虎被りをやめたら文句ばかりだった婚約者がぞっこんになった

王冠

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「マリアもヒューバート様を起こさなきゃ、休み時間終わるよー」
「あ!ヒュー起きて。ねぇ、ヒュー」
「キスしたら起きるんじゃねぇの?」
「こんな所で出来るわけないでしょ!ヒュー!」
「あ、おはようマリア。何かスッキリした」
「昼寝はいいんだぞ!頭に!」


 頭にって良くなってそれか。
 元がたかがしれてるからなぁ。


「おい、失礼な事考えてるだろ」
「いいえ?」


 ほんとかよ、とぶつぶつ言いながら制服を直している。


「さ、もう行きましょう」
「そうね。楽しかったからまたご一緒してもいいかしら?」
「邪魔しないならいいぞ」
「しないわよ、邪魔なんて」


 そんな話をしながら立ち去った後に、人影が1つ。
 じっと仄暗い視線を私たちに送っていた事は、まだ誰も知らない。



「ねぇ、ヴィオ。ジークハルト様といつもあんな感じなの?」


 唐突にマリアがそんな事を聞いて来る。
 ジークハルト様のお昼寝がかなり衝撃だったようだ。
 確かに、今はもうみんな見てるから近寄ってこないけど、初めてお昼寝してるのを見た時は悲鳴が上がってたもんなぁ。
 それで、ジークハルト様が起きちゃって、うるさいってしばらく機嫌が悪かったのよねぇ。私のせいじゃないのに。


「だいたい、いつもあんな感じ。あ、でも最近は文句が減ったかも?要望は増えたけど」
「例えば?」
「んー、歩くときに手を繋ぐとか…、婚約者なら腰を抱くのが普通だ、とか。髪の毛をアップスタイルにするな、とか?」
「ただの独占欲じゃない」
「そんな心配ないのにね、誰も声なんてかけて来ないし」
「あの光景見たらね。かけたくても無理だよね」
「ん?なんて?」
「何でもないわよ」


 マリアはふふっと笑って、そういえば、と何かを思い出したように言った。


「あれからヒューも昼寝したら、調子いいって言ってた。私にも勧めてきたけど、淑女には出来ない相談よね」
「そうね、はしたないし…。それに人前で寝るのはね。無防備な姿を何に襲われるかわからないし、鹿とかね」
「いないわよ、鹿。学園にはいない」
「あ、そうか」
「まだ領地の隅っこで暮らすの諦めてないの?」
「うん、出来ればそうしたいかな。王都は疲れるから」


 というより貴族社会が疲れる。私はのんびりまったりが好きなのだ。


「無理でしょうね、あの様子じゃ」
「え?何が無理なの?」
「ジークハルト様は絶対に婚約破棄なんてしないって思って」
「うーん…猫を脱いだ方がいいみたいだからなぁ。最初の計画はもう無理かな」
「最初の計画?」
「素を晒して幻滅させちゃおう作戦!」
「他の令息ならアリでしょうね」
「でもジークハルト様はそっちがいいって。計画はボツだわ」


 ふぅ、と溜息をついて次の計画を浮かべてみても何も浮かばない。ノックスさんには一方的に好かれてるだけみたいだし。


「あ、そうそう。今度、王族主催のパーティーがあるでしょ?行くよね?」
「ジークハルト様が行くなら参加必須ね」
「貴族は全員参加必須だ、バカ」
「あ、ジークハルト様」


 振り向くと不機嫌そうなジークハルト様がいた。


「顔が怒ってるよ」
「お前が解ってないからだろ。パーティーは基本的に婚約者と出るんだよ、なのにドレスの打ち合わせとかしないのか」
「えー、合わせる必要ある?着たいものを着ればいいじゃない」
「いいわけあるか、このバカ!いつ言ってくるのかと待ってた俺がバカだったわ。先に注文しといて良かった」
「え、注文したの?別にいいのに…」
「俺のメンツを潰す気か。婚約者にドレスの一つも贈らないケチな次期公爵って?婚約者を蔑ろにする非道な奴だって?」


ジークハルト様は眉を吊り上げてぷりぷりと怒っている。


「う…、そこまで考えてなかった。ごめん」
「あぁ、俺は傷付いた!深く傷付いたぞ!これは何かお詫びしてもらわないとなぁ…」
「えー…。そんな繊細じゃないでしょ…」
「心が痛い!!マリアベル嬢、勝敗は?」
「うーん……ジークハルト様かな」
「マリア!?」
「ほらなー。お前の常識はどっかズレてんだよ!」


 それはアンタもね!!!と声を大にして言いたいが、倍になって返ってきそうなのでやめた。





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