26 / 45
25
「ゆっくりですよ、ティアラ様」
「はい!リーン様!」
リーン様の助言通りにしていると、竿先につんつんとアタリがあった。
まだ!まだダメ!いつもここで竿を上げちゃって失敗したじゃない!!待つのよ、私!!
ぐっと我慢をして、待ちの姿勢を保っていたら突如竿が強い力で引かれた。
「今!竿を立てて!!」
「はいっ!!」
ぐぐぐ…と海に引き摺り込まれそうな力が持った竿から伝わる。私は足に力を入れて必死で耐えた。
「ティアラ様!やりましたよ!ターイです!」
「くっ…凄い力…っ!!」
「俺も手伝います!!」
「お願いします!」
リーン様は私の背後から手を回し、一緒に竿を上げてくれる。ターイは逃げ切りたいのか暴れ回って沖に行こうと力強く引っ張っていく。
「ティアラ様!行きますよ!これかなりデカいですよ!」
「絶対釣り上げるわ!!」
「じゃあ、せーのっ!!!」
「きゃあっ!!」
どすんという音と、どん!という音が響き、私は何が起きたのか一瞬わからなかった。ただ、勢い余って転けたという事はわかるのだが。少しの間、ぽかんとしたがはっとした私は叫ぶ。
「モニカ!!ターイを!!」
「すでに捕らえてございます!お嬢様!!」
「さすがモニカ!!!」
「当然です!!」
私は起きあがろうと手をついた。すると、硬くて温かいものが私の下にある事に気付く。そっと顔を上げると、そこには真っ赤になったリーン様の美しい顔があった。
「わぁっ!!リ、リーン様っ!!あっ!!すみません私…!!」
なんと、私はリーン様の上に乗っかっていたのだ。ターイを釣り上げた拍子にバランスを崩した私を抱き締めて庇ってくれていた。急いでリーン様の上から降りたが、パニックになって言葉が出て来ない。
「わ、私…何て事を…!」
あわあわと慌てる私を支えながら、リーン様は「怪我はないですか?」と優しく立たせてくれた。
怪我はない、怪我はないけれども淑女としての何かが完全に壊れたわ!!私ったら何してるの!!
「どこか痛い所が!?」
「え、は、あの…ない!ないです!!」
「あ…良かった」
「はい…すみません…」
慌てたように聞くリーン様の真剣な表情を見て、ぷしゅうぅぅと音が聞こえそうなほどに熱くなる私の顔。思わず両手で顔を覆った。
恥ずかしすぎる。これは人生でトップクラスに入る恥ずかしさだ。
「ちょっと転けちゃいましたけど、見て下さい。かなり大物のターイですよ」
リーン様は何もなかったように普通に話しかけてくる。もう顔も赤くない。うぅ、私だけが真っ赤なままなんて…気まずいわ…。そう思いつつ、モニカの方に目をやると私は驚きで固まってしまった。
「お嬢様!おめでとうございます!とても大きなターイですよ!」
またしても赤子を産んだかのような掛け声に笑いそうになりつつも、モニカが手にしているターイから目が離せない。それは、私の顔二個分の大きさだったからだ。
「…わ…!こ、これ……わ、私が!?」
「そうですよ!お嬢様!とても立派で重いです!」
「陸からこのサイズが釣れるなんて…あの仕掛け…売れるな」
リーン様はキランと目を輝かせ、ぶつぶつと計算を始めている。あぁ…完全に商人の目だわ…と原価の計算をしだしたリーン様を見て笑った。
「これは食べ応えがありそうね!」
「奥様にもお出ししましょうね!」
「もちろん!!」
きゃっきゃとはしゃいでいる私達の横で、リーン様は「よし、これで行こう」と満足げな顔をしていた。制作から売り出しまでの計画が出来上がったらしい。
「リーン様、ありがとうございます!あんな大きなターイを私が釣る事ができたのはリーン様のおかげですわ!!」
「いやいや、俺は上げるのを手伝っただけだよ。ティアラ様の腕がいいんだ」
「まぁ!リーン様ったら!!」
笑いながらリーン様を見ると、目がばっちりあってさっきの光景を思い出した。お互いにぼっと頬が染まる。
「あ、あの…支えて頂いてありがとうございます。リーン様はお怪我はありませんか?」
「あ…ない、です」
しーん、私達は何とも言えない雰囲気に黙ってしまった。
「あら、芽生え~ですか?」
「やだ!釣りの才能なんて芽生えてないわよ!」
「あ、そっち行っちゃったんですね」
「え?」
「いえ、何でもないです」
モニカがさっさとターイを網に入れて帰り支度をしだした。早く料理長に渡したいんだろうなと思い、私も支度をする。
「リーン様、私達はもう帰りますね。今日は本当にありがとうございました」
「いえ、こちらこそ。仕掛けの試作で大物が釣れる事を証明して頂きありがとうございました」
「ふふふ…お役に立てて良かったです。では、ご機嫌よう」
ご機嫌な私とモニカはリーン様に挨拶をして、話をしながら屋敷に帰った。
この時、私は知らなかったのだ。
一部始終をじっと見ている人がいる事も、リーン様が蹲って「マジかよ」と赤くなっていた事も。
「はい!リーン様!」
リーン様の助言通りにしていると、竿先につんつんとアタリがあった。
まだ!まだダメ!いつもここで竿を上げちゃって失敗したじゃない!!待つのよ、私!!
