄の、プラジュの街まで往復しているのだろう。

 すぐ近くに、建物が見える。あそこが今夜の宿泊場所らしい。

「こっちよ」

 だがカレアナは、違う方向へ歩き出した。
 とりたてて訊くこともないので、黙ってあとをついていく。
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