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出会い
帰り道
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珍しく永井が泥酔していた。さっきまであんなににこにこしていたのに、今は不機嫌そうな顔をしている。なんで月曜からこんなに飲むのか理解できない。にこにこしながらも職場環境にストレスを感じていたのだろうか。それとも、普通に俺といるのが嫌なのだろうか。後者だったら地味に傷つくなと思った。
「ごめんね、田中くん。月曜なのに飲み会に誘って。」
「いや……、別に。色々話せてよかったよ。俺も今の職場にはイライラしてたから、ストレス発散になった。」
「そっか、じゃあよかった。」
永井はその表情とは裏腹に、口調は普段通り穏やかだった。 とりあえず永井が俺を嫌っていないようなので安心する。
「ちょっと、飲みすぎちゃったなぁ。気持ち悪いよ。」
「珍しいな、お前がこんな飲むの。」
「そーだね。なんか酔いたい気分だったんだ。お酒は強い方なんだけど、疲れが溜まってるのかな、すぐ酔いが回って……」
永井は言葉半ば、大きくよろけた。俺は慌てて、永井の身体を支える。
「大丈夫かよ。明日は休んだ方がいいんじゃないか?」
「そーかもね……」
しばらく立ち止まり、お互い口を開くことなく、沈黙が続いた。
こういう沈黙が続いた時、どう言葉を繋げばいいのか分からない。幸子と付き合ってた時も、決まって沈黙を破るのは幸子からだった。
「ねぇ、おんぶ。」
永井は甘えた声をだし、せがんだ。普段の永井では絶対出さないその艶めいた声色に、不覚にも可愛いなと思ってしまった俺は、
「うっ、えっ、おう。」
と永井の胸が当たらないようにぎこちない動きで永井を背中に乗せ、永井が吐かないようにゆっくりと歩いた。
女って意外と重い。このまま10分歩くのは、運動不足の俺には少し厳しいものがある。だが、背中に感じる柔らかい感触と、耳元にかすかに聞こえる永井の酒気を帯びた息がなんだか心地よくて、永井の住んでいるアパートの前まで止まることなく歩くことが出来た。
少し錆びれたアパート階段は登るごとに少し軋んだ音が響かせた。
「永井、大丈夫か?」
寝ているかもしれないと思ったが、永井は
「うん、大丈夫。ありがと。」
と言った後、俺の背中から下り、鍵を取り出しドアを開けた。
「そっか、じゃあ気をつけろよ。」
そう言って俺が帰ろうとすると、永井は俺の服の裾を掴み、
「待ってよ。今日……、泊まってよ。」
と小さな声で言った。
「でも、明日も仕事あるし……」
先ほどの胸の感触が残っている俺は、このままだと、永井を襲ってしまいそうで、ここで永井を襲ってしまったら、今後永井とどう付き合っていけばいいか分からなくて、とにかくこの場から離れなければと思った。でも身体は少し熱を帯びていて、足はピクリとも動かなかった。
「ごめんね、田中くん。月曜なのに飲み会に誘って。」
「いや……、別に。色々話せてよかったよ。俺も今の職場にはイライラしてたから、ストレス発散になった。」
「そっか、じゃあよかった。」
永井はその表情とは裏腹に、口調は普段通り穏やかだった。 とりあえず永井が俺を嫌っていないようなので安心する。
「ちょっと、飲みすぎちゃったなぁ。気持ち悪いよ。」
「珍しいな、お前がこんな飲むの。」
「そーだね。なんか酔いたい気分だったんだ。お酒は強い方なんだけど、疲れが溜まってるのかな、すぐ酔いが回って……」
永井は言葉半ば、大きくよろけた。俺は慌てて、永井の身体を支える。
「大丈夫かよ。明日は休んだ方がいいんじゃないか?」
「そーかもね……」
しばらく立ち止まり、お互い口を開くことなく、沈黙が続いた。
こういう沈黙が続いた時、どう言葉を繋げばいいのか分からない。幸子と付き合ってた時も、決まって沈黙を破るのは幸子からだった。
「ねぇ、おんぶ。」
永井は甘えた声をだし、せがんだ。普段の永井では絶対出さないその艶めいた声色に、不覚にも可愛いなと思ってしまった俺は、
「うっ、えっ、おう。」
と永井の胸が当たらないようにぎこちない動きで永井を背中に乗せ、永井が吐かないようにゆっくりと歩いた。
女って意外と重い。このまま10分歩くのは、運動不足の俺には少し厳しいものがある。だが、背中に感じる柔らかい感触と、耳元にかすかに聞こえる永井の酒気を帯びた息がなんだか心地よくて、永井の住んでいるアパートの前まで止まることなく歩くことが出来た。
少し錆びれたアパート階段は登るごとに少し軋んだ音が響かせた。
「永井、大丈夫か?」
寝ているかもしれないと思ったが、永井は
「うん、大丈夫。ありがと。」
と言った後、俺の背中から下り、鍵を取り出しドアを開けた。
「そっか、じゃあ気をつけろよ。」
そう言って俺が帰ろうとすると、永井は俺の服の裾を掴み、
「待ってよ。今日……、泊まってよ。」
と小さな声で言った。
「でも、明日も仕事あるし……」
先ほどの胸の感触が残っている俺は、このままだと、永井を襲ってしまいそうで、ここで永井を襲ってしまったら、今後永井とどう付き合っていけばいいか分からなくて、とにかくこの場から離れなければと思った。でも身体は少し熱を帯びていて、足はピクリとも動かなかった。
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