【完結】伯爵令嬢は悪役令嬢を応援したい!~サファスレート王国の婚約事情~

佐倉えび

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【番外編】ヒロインの髪がピンクだなんて知らなかった

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 騎士団に着くと、女性の騎士様がわたしに怪我が無いかチェックしてくれた。その間、何度も本当に未遂か確認された。本当は襲われているのに仕事を失うのが怖くて言えない女性が多いのだと言う。

「本当に大丈夫です」
「そうですか、安心しました。この後、お話を聞くために殿方がいらっしゃいますが、お二人とも紳士ですし、私も同席しますので安心して下さい」

 女性騎士様はそう言いながら、わたしの汚れた髪を拭いたあと櫛を通して整え、顔の汚れも優しく拭ってくれた。布が温かくてとても気持ちよかった。
 そうしている内に、黒髪と茶髪の男性が室内に入ってきた。

「こんにちは、レディ。僕はアルフ、こっちはリアム。お名前をお聞きしても?」

 茶色の癖の強い髪の男性はそう言って小首をかしげた。キラキラしていて、とても綺麗な人だ。

「サヤです」
「サヤちゃんね。レディに年齢を聞くなんて失礼なんだけど教えてくれる?」
「十七歳です」

 わたしの年齢に、アルフさんはちょっと驚いた顔をしていた。栄養が行き届いていない体は細く、背も小さいので十七歳に見えなかったのだと思う。

「君のことを救いたいから教えて欲しいんだ。捕らえた店主は君に誘惑されたと言い張っててね」
「アルフ!!」

 アルフさんの言葉を、黒髪のリアムさんが止めた。わたしは自分に何が起きたのか知らなくてはいけないと思ったし、ここでは今日あったことを話すべきだとも思った。
 女性騎士様が出してくれた紅茶を一口飲んでから答えた。

「あの……大丈夫です。騎士様に助けて頂かなければ今頃……なので、本当に感謝しています。あの、わたし、誘惑なんてしてません!」
「うん、そうだよね。ただの確認だから。誘惑なんて店主の戯言で、最初からその気で雇ったって調査済みだから安心してね」

 わたしはホっとして頷いた。
 アルフさんはそれから、ピンク色の髪のことを教えてくれた。

「ちょっと困った小説が流行っちゃってね。婚約破棄小説は知ってる?」
「そのことでパン屋のお嬢さんに叱られました……わたしは字が読めないので本の内容は知らないのですが、表紙にピンク色の髪の綺麗な女の子と、王子様が描いてあるのは見ました」

 アルフさんはうんうん、と頷く。

「その小説は、前世持ちの人が書いたものなんだけど、ピンク色の髪の女性が王子様やその側近と恋仲になって幸せになるっていう内容なんだけどね。それに感化されたピンク色の髪の女の子が自分のことをヒロインだと思って、本当に王子様に近付いちゃったの。ヒロインってわかるかな?」
「なんとなくわかります……」

「うん、なんとなくでいいよ。それでね、困ったことに王子様と本当に恋仲になれたと勘違いして、ちょーっと度が過ぎた言動が増えて見過ごせなくなってね。本当は退学なんだけど、王子様が女性に酷いことはしないでって言うから休学にしたのね。それなのに、その子を養子に迎えていた男爵が王子様を陥落できない女なんか要らないとか言い出して、養子縁組を破棄して実家に戻しちゃったんだよね。それで結局、学費が払えなくなって退学になっちゃってね」

 わたしには少し難しくてわからなかったけれど頷いた。

「マリアって子なんだけど、知ってる?」
「あっ、リリアちゃんのお姉ちゃんですか?」
「そうそう、パン屋の娘に聞いたかな?」

 わたしは頷いた。
 アルフさんは、女性騎士様にお願いしてクッキーも出してくれた。
 食べながら聞いてと言われて素直に口に入れる。初めて食べるクッキーは、とてもホッとする優しい味がした。

「実家に戻されてから、マリアはヒロインは自分だって毎日叫んでいるらしくて、気が触れたっていうのかな、それを見た妹が最近ピンク色の髪で可愛い看板娘がいるっていうパン屋のことを思い出して、パン屋の娘に言ったらしいんだよね。ヒロインはお姉ちゃんなんだから出しゃばるなって」

 子供って怖いよねぇ、とのんびりとした口調でアルフさんが言った。
 リリアちゃんの家は庶民とはいえ、とても大きな商家なのでカナエちゃんからするとかなり辛い状況だったのかも知れない。

「まぁ、これがパン屋で起きたことの真相なんだけど、ここまでは大丈夫?」
「はい」
「了解。それでね、婚約破棄小説だけでも困ってたのに、今度は凌辱小説なんてものが出てきちゃってね」

 わたしの背に嫌な汗が伝った。
 貧困層に住んでいたら、そういう言葉は嫌でも知ってしまう。

「中身は一見、婚約破棄小説なんだけど、ピンク色の髪のヒロインが王子様や側近たちに凌辱されるっていう話でね」
「アルフ、少しはボカせ!」
「え、ボカしようがないじゃん」
「言い方!」
「横暴だなぁ、もう。それでねぇ、そのシーンの描写があまりにもリアルなせいで、読んだ人が下半身拗らせてピンク色の髪の女性に欲情しちゃうみたいなんだよね」

 わたしが唖然としていたら、アルフさんは『それで襲われちゃ敵わないよねぇ~、娯楽が少なすぎるのかなぁ~』と呟いた。リアムさんは頭を抱えていた。

「凌辱小説は、まだ市井でしか流行ってないんだけど、僕たちは上の方々から頼まれて、小説の影響を調査していたのね。で、その調査中に君のことが浮上してきて、これは危ないかもと思って騎士団に見張らせてたんだよね。間に合ってよかったよ」

 アルフさんはそう言って、紅茶のおかわりどうぞ、と新しい物を用意してくれた。
 キラキラしてる上に優しくて、こんな素敵な紳士もいるのだなぁと感心した。

「それで、だ。サヤちゃん、僕に保護されてくれる?」
「はい???」



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