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しおりを挟むというか彼女はどこか抜けているとは思ってはいたけど、さすがにこれは精神的な何かを患っているのかもしれない。
「はあ?ギャルゲーの女だあ?」
ずっとスイッチライトでゲームをしていたオレンジ頭の泰地が、ようやく僕らの方を見た。
泰地はゲームばっかやってるから、そのギャルゲーっていうのにも詳しいのだろうか?
「泰地もやったことあるの?」
「ねーし。ギャルゲーなんてリアルで女作れねえようなモサい男が楽しむもんだろ。」
泰地の言葉に被せるように咳払いをする藍。
「リアルで女作れないのは泰地もじゃないの?」
「るせー。俺は興味ないだけ。」
泰地がまたゲームをし始めて、翼が壁にもたれ掛かりながら髪をかき上げた。
「···そこまでボロボロになって潜りこんでくる女なんていないだろ。さっさと追い出せよ、藍。」
「そうだよ~、ここがゲームの中とか言ってるあたり絶対ヤバイ女だって!」
翼に便乗したのは、金髪の前髪をゴムで結んでいる晃大だ。
「あれか?電波系ってやつか?」
ゲーム画面しか見ていない泰地が晃大に投げかけた。
「そうそう、きっと中二病的なアレだよ!」
「病的なアレだか何だか知らないけど、関係者以外に内部事情知られたらたまったもんじゃないだろ。」
翼が彼女の方ではなく、藍を見て言った。部屋に入れといて何だけど、やっぱり今はまだ抗争の立て直しの大事な時期だ。翼の言う通りかもしれない。
「そうだね。自らゲームキャラとか公言するあたり、ちょっと気持ち悪いよね。」
僕がはっきりそう言うと、彼女が悲しそうな顔で俯いてしまった。悪いけど変な女に執着されても困るから、さっさとここで切り離しておかないと。
でも藍はなぜか僕に信じられない目つきでガン飛ばしている。
いやもうお前のその不可解な反応は知らないよ。
「ここまで連れて来て悪いけど、出てってくれる?皆の収拾がつかなくなるからさ。」
なるべく優しい笑顔を向けて言ったつもりだけど、彼女は俯いたまま「すみません」と残し、部屋を出て行った。
藍が一瞬、彼女を引き留める様な素振りをしたから、僕がすかさず「や・め・ろ」と目で訴えかけた。ッと小さく舌打ちをした藍は、不服そうに皆の方に向き直る。
そもそも今日会合するって言ったのは藍だ。女連れ込むの禁止って決まり作ったのも藍。彼女の何に動揺してるのかは知らないけど、藍にはトップとしての立場ってもんを理解してもらわないと。
でも翼も泰地も晃大も、藍のあり得ない行動にちょっと不振がっている。
いつもは会合なんて興味なさげに聞いている翼は藍をガン見してるし、晃大はニヤニヤしているし、泰地のゲームをする手は止まっている。
藍のあの威圧的な空気に近寄れる女は知れている。男の扱いに慣れた年上の女ばかりだ。そして藍が選ぶ女なんてのは、その中でもさらに絞られる。
付き合いの長い僕でも、女といるのを見たのは3、4回。しかも選ぶなんていっても1日どころか半日限定で、無下な扱いしかしない。飽き性の晃大でも1週間は持つのに。
僕が皆に向けて、抗争の反省を生かした今後の方針を話す中、藍はずっとソワソワとしていた。
いつもの魔王の藍ではない。何をそんなに耐えているのか、両拳をぎゅっと握り、目を血走らせている。
もうお前はトイレ行け。
そんなこんなで、約1時間に及ぶ会合が終了する頃には、ぽつぽつと雨が降ってきていた。
「あ、ベランダにタオル干しっぱなし。」
窓を見て何気なく僕が呟けば、藍がまた不思議なことを聞いてきた。
「···おい、うちに救急箱ってあったか?」
「···は?」
「絆創膏ぐらいはあったかって聞いてんだよ。」
「は??藍はそんなもん使わないでしょ?」
ここでいきなりなカミングアウトになるのが、僕と藍は同じ家に住んでいる。マンションの1室で、シェアのような感じで住んでいるのだ。
救急箱だの絆創膏だの言われて、何となく嫌な予感はした。
「遥斗、先帰れ。」
「······」
僕が皆に"解散"という前に部屋から出て行った藍。僕は慌てて部屋の中から藍の背中に向かって、「バイクは置いてってよ!」と叫んだ。
そしてふうと溜息をつけば、案の定翼たちに囲まれる始末。
「···遥斗、何があった?」
「今日の藍いつもの藍じゃねーし。」
「あの女の子のことだよね?!何があったの?!」
と3人から言われるも、「僕は何も知らないから」と笑顔で返しておいた。
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