30 / 45
29 リュダール視点
しおりを挟む
「……ティアラは今、海に行っている。会いに行っても良いが、婚約者だった頃の距離は許さない」
「っ!はいっ!!ありがとうございます!!」
シャリエ様がどこか呆れた様に教えてくれた。お義母さんはこめかみを押さえて目を閉じていた。でも、許可が出た!!ティアラに会える!!俺はすぐさま海に向かった。
「海…に何をしに行ってるんだろう…」
俺の両足が早く早くと急かす様に早く動く。すると漁師たちが大きな声で話をしているのが聞こえた。
「謎の美女が釣りしてるからって最近はあの界隈は人で溢れてるらしいぜ!」
「あぁ、今度はスズーキン狙うってお付きの女が言ってたな!」
「ははっ!あの細腕で上げられるもんか!」
「いや、リーンが付いてるからな!わかんねぇぞ!」
お付きの女…謎の美女…。一瞬でティアラの事だと思った。俺はすぐに場所を聞きに行こうとしたが、その後で出て来たリーンって誰だ。ティアラはそいつと釣りをしてるって事か!?
「ほらほら、今日も男どもがお近付きになろうと列をなしてる!」
「しかし相手にされねぇんじゃしょーがねーよな!」
「そりゃ隣にリーンがいたら仕方ねぇよ!!」
「あの色男には勝てねぇよな!」
わっはっは!!と大声で笑う漁師の声が耳に絡みついて離れない。ティアラが…もし…いや、考えたくない。
「…確かめないと」
俺は走り出した。あの男達についていけば、ティアラのいる場所に辿り着ける。ぞろぞろと彼らが歩くのを急かしてやりたい気持ちになりながら、どこか見たくない気持ちも生まれて。
「勘違いであってくれ…」
無意識にそう呟いた。彼らが見ている先に視線を移せば、ずっと焦がれていた愛しい彼女がはしゃぎながら歩いていくのが見える。お付きの女とはやはりモニカだ。そして、その先には真っ赤な髪の男がいて、魚を釣り上げている最中だった。
「ティアラ…やっと…」
会える、と思った矢先…ティアラとその男が笑顔で何かを話している。ここじゃ声が聞こえない。俺は回り込んで会話もかろうじて聞こえる場所に移動した。近付くにつれ、聞こえてくるずっと聞きたかった声。
「ティアラ様!やりましたよ!ターイです!」
「くっ…凄い力…っ!!」
「俺も手伝います!!」
「お願いします!」
えっ…と思った瞬間に、男は慣れたようにティアラの背後に回りその手をティアラの手に重ねた。ドクンと心臓が跳ねる。
「ティアラ様!行きますよ!これかなりデカいですよ!」
「絶対釣り上げるわ!!」
「じゃあ、せーのっ!!!」
「きゃあっ!!」
バランスを崩した二人はそのまま倒れ込んだ。男はティアラの頭を庇って抱き込み、自分が下になるように上手く受け身を取った。
「あっ…!」
思わず声を出してしまう。アクシデントだから仕方ないとは言え、ティアラはあの男に抱き締められていた。腹の奥からぞわりと湧き出る黒い感情が俺を絡め取っていく。ティアラは魚の心配をしているが、頼むからそいつから早く離れてくれ!!ギリギリと奥歯が軋んだ。
「わぁっ!!リ、リーン様っ!!あっ!!すみません私…!!」
聞こえた声にふと我に帰り、二人を見ると…。
「な…んだ…あれ…」
俺は呆然とそれを見ていた。
はっ…はっ…と荒くなる呼吸を落ち着かせようと胸に手を当ててみても意味がなかった。
二人は頬を赤く染めて、まるで想いを告げあった直後みたいに見えた。
「…嘘…だろ…」
錆びた刃で何度も切り付けられたような、ぐりぐりとそこを抉られる様な…そんな思い。一気に煮えたぎる嫉妬心がぐつぐつと腹を巡る。
「あ……」
笑い合う二人を見るのが辛くて目を逸らそうとした時、ティアラはこんな思いをずっと抱えていたのかと今更気付いた。俺は、ただのアクシデントでもこんなに痛いのに…。隠れて…偶然じゃなく必然にしていた自分は…。
「最低だ…俺……」
謝って済むか…?いや…済まない、済ましちゃいけない。でも…離れたくない。ダメだ、それは俺の要望だ。ティアラの希望を最優先にしなきゃ…でも…会いたい…話したい…違う、ダメだダメだ!!
せめぎ合う二つの思いが見え隠れする。
「俺に選択肢なんてない」
ティアラはこの痛く苦しい気持ちをずっと持ったまま、俺にもアリーシャにも気を配って生活をしていた。ならば、俺は…?ティアラの為に何ができる?
