咲希〜僕らが1000万かけてじっくり死ぬまで〜

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柔らかく温かい

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僕は居酒屋とコンビニを掛け持ち、かなりの時間働いていたが、他人の1.5倍は睡眠時間をとっている。コンビニは9~13時、居酒屋は17時~22時の時間で働いていたが、食事と風呂を除き、それ以外のほとんどの時間は眠っていた。どちらの職場も家から15分ほどで、仕事が終わるとギリギリまで眠っていたから夜と昼と合わせて10時間は眠っていたと思う。そのため僕は常に寝起きで朧げな状態だったが、眠っている間割と高い頻度で明晰夢を見ることができた。起きている時間はなるべく頭を使わずに、眠っている時間で物事を考えるのだ。誰もいない空間で、意識も失いつつある状態で考え事をするのが好きだった。植物状態の人間がもし、夢の中で意識があったとしたら、それが僕の理想の生き方となるだろう。
僕は夢の中で、現実のことについて思案していた。正確にいえば、昨日のことについて、あれが現実だったのか夢だったのか。判別しようとしていた。見知らぬ女の子が急に家に訪れた。しかも金髪で美少女と言っても過言ではない。さらにいえば、胸は大きく、柔らかく、無防備で、露出癖がある。溶けるような淡い声をしているが、決して甘ったるい感じはしない。人間のような動物のようなロボットのような植物のような不思議な雰囲気を持っている。そんな女が急に来た。それに対し、僕は何もせずに寝た。果たしてこれが夢なのかどうか。現実なのかどうか。非現実的な出来事だったので夢と言いたいところだが、あの背中に感じた柔らかい温もりは確かに感じたのだ。夢なのであれば中々にリアルな夢だし、現実なのであれば中々にファンタジーな出来事だ。
なんにせよ、今から目を覚ませば、それが現実か夢なのか、どうでもよくなる。夢だとしても現実だとしても、目が覚めれば僕は部屋で独り横になっているだけなのだから。
(よし、目を開けよう。)
そう思いながら、僕にしては珍しく自分から、夢を離脱した。
「……」
部屋はまだ暗い。夢を見ていたのに、まだ朝にはなっていなかった。朦朧とする意識の中寝返りをうつ。
「……」
振り返るとあの柔らかくて温かい物体が目の前にだらしなくへたれ落ちていた。
スーッ、スーッと気持ちよさそうにそれは寝息を立てていた。布一枚を隔てて僕の目の前にあるもののことを僕はそれなりに分かっているつもりで実はよく知らない。
僕はこの柔らかく温かいものを自らの手で軽く、触った。暗くてよく分からないけど、暗いのによく分かった。
僕はそれに執着はせず、再び寝返りをうち、目を閉じた。
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