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しおりを挟む「ねえゾイ、あなたはもっと我を通す人間で、人の意見に左右される人間ではないはずでしょ?どうしちゃったの??」
「シシル、ここは拳の力だけでどうにかなる世界じゃない。」
「それなら何で王子としての努力を怠ってきたの?!」
「学園では生徒会長になることが目標だったんだ。名声さえ揚げればそれで充分だろう。」
呆れてものも言えない私の代わりに、怒ってくれたのはレオだった。
「シシルがどれだけ王族に入るための努力をしてきたかあんたは知っているのか?!」
「は?何を熱くなってる?」
「こいつは、あんたのために必死だったんだぞ?!!それをあんたの欲求一つで振り回して!!名声など捨てる覚悟で1人の女くらい守ってやったらどうなんだよ?!」
レオがゾイの胸倉を掴んだ。でも2人とも睨み合ったままだ。
ポルト先生が袋の中から、また別のものを取り出した。
「ミレーヌ・ランシーの部屋からこれが見つかりました。」
「じゅ、銃?!」
「これは一見銃に見えますが、中身は毒針を発射するものです。もしかしたら鳥獣で監視し、ずっとシシルを殺す機会を窺っていたのかもしれませんね?」
ふふふと笑うポルト先生。ミレーヌの顔が一気に青ざめる。
「あんたはミレーヌの正体にも気付かず、誘惑され、名声のために散々シシルを傷つけて!!絶対に許さない!!」
レオがさらにゾイの胸倉を引き上げる。でもプライドの高いゾイはそれでも冷静を装っている。
「…じゃあお前はどうなんだ騎士団長?好きな女1人のために軍部大臣の家名を捨て、肩書も捨てれるとでもいうのか?」
「捨てれるさ!!守ると決めた女のためなら肩書などいつでもくれてやる!!」
推しが尊いことを言っている。ドキリと胸が高鳴った。今の高鳴りは推しへのものなのか、それともレオへのものなのか。
ミレーヌとグレゴリー王子は、学園の生徒を危険に晒した罪、使い魔の殺害、盗撮、闇市での取引、従魔の飼育、徴兵命令文書と王都で見せられた私への令状の改ざんの罪により騎士たちに身柄を拘束された。
ゾイはミレーヌに操られていたとはいえ、私が火と雷の魔法が使えることを知っていた事実から、盗撮を看過していたのではと疑われ、事実確認が行われることになった。
それでもゾイはゾイだった。
騎士たちに広場から本部へと連れて行かれる前に、私を見て言った。
「シシル、この件が片付いたら俺の元に来い。」
「は??」
「お前の力があればこの国、いや世界征服も夢じゃない。」
ほほう。元婚約者様はよほど私に爆破されたいらしい。
私は空に向かって2本の指を突き出した。それを見てゾイがビクリと身体を強張らせる。
「コア・アローサンダーイリュージョン!!!!」
指から放たれた一筋の白い光線がヒュゥッと音を立て上がって行き、ゾイの周りにいる騎士たちが一斉にゾイから距離を取る。
でもその光線は大きな音をたてパアアアアアアンッッと大きな円の花を描き、青空に打ち上がった。
私は訓練場で、もしかしたら花火が出せるかもしれないと、打ち上げ花火の練習もしていたのだ。
「あんたなんか爆破する価値もないわ!」
するとポルト先生が、「カッコイイ~!!惚れ惚れしちゃいますね~」と拍手を送ってくれた。
ゾイは腰を抜かし、尻餅をついていた。彼は最後の最後まで私に"好き"の言葉をくれなかった。
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