「見習い魔導士の憂鬱」 異世界へ行くはずが、向こうから人がきて……?!

こっこ

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第33話 温和な領主

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「ありがとうございます!」

「お礼言うには早いわよ。まだ何もできてないんだから。それより、そういうことなら国の事情聞かせて。なるべく細かく」

「はい、分かりました」

 姫さまがまた話しだした。



「んー、どうするかなー」

 ベッドに寝転んで、おばさんが独り言を言ってる。姫さまのところから戻ってから、ずーっとこんな調子だ。

「悩んでないで、早く何か考えてくださいよ」

 瞬間、おばさんが微笑んだ。

「そこのボク、自分じゃ何も考えつかないクセに、なに偉そうに言ってるのかなぁ?」
「ごめんなさいすみません、僕が悪かったです」

 反射的に謝る。そして謝ってから気づいた。僕、なんで謝ってるんだろう?

 そうは言っても、おばさんの迫力にはかなわない。この人が何歳だか知らないけど――怖くて訊けるわけがない――子供がいるのは確実で、父さんみたいな大人でさえ逆らえないおばさんって種族に、僕が逆らえるわけもなかった。

「でも、本当にどうするんですか?」

 それでも心配で訊く。姫さまに約束したのに、何もできなかったら大変だ。僕の印象まで下がる。
 おばさんがちょっと肩をすくめた。 

「領主に会ってから考えるつもり。いま分かってるのは状況だけで、領主自身がなに考えてるんだかわかんないもの」

「そりゃそうですけど。でも、会えるんですか?」

「だから姫さまに頼んだの。そしたら、今日の午前は空いてるらしいのよね。寝坊しなきゃ、みたいだけど」

「寝坊……」

 まぁ気持ちは分かる。あの寝坊の心地よさは、まるで天国にいるみたいだ。

 ――たいていは目が覚めてから、青ざめるんだけど。

 けど最初から空いてる日なら、そりゃ寝坊するのも仕方ないと思う。何の心配もなくただ寝てられる日なんて、本当に幸せとしか言いようがない。

 と、ドアがノックされて、例の案内人が顔を見せた。

「領主様がお会いになるそうです。こちらへ」
「はいはーい」

 ホントにこのおばさん、神経があるんだろうか?
 姫さまのときもそうだったけど、今度もぜんぜん緊張した様子がない。というか、その辺の酒場のおじさんと会うくらいにしか、きっと思ってない。

 もうだいぶ探検して覚えてきた城内を、案内人に付いて歩く。
 回廊を抜けて、螺旋階段を上がって、また廊下を抜けて……。

 そこまで来てはっとした。僕、今日はついてこなくてよかったんだ。

 姫さまならともかく、領主様に会ったって、別に楽しくない。というか、気が疲れるばっかりだ。
 しかも呼ばれたのはおばさんだけなんだから、僕は来る必要なんてない。

 でもここまで来て、「部屋に帰ります」なんて言えないわけで。だから仕方なく、僕は二人の後をついて行った。
 姫さまのときよりなぜか下の階に案内されて、でも姫さまのときより豪華な扉の前で移動が終わる。
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