21 / 41
4-3.
しおりを挟むたまに腰から上に手が触れれば、その度にレオは慌てて「悪い!」と謝ってくれる。そして気まずい空気。
でも私はどこに触れられていようが、さっき抱きつかれたことを意識してしまいそうになるので、考えないよう出来るだけ話題を振った。
「…そういえばレオ、この騎士の服、薔薇の香りがするのだけど、アイリーンの趣味なのかしら。」
応接室で出された紅茶も薔薇の香りがした。薔薇に何かこだわりがあるのかもしれない。
「いや…、それはその…俺の、趣味だ…。」
「へ??」
「自分でも柄じゃないのは分かってる!けどまあ、その、前世の母親が庭で薔薇を育てていて、その影響みたいなもんで。。」
「ああ、そういえば私たち、前世で学生のまま死んじゃったものね。」
「いや、そういうんじゃなくてだな…。」
「私も薔薇の香りは好きよ?学園で育てているうちに愛着沸いたし。」
少し振り返ってレオに笑いかけた。レオが「ちゃんと前を見ろ」というので「はいはい」と返事をすると、腰に置かれたレオの手が熱くなった気がした。
本部につくと、王子はすぐに火竜ことレッカのいる檻に足を運んだ。
「レッカ・メビウスレウス!!」
中庭にある吹き抜けになった魔獣専用の大きな檻で眠るレッカ。そして彼女を潤んだ瞳で愛おしそうに見つめる王子。その姿がドナドナのように思えてしまった。
「…王子、すみません。私が爆破の魔法で彼女の額を怪我させてしまって。」
レッカの額は黒く焼け焦げてしまっている。角を折っていたら、サウザード王国との友好関係は断交していたかもしれない。
でもカミール王子は、「ああ僕を追い求めてこんなところまで来るなんて、悪い子だ。めっ、メだぞ☆」とレッカに話しかけており、私の謝罪は届いていないようだった。
それに見兼ねた彼の家来が、
「いやこちらこそ。皆様にはさぞかし怖い思いをさせてしまい、大変申し訳ございません。後日お詫びの品を送らせていただきます。」
と深々と頭を下げていて、その姿が昔の自分と重なった。私も前世でよくチームの皆と外に食べに行った時は、店員さんに「静かに」と怒られて謝ってたっけ。
「御覧の通り、王子は魔獣に夢中でして、特に大きな魔獣には目がなく、辺境地に行っては手懐けて従魔にしてしまうのです。」
「…え?従魔ってこちらの竜だけではないのですか?」
「ええ、今では67頭の従魔がおりまして、従魔専用の土地を開拓するほどです。」
ろ、67頭…?!!餌代がとんでもないことになっていそうだ。
「カミール王子は第4王子ということもあってか、小さい頃から趣味ばかりに没頭しておりまして、未だ婚約者がいない身なのです。」
ゲームの中の王子は、第4王子と4番目に生まれた子供のため、両親にあまり構ってもらえず孤独な幼少期を過ごした。そのため気難しい王様キャラになってしまうが、ミレーヌの優しい心が彼の凍てついた心を溶かしていくのだ。
ただしカミール王子を攻略している途中で、違う攻略キャラに接触すると、彼のヤンデレ染みた一面も見られる。
「…ところでシシル、さっき君は爆破の魔法と言ったけど、それはどういう魔法なの?」
ほら、聞いていないようでしっかり聞いている。メロウにいた誰かさんにそっくり。
しかも大きな魔獣が好きって、まさに特撮映画好きな彼そのものじゃないのだろうか。
「まだはっきりしたことは言えないのですが、私には2つの魔力があるかもしれないのです。」
「それはどういうこと?2つの魔力を融合させて爆破させるってこと??」
「…恐らく、そうだと思います。」
「君の力を使えば"特撮映画"が撮影できるかもしれないなあ。」
…え?今なんと?
