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しおりを挟む危なっかしいなぁ――
それがレイモンドの感じた、ミシェルの第一印象だった。
はちきれんばかりの肉体に美しい金の髪と珍しい桃色の瞳という目立つ容貌の癖に、ひどく無防備で――貴族に妾にされるのは時間の問題だと、レイモンドは初めてミシェルを見たときからそう思っていた。
領収書の件も重なり、お節介にもミシェルの今後を危惧したレイモンドは、彼女についてまわる噂に耳を傾けた。根拠のない悪意に満ちた噂ばかりだったが……。
(出どころを探ってみるか)
レイモンドの得意とするところである。
レイモンドが騎士団の第二隊に所属しているのは弟のロジェの要望からだ。
ロジェは幼いころから大人びた言動が目立つ、扱いにくい弟だった。カヌレ三兄弟はあっという間に上下関係が逆転してしまった。大人びたロジェにやりこめられ、頭の堅い長男のラッセルはいちいち嚙みついていたが、レイモンドはそんな二人を俯瞰して見ていた。
早くから宰相になると豪語していたロジェは、何か重大な使命を持って生まれてきたのではないかと、いつしかレイモンドは考えるようになっていた。
ロジェの発言は常に具体的で、直感と呼ぶにはあまりにも正確だったから。
そのロジェが、そろそろ騎士の仲間入りというレイモンドに対し、第二隊に入って欲しいと伝えてきたのだ。
こんな百九十もある大男に、そんな繊細な潜入捜査がつとまるのか半信半疑だったが、ロジェは何かを確信しているかのように大丈夫だと頷いたのである。
「ロジェが宰相を目指す理由に興味はないが、ロジェの創る未来には興味がある」
そう言ってロジェの提言を受け入れたレイモンドに、ラッセルは苦い顔をした。
なぜ第一隊じゃないのかと言いたいらしい。父がそうであったように、第一隊でのし上がればいずれは騎士団長に昇格できる。カヌレ伯爵家は代々、当主が騎士団長を拝命している。
「そう思うなら今からでも兄貴が第一に入れよ。嫡男なんだし」
「私の剣は第一では通用しない。お前が騎士団長となり、カヌレ伯爵を継ぐのが妥当だろう。素質がある」
「伯爵位なんて面倒なもの、それこそお断りだわ。俺は余ってる子爵位をいただきたいねー。兄貴は近衛騎士団長だろ? 兄貴は自分を過小評価しすぎだよ。兄貴が思ってるより剣の腕も立つし、すでにルーカスもいる。兄貴がカヌレ伯爵家を継ぐのに、なんの憂いもない。親父だってそう思ってるよ」
「しかし……」
「ストップ、この件に関しては議論の余地なし。んじゃ! 入隊先の希望届け出しに行くんで!」
少年時代のラッセルは、四つも下のロジェに剣で負け続けたせいで拗らせ、初めは騎士団第一隊入りする予定だったのに、近衛騎士団へと転換した。家柄と顔だけと呼ばれる近衛騎士に転換するのは、さぞかし屈辱だったことだろう。
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