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2月◆とっきー
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死にたい。
俺は最近これが心の中の口癖になっとる。
俺は元来内向的で、あの4人と仲良くなれとるのは奇跡だと思う。それが最近身にしみて分かった。
高校入試に行ったときだ。もちろん、同じ高校を受験する知り合いはおらず、全員知らない奴だった。
この高校は頭が良い奴しか受けないようなとこだから、テレビドラマでよくおる、おちゃらけてて明るくて、俺みたいな大人しいやつを見下してそうな奴はそこまでおらんかったが、それでも昼飯休憩の時間とかはみんな誰かと喋っててうるさかった。
同じ中学同士で喋っとるのは予想できたが、制服が違うのに仲良さそうに喋っとる奴らもいた。
そして、俺も前の席の男に話しかけられたが、
「どこ中?」
「…あ?海野中学校…」
「海野中…?どこだそれ」
「ゆーた!何喋っちょるの?つか誰」
「あ?知らね!つか国語の最後の問題なんて書いたー?」
すぐ会話は終わった。しかも全く仲良くなった気がしない。…これ、高校で独りなりそうじゃね?つか、いじめられる可能性もある。
やっぱ俺にはあの4人しかおらん。
だけど最近学校をサボってる。理由はあの4人のせいだ。嫌いなわけではないか、単にあの4人といると俺の惨めさがさらに感じられ、しんどくなるからだ。
なっちゃんは明るいし、毎晩自分で飯作ってて、自分のしたいことがはっきりしてる。
タクは大人びてて社会性がある。
みさは図々しいほど自尊心が強く、ハキハキしている。
そーちゃんはリーダーシップがあり、面白くて、誰からも愛されるような奴だ。
入試の面接で、自分の長所を言えと言われた。他の奴らは、「何事も諦めない」とか「自分の意見をちゃんと言える」とか言ってる中で、俺は「頭が良いこと」と言った。
みんな、頭が良いからこの高校を受けたのだ。こんな事、他に言った奴おるだろうか。試験官は一瞬たまげた顔をした。
自分の良いところなどあるんだろうか。生きてる意味とかあるんだろうか。
「…死にたい」
思わず声に出た。
何週間かほとんど外に出てなくて、そろそろ外の空気を吸いたくなったため、ふと外に出てみた。
見慣れた海。潮の香り。
俺はよく海野橋に行く。ここからの景色が個人的に一番綺麗だと思う。海に夕日がきらきらと反射している。
もうすぐここから離れないといけない。と思うと、動きたくなかった。夜が更けてもずっとこの橋の手すりにうっかかっていたい。
「とっきー!!」
急に名前を呼ばれてびっくりして振り向いたときには、後ろに倒れていた。
「痛っ~」
みさが俺の下敷きになっていて、急いで立ち上がった。
「え?なんで?」
と言ったら、いきなり叫んできた。
「こっちがなんでだよ!死なないでよ!!」
急にボロボロ泣き出した。
「おいなんで泣いてんだよ!」
「今日は涙腺崩壊してんだよ!」
…そういえば今日みんな釣りしてたんだっけ。そーちゃんから誘われたけど断ったんだった。一体何があったんだ。
なるほど、橋から飛び降り自殺しようとしてたように見えたのか。
「大丈夫だから、ただ海見てただけだから」
そう言ったら、みさは「ほんと?」と泣き止んだ。
「じゃあ、会ったついでに聞くけど、なんで学校来ないの?」
それは事実だ。俺は渋々口を開いた。
「…みんなといるとしんどくなるから」
「嫌いなの…?」
「…嫌いじゃない。けど、何ていうか、俺に良いところがないっていうのを感じちまうっていうか…」
「良いところ?」
なんだかこっちが泣きそうになってきた。
「…あぁ」
「みさはとっきーの良いところ答えれるよ?」
「は?」
「頭良いし、努力家だし、優しくしてくれるし、…」
みさは、俺が面接で答えられんかった長所を沢山挙げてくれた。デタラメではなく、ちゃんと俺の良いとこ悪いとこを知っとる上で言ってくれとるように感じられ、めちゃくちゃ嬉しく感じた。
「ババ抜き強いし、大きい声出せるし…まだ聞く?」
「いやもういい、ありがとう」
俺が笑顔で礼を言うと、みさは顔を赤くして
「あと、笑った顔が可愛い」
と追加で褒めてくれた。
「あははっ」
「とっきー」
「何?」
「みさがいるから。ずっと。みさのこと信じてね」
「…うん、ありがとう。信じる」
「…ずっとだよ?いい?」
「あぁ」
いいよ、と応えたあと、なんかこの会話意味深やなと思った。
「ずっと…、一生、いてくれると?」
そう俺が言ったら、みさも意味に気付いて顔を赤くした。否定もせず、焦っている様子が可愛くて、つい
「俺はいいよ」
と、ぼそっと言った。みさが真っ赤な顔でこっちを見てきた。
「俺、明日から学校行くわ」
「…え?まじ!?」
「みさがおるけん」
「!!!」
みさが照れて何も言えなくなってるのが面白くて、つい吹き出した。…俺、ちょっとSっぽくなってきた?