「…話す事さえも…嫌がられるかな…」
モニカと共だって歩いて行くティアラをちゃんと見たいのに涙が浮かんでそれも出来ない。
「ほんと…俺…情けね…」
ずるずると木の下に座り込んだ俺は雲一つない空を見上げるしか出来なかった。燦々と照り付ける太陽に、「馬鹿は燃えてしまえ」と言われている気がした。
俺に傷付く資格なんてないのに。
「っ!はいっ!!ありがとうございます!!」
シャリエ様がどこか呆れた様に教えてくれた。お義母さんはこめかみを押さえて目を閉じていた。でも、許可が出た!!ティアラに会える!!俺はすぐさま海に向かった。
「海…に何をしに行ってるんだろう…」
俺の両足が早く早くと急かす様に早く動く。すると漁師たちが大きな声で話をしているのが聞こえた。
「謎の美女が釣りしてるからって最近はあの界隈は人で溢れてるらしいぜ!」
「あぁ、今度はスズーキン狙うってお付きの女が言ってたな!」
「ははっ!あの細腕で上げられるもんか!」
「いや、リーンが付いてるからな!わかんねぇぞ!」
お付きの女…謎の美女…。一瞬でティアラの事だと思った。俺はすぐに場所を聞きに行こうとしたが、その後で出て来たリーンって誰だ。ティアラはそいつと釣りをしてるって事か!?
「ほらほら、今日も男どもがお近付きになろうと列をなしてる!」
「しかし相手にされねぇんじゃしょーがねーよな!」
「そりゃ隣にリーンがいたら仕方ねぇよ!!」
「あの色男には勝てねぇよな!」
わっはっは!!と大声で笑う漁師の声が耳に絡みついて離れない。ティアラが…もし…いや、考えたくない。
「…確かめないと」
俺は走り出した。あの男達についていけば、ティアラのいる場所に辿り着ける。ぞろぞろと彼らが歩くのを急かしてやりたい気持ちになりながら、どこか見たくない気持ちも生まれて。
「勘違いであってくれ…」
無意識にそう呟いた。彼らが見ている先に視線を移せば、ずっと焦がれていた愛しい彼女がはしゃぎながら歩いていくのが見える。お付きの女とはやはりモニカだ。そして、その先には真っ赤な髪の男がいて、魚を釣り上げている最中だった。
「ティアラ…やっと…」
会える、と思った矢先…ティアラとその男が笑顔で何かを話している。ここじゃ声が聞こえない。俺は回り込んで会話もかろうじて聞こえる場所に移動した。近付くにつれ、聞こえてくるずっと聞きたかった声。
「ティアラ様!やりましたよ!ターイです!」
「くっ…凄い力…っ!!」
「俺も手伝います!!」
「お願いします!」
えっ…と思った瞬間に、男は慣れたようにティアラの背後に回りその手をティアラの手に重ねた。ドクンと心臓が跳ねる。
「ティアラ様!行きますよ!これかなりデカいですよ!」
「絶対釣り上げるわ!!」
「じゃあ、せーのっ!!!」
「きゃあっ!!」
バランスを崩した二人はそのまま倒れ込んだ。男はティアラの頭を庇って抱き込み、自分が下になるように上手く受け身を取った。
「あっ…!」
思わず声を出してしまう。アクシデントだから仕方ないとは言え、ティアラはあの男に抱き締められていた。腹の奥からぞわりと湧き出る黒い感情が俺を絡め取っていく。ティアラは魚の心配をしているが、頼むからそいつから早く離れてくれ!!ギリギリと奥歯が軋んだ。
「わぁっ!!リ、リーン様っ!!あっ!!すみません私…!!」
聞こえた声にふと我に帰り、二人を見ると…。
「な…んだ…あれ…」
俺は呆然とそれを見ていた。
はっ…はっ…と荒くなる呼吸を落ち着かせようと胸に手を当ててみても意味がなかった。
二人は頬を赤く染めて、まるで想いを告げあった直後みたいに見えた。
「…嘘…だろ…」
錆びた刃で何度も切り付けられたような、ぐりぐりとそこを抉られる様な…そんな思い。一気に煮えたぎる嫉妬心がぐつぐつと腹を巡る。
「あ……」
笑い合う二人を見るのが辛くて目を逸らそうとした時、ティアラはこんな思いをずっと抱えていたのかと今更気付いた。俺は、ただのアクシデントでもこんなに痛いのに…。隠れて…偶然じゃなく必然にしていた自分は…。
「最低だ…俺……」
謝って済むか…?いや…済まない、済ましちゃいけない。でも…離れたくない。ダメだ、それは俺の要望だ。ティアラの希望を最優先にしなきゃ…でも…会いたい…話したい…違う、ダメだダメだ!!
