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1-3.
しおりを挟む小刻みに震えているうちの魔王は置いといて、彼女の腋に手を入れて引きずり出す。
ずい所ずい所で枝が引っかかったようで、その度に聞こえる彼女の小さな呻き声に、つい息を呑んでしまった。
「あ、あの、ありがとうございました!」
木の中から、雑草が流れる草むらに彼女を立たせれば、額は赤くなり、太ももやふくらはぎには所々に切り傷が、制服も擦った様な傷がついてしまっている。
にも関わらず、困ったような笑顔を向ける彼女の姿は、美しかった。
「見たことない制服だね。悪いけど、何か武器を隠し持ってないか調べさせてもらうよ?」
「···え?」
後ろの襟元を確認しようと、彼女のウェーブがかる髪の毛の中に手を滑らせ、うなじの方に手を回す。
ちょっとからかってやろうと思い、うなじを指でツーと滑らせてやると、少し肩を上げ、ふと僕から目を反らした彼女。その顔は程よく赤い。
こういうことに慣れてそうな雰囲気なのに、意外と面白い女なのかも。
でも彼女の肩越しに、黒いオーラを放つ魔王の姿が見えて、ゆらりと立ち上がったと同時に光るその目が、僕を瞬時にひるませた。
「お"い"、触んな···」
「···っえ?」
「どけよ」
あっという間に僕の手を後ろから払った藍。
「武器なんて持ってるわけねえだろ。隠すとこなんてどこにあんだよ。」
「···いや、だって。じゃあどうするのこの子。さっさと追い出す?」
俯いていた彼女が、そっと藍の方を見る。
「あ、あの、ごめんなさい。私···、お邪魔なようなので帰りますね?」
藍が一瞬、目を見開き、大きく鼻から息を吸い込んで、僕が「は?」と疑問の顔を向ければ、すぐに眉間にしわを寄せ睨みつける藍の顔に戻った。
は?
何今の顔。
「その制服···、まさか、至極学園の制服か?」
「あ、はい!あの、ここは、至極学園ではないのですか?」
「てかお前、年は?···名前は?」
「はい、3年生の山元織羽と申します。」
名前を聞いた瞬間、藍が若干後ろにのけ反り天を仰ぐ。
戻ってこい。
「ま、マジか···」
定位置に戻ってきた藍が、目を泳がせ、ぶつぶつと「ウソだろ」だの「でも身長もこんなもんだし」と呟いている。
至極学園?聞いたこともない学校だ。てか何?何で藍はその制服知ってるの??もしかして昔の女の中に、同じ制服の女がいたとか?
「さすが藍、よく知ってるね。もっと年上が好みかと思ってたけど、制服の女もまだまだいける口なんだ。」
ふっと鼻で笑いながら言ってやれば、ヒヤリと何かが自分の頬に当たる。
「お"い"。黙れ。」
藍が僕の頬に折り畳みナイフの側面をつけている。
あ"?
悪いけどさすがの僕でも魔王にキレることだってあるからね?
「藍···何なのさっきから。散々お前の尻拭いしてやってんのは誰か分かってんの。」
腹の底から自然とドス黒い濁声が湧き上がる。
「てめえこそ処女臭ぇ女ばっか選びやがって、ざけんなよ。」
チッ。うるさい。まさかうちのトップとやり合うなんて思いもしなかった。
「どけ」
彼女の肩を押し、横に追いやるも、彼女が落ち着いた様子でなだめ始めた。
「そんな、やめましょう、お2人とも。」
ナイフが怖くないのか、堂々とナイフを持つ藍の手首に触れ、ナイフをしまわせようとする彼女。
しかし手首を触れられた藍は、なぜか持っていたナイフを地面に落とした。
彼女がその落ちたナイフをしゃがんで取り、シャッと片手で折り畳んでしまうと、藍に差し出す。
「はい。ナイフなんて人に向けては危ないですよ?」
何でナイフのしまい方知ってるのかは置いといて、藍にそうやって上からモノを言うなんてどうかしている。特に女に諭されるほどイラ立ちを感じることはないだろう。
今の今まで僕に向けていた怒りが彼女にいくのだから、怒りも倍になる。もしかしたら彼女、本当に殴られるのでは?
でも藍は、視線が定まらないまま小さく頭を下げると、彼女からナイフを受け取った。
「···さんきゅ。」
だから は??
ねえ、何なのそれ。気持ち悪いよ。
「とりあえず、こいつは2階に連れてく。」
「はあ?!って部屋連れてくの??」
「···このまま黙って帰らせるわけにもいかねえだろ。」
まあ、確かに。
もし敵の女だったら、敵の居場所を尋問なり拷問なりして問い詰めないとダメだしね?
「歩けるか?」
キッと鋭い目つきで、ぶっきらぼうに彼女に聞く藍。
「はい、大丈夫です。」
「階段あるから気をつけろよ。」
「ありがとうございます。」
態度と声色はいつもの藍なのに、出てくる言葉が何か違う気がするのは何でだろう。
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