ぐっと我慢をして、待ちの姿勢を保っていたら突如竿が強い力で引かれた。
「今!竿を立てて!!」
「はいっ!!」
ぐぐぐ…と海に引き摺り込まれそうな力が持った竿から伝わる。私は足に力を入れて必死で耐えた。
「ティアラ様!やりましたよ!ターイです!」
「くっ…凄い力…っ!!」
「俺も手伝います!!」
「お願いします!」
リーン様は私の背後から手を回し、一緒に竿を上げてくれる。ターイは逃げ切りたいのか暴れ回って沖に行こうと力強く引っ張っていく。
「ティアラ様!行きますよ!これかなりデカいですよ!」
「絶対釣り上げるわ!!」
「じゃあ、せーのっ!!!」
「きゃあっ!!」
どすんという音と、どん!という音が響き、私は何が起きたのか一瞬わからなかった。ただ、勢い余って転けたという事はわかるのだが。少しの間、ぽかんとしたがはっとした私は叫ぶ。
「モニカ!!ターイを!!」
「すでに捕らえてございます!お嬢様!!」
「さすがモニカ!!!」
「当然です!!」
私は起きあがろうと手をついた。すると、硬くて温かいものが私の下にある事に気付く。そっと顔を上げると、そこには真っ赤になったリーン様の美しい顔があった。
「わぁっ!!リ、リーン様っ!!あっ!!すみません私…!!」
なんと、私はリーン様の上に乗っかっていたのだ。ターイを釣り上げた拍子にバランスを崩した私を抱き締めて庇ってくれていた。急いでリーン様の上から降りたが、パニックになって言葉が出て来ない。
「わ、私…何て事を…!」
あわあわと慌てる私を支えながら、リーン様は「怪我はないですか?」と優しく立たせてくれた。
怪我はない、怪我はないけれども淑女としての何かが完全に壊れたわ!!私ったら何してるの!!
「どこか痛い所が!?」
「え、は、あの…ない!ないです!!」
「あ…良かった」
「はい…すみません…」
慌てたように聞くリーン様の真剣な表情を見て、ぷしゅうぅぅと音が聞こえそうなほどに熱くなる私の顔。思わず両手で顔を覆った。
恥ずかしすぎる。これは人生でトップクラスに入る恥ずかしさだ。
「ちょっと転けちゃいましたけど、見て下さい。かなり大物のターイですよ」
リーン様は何もなかったように普通に話しかけてくる。もう顔も赤くない。うぅ、私だけが真っ赤なままなんて…気まずいわ…。そう思いつつ、モニカの方に目をやると私は驚きで固まってしまった。
「お嬢様!おめでとうございます!とても大きなターイですよ!」
またしても赤子を産んだかのような掛け声に笑いそうになりつつも、モニカが手にしているターイから目が離せない。それは、私の顔二個分の大きさだったからだ。
「…わ…!こ、これ……わ、私が!?」
「そうですよ!お嬢様!とても立派で重いです!」
「陸からこのサイズが釣れるなんて…あの仕掛け…売れるな」
リーン様はキランと目を輝かせ、ぶつぶつと計算を始めている。あぁ…完全に商人の目だわ…と原価の計算をしだしたリーン様を見て笑った。
「これは食べ応えがありそうね!」
「奥様にもお出ししましょうね!」
「もちろん!!」
きゃっきゃとはしゃいでいる私達の横で、リーン様は「よし、これで行こう」と満足げな顔をしていた。制作から売り出しまでの計画が出来上がったらしい。
「リーン様、ありがとうございます!あんな大きなターイを私が釣る事ができたのはリーン様のおかげですわ!!」
「いやいや、俺は上げるのを手伝っただけだよ。ティアラ様の腕がいいんだ」
「まぁ!リーン様ったら!!」
笑いながらリーン様を見ると、目がばっちりあってさっきの光景を思い出した。お互いにぼっと頬が染まる。
「あ、あの…支えて頂いてありがとうございます。リーン様はお怪我はありませんか?」
「あ…ない、です」
しーん、私達は何とも言えない雰囲気に黙ってしまった。
「あら、芽生え~ですか?」
「やだ!釣りの才能なんて芽生えてないわよ!」
「あ、そっち行っちゃったんですね」
「え?」
「いえ、何でもないです」
モニカがさっさとターイを網に入れて帰り支度をしだした。早く料理長に渡したいんだろうなと思い、私も支度をする。
「リーン様、私達はもう帰りますね。今日は本当にありがとうございました」
「いえ、こちらこそ。仕掛けの試作で大物が釣れる事を証明して頂きありがとうございました」
「ふふふ…お役に立てて良かったです。では、ご機嫌よう」
ご機嫌な私とモニカはリーン様に挨拶をして、話をしながら屋敷に帰った。
この時、私は知らなかったのだ。
一部始終をじっと見ている人がいる事も、リーン様が蹲って「マジかよ」と赤くなっていた事も。
あなたにおすすめの小説