せめぎ合う二つの思いが見え隠れする。
「俺に選択肢なんてない」
ティアラはこの痛く苦しい気持ちをずっと持ったまま、俺にもアリーシャにも気を配って生活をしていた。ならば、俺は…?ティアラの為に何ができる?
「…話す事さえも…嫌がられるかな…」
モニカと共だって歩いて行くティアラをちゃんと見たいのに涙が浮かんでそれも出来ない。
「ほんと…俺…情けね…」
ずるずると木の下に座り込んだ俺は雲一つない空を見上げるしか出来なかった。燦々と照り付ける太陽に、「馬鹿は燃えてしまえ」と言われている気がした。
俺に傷付く資格なんてないのに。
3,324
あなたにおすすめの小説
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
婚約破棄されましたが、私はもう必要ありませんので
ふわふわ
恋愛
「婚約破棄?
……そうですか。では、私の役目は終わりですね」
王太子ロイド・ヴァルシュタインの婚約者として、
国と王宮を“滞りなく回す存在”であり続けてきた令嬢
マルグリット・フォン・ルーヴェン。
感情を表に出さず、
功績を誇らず、
ただ淡々と、最善だけを積み重ねてきた彼女に突きつけられたのは――
偽りの奇跡を振りかざす“聖女”による、突然の婚約破棄だった。
だが、マルグリットは嘆かない。
怒りもしない。
復讐すら、望まない。
彼女が選んだのは、
すべてを「仕組み」と「基準」に引き渡し、静かに前線から降りること。
彼女がいなくなっても、領地は回る。
判断は滞らず、人々は困らない。
それこそが、彼女が築いた“完成形”だった。
一方で、
彼女を切り捨てた王太子と偽聖女は、
「彼女がいない世界」で初めて、自分たちの無力さと向き合うことになる。
――必要とされない価値。
――前に出ない強さ。
――名前を呼ばれない完成。
これは、
騒がず、縋らず、静かに去った令嬢が、
最後にすべてを置き去りにして手に入れる“自由”の物語。
ざまぁは静かに、
恋は後半に、
そして物語は、凛と終わる。
アルファポリス女子読者向け
「大人の婚約破棄ざまぁ恋愛」、ここに完結。
結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。
しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。
友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。
『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。
取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。
彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。
白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』
鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
〖完結〗その愛、お断りします。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚して一年、幸せな毎日を送っていた。それが、一瞬で消え去った……
彼は突然愛人と子供を連れて来て、離れに住まわせると言った。愛する人に裏切られていたことを知り、胸が苦しくなる。
邪魔なのは、私だ。
そう思った私は離婚を決意し、邸を出て行こうとしたところを彼に見つかり部屋に閉じ込められてしまう。
「君を愛してる」と、何度も口にする彼。愛していれば、何をしても許されると思っているのだろうか。
冗談じゃない。私は、彼の思い通りになどならない!
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
〖完結〗愛しているから、あなたを愛していないフリをします。
藍川みいな
恋愛
ずっと大好きだった幼なじみの侯爵令息、ウォルシュ様。そんなウォルシュ様から、結婚をして欲しいと言われました。
但し、条件付きで。
「子を産めれば誰でもよかったのだが、やっぱり俺の事を分かってくれている君に頼みたい。愛のない結婚をしてくれ。」
彼は、私の気持ちを知りません。もしも、私が彼を愛している事を知られてしまったら捨てられてしまう。
だから、私は全力であなたを愛していないフリをします。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全7話で完結になります。
その結婚は、白紙にしましょう
香月まと
恋愛
リュミエール王国が姫、ミレナシア。
彼女はずっとずっと、王国騎士団の若き団長、カインのことを想っていた。
念願叶って結婚の話が決定した、その夕方のこと。
浮かれる姫を前にして、カインの口から出た言葉は「白い結婚にとさせて頂きたい」
身分とか立場とか何とか話しているが、姫は急速にその声が遠くなっていくのを感じる。
けれど、他でもない憧れの人からの嘆願だ。姫はにっこりと笑った。
「分かりました。その提案を、受け入れ──」
全然受け入れられませんけど!?
形だけの結婚を了承しつつも、心で号泣してる姫。
武骨で不器用な王国騎士団長。
二人を中心に巻き起こった、割と短い期間のお話。
〖完結〗親友だと思っていた彼女が、私の婚約者を奪おうとしたのですが……
藍川みいな
恋愛
大好きな親友のマギーは、私のことを親友だなんて思っていなかった。私は引き立て役だと言い、私の婚約者を奪ったと告げた。
婚約者と親友をいっぺんに失い、失意のどん底だった私に、婚約者の彼から贈り物と共に手紙が届く。
その手紙を読んだ私は、婚約発表が行われる会場へと急ぐ。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
前編後編の、二話で完結になります。
小説家になろう様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる