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しおりを挟む先週、千城《せんじょう》工業との2週間にわたる抗争を終えた。
結果はトップ同士の相打ちで、仲間の被害をこれ以上増やすわけにもいかないと、引き分けで終わった。
そのため僕は、その事後処理に追われている。被害状況の確認と、医療費も含めた被害総額の算出。普段は僕らに無関心のはずの大人たちへの隠蔽工作に、今後必要となってくるであろうコネクションへの対応。
そして千城工業への牽制策の考案。
外から見れば、錆びれた木造の部室棟。ここが僕らのアジトで、中はリノベーションされていて、比較的快適な放課後が過ごせている。
まあ放課後と言っても、ほとんど授業なんて出ていない、一日中この旧部室棟に入り浸っている奴ばかりだけど。
僕は今ノートパッドを見ながら動画を画面に映し出し、抗争中の記録を確認しているところ。
うちのトップの神哉藍は、こういう事前、事後処理も抗争の一環だと考えている。
スポーツと同じで、敵を知り、反省を次に生かすことがチームの強さにつながる。単純に友情だの仲間愛だの、目に見えないものだけでは制覇はできないのだと。
一息つこうかと2階を見下ろせば、旧部室棟の裏手には、手入れのされていない雑草が人の足を隠すほどに生えており、その真ん中には太くて大きな柿の木がそびえ立っている。
何気なく、そよ風に当たり、揺れる草を見つめていると、どこからかミシミシと嫌な音が聞こえ始めた。
今にも下がりそうな瞼がはっと開き、何事かとその音に耳を傾ていると、
バササササササーーーーーーッッ
と大きな音を立てて、目の前に見えていた柿の木が、下から3分の1くらいの長さで横に折れ、倒れた。
「は?????」
まさか、千城工業の奇襲?!!!
とりあえず2階からその折れた柿の木をパッドのカメラに収め、部屋を出た。
···藍はまだ寝ているだろうか?あれはかなりの低血圧だから起こすのは止めて階段を下りる。
今日は補講日で、ほとんどの奴等が単位のために校舎の方にいる。ここからは少し距離があるから今の柿の木が倒れた音は聞こえないだろう。
雑草が足についてズボンが汚れるのが気に食わない。それでも千城工業の奴がいればこの手で倒さなければならい。
そう思い、ゆっくり倒れた木に近付いていく。
木の根付いている周りはさらに草が長く生えていて、あまり近寄りたくない。
緑の葉の方にいけば、一瞬干し柿のような渇いた甘さが漂った。
とその時だった。
「コホっコホっ」
むせる女の声。バサっと葉を掻き分ける音がして、思わず威嚇する声が出る。
「···誰だ。出てこい。」
猫に語りかける様な、優しいそれではない。ドスを利かせるような、普段の僕ではない声色で。きっとこれが"腹黒参謀"だと周りに言われている原因の一つでもあるだろう。
でもその人物は、僕の声に臆することなく返してきた。
「あ、そこに誰かいらっしゃるのですか??」
「は?」
「お願いです!どうか、助けて下さい!」
自分の声とは真逆の、柔らかい清声が聞こえてきた。
「おい···、誰か答えろ。」
「私は、山元織羽と申します!」
「何でこんなとこにいる。」
「木が、倒れてしまって!下敷きになってしまったんです!!」
自分の声にビクともしない女に違和感を感じた僕は、声の方に近付き、葉と枝の間から見えた手を軽く踏んで言った。
「女が何でここにいるかを聞いている。ここは男子校だぞ。」
「え?···だ、だんし校?とは、何ですか??」
「まともに答えないとお前の手を踏み潰す。」
女相手でも容赦がないと思われるかもしれないが、女を使った奇襲手段もあり得なくはないだろう。
助けた瞬間襲ってくる可能性は十分だ。···いや、木の下敷きになってるというのはかなりあり得ないが。
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