夕焼け

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出会い

弊社のスネ夫

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チャットがうまくいかないことが地味にショックで、ぎりぎりの時間に出社すると、永井はいつものように仕事をしていた。カタカタとパソコンを打っているところを見ると、昨日のアルコールはどうやらちゃんと抜けたらしい。
アルコールが抜けるどころか、いつもより張り切っているようにさえみえる。自分もとりあえずしっかり仕事をしなきゃなと思い、朝礼までの間に1日のスケジュールと、メールを確認した。

朝礼が終わると、同期男性社員の1人である山本が話かけてきた。
「よう。田中。今日飲める??」
どうやらうちの会社の同期はやたらと飲みたがる癖があるらしい。
「遠慮しとく。最近金欠だし、昨日も飲んだから。」
「そっかぁー。残念。じゃあ昼飯一緒に食いに行こうぜ?」
「……それも遠慮しようかな。」
昼はチャットのリベンジをしようと思っていた。一回失敗したからって、次失敗するかは分からない。さっきの永井を見ていたら、次はなんとなくいけそうな気がした。山本は露骨に不機嫌そうな顔をする。
「なんでー?そんな仕事が詰まるような働き方してないだろ、お前。別に部長に嫌われてるわけでもあるまいし。暇ならいいじゃん。行こう~ぜ~。」
山本は、永井以上に基本ガツガツと距離を詰めてくるタイプで、正直苦手だ。チャットうんぬんを抜きにしても、俺は長々と話をしながら食事を摂るのが嫌いなため、会社の誰かと昼ご飯を食べようとは中々思えず、1人でに外食に出かけることが多かった。
「うるさいなぁ。いつも通り永井と2人で食えよ。」
パソコンにメールが思ったより来ている。チャットの返信は全然こないのに、こっちの方はひっぱりだこである。人事部の仕事は慣れてきたが、社内トラブルには毎度うんざりだ。派閥同士の仲の悪さを人事に押し付けないで欲しい。小学生の担任教師を受け持っている気分だ。
「永井と2人でもいいんだけどさぁ、たまにはさぁ、3人で食おうぜ!同期同士……な?」
同期に全く興味がなく、同じ部署の永井と俺以外とはほとんど交流のない山本から同期という言葉を聞いてもいまいちピンとこない。山本は、永井と同じようにどの派閥の人からも好かれていたが、永井と違ってどの派閥にも所属していて、基本週に3回以上はどこかの派閥の飲み会に参加し、休日も先輩や上司と遊んでいる。性格の良さから人望のある永井とは違った意味で将来有望な同期だった。有望な者同士惹かれ合うものがあるのか、山本は昼飯を何故か先輩や上司とは食べず、永井と2人で食べていることが多い。そのため、同期の間では山本は永井を狙っているのではないかと噂がたっていた。
「……お前いつも永井と昼飯食べてるけど、先輩たちとは食べないの?」
話の流れには沿ってないが、話を逸らしたかったので、逆に質問してみる。
「答えたら、一緒に飯食う?」
逸らした話がすぐに軌道修正される。流石弊社のスネ夫くん。話をさせれば一流だ。営業部に入れば、今よりもぐんと業績を上げてくれそうなんだが、早く異動してくれないかな。そしてどんだけ俺と飯が食べたいんだ。狙われてるのは永井ではなく、俺なのかもしれない。
だが、これについては結構気になる疑問ではあったため、俺は昼ご飯を食べることを了承することにした。
「おっ!じゃあ決まりだな!」
「うん。で、さっきの質問はどうなのよ?」
「そうねー、正直、先輩の話聞くよりも、永井と話した方がためになるんだよ。永井の他人の性質を判断する洞察眼と、仕事に対する先見の明は正直すごいもんでさ。」
意外にも真面目な答えが返ってきた。人に取り入って出世するタイプだと思ってたため、少し見直した。
「なるほどな。でもいいのか?俺はそんなに仕事熱心じゃないし、要領もよくない。それに、仕事の話を昼休みまでしたいとは思わないんだけど。」
「いや、いいのいいの。いつもそういう話してるわけでもないし。」
山本が軽く笑う。この軽さが人に取り入るコツなのだろうか。本当にスネ夫に似てる。
「そう。じゃあまた後で。」
会話が終わると、早速先ほど確認した社内トラブルについてのメールに対処していく。皮肉にも幸子と別れてからは仕事がうまくいくことが多く、社内トラブルに関しても、うんざりではあるが淡々と解決策を見出せるようになった。チャットの方でもすぐにうまく会話ができるようになればいいのだが中々上手くいかない。山本ならどう会話を広げていくだろうか。昼ご飯の時に聞いてみようかなと少し思った。

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