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第12話 カミサマありがとう?
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師匠がひとりごちる。
「世の中には食物以外から力を得る御仁というのが居るとは聞いたが……そのたぐいなのかもしれんの」
なるほど、そういうこともあるかもしれない。
でもどうだっていい。目の前にあるご飯がすべてだ。
嬉しさで涙が出そうになりながら、僕はおばさんの残した食事をほおばった。
けど、現実っていうのは父さんの言うとおりヒドいもので、僕にそれ以上の安らぎは与えてくれなかった。
「ねぇ、今晩あたしどこに寝るわけ?」
「寝る場所、ですか?」
「そう」
さっさと寝たい、そうおばさんの顔に描いてある。
「後で案内します……」
僕は憂鬱を声に乗せて答えた。
部屋は、ある。けっこう立派な客間だ。
師匠のところには誰も訪ねてこないのに、なんでそんなものがあるのかは分からない。
でも無いのに比べればずっとずっとマシだ。
ただ問題は「立派」なだけで、たぶんおばさんが気にいるとは思えないところだった。
おばさんは僕の気持ちなんてお構いなしに言葉を続ける。
「後でじゃなくて、早めに案内してよ。さすがに疲れたから、脚伸ばしたいし。あと、この食器はどうするの?」
僕だってすごく疲れてる、そう言いたかったけどガマンした。言ったら最後、きっと十倍は言い返される。トラブルを避けたいなら女性に反論するなって、父さんも言ってたし。
「食器は洗って、料理と交換に返すんです」
当たり障りなくそう答えると、やおらおばさんが立ち上がった。
「どこで洗うの?」
どうやら洗ってくれるらしい。これはものすごくラッキーだ。
僕の仕事が減るなら、おばさんって種族がこの家に十人くらい居たっていい。
「こっちです~♪」
「ずいぶん嬉しそうね」
おばさんが怪訝そうな顔になるけど、僕はまったく気にならなかった。
食事が増えただけじゃない、雑用まで減る日が来るなんて、やっぱりカミサマは僕を見てくれてたんだ。
明日は久々に神殿へ行ってお祈りしなくちゃ。
「ここで洗うんです」
水場へ案内すると、おばさんは辺りを一瞥して僕に訊いた。
「タワシは?」
「たわっし?」
なんのことだか全くわからない。
「何ですか、たわっしって」
「こういう汚れ物を洗う道具」
「あぁ、なんだ。それならこれですよ」
言って藁を束ねた物を渡す。でもおばさんから返ってきたのは、お礼じゃなくて文句だった。
「こんなのしかないの? これでホントにキレイになるの?」
「こんなのしかって言われても、どこの家だってこれ使ってますよ」
僕の言葉に、不服そうな顔をしながらおばさんは洗い始めた。
「世の中には食物以外から力を得る御仁というのが居るとは聞いたが……そのたぐいなのかもしれんの」
なるほど、そういうこともあるかもしれない。
でもどうだっていい。目の前にあるご飯がすべてだ。
嬉しさで涙が出そうになりながら、僕はおばさんの残した食事をほおばった。
けど、現実っていうのは父さんの言うとおりヒドいもので、僕にそれ以上の安らぎは与えてくれなかった。
「ねぇ、今晩あたしどこに寝るわけ?」
「寝る場所、ですか?」
「そう」
さっさと寝たい、そうおばさんの顔に描いてある。
「後で案内します……」
僕は憂鬱を声に乗せて答えた。
部屋は、ある。けっこう立派な客間だ。
師匠のところには誰も訪ねてこないのに、なんでそんなものがあるのかは分からない。
でも無いのに比べればずっとずっとマシだ。
ただ問題は「立派」なだけで、たぶんおばさんが気にいるとは思えないところだった。
おばさんは僕の気持ちなんてお構いなしに言葉を続ける。
「後でじゃなくて、早めに案内してよ。さすがに疲れたから、脚伸ばしたいし。あと、この食器はどうするの?」
僕だってすごく疲れてる、そう言いたかったけどガマンした。言ったら最後、きっと十倍は言い返される。トラブルを避けたいなら女性に反論するなって、父さんも言ってたし。
「食器は洗って、料理と交換に返すんです」
当たり障りなくそう答えると、やおらおばさんが立ち上がった。
「どこで洗うの?」
どうやら洗ってくれるらしい。これはものすごくラッキーだ。
僕の仕事が減るなら、おばさんって種族がこの家に十人くらい居たっていい。
「こっちです~♪」
「ずいぶん嬉しそうね」
おばさんが怪訝そうな顔になるけど、僕はまったく気にならなかった。
食事が増えただけじゃない、雑用まで減る日が来るなんて、やっぱりカミサマは僕を見てくれてたんだ。
明日は久々に神殿へ行ってお祈りしなくちゃ。
「ここで洗うんです」
水場へ案内すると、おばさんは辺りを一瞥して僕に訊いた。
「タワシは?」
「たわっし?」
なんのことだか全くわからない。
「何ですか、たわっしって」
「こういう汚れ物を洗う道具」
「あぁ、なんだ。それならこれですよ」
言って藁を束ねた物を渡す。でもおばさんから返ってきたのは、お礼じゃなくて文句だった。
「こんなのしかないの? これでホントにキレイになるの?」
「こんなのしかって言われても、どこの家だってこれ使ってますよ」
僕の言葉に、不服そうな顔をしながらおばさんは洗い始めた。
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