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「あ、ティアラ!どこに行ってたんだ?探したぞ」
「お姉様ったら、主役が消えるなんてダメよ?」
…貴方達の逢瀬を見たから足が動かなかったの、ごめんなさいね?
そう言えたら、楽になるのだろうか。
「ごめんなさいね、少し風に当たっていたのよ」
「外にいたのか?言ってくれたら一緒に行くのに」
「会場の熱気、凄いものね」
一緒に?無理でしょう?貴方はアリーシャといたのだから。
「そうね、私、お手洗いに行って来るわね」
「あぁ」
「早く帰って来てね!」
「えぇ」
私は足早にお手洗いに向かった。あの二人の前で笑っていられる自信がなかったから。彼らは何故、あんな自然にいられるのだろうか。私には理解できない。
「いつから……騙されていたのかしらね……」
ぽつりと呟いた後、酷く吐き気がしたが涙は出て来なかった。ただ、心が凍りつくように冷たくなっただけ。
鏡に映った自分を見たら、顔色が悪いなと思わず苦笑した。リュダールが好きだと言ってくれた心からの笑顔はもう見せられそうにない。
「私と、アリーシャなら…そりゃアリーシャを選ぶわよね…」
鏡の中の疲れた女に話しかける。昔から姉妹で比べられたら、可愛いのはアリーシャの方。私はお父様似で、キャラメル色の髪に紫色の瞳で、可もなく不可もないような脇役その一レベル。対してアリーシャはお母様似で蜂蜜色の髪に、薄ピンク色の瞳を持つ、庇護欲をそそる可愛らしさ…間違いなくヒロインレベルなのだ。
姉妹なのに、イメージが違うね!は言われ慣れた貶し文句でしかない。既に理解している事を敢えて口にする人達はたくさんいる。
そんな中で私がいいと、笑顔を守りたいと言ってくれたのはリュダールだけだった。自分が初めて心から好きになった人…銀髪に青灰色の幻想的な容姿の彼に言い寄る令嬢達を押しのけて、そう言ってくれたから、その日から少しだけ自分に自信が持てたのに。
「…結局……同じだったって事かしらね…」
鏡の中の女は、眉を下げて笑っている。何とも言えない物悲しげな表情で。
「大丈夫、まだそうだと決まったわけじゃないわ。好きだと…言ってくれたもの…」
嘘かも知れないその言葉に、今は縋りたかった。
私はしばらく自問自答を繰り返し、漸く淑女の仮面を被り直せた。
「あ、お姉様!いたー」
「、どうしたの?何かあった?」
「リュダールがお姉様が遅いって心配して見に行ったわよー?」
「あら、そうなの?ちょっとお化粧を直してたの」
「あっ!帰って来た!リュダール!お姉様いたわよ!」
可愛らしい笑みで手を振るアリーシャを見ながら、私は震えそうになる手を握りしめた。出来るなら、あれは一体なんだったの?バレたら大変って、何が?と二人を問い詰めたい。
けれど、それで、二人は愛し合っているんだと聞かされたら。
「………」
そう思うだけで、仮説を思い浮かべるだけでギリギリと胸が締め付けられる。でも、それでも…。
二人が私に隠れて会っているのは確かなのだ。
後ろめたい事がないなら、堂々と会えば良い。今みたいに手を振り合って、仲良さげに。実際仲は良いのだから。
「ティアラ!心配で見に行ってたんだ!」
「まぁ、リュダールったら、自分の家の中で迷子にはならないわよ?」
「でも、ほら。今日は特別な日だし、攫われたら困るから」
ぽっと頬を赤くして、リュダールが呟く。さっきまでの私なら飛び上がるくらい嬉しくて泣いていたかもしれない。でも…ある意味特別な日のせいで、まったく感動しないわ。どちらかと言うと、攫われた方が都合が良いんじゃない?と悪く取ってしまう。
「ふふ…リュダールったら…」
「もう!見せつけないでよ!!二人はいつも私の前でイチャイチャして!」
笑いながらそう言えるのは、本当は自分が愛されていると知っているからなの?私は今、必死で笑っていると言うのに。
「お姉様ったら、主役が消えるなんてダメよ?」
…貴方達の逢瀬を見たから足が動かなかったの、ごめんなさいね?
そう言えたら、楽になるのだろうか。
「ごめんなさいね、少し風に当たっていたのよ」
「外にいたのか?言ってくれたら一緒に行くのに」
「会場の熱気、凄いものね」
一緒に?無理でしょう?貴方はアリーシャといたのだから。
「そうね、私、お手洗いに行って来るわね」
「あぁ」
「早く帰って来てね!」
「えぇ」
私は足早にお手洗いに向かった。あの二人の前で笑っていられる自信がなかったから。彼らは何故、あんな自然にいられるのだろうか。私には理解できない。
「いつから……騙されていたのかしらね……」
ぽつりと呟いた後、酷く吐き気がしたが涙は出て来なかった。ただ、心が凍りつくように冷たくなっただけ。
鏡に映った自分を見たら、顔色が悪いなと思わず苦笑した。リュダールが好きだと言ってくれた心からの笑顔はもう見せられそうにない。
「私と、アリーシャなら…そりゃアリーシャを選ぶわよね…」
鏡の中の疲れた女に話しかける。昔から姉妹で比べられたら、可愛いのはアリーシャの方。私はお父様似で、キャラメル色の髪に紫色の瞳で、可もなく不可もないような脇役その一レベル。対してアリーシャはお母様似で蜂蜜色の髪に、薄ピンク色の瞳を持つ、庇護欲をそそる可愛らしさ…間違いなくヒロインレベルなのだ。
姉妹なのに、イメージが違うね!は言われ慣れた貶し文句でしかない。既に理解している事を敢えて口にする人達はたくさんいる。
そんな中で私がいいと、笑顔を守りたいと言ってくれたのはリュダールだけだった。自分が初めて心から好きになった人…銀髪に青灰色の幻想的な容姿の彼に言い寄る令嬢達を押しのけて、そう言ってくれたから、その日から少しだけ自分に自信が持てたのに。
「…結局……同じだったって事かしらね…」
鏡の中の女は、眉を下げて笑っている。何とも言えない物悲しげな表情で。
「大丈夫、まだそうだと決まったわけじゃないわ。好きだと…言ってくれたもの…」
嘘かも知れないその言葉に、今は縋りたかった。
私はしばらく自問自答を繰り返し、漸く淑女の仮面を被り直せた。
「あ、お姉様!いたー」
「、どうしたの?何かあった?」
「リュダールがお姉様が遅いって心配して見に行ったわよー?」
「あら、そうなの?ちょっとお化粧を直してたの」
「あっ!帰って来た!リュダール!お姉様いたわよ!」
可愛らしい笑みで手を振るアリーシャを見ながら、私は震えそうになる手を握りしめた。出来るなら、あれは一体なんだったの?バレたら大変って、何が?と二人を問い詰めたい。
けれど、それで、二人は愛し合っているんだと聞かされたら。
「………」
そう思うだけで、仮説を思い浮かべるだけでギリギリと胸が締め付けられる。でも、それでも…。
二人が私に隠れて会っているのは確かなのだ。
後ろめたい事がないなら、堂々と会えば良い。今みたいに手を振り合って、仲良さげに。実際仲は良いのだから。
「ティアラ!心配で見に行ってたんだ!」
「まぁ、リュダールったら、自分の家の中で迷子にはならないわよ?」
「でも、ほら。今日は特別な日だし、攫われたら困るから」
ぽっと頬を赤くして、リュダールが呟く。さっきまでの私なら飛び上がるくらい嬉しくて泣いていたかもしれない。でも…ある意味特別な日のせいで、まったく感動しないわ。どちらかと言うと、攫われた方が都合が良いんじゃない?と悪く取ってしまう。
「ふふ…リュダールったら…」
「もう!見せつけないでよ!!二人はいつも私の前でイチャイチャして!」
笑いながらそう言えるのは、本当は自分が愛されていると知っているからなの?私は今、必死で笑っていると言うのに。
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