幼馴染が最優先な婚約者など、私の人生には不要です。
たると
恋愛
シュタイン伯爵家の長女エルゼは、公爵子息フィリップに恋をしていた。
彼の婚約者として選ばれた時は涙を流して喜んだが、その喜びもいまは遠い。
『君は一人でも大丈夫だろう。この埋め合わせは必ずする。愛している』
「……『愛している』、ですか」
いつも幼馴染を優先するアルベルトに、恋心はすっかり冷めてしまった。
幼馴染しか見えない婚約者と白い結婚したので、夜明け前にさよならしました
ゆぷしろん
恋愛
公爵令嬢レティシアは、家同士の都合で伯爵アルフレッドに嫁ぐ。
けれど夫は結婚後もずっと幼馴染のシルヴィばかりを優先し、婚礼の夜から夫婦として触れ合おうともしなかった。名ばかりの妻として伯爵家を支え、領地経営まで立て直しても、彼にとってレティシアは“都合のいい伯爵夫人”でしかない。
やがて結婚一周年の夜、アルフレッドが自分を手放す気はない一方で、幼馴染を屋敷に迎え入れようとしている会話を聞いてしまったレティシアは、ついに決意する。
――もう、この結婚には見切りをつけよう。
夜明け前、彼女は離縁の準備を整え、伯爵邸を出奔。
身を寄せた北の港町で薬舗を手伝いながら、自分の力で生きる穏やかな日々を手に入れていく。そこで出会ったのは、身分ではなく一人の女性として彼女を尊重してくれる青年医師ノアだった。
一方、都合よく尽くしてくれる妻を失ったアルフレッドは、ようやく自分が何を失ったのかを思い知ることになる。
幼馴染ばかりを優先する婚約者との白い結婚に終止符を打ち、傷ついた公爵令嬢が新天地で本当の幸せを掴む、離縁から始まる逆転ラブストーリー。
【完結】ご安心を、2度とその手を求める事はありません
ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・
それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望
愛する夫が目の前で別の女性と恋に落ちました。
ましゅぺちーの
恋愛
伯爵令嬢のアンジェは公爵家の嫡男であるアランに嫁いだ。
子はなかなかできなかったが、それでも仲の良い夫婦だった。
――彼女が現れるまでは。
二人が結婚して五年を迎えた記念パーティーでアランは若く美しい令嬢と恋に落ちてしまう。
それからアランは変わり、何かと彼女のことを優先するようになり……
私と幼馴染と十年間の婚約者
川村 あかり
恋愛
公爵令嬢ロゼリアは、王子アルベルトとの婚約を結んでいるが、彼の心は無自覚に幼馴染のミナに奪われていた。ミナの魔法【魅了】が無意識に周りの男性を狂わせ、アルベルトもその例外ではない。
それぞれが生まれつき得意な魔法があり、ロゼリアは見たものや聞いたものを完璧に記録できる【記録・再生】の魔法を持ち、二人の関係に耐えきれず胃の痛みに悩む日々。そんな中、彼女の唯一の理解者の冷静沈着なキースや毒舌のマリーが心の支えとなる。
アルベルトの側近であるガストンは、魔法【増幅】で騒動を盛り上げる一方、ミナの友人リリィは【幻影】の魔法を使ってロゼリアを貶めようと画策する。
婚約者と幼馴染の行動に振り回されるロゼリア。魔法が絡んだ恋愛模様の中で、彼女は本当の愛を見つけられるのか?
王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?
いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、
たまたま付き人と、
「婚約者のことが好きなわけじゃないー
王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」
と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。
私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、
「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」
なんで執着するんてすか??
策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー
基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。
他小説サイトにも投稿しています。
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。