【完】愛が重いNo.1ホストに追いかけられています

由汰のらん

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【七三倉視点】野口という男

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(破天荒マリアのパンツは薄ピンクだった。)

 
胸もでかくてパンツ見せられてもネタにしかならない女が、女芸人意外にもいるということを知った日。


一服でもしようと喫煙所に行けば、ちょうど外回りから帰ってきたのか、パリピの異端児、野口さんがタバコをポケットから出し始めていた。

一瞬、火をつけないとと脳が働いたけど、今はホスト中じゃないためライターを持ち合わせていない。

  
「野口さん、お疲れです。」

「七三倉くん!今日も丸メガネがこなれ感満載でええ男だねえ」

「そういう野口さんこそ。イケメンにしか許されないセンター分けがいい具合に女性社員たちの目を引いてますよ。」

「女性の躾に一番効くのはイケメンだしね」

「まあそれは野口さんの持論ですけどね。」 
 
「あははーいいねいいね。うん七三倉くんめっちゃ好き!」

「ここで、俺もです。って答えたら誤解されそうなんで、腐女子は俺が必ず絶滅させると誓っときます。」

「七三倉くんに足りないのは教育よりも教訓だと思うよ」
 
隣の野口さんから“投げきっす”をされた。
 
もう、まっっったくこのヒトの思考は理解できないが、このヒトには嫌われていないということはよく分かる。

俺に対する口調は優しいし、先輩としても甘い。ホストの世界じゃ喰って喰われて、突き落とされて突き落とし返して、の繰り返しだ。いくら命があっても足りない。

だから、野口さんが益々分からない。

「野口さんって、めちゃいい先輩すよね。」

「まあねえ。僕も自分でいい先輩だと思ってるよ?」

「てゆーか、なんで成世サンにはあんなに当たりキツイんすか。」

「あれ?もしかして七三倉くん、気になっちゃう感じ??」

「ええ。夜も眠れないほど気になっちゃってます。」

「超棒読みw」
 
道化の笑いが上手い男が、タバコを吸い、休息のひとときを得る時にだけみせる憂いの顔。意味深すぎて、気温25℃でも底冷えしそう。

前に飲みの席で、今まで付き合った女の話になったことがある。西條さんがクズみたいな付き合い方に花を咲かせる中、野口さんにはわかり易く話題を切り替えられ、はぐらかされた。

でも元カノが元取引先にいるなんて、はぐらかすほどの話でもないと思うんだけど。でもきっと野口さんにとってははぐらかしたい過去。 

営業なんてのは、自分を思う存分造り変えていかなければ数字が取れない世界だ。ホストよりはマシ。でもホストも営業も根底はおんなじ。

精神保つには、気の知れた同期や後輩がいなきゃやってらんないだろうけど、アレはハラスメント云々よりも家族とかに近い接し方じゃなかろうか。      
 

「成世ってさ、男だったら超イケメンじゃない?」

「……はい?」

「知ってる?成世の教育係ってマリア先輩だったんだけど、外回りの営業は僕に同行させることが多かったんだよ。」

「そうなんすね。」

「僕が何も指示してなくても、勝手に先方の情報勉強しててさ。営業なんて今や成績よりも活動量が重視される時代だし、外回りでサボれる時間あるし、適当にやっときゃいいって思ってたんだけど。成世は本気なんだよね。」

「はあ。」

「だから成世と比べると、僕のミスとかやる気の無さが露呈しちゃって。情けないけど、成世に泣き言言ったことあったんだよ。」

「…………」      
        
「そしたらさ、あいつ、ジョッキ片手に無表情で言いやがったんだわ。」

『私の前で泣くよりも、私に八つ当たりしてストレス発散してる方が野口さんらしくて好きです。』って
 
「(告白かよ。)」


俺の心の声が漏れたのか、野口さんがタバコの煙を吐いた後に顔を緩ませ言った。

「もうほぼ告白やん?キュンときちゃってさあ。抱かれたい成世No.1だよね」

「ほん。」

「もう仕事では成世がいないとやってけないんだわ僕。精神安定剤?いやドーピング??」  

「(めちゃめちゃ依存してるな。)」  

成世と野口さんの関係性は、意見が食い違う兄弟のやり取りをみている感じだと思っていたが、どうやら野口さんにとって成世は、ニコチンのような存在らしい。
  
肺に呑み込む煙が多かったかもしれない。肺から逆流してきた煙に小さく咳き込んで。また肺に押し戻すように煙を注入した。


「でもまあ、女としてはみれないけどね」

カラカラと笑う野口さんが、片腕を組んでタバコの肺を灰皿に落とした。けっこう短くなるまで吸うタイプだ。タバコの短い部分て不味くない?

「あ、でもちょっとだけかわいいとこもあるっちゃあるかな」

「へえ?」

「努力しまくってる癖に、今まで1位を獲ってきた秘訣は、お婆ちゃんの形見のお陰だって言ってるし」      
   
「…………」

「成世のお婆ちゃん、時代にそぐわないキャリアウーマンだったらしくてね。その時使ってた名刺入れを今成世が使ってるんだってさ」

「はー。そっすか。」

「お守り?いやジンクスみたいなやつかな」 
   
はいはいはい、なるほどね。成世一族超最強ってことがよおく分かったわ。
 
それを今野口さんから与えられた情報で理解できたのが気に食わない。できれば、他の誰でもない本人から聞いて理解したかった。

つまり、本人から聞き出せない俺って“どうでもいい男”止まりってことなんじゃね。なにそれホスト失格じゃん。

タバコを吸い終えた野口さんが、俺の肩を叩いてニンマリと不敵に笑ってみせた。この人意外と可愛い顔してるから余計に俺のひんしゅくを買う。

「成世ね、今幼馴染に恋してるらしいから」

2回以上肩を叩く手が、アデューの手の形を作った。昭和臭さが否めない。

「七三倉くんにお邪魔虫役を任せるわw」

「え?俺に当て馬になれってことです?」

「敵を殺す時は殺せ!七三倉ヴァン!あばよ!」


誰だよ野口英明を雇った人事。 

一気に煙を吐いて、煙で野口さんの残像を消してやる。いい先輩?なんなら今のは忠告とも牽制とも受け取れるんですけど。

そう思えちゃうのは俺の性格が曲がってるせい?単なる俺へのエールだとしたら俺が悪者か。 
  
今俺の心を代弁する折れ線グラフが、緩やかな山の字を作って心拍数を加速させる。ふう。もやり。

すっっげえな成世秋奈。初セックスと恋愛はベツモノ思考?野口以上に理解できん。



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