「見習い魔導士の憂鬱」 異世界へ行くはずが、向こうから人がきて……?!

こっこ

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第26話 宴の材料

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「ここ、こんなに砂糖あるの?」
「そりゃあるさ」

 そんな話を聞きながら、なるほどと思った。
 僕らにとってお城に砂糖があるのは不思議じゃないけど、ふつうのユラの村から来た異世界のおばさんには、びっくりすることだったんだろう。

 で、当のおばさんは上機嫌だ。

「これなら楽だわー。蜜で作ったときは、苦労したのよね」

 言いながら、手際よく粉だのなんだのを計ってる。

「砂糖と粉が同量なのかい」
「うん。あとだいたいこの半分の、水と油と……」
「油がバターじゃないってのがね。ふつうはそっちなんだけどねぇ」
「これがキモなのよー」

 とりあえず、二人とも楽しそうだ。これなら僕のほうには、当分矛先は向かないだろう。

 ひたすら様子を黙って見つめる。
 父さんもいつも、機嫌がいい女の人にはぜったい水を注すな、一生恨まれかねない、って言ってた。

「驚いた、卵を分けちまうのかい」
「分けて泡立てないとダメなの」

 教えながらだけど、それでもけっこうな速さでケーキができてく。前にうちの屋敷で試行錯誤してたのとは、エライ違いだ。

「なるほどね、こうなった泡を使う、と」
「そそ。で、混ぜるときにつぶしちゃダメよ。何回かに分けて少しずつ混ぜるの」

 眺めてるうちに陶器のカップが用意されて、そこに生地が流し込まれた。

「あとは任せるわ。あたしこのテの釜、使ったことないから苦手なの」
「任しとき。こいつの扱いならお手の物さ」
「よーく膨らんで、串刺したときに何もついてこなきゃ、でき上がりだから」
「ほいきた」

 型が板の上に並べられて、釜の中に入れられる。

「あとは様子見ながら待つだけ」
「じゃぁお茶にでもするかね」

 厨房おばさんが手際よくお茶を淹れて、薄く切ったパンを出してくれた。
 そのまま雑談になる。

「姫さまもね、いい方なんだがね。新しいお菓子を次々ご所望なさるのがねぇ。そんなにほいほい、考え付くもんじゃないだろ?」
「そうよねぇ。毎日新しいものって言われたら、あたしもお手上げだわー」

 どうしてこうおばさんっていうのは、すぐこういう話を始めるんだろう?

 何より姫さまの悪口っていうところが許せない。
 姫さまが新しいお菓子をご所望になるくらい、当たり前のことじゃないか。

 おばさんたちの、井戸端会議っていう名の悪口は、まだ止まらなかった。

「領主様も、困ったもんでねぇ。みんな仲良く平和に、っていうのはいいんだけど、隣の国の使者の言うこと、ほいほい聞こうとしたりしてねぇ……」
「ちょっと、何よそれ。隣の国なんて、こっちの都合は考えないでしょ?」
「そうなんだよ。っと、そろそろかね」

 厨房おばさんが立ち上がって、中をのぞいて頷いた。
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