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6-5.
しおりを挟むグレゴリー王子と婚約したらどうなるのだろう?きっと私は花嫁修業で離宮に缶詰にされる。泥棒猫のミレーヌと一緒に楽しくお茶会をしながら。たまに元彼とも顔を合わせなければならない。
本当だ。これって修道院に行くよりも最悪な結末だ。
「俺は今のところ次期国王候補だ。とすれば、貴様は妃になるな。」
えっ。妃って、大奥の一番偉い人みたいな?
「貴様との子供はさぞかし可愛いだろう。ふふふ、男を生めば次期国王候補になる。」
ぐふっ。私は抉るようなパンチを喰らった。
「ぐ、グレゴリー王子、申し訳ありませんが、す、少しお時間をいただけませんか?妃となれば私も色々と覚悟が必要ですから。」
「…ほう。これだけの後ろ盾がありながらすぐには答えを出せぬと?ではしばし牢獄で頭を冷やせ!また3日後に返事を聞く!」
私は近衛騎士達に両腕を掴まれ、部屋から連れ出された。
すれ違いざまにゾイがこっちを見ていたけれど、私はとても見る気にはなれなかった。
部屋の前で見張りをするモーゼスとは目が合って、でも彼に助けを求めることは出来ない。レオの二の舞になるだけだ。
それから私は牢馬車で騎士団本部へと移送された。
レオが用意してくれた騎士の服は没収され、代わりに私は繋ぎの囚人服を着せられた。あの騎士の服は他のものと違って特別なものだ。薔薇の香りがするのだから。
小さな格子窓のついた牢の中は6畳ほどのスペースに固そうなベッドと、隅には恐ろしいことに壺のようなおまるが置いてある。
私は吐き出しそうな悲鳴を呑み込んだ。乙女ゲームでこんなことがあってはならない。
せいぜい軟禁がいいところだと思っていた。本当に牢に入れられるなんて信じられない。なぜゾイは何も言ってくれなかったのだろう。私が爆破したことをそれだけ恨んでいるのかもしれない。
せっかく騎士になることに生きがいを感じ始めていたのに、レオの好意を全て無駄にしてしまった。
何もすることがなく、ただベッドで横になりその日は過ごした。質素な夕飯が置かれていたけれど、おまるを見ると、とても食べる気になれない。
夜中、周りが静まり返った頃、ひたひたと足音が聞こえてきた。看守の交代の時間なのかもしれない。無視して目を瞑っていると、ドアの外から話し声が聞こえてきた。
そして鍵を開ける音が聞こえ、さすがに私は身体を起こした。
格子窓のついた牢から入って来た人物は、なんとゾイだった。
「シシル!!」
「えっ、ええっ?!ゾイ?!」
ゾイがベッドに座る私の元に駆け寄る。そして私を抱きしめた。
何が起こっているのだろう、夢を見ているのだろうか?
「看守に話をさせてもらうよう頼んだ。他の看守に見つかるとまずいから端的に話す!」
私を離し、私の肩を掴むゾイ。
「グレゴリーにあえて王位継承権を握らせているのは俺だ。」
「…え?!」
「あれは無能な脳筋だ。今は下手に出てグレゴリーをその気にさせているだけだ。いつかグレゴリーの悪事を晒し、奴を潰すために。」
「な、何のために…?」
「決まってんだろ。俺が次期国王になるためだ!」
…嘘。ゾイが次期国王の座を狙ってるの?!あの王子としての嗜みを全て無視していたゾイが??!
レオの言っていたことは本当だ!
「そのためにはシシル、お前の力が必要だ!」
「わ、私の力?」
「シシルには爆破の能力があるんだろ?火と雷両方の魔力を融合した爆破魔法が。」
「……」
「コウキ、いやカミール王子から聞いた。」
カミール王子は、一度ヤマトであるゾイと接触してみると言っていた。恐らく私の魔力の話をしたのだろう。
「でも私、グレゴリー王子に脅迫されてるわ…。」
「グレゴリー王子の断罪イベントをすれば、お前との婚約もなかったことにできる。」
「…それで、私はその後どうなるの?」
「俺の元に来ればいい。俺ともう一度婚約すれば。」
…何を、言っているの。
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