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 補講が終わったのかバラバラとうちの奴等が戻ってきているようで、部屋からそいつらの声が漏れてきた瞬間、「チっ」と嫌そうに舌打ちをする藍。


「おいーなんだよあの木!何でいきなり倒れてんだよ!」
「どーせ藍さんがぶちギレて倒したんじゃねーの??」
「あの人は熊か!!」


 下品な笑い声が響き、藍が足でドアをスライドさせると、一気に場が静まり返る。


 藍を見るなり、皆の喉元が静かにこくりと動いた。


 大概の奴は、藍の前では緊張が走り、動けなくなる。息をするのも阻まれるくらいに。


 でもその空気を断ち切る男が1人、気だるそうに僕らを見て言った。


「···女連れ?」


 窓際にもたれ掛かっていた茶髪のハーフアップのつばさがすぐにそこをツッコんできた。


 藍が自ら女を連れ込むなんてもっての他、このアジトは、基本チームの人間以外は立入禁止になっている。


「てか女連れ込むなっていつも言ってんの、藍じゃね?何であんたが連れ込んでんだよ。」


 藍にそんな口が聞けるのは、僕を含めた4人だけ。藍の下につく、四天王的ポジションの4人だ。


「···ちげえよ。こいつは木の下敷きになってたんだよ。」

「いや、もしかしたら千城工業が送り込んできたスパイかもしれないから、問い詰めようと思って連れてきただけだよ。」
 

 僕がフォローすると藍がこっちを睨んできた。いや、フォローしてやったんだから感謝してほしいわ。



 皆にしめしがつかないと思い、僕はとりあえず彼女を問い詰めることにした。


「君何者?僕らのシマで何してるの?」

「あ、はい。3年生の山元織羽と申します。」

「それは聞いたから。そうじゃなくて何で女の君がこの学校に入り込んできたのかって聞いてんだけど。」

「え、ええと、」


 とその時、1人の下っ端のやつが、靴音を鳴らし、一歩前に出るのがわかった。


「···何?」

「いや、あ、あの、俺、その子知ってるかも···と思ったんすけど···」

「え?知ってるの??」

「いやっ、でもその、なんというか、昔買ったゲームのキャラに似てるなって思っただけで、」

「···ゲーム?」


 藍がその下っ端の方に目をやると、彼がビクリと身を強張らせて後ろに下がる。


「ゲームって、これ?」


 スマホをいじっていた翼が、下っ端の彼にスマホの画面を見せて言った。


「『あの柿の木の下で。』っていうギャルゲーらしいけど、そのキャラクターの中に"山元織羽"ってのがいるっぽい。」


 下っ端君は「そ、それです」と頷いている。

 僕もさっき机の上に置いていったノートパッドを手に取り、"やまもとおるは"の名前で検索してみた。

 真っ先に出てきたのが、彼女の画像。今目の前にいる彼女は、普通のリアルな人間なのに、画像の中の彼女は、完全に2次元のキャラクターだ。

 ベージュカラーの髪の毛に淡いピンクの目、赤いリボンのセーラー服も全く一緒で、そのままキャラクターにした感じ。


「な、何これ。。コスプレ??」

「あの、私はそのゲームの中の人間なんです。ここは、ゲームの中ではないのですか?」


 しーーーん


 皆が一斉に彼女にあわれみの目を向ける。


 でも藍だけは絶句した顔で、心なしか頬を赤くしていた。


 え?そこ信じるの?




 
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