咲希〜僕らが1000万かけてじっくり死ぬまで〜

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晩餐

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至福の時を邪魔するインターホンなど無視にするに限る。ビールを飲みながらイカの塩辛を食べる。
ピンポーン。
少し時間が経ち、再度インターホンが鳴った。それもまた無視する。
「はぁーっ」
ぼーっとしながら壁を眺める。家賃は安いけど、汚れが気になる程汚れてもないし、古さが気になるほど古くもない。味気がない壁だけど、壁に味気など求めてない。
こうやってぼーっとした時にノイズにならなければいいのだ。
ピンポーン。
更にまた少し時間が空き、再度インターホンがなる。なんだろう、こんなにひっきりなしにインターホンが鳴るなんて。しかも3分ほど間をおいてのインターホンだ。鬱陶しいが段々恐ろしいに変わりつつある。
「そろそろかな…」
だがどんなに恐ろしい気持ちがあっても関係ない。カップヌードルの蓋を開ける。相当にブヨブヨになった麺が今にも溢れ出しそうだ。先ほどまでイカの塩辛を突いていた箸をカップにドッと入れ、大量に麺を掬う。大きく口を開け、それを口の中にぶち込んだ。
「うまい…」
流石のうまさだ。塩味のきいたブヨブヨの炭水化物が口の中一杯になる。必要最低限噛み、喉越しを楽しみながら一気に飲み込む。そして流し込むようにビールを飲み、イカの塩辛をバクバクと食べる。身体の中が混沌としていくのが分かる。混沌は生を実感させてくれる。身体に悪いことは大抵、精神には都合が良い。
ピンポーン。
そうやって生を実感している俺を相変わらずインターホンの音が邪魔をする。鬱陶しい…先ほどまではある程度恐ろしいと感じていたが、この至高の時間を邪魔されるのは腹立たしい。しかし、迷う。インターホンをこのまま無視し続ければこの腹立たしいと思う気持ちを膨らませながら飯を食わねばならない。折角の至高が台無しだ。だがしかし、この至高の時間を中断して、インターホンを鳴らす主にあったとして、そのインターホンの主がやばいやつだったら至高が台無しどころではない。最悪の場合、この飯が最期の晩餐になりかねない。
…最期の晩餐…。
「最期の晩餐か…それもまぁ悪くはないか…」
まだ二十四だが、いい加減生きるのに疲れてきた。最期の晩餐がこれなら悔いはないし、ここで仮にやばいやつに殺されるのも悪くない。僕を勘当した親にも一泡吹かせられる。
「…よし」
最期の晩餐だと思うと途端に目の前の飯が豪華に感じる。ゆっくり食べよう。あと20分。それでもインターホンを鳴らす気力があるのなら相手してやる。
そうやって僕は目の前の晩餐を存分に味わうことにした。水風呂で冷えて身体に熱が籠る。
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