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第11話 虚像の護衛

依頼 Episode:06

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「要するに、まーたあの殿下のお守りってことか。こりゃ厄介だね」
「殿下、上から目線すごいもんね」

 やっぱりこの二人、殿下が好きじゃないみたいだ。

 ――あたしのせいだ。

 シーモアたちの名前を挙げたりしたから、好きでもない殿下の護衛を、しなきゃならなくなってる。

「えっと、その、ごめん……」
「え? なんでルーフェが謝るの?」
「え、あれ?」

 なんか違ったみたいだ。

「いや、だからさ。たしかに殿下はあんま好きじゃないけど、行くのがイヤだとはいってないじゃないか」
「そうそう。行けばお小遣いっていうか、臨時でお給料でるし」
「え? お小遣い?」

 初耳だ。

「やだルーフェ、もらわなかったの? けっこう出たんだよ」
「そういえば……」

 何か学院からお金がどうこう言われて、面倒だから口座にそのまま入れてもらったような気がする。

「まったく、金持ちはこれだから」
「ごめん……」

 謝るあたしに、二人が笑った。

「気にしなさんな、いつものことじゃないか」
「そうそう」

 慰めてくれてるんだろうけど、なんかちょっと複雑な気分だ。

「でさ、お前ら何の話してんだ? 内輪で盛り上がってねーで、説明しろよ」
「ん? あぁ、イマドは行ってないから知らないか」

 訊かれてシーモアが答えた。

「アヴァンの殿下ってのが、すごいタカビーでね。顔合わせでいきなり――」
「いい加減になさい!」

 イオニア先輩の鋭い声が飛ぶ。

「まったく、ほんとに下級生ってのはなってないわね。その口、閉じておけないのなら縫い合わせるわよ」

 怖いことを言う。

「いいこと、そういう話はここを出てからなさい。
 ――命令よ、アヴァンへ行って、殿下の護衛をするように。教官への許可は、私が取っておくわ」

 厳しい声で言い渡されて、みんなでうなずいた。

「……返事は?」
「は、はいっ!」

 迫力に、思わずみんなの――でもイマドだけわりと適当――声が揃う。

「よろしい」

 イオニア先輩が満足げに言って、続けた。
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