「と、特撮映画って、怪獣が実写で戦ったりする、あの特撮ですか?」
「うん、…ってやっぱり君、転生者だよね?」
私とレオの顔が一瞬にして青ざめる。するとそれを見た王子が、
「転生したのに見た目が変わらないって笑える☆」
とお腹を抱えて笑い始めた。
周りの家来たちは不思議そうに顔を見合わせている。
それから場所を移動し、本部の一室を借りて3人で話しをさせてもらった。
「マキ、会えてほんとに嬉しいよ!」
「私もよ、コウキ。」
コウキは特撮ヒーローや怪獣映画の世界に憧れを持っている、メロウの幹部だった。よく抗争では、映画で使われた技で敵を倒したと、嬉しそうに話していたのが懐かしい。
「僕は前世では小柄だったでしょ?だから怪獣とか巨大なものに興味を持つようになったんだ!」
今ではレオと同じく、180㎝はあるのではないかと思うほどの長身だ。
6歳の時、お城を抜け出し1人で闇市に行き、初めて魔獣を見たのだとか。火竜がオークションにかけられていたらしい。そこで転生していることに気付いたとコウキは話してくれた。
乙女ゲームでも、巨大な魔獣のいる世界なのだから彼にとっては最高だろう。
「で、マキは何でステラの総長と一緒にいるの?どういう風の吹き回し?」
「あ、はは…。」
どう説明していいか分からず笑って誤魔化すけれど、当たり前のように痛いところをつかれる。
0
あなたにおすすめの小説
2度死んだ王子は今度こそ生き残りたい
緑緑緑
ファンタジー
王太子ロイは、かつて二度の革命によって祖国を崩壊させてしまった過去を持つ。命を落とすたび、彼はある時点へと巻き戻される。そして今、三度目の人生が静かに幕を開けようとしていた。
――自分は民を理解しているつもりだった。
だが実際には、その表面しか見えていなかったのだ。
その痛烈な自覚から、物語は動き始める。
革命を回避するために必要なのは、制度でも権力でもない。「人を知る」ことこそが鍵だと、ロイは気付く。
彼はエコール学園での生活を通じ、身分も立場も異なる様々な人間と深く関わっていく。
そこで出会う一人ひとりの想いと現実が、やがて国の未来を大きく左右していくことになるとは、この時のロイはまだ知らない。
どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」
「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」
私は思わずそう言った。
だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。
***
私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。
お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。
だから父からも煙たがられているのは自覚があった。
しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。
「必ず仕返ししてやろう」って。
そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
悪役令嬢の私が姫に転生した件 ――それはいいのですが、なぜ魔王城に幽閉から始まるのですか?
しばたろう
ファンタジー
アウレリア王国の未来を憂い、改革を進めようとした結果、
「聖女いじめ」の汚名を着せられ断罪された悪役令嬢アレイシア。
絶望の末に命を落とした彼女は、気がつくと百年後の世界で、
同国の王女エリシアとして生まれ変わっていた。
だが平穏はなく、彼女は魔王に攫われ、魔王城に囚われの身となる。
毎日続く求婚と恐怖――しかし前世の記憶を取り戻したエリシアは、
魔王の語る「経済による世界支配」という理知的な思想に耳を傾ける。
武力ではなく、政治と経済で世界を変えようとする魔王。
その冷静で非情な正論に、かつて同じ理想を抱いた彼女は――
魔王の妻になるという、思いもよらぬ選択を下す。
これは、断罪された悪役令嬢が、
今度こそ世界の在り方そのものに手を伸ばす物語。
物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜
丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。
与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。
専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、
失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。
そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、
セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。
「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」
彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、
彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。
嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、
広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、
独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
栄養と愛情を取り戻したセレナは、
誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、
社交界で注目される存在となる。
一方、セレナを失った伯爵家は、
彼女の能力なしでは立ち行かず、
ゆっくりと没落していくのだった――。
虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。
無能令嬢、『雑役係』として辺境送りされたけど、世界樹の加護を受けて規格外に成長する
タマ マコト
ファンタジー
名門エルフォルト家の長女クレアは、生まれつきの“虚弱体質”と誤解され、家族から無能扱いされ続けてきた。
社交界デビュー目前、突然「役立たず」と決めつけられ、王都で雑役係として働く名目で辺境へ追放される。
孤独と諦めを抱えたまま向かった辺境の村フィルナで、クレアは自分の体調がなぜか安定し、壊れた道具や荒れた土地が彼女の手に触れるだけで少しずつ息を吹き返す“奇妙な変化”に気づく。
そしてある夜、瘴気に満ちた森の奥から呼び寄せられるように、一人で足を踏み入れた彼女は、朽ちた“世界樹の分枝”と出会い、自分が世界樹の血を引く“末裔”であることを知る——。
追放されたはずの少女が、世界を動かす存在へ覚醒する始まりの物語。
ゴミ鑑定だと追放された元研究者、神眼と植物知識で異世界最高の商会を立ち上げます
黒崎隼人
ファンタジー
元植物学の研究者、相川慧(あいかわ けい)が転生して得たのは【素材鑑定】スキル。――しかし、その効果は素材の名前しか分からず「ゴミ鑑定」と蔑まれる日々。所属ギルド「紅蓮の牙」では、ギルドマスターの息子・ダリオに無能と罵られ、ついには濡れ衣を着せられて追放されてしまう。
だが、それは全ての始まりだった! 誰にも理解されなかったゴミスキルは、慧の知識と経験によって【神眼鑑定】へと進化! それは、素材に隠された真の効果や、奇跡の組み合わせ(レシピ)すら見抜く超チートスキルだったのだ!
捨てられていたガラクタ素材から伝説級ポーションを錬金し、瞬く間に大金持ちに! 慕ってくれる仲間と大商会を立ち上げ、追放された男が、今、圧倒的な知識と生産力で成り上がる! 一方、慧を追い出した元ギルドは、偽物の薬草のせいで自滅の道をたどり……?
無能と蔑まれた生産職の、痛快無比なざまぁ&成り上がりファンタジー、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる