「見習い魔導士の憂鬱」 異世界へ行くはずが、向こうから人がきて……?!

こっこ

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第27話 魔人のお菓子

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「よく膨らんで、焼き色もついてる。出してみるよ」

 釜が開けられて、大きなピール――釜用の柄が長くてすごく大きなヘラ――で、パンが板ごと取り出される。

「どうだい、こんな感じで」
「串に何もついてこないから大丈夫。あ、急いでひっくり返して。じゃないとしぼんじゃう」

 型がぜんぶひっくり返されて、冷めるまでまたお茶の時間になった。

「ここの会計役がさ、ともかくケチでね。やれ塩はもっと減らせとか言うんだよ」
「減らすって、塩じゃ限度あるでしょ……」
「そうさ。だから会計役の食事だけ、塩の入ってないのを出してやったよ」

 ここの会計役、ホントにだいじょうぶだろうか?
 僕みたいな若造だって、料理に塩がないと大変なことになるのはのは知ってるのに。

「他にもね、ナプキンの数が多すぎるとか言い出すんだ。あとエプロンの支給を減らすとか」
「それ、いっそ汚いナプキン使って、お腹でも壊せばいいのよ」
「ホントそう思うよ」

 おばさんたちの悪口は、止まるとこを知らない。
 けど会計役のことなら、好きなだけ言っていいと思った。というか、このまま大臣させとくほうがマズい気がする。

「領主はそのこと、知ってるの?」
「知ってるけど、『いいことだ』ってるよ。国のことをよく考えてくれるいい会計役だ、ってね」
「うわぁ……」

 おばさんが呆れたけど、聞いてた僕も唖然だ。
 倹約が悪いとは言わないけど、この会計役のやってることは何かヘンだ。

 ――この国、ホントにだいじょぶなのかな?

 的外れな倹約家の会計役と、人がいいだけみたいな領主。なんというか、おとぎ話の騙され役みたいな組み合わせだ。

「キミ、食べないの?」
「はい?」

 呼ばれて視線を向けたら、いつの間にかおばさんたちが味見をしてた。

「ほら、食べるの食べないの?」
「食べます食べます」

 慌ててそう言うと、食べかけの型がひとつ回ってくる。

 ――おいしい。

 この間のおばさんが作ったのもおいしかったけど、今回のはもっとふわふわだ。
 砂糖のせいかもしれない。

 おばさんって生き物はとかく被害ばかり出すけど、この食べ物を生み出す能力だけは、賞賛に値すると思う。

「――してほしいんだけど。ちょっと、聞いてる?」
「え?」

 食べるのに夢中で聞いてなかった。なので素直に謝ることにする。

 女の人が怒り出す前に、まず頭を下げろ。そして褒めろ。それが父さんの教えだ。
 そうすれば最悪の事態は避けられる、いつも父さんはそう言ってて、実際見ててもトラブルを見事に避けてた。

 問題は、やってるとやっぱり何か悲しくなってくること。
 けど、事態をこじらすよりはマシだ。だから謝る。
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