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7-2.
しおりを挟む王子の指差す方を見れば、馬の前でひっそりと素知らぬ顔で待っているミレーヌの姿があった。
「あの女に、か、身体を使って頼まれたんだ!!!」
「ええええっー!!!!」
今の叫び声は私だ。
唐突すぎる彼の言い分に、私は頭を抱えた。
か、身体を使って…??乙女ゲームの主人公が…?!
「いや、いくらなんでも、う、嘘でしょ…?」
「本当だ!!撮像魔法を使う鳥獣がいると文献で調べ上げ、俺にどうしても買ってほしいと誘惑してきたんだ!!徴兵命令もあの女の策だ!!」
はあああ?!
いやいやいや。普通主人公というのは受け身なはずでしょう。それが乙女から誘惑なんて…あり得ない!!!
大体ミレーヌは、ゾイとできているはずじゃ…
私はこっそりゾイの顔を窺った。ゾイは顔面蒼白で、でもそれは周りの騎士たちも同じだった。
あの可憐で可愛いミレーヌが、ゾイのみならず、こんなデブにまでと思うとそうならざるを得ないのだろう。
ゾイが困惑した顔でミレーヌに歩み寄る。
「…まさか、そんなはず…、あり得ない。」
「ええ、あり得ないわ。だって私はゾイ一筋だもの。」
優しい笑顔をゾイに向けるミレーヌ。ゾイが少しほっとした顔をするも、レオがミレーヌを見て言った。
「…では、あの第2騎士団の使い魔はどう説明する気だ?学園に火竜が降り立ち、第2騎士団がすぐに近衛騎士に使い魔を送った。しかしその使い魔は、近衛騎士の元に行く前に、何者かに殺されたんだ。」
「…なぜそれをこの私に言うのかしら?」
「そうやってシラを切ってももう遅い。証拠はすでにポルトの手の中にあるんだ。」
ポルト先生が鳥獣をぶら下げる手を少し上げた。
「意味が分かるかミレーヌ・ランシー。あの鳥獣の記録に、あんたが使い魔を湖に沈める様子がたまたま映っていたんだ。これを王に証拠として提出すればどうなるか。」
「……」
ミレーヌは無言のまま笑みを絶やさない。
私は彼女の元に行き、「そんなはずないわよね?!ゾイはイケメンだから分かるとしても、グレゴリー王子はちょっと…さすがにないと思うのよ!」と、今だデブへの誘惑疑惑を案じていた。少しミレーヌの片眉が動く。
「それにミレーヌにそんなことをする理由なんてないわ!大体女の子が動物を殺すってちょっと…グロくて嫌じゃない?
大体ミレーヌは回復魔法を駆使しているのよ?それがその反対のことをするなんて、回復魔力保持者にあるまじき行為じゃない??」
すると、ミレーヌの右手が大きく振りかぶり、それが私の頬をパアンッといい音を広場に響かせ弾いた。
…え?今私、何されたの…??
周りがどよめいて、レオが駆け寄る中、ミレーヌが怒号を放つ。
「お前のそういうところが、俺は大嫌いだ!!!!」
はい?
今のは、誰の声??
「前世からずっとだ!!俺たちのチームにずけずけと入り込みやがって!!お前という存在がずっと目障りだった!!!」
ミレーヌが両眉をつり上げ両拳を固く握る。
今、この子から声がした…?
私は状況を把握するため、まずはレオを見た。するとレオが私とミレーヌを交互に見る。
いや、おいこら、私じゃないから。
それからポルト先生、モーゼスを見ると2人とも"今のはどっち?"というように交互に指を向けている。
軽くキレそうではあるが、ゾイを見れば一気に青ざめていた。確かに、ミレーヌと身体の関係を持ってしまったのだからその反応は正しいのかもしれない。
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