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番外編 〜ジークハルトの初恋〜 後編
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彼女を遠くから見つめていると、嫌でも気付く事がある。
彼女に注がれる、男達の熱の籠った視線があまりにも多い事に。
青の貴公子とか言われてる近衛騎士も、彼女に目を奪われている。他にも、あいつも、あいつも、あいつも…。
全て俺の敵だと思った。
こいつらに彼女は渡さない、絶対に。
「ヴィオ!そのドレス綺麗ね!」
ピクリと耳が反応する。
ヴィオレット…その名を呼ぶ許可を貰えるだろうか。
さっき、知り合ったばかりの俺が、彼女の名を呼べるようになるまでにどれくらいかかるだろう。
でも、その地位を手に入れてみせる。
どんなに鉄壁でも崩してやる。
そう誓った。
友人と話をしている彼女は、先ほど挨拶した時よりも幼く見える。あの屈託ない笑顔を俺に向けて欲しい。
そして、俺だけを見て欲しい。
覚悟が決まれば、と親父に言われた。
とうに心は決まっている。
パーティーが終わり帰りの馬車で、親父に告げた。
「俺は彼女以外は愛せない」
あんなに驚いた親父と母の顔を初めて見た。
でも堕ちたんだ。
彼女に。
ヴィオレットだけに。
「ヴィーに初めて会った時の夢を見た」
昼寝から目が覚めて、濃い目のお茶を入れてくれる彼女にそう告げた。
「デビュタントだったんでしょう?私は余り覚えてないけど」
「だろうな、興味なさそうな感じだったし」
「ちょっと、拗ねないでよ」
さらりと髪を撫でられる。
彼女の困ったような笑顔が好きだ。
困らせるのはだいたい俺だから。
「でも、婚約したのはデビュタントから半年くらい経ってからよね?他のご令嬢も物色してたの?」
「んなわけあるか。お義父さんと、お義兄さんが許してくれなかったんだよ。キャンベル邸に行くことも、パーティーとかで話しかける事も」
「え!?そうなの!?」
「そ。2人の許可なしで接触したら即退場。惚れさせる以外にも条件がいくつかあって」
「うわぁ…た、大変だったね…。ごめんね?」
「ヴィーと婚約できるなら、そんな事くらい何でもない。でも…」
「でも?」
「会いたいし話したいし触れたいしで、精神やられるかと思った」
じっと彼女を見つめると面白い程に顔が赤くなる。
こんな顔も見れるのは俺だけ。
「良かった、ハルトが壊れないでいてくれて」
「もーダメだ会いたいってお義父さんに直談判に行ったら、書類が出てきて、ゼノシス公爵と一緒にうちに来なさいって言ってもらえたんだ」
「お父様ったら…」
「すげー嬉しくて、思わずお義父さんの前で泣いた」
「嘘!!?」
「ホント。その後、ヴィオレットを泣かしたら許さないって寒気がする程の殺気向けられたけどな」
「怖!!」
彼女がぶるっと身震いをする姿もまた可愛い。
「そうまでして、好きでいてくれてありがとう」
ちゅっとキスを落として照れる彼女にまた惚れて。
「俺が生まれて初めて好きになった女がヴィーで、死んでも好きな女がヴィーだ」
「ハルト…嬉しい…」
うる、と揺れる深紫の瞳に俺が映っている。
初恋は実らないって言うけど、そうだなって納得した。
初恋が毎日更新されて行くから、永遠に実るわけがない。
1つ言うならば、あの日の俺、良くやった!かな。
彼女に注がれる、男達の熱の籠った視線があまりにも多い事に。
青の貴公子とか言われてる近衛騎士も、彼女に目を奪われている。他にも、あいつも、あいつも、あいつも…。
全て俺の敵だと思った。
こいつらに彼女は渡さない、絶対に。
「ヴィオ!そのドレス綺麗ね!」
ピクリと耳が反応する。
ヴィオレット…その名を呼ぶ許可を貰えるだろうか。
さっき、知り合ったばかりの俺が、彼女の名を呼べるようになるまでにどれくらいかかるだろう。
でも、その地位を手に入れてみせる。
どんなに鉄壁でも崩してやる。
そう誓った。
友人と話をしている彼女は、先ほど挨拶した時よりも幼く見える。あの屈託ない笑顔を俺に向けて欲しい。
そして、俺だけを見て欲しい。
覚悟が決まれば、と親父に言われた。
とうに心は決まっている。
パーティーが終わり帰りの馬車で、親父に告げた。
「俺は彼女以外は愛せない」
あんなに驚いた親父と母の顔を初めて見た。
でも堕ちたんだ。
彼女に。
ヴィオレットだけに。
「ヴィーに初めて会った時の夢を見た」
昼寝から目が覚めて、濃い目のお茶を入れてくれる彼女にそう告げた。
「デビュタントだったんでしょう?私は余り覚えてないけど」
「だろうな、興味なさそうな感じだったし」
「ちょっと、拗ねないでよ」
さらりと髪を撫でられる。
彼女の困ったような笑顔が好きだ。
困らせるのはだいたい俺だから。
「でも、婚約したのはデビュタントから半年くらい経ってからよね?他のご令嬢も物色してたの?」
「んなわけあるか。お義父さんと、お義兄さんが許してくれなかったんだよ。キャンベル邸に行くことも、パーティーとかで話しかける事も」
「え!?そうなの!?」
「そ。2人の許可なしで接触したら即退場。惚れさせる以外にも条件がいくつかあって」
「うわぁ…た、大変だったね…。ごめんね?」
「ヴィーと婚約できるなら、そんな事くらい何でもない。でも…」
「でも?」
「会いたいし話したいし触れたいしで、精神やられるかと思った」
じっと彼女を見つめると面白い程に顔が赤くなる。
こんな顔も見れるのは俺だけ。
「良かった、ハルトが壊れないでいてくれて」
「もーダメだ会いたいってお義父さんに直談判に行ったら、書類が出てきて、ゼノシス公爵と一緒にうちに来なさいって言ってもらえたんだ」
「お父様ったら…」
「すげー嬉しくて、思わずお義父さんの前で泣いた」
「嘘!!?」
「ホント。その後、ヴィオレットを泣かしたら許さないって寒気がする程の殺気向けられたけどな」
「怖!!」
彼女がぶるっと身震いをする姿もまた可愛い。
「そうまでして、好きでいてくれてありがとう」
ちゅっとキスを落として照れる彼女にまた惚れて。
「俺が生まれて初めて好きになった女がヴィーで、死んでも好きな女がヴィーだ」
「ハルト…嬉しい…」
うる、と揺れる深紫の瞳に俺が映っている。
初恋は実らないって言うけど、そうだなって納得した。
初恋が毎日更新されて行くから、永遠に実るわけがない。
1つ言うならば、あの日の俺、良くやった!かな。
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