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しおりを挟む「モブ顔令嬢との婚約など本意ではなかったのでございましょう。平凡な、どこにでもいる、印象に残らない、その他大勢の顔で、フェリクス様のお目汚しとなったこと、心よりお詫び申し上げますわ」
「なっ……」
「あなた様がモブ顔の癖にと私を罵るたび、私は言葉の意味がわからず不安そうな顔をしたり、ときには震えたり、悲しそうな顔をしていました。あなた様はそれを見るたびに愉悦の表情を浮かべていらっしゃいましたね。卑劣な隠語で純粋な令嬢を嬲るのは楽しかったですか?」
理子がニコルに転生したのは、フェリクスとマリーナの浮気現場を見たときだ。その時はまだ、庭園の奥まった木の陰でキスしている程度のものだったが、ニコルはショックを受けて前世を思い出してしまったのだ。
(ニコルはあまりにも純粋培養だったから、フェリクスの浮気を目の当たりにしてショックを受けたけど……そもそも婚約者として丁重に扱われていなかったのよ……)
しかも、ニコルの知らない『モブ』という言葉で、十四歳から十七歳という、一番多感な時期に罵られ続けた。
フェリクスの底意地の悪さには反吐が出る。
「マリーナ。よかったわね。前々から地味な私より美しい自分の方がフェリクス様に似合うのにって主張していたから」
血のつながりの全くない義理の妹であるマリーナは、なぜか唇を噛みしめている。
フェリクスが自分に対して遊びであると、そんなことはマリーナだって理解しているのだ。
単にニコルが悲しむところが見たい、ただそれだけだったのだろう。
(愛だの恋だの浮気だの、ついでに女同士のマウンティングも、私はもうたくさんだっつうの!!)
「では、ごゆっくり」
踵を返し、ニコルは颯爽と部屋をあとにした。
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