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しおりを挟む「なんだ」
「どうした?」
二人は驚いた顔をしてアルヤを見上げた。
「婚約の前にお相手の方に会わせて下さい!!」
「それは……」
「えっ?」
「駄目だというなら、私は今から修道院に入ります!!」
「待て、アルヤ!!」
「早まるな、話を聞け!!」
「反対されても入りますからね!? ゴットロープ様と不仲だったのは最初からです!! それに気付いて下さらなかったお二人の意見なんて、私はもう聞きませんから!!」
ふーふーふーと、荒い息を吐きながら、心の中では「とうとう言ってしまった」という後悔に早くも苛まれていた。
元々、争いごとが苦手で、令嬢同士のマウント合戦にも参加せずに生きてきた。
やられてもやりかえさない。
それがアルヤだ。
元々気が弱く、自己主張が苦手で、祖父がクリスティーヌを可愛がっているときも、私を見てなんて言えなかった。
いい子ぶっていたわけでもなく、自分の気持ちを口に出すのが苦手だっただけだ。
「わかった、わかったから早まるな、いいな?」
祖父が座れとばかりに手を上下させてアルヤを落ち着かせようとしている。
「わかって下さったのなら結構です。お会いするのは早い方がいいです。私も修道院の見学がありますので!!」
力強く叫んだものの、手と体はぶるぶる震えている。
見かねたネネが「お嬢様、病み上がりですし、そろそろお部屋へ」と声をかけてくれて助かった。
祖父と父は、アルヤが感情を爆発させたところなど見たことがないので口をぽかんと開けて呆けていた。
アルヤの手を握り、部屋まで一緒に歩いてくれたネネには感謝しかない。
「ネネ、お祖父様とお父様にひどいことを言ってしまったわ……」
震えの止まらないアルヤを優しくベッドまで導いたネネは、子どものころのようにポンポンと横たえたアルヤの体を叩いた。
「ネネはずっともどかしく思っておりましたよ。旦那様たちはお嬢様を大切になさっているのに、お嬢様のお気持ちには少々鈍感でございますから」
くすくす笑ながら小声で「いい薬でございましょう」なんて言う。
「お嬢様もこれからはもっと、ご自分を大切になさってくださいね」
争いを避けていただけで、自分を犠牲にしていたつもりはないが、ネネからはそう見えていたということだろう。
心配をかけたのだなと思い、アルヤは素直に頷いて目を閉じた。
ネネのポンポンが気持ちよくて、いつの間にかアルヤの意識は夢の中へ落ちていた。
* * *
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