捨てられ爆薬令嬢は敵総長の溺愛を受ける

由汰のらん

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「目が覚めたんだ。俺にはマキ、いやシシル、やっぱりお前しかいない!お前が必要なんだ!」

「…じゃあミレーヌはどうなるの?ミレーヌとは婚約してるんでしょ…?」

「ミレーヌは庶民だ。いくら特異魔法があると言っても、結婚したところで俺は王位を継承することはできない。」

「それで、ミレーヌはどうなるの?!あなたがミレーヌがいいって言ったんでしょ?!」

「…ミレーヌには侍女として働いてもらう。追い出すわけじゃない。それなら問題ないだろう。」


 問題ない??

 仮にも卒業パーティーであなたを、私の爆破から守ろうとした相手でしょ??!

 
 信じられない。


 私、馬鹿だわ。


 こんなの、ゾイじゃない!!


「こんなのおかしいわよ!!ゾイは下手に出て人を持ち上げるような男じゃない!!」

「は?」

「それに一度振った女に、自分からもう一度寄りを戻そうなんて言う男じゃないわよ!!」


 ゾイ…ヤマトは傲慢でプライドが高くて、そんな風に裏を掻いて強《したた》かに動く男じゃなかった!

 常に真正面からぶつかって、はっきりと皆に自分が一番強いと宣言するような男だ!


「あなたは、本当にゾイなの?!…本当に、私が好きだったゾイなの?!!」

「シシル…。」

「あなたのさっきの言葉、ただ私の能力が欲しいと言っているようにしか聞こえなかった!!」


 そうだ、きっとゾイはミレーヌの特異魔法が必要だっただけだ!自分が次期国王になるために。だから役に立たない魔力を持つ私と婚約破棄したのよ!


 それで私に爆破の魔法があると知ったら、また私の元に舞い戻ってくるなんて…


「最低よ!!あんたと結婚するくらいならグレゴリー王子と結婚した方がマシよ!!!」

「シシルっ!違うんだ!!話を聞け!!」


 私はゾイを押しやり、牢から追い出した。

 最低だ、最低だ最低だ!!私が助けてほしい時は助けてくれなかった癖に!


 前世の2年間とこの世界での20年間、何をしていたのだろう。何て無駄なことをしたのだろう!


 あんな男、いつか爆破してやると思っていたはずなのに、今はもうその気すらない…!

 

 やり切れない気持ちのまま夜が明けて、身体は疲れているはずなのに一睡もできなかった。


 昨日起こったことは全て現実なのだろう。私は目を開けたままただ横になり、その日も何もせず過ごした。


 次の日、朝食が置かれる音と共に、「ちゃんと食べないと死ぬぞ」という看守の声が聞こえたけれど、無視した。

 もうどうにでもなればいい。このままグレゴリー王子との婚約を先延ばしにして、この牢の中で餓死でもしようか。

 処刑された方がマシだと思っていた気持ちは本気だったのかもしれない。


 しばらくして今度はお昼ご飯が運ばれてきた音がした。

 同じように背を向け無視していると、上から優しい声が降ってきた。



「シシル、ごめん、遅くなった!」


 ハッとして振り返れば、ベッドの上から覗き込むレオの姿があって、


「レ、レオ!!!」

「しっ、特別に面会させてもらったんだ。小声で話そう。」


 レオの困ったように見つめる姿に、自分の目が潤んでしまって、私は泣いてしまった。


「レオ、レオ…ごめんなさい、ごめんなさいっ!」

「っ…」


 レオは私を抱きしめてくれた。


 人前で泣いた経験なんてほとんどないはずなのに、レオの前ではなぜか泣いてしまう。レオは「大丈夫、大丈夫だから」となだめ、髪を何度も撫でてくれた。


「昨日、保釈金を払おうと思って来たら追い返されたんだ。グレゴリー王子の命だからとでたらめなことを言われて。」

「…そうだったの。」


 私は経緯をレオに話した。グレゴリー王子に脅されていること、婚約を迫られていること、そして夜中に訪れたゾイのことも。


 ゾイのことを話している途中でレオが不思議そうに呟いた。







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