ギャルゲー美女が不良校に放り込まれた件

由汰のらん

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 小刻みに震えているうちの魔王は置いといて、彼女の腋に手を入れて引きずり出す。


 ずい所ずい所で枝が引っかかったようで、その度に聞こえる彼女の小さな呻き声に、つい息を呑んでしまった。


「あ、あの、ありがとうございました!」


 木の中から、雑草が流れる草むらに彼女を立たせれば、額は赤くなり、太ももやふくらはぎには所々に切り傷が、制服も擦った様な傷がついてしまっている。


 にも関わらず、困ったような笑顔を向ける彼女の姿は、美しかった。


「見たことない制服だね。悪いけど、何か武器を隠し持ってないか調べさせてもらうよ?」

「···え?」


 後ろの襟元を確認しようと、彼女のウェーブがかる髪の毛の中に手を滑らせ、うなじの方に手を回す。


 ちょっとからかってやろうと思い、うなじを指でツーと滑らせてやると、少し肩を上げ、ふと僕から目を反らした彼女。その顔は程よく赤い。


 こういうことに慣れてそうな雰囲気なのに、意外と面白い女なのかも。


 でも彼女の肩越しに、黒いオーラを放つ魔王の姿が見えて、ゆらりと立ち上がったと同時に光るその目が、僕を瞬時にひるませた。


「お"い"、触んな···」

「···っえ?」

「どけよ」


 あっという間に僕の手を後ろから払った藍。


「武器なんて持ってるわけねえだろ。隠すとこなんてどこにあんだよ。」

「···いや、だって。じゃあどうするのこの子。さっさと追い出す?」


 俯いていた彼女が、そっと藍の方を見る。


「あ、あの、ごめんなさい。私···、お邪魔なようなので帰りますね?」


 藍が一瞬、目を見開き、大きく鼻から息を吸い込んで、僕が「は?」と疑問の顔を向ければ、すぐに眉間にしわを寄せ睨みつける藍の顔に戻った。


 は?




 何今の顔。


「その制服···、まさか、至極しごく学園の制服か?」

「あ、はい!あの、ここは、至極学園ではないのですか?」

「てかお前、年は?···名前は?」

「はい、3年生の山元織羽と申します。」

 
 名前を聞いた瞬間、藍が若干後ろにのけ反り天を仰ぐ。

 戻ってこい。


「ま、マジか···」


 定位置に戻ってきた藍が、目を泳がせ、ぶつぶつと「ウソだろ」だの「でも身長もこんなもんだし」と呟いている。


 至極学園?聞いたこともない学校だ。てか何?何で藍はその制服知ってるの??もしかして昔の女の中に、同じ制服の女がいたとか?


「さすが藍、よく知ってるね。もっと年上が好みかと思ってたけど、制服の女もまだまだいける口なんだ。」


 ふっと鼻で笑いながら言ってやれば、ヒヤリと何かが自分の頬に当たる。


「お"い"。黙れ。」


 藍が僕の頬に折り畳みナイフの側面をつけている。


 あ"?


 悪いけどさすがの僕でも魔王にキレることだってあるからね?


「藍···何なのさっきから。散々お前の尻拭いしてやってんのは誰か分かってんの。」


 腹の底から自然とドス黒い濁声が湧き上がる。


「てめえこそ処女臭ぇ女ばっか選びやがって、ざけんなよ。」


 チッ。うるさい。まさかうちのトップとやり合うなんて思いもしなかった。


「どけ」


 彼女の肩を押し、横に追いやるも、彼女が落ち着いた様子でなだめ始めた。



「そんな、やめましょう、お2人とも。」


 ナイフが怖くないのか、堂々とナイフを持つ藍の手首に触れ、ナイフをしまわせようとする彼女。


 しかし手首を触れられた藍は、なぜか持っていたナイフを地面に落とした。


 彼女がその落ちたナイフをしゃがんで取り、シャッと片手で折り畳んでしまうと、藍に差し出す。


「はい。ナイフなんて人に向けては危ないですよ?」


 何でナイフのしまい方知ってるのかは置いといて、藍にそうやって上からモノを言うなんてどうかしている。特に女に諭されるほどイラ立ちを感じることはないだろう。


 今の今まで僕に向けていた怒りが彼女にいくのだから、怒りも倍になる。もしかしたら彼女、本当に殴られるのでは?


 でも藍は、視線が定まらないまま小さく頭を下げると、彼女からナイフを受け取った。


「···さんきゅ。」


 だから は??

 ねえ、何なのそれ。気持ち悪いよ。


 
 「とりあえず、こいつは2階に連れてく。」

 「はあ?!って部屋連れてくの??」

 「···このまま黙って帰らせるわけにもいかねえだろ。」


 まあ、確かに。

 もし敵の女だったら、敵の居場所を尋問なり拷問なりして問い詰めないとダメだしね?



「歩けるか?」


 キッと鋭い目つきで、ぶっきらぼうに彼女に聞く藍。


「はい、大丈夫です。」

「階段あるから気をつけろよ。」

「ありがとうございます。」


 態度と声色はいつもの藍なのに、出てくる言葉が何か違う気がするのは何でだろう。

 





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