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第10話 空(うつほ)なる真実

閑話休題、孤島にて Episode:28

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「で、何があったの?」

 促されて、私は話し始めた。

「タシュアが、自分が死んだらどうする、って……」

 つっかえながら話していく。

 こんなこと普通に考えたら、赤の他人に言う話ではないはずなのだが、この人になら言ってもいいと思った。
 もしかしたら誰かに、聞いてほしかったのかもしれない。

 ずいぶん時間をかけて、途中でまた怖くなって泣いたりしながら、ようやく話し終える。

「タシュアもしょうがないわねぇ、大事な彼女にそんなこと言って」

 私を抱きしめながらお母さんが言った言葉は、それだった。

「焦る気持ちも分かんなくはないけど、こういうことは焦ってもダメなのに。
 ――ねぇシルファ?」

 突然呼びかけられて、顔を上げる。
 お母さんが優しく微笑みながら、訊いてきた。

「あなたにとって、いちばん大事なものって、なに?」
「それは……」

 考えるまでもない。
 けれどタシュアに、それを否定されてしまって……。

 お母さんがまた笑った。

「ねぇ、じゃぁあなたそれ、捨てて納得できる?」

 思わず首を振る。

 捨てられるわけがない。
 納得なんか出来ない。
 そんなことをしたら、一生後悔する。

 私の額を、ちょんとお母さんが突付いた。

「なら、それでいいんじゃない?」
「え……?」

 あまりに単純な答え。
 言ったお母さんのほうは、にこにこ顔だ。

「だってそうでしょ? どうやったって捨てられないって分かってるもの、捨てたってしょうがないし」

 確かに言うとおりだ。
 ただ問題は、タシュアがそれではダメだと言ってることで……。

「――シルファ?」

 急に身体を離されて、視線を合わされる。

「自分が譲れないものは、譲っちゃダメよ。そもそも譲ったとしても、納得できないでしょ。
 そういう時はね、反対押し切ったっていいの。それで何かあったって、むしろ納得がいくってもんだわ」

 そこで一旦切って、お母さんが真剣な表情になった。
 海のような、綺麗な碧の瞳。

「あなた、その大事なものが何故大事なのか、分かってるでしょ?」

 一瞬だけ考えて、うなずく。
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