俺はみさを置いて
「じゃーな!また明日!」
と叫んだ。
もう少し生きててやってもいっかな。
みさもおるし。
俺は最近これが心の中の口癖になっとる。
俺は元来内向的で、あの4人と仲良くなれとるのは奇跡だと思う。それが最近身にしみて分かった。
高校入試に行ったときだ。もちろん、同じ高校を受験する知り合いはおらず、全員知らない奴だった。
この高校は頭が良い奴しか受けないようなとこだから、テレビドラマでよくおる、おちゃらけてて明るくて、俺みたいな大人しいやつを見下してそうな奴はそこまでおらんかったが、それでも昼飯休憩の時間とかはみんな誰かと喋っててうるさかった。
同じ中学同士で喋っとるのは予想できたが、制服が違うのに仲良さそうに喋っとる奴らもいた。
そして、俺も前の席の男に話しかけられたが、
「どこ中?」
「…あ?海野中学校…」
「海野中…?どこだそれ」
「ゆーた!何喋っちょるの?つか誰」
「あ?知らね!つか国語の最後の問題なんて書いたー?」
すぐ会話は終わった。しかも全く仲良くなった気がしない。…これ、高校で独りなりそうじゃね?つか、いじめられる可能性もある。
やっぱ俺にはあの4人しかおらん。
だけど最近学校をサボってる。理由はあの4人のせいだ。嫌いなわけではないか、単にあの4人といると俺の惨めさがさらに感じられ、しんどくなるからだ。
なっちゃんは明るいし、毎晩自分で飯作ってて、自分のしたいことがはっきりしてる。
タクは大人びてて社会性がある。
みさは図々しいほど自尊心が強く、ハキハキしている。
そーちゃんはリーダーシップがあり、面白くて、誰からも愛されるような奴だ。
入試の面接で、自分の長所を言えと言われた。他の奴らは、「何事も諦めない」とか「自分の意見をちゃんと言える」とか言ってる中で、俺は「頭が良いこと」と言った。
みんな、頭が良いからこの高校を受けたのだ。こんな事、他に言った奴おるだろうか。試験官は一瞬たまげた顔をした。
自分の良いところなどあるんだろうか。生きてる意味とかあるんだろうか。
「…死にたい」
思わず声に出た。
何週間かほとんど外に出てなくて、そろそろ外の空気を吸いたくなったため、ふと外に出てみた。
見慣れた海。潮の香り。
俺はよく海野橋に行く。ここからの景色が個人的に一番綺麗だと思う。海に夕日がきらきらと反射している。
もうすぐここから離れないといけない。と思うと、動きたくなかった。夜が更けてもずっとこの橋の手すりにうっかかっていたい。
「とっきー!!」
急に名前を呼ばれてびっくりして振り向いたときには、後ろに倒れていた。
「痛っ~」
みさが俺の下敷きになっていて、急いで立ち上がった。
「え?なんで?」
と言ったら、いきなり叫んできた。
「こっちがなんでだよ!死なないでよ!!」
急にボロボロ泣き出した。
「おいなんで泣いてんだよ!」
「今日は涙腺崩壊してんだよ!」
…そういえば今日みんな釣りしてたんだっけ。そーちゃんから誘われたけど断ったんだった。一体何があったんだ。
なるほど、橋から飛び降り自殺しようとしてたように見えたのか。
「大丈夫だから、ただ海見てただけだから」
そう言ったら、みさは「ほんと?」と泣き止んだ。
「じゃあ、会ったついでに聞くけど、なんで学校来ないの?」
それは事実だ。俺は渋々口を開いた。
「…みんなといるとしんどくなるから」
「嫌いなの…?」
「…嫌いじゃない。けど、何ていうか、俺に良いところがないっていうのを感じちまうっていうか…」
「良いところ?」
なんだかこっちが泣きそうになってきた。
「…あぁ」
「みさはとっきーの良いところ答えれるよ?」
「は?」
「頭良いし、努力家だし、優しくしてくれるし、…」
みさは、俺が面接で答えられんかった長所を沢山挙げてくれた。デタラメではなく、ちゃんと俺の良いとこ悪いとこを知っとる上で言ってくれとるように感じられ、めちゃくちゃ嬉しく感じた。
「ババ抜き強いし、大きい声出せるし…まだ聞く?」
「いやもういい、ありがとう」
俺が笑顔で礼を言うと、みさは顔を赤くして
「あと、笑った顔が可愛い」
と追加で褒めてくれた。
「あははっ」
「とっきー」
「何?」
「みさがいるから。ずっと。みさのこと信じてね」
「…うん、ありがとう。信じる」
「…ずっとだよ?いい?」
「あぁ」
いいよ、と応えたあと、なんかこの会話意味深やなと思った。
「ずっと…、一生、いてくれると?」
そう俺が言ったら、みさも意味に気付いて顔を赤くした。否定もせず、焦っている様子が可愛くて、つい
「俺はいいよ」
と、ぼそっと言った。みさが真っ赤な顔でこっちを見てきた。
「俺、明日から学校行くわ」
「…え?まじ!?」
「みさがおるけん」
「!!!」
みさが照れて何も言えなくなってるのが面白くて、つい吹き出した。…俺、ちょっとSっぽくなってきた?
俺はみさを置いて
「じゃーな!また明日!」
と叫んだ。
もう少し生きててやってもいっかな。
みさもおるし。
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