夕焼け

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出会い

昼休み

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昼休みに入るチャイムがなる。入社時は、社会人になっても、チャイムの音を聴くとは思わず、仕事の時間を他人に決めさせられていることに息苦しさを感じたが、慣れてしまえばオンオフの切り替えがスムーズにいくので結構気に入っている。あまり好きになれない会社ではあったが、こういうところはちゃんとしていていいなと思う。派閥抗争がなければ、給料を除いて、それなりの優良企業なのではないだろうか。

昼休み、永井とどう接すればいいのか分からず、少し不安であったが、にこにことした表情で、少しがさつないつも通りの永井だった。
「田中さんだー!珍しいね、昼一緒に食べるの!帰り雨降るんじゃない?今日傘持ってきてないから勘弁して欲しいなぁ。」
昨日は田中くんと俺のことを呼んでいたが、会社だと田中さんと俺を呼ぶ永井のその使い分けは、意識してるのかしてないのかは分からないが、なんとなく嬉しい。
「永井が雨に濡れないように僕がエスコートしようか?」
「あははっ。山本さんとの相合傘は遠慮しとくよ。」
「それは残念。」
相変わらず山本は思ってもないことをさらりと言う。永井はそういうのを軽く流すが、結構本気にしてしまう女は多く、山本は何人もの女を落としていた。永井と違って山本は基本女の告白を受け入れ、付き合うことが多く、長くは付き合わないが、常に誰かしらと付き合っていた。不思議なことに山本と別れた女はみな山本と付き合えたことに感謝する。そして、山本と付き合った女は何故なのか、みな、容姿、性格ともに、付き合う前に比べて魅力的な女性になっていった。山本の軽いところはどうかと思うが、こういうところは素直に見習いたいなと思う。
「でも、今日はなんで田中さんも一緒なの??」
「なんだ?田中のこと嫌いなのか??」
「いや、そんなことないよ?むしろ好きだよ?」
永井のその言葉を聞いて、昨日の永井を思い出す。何故か裸姿の永井が鮮明にプレイバックして、顔が赤くなってしまう。永井は顔は赤くなってないが、少し昨日の色っぽさが垣間見えるような笑みを浮かべた。山本は俺と永井を見比べて、
「なんだよ、お前らできてんの??」
とニヤついた。
「いや、できてねーよ。」
俺が速攻否定すると、永井は
「そーだよ。山本さんって本当そういう話好きだよね。」
と、すぐに否定し、呆れたといった顔を山本に向けた。その様子から、先ほど永井が言っていた、好きの意味は普通に人として好きってことだったのだろう。
「だってさ、人間好き嫌いで行動する生き物じゃん?そういうのってなるべく知っておきたいし、面白いじゃん。」
けらけらと笑う山本。
「分からなくはないけど、そういうのずかずかといかないほうがいいんじゃないの?」
「大丈夫。そういう加減はちゃんとできるから。」
永井も山本もお互い冗談半分といった具合で話している。今の様子からして、永井と山本の会話は先ほど山本に聞いたとおり、仕事の話ばかりではないようだ。2人を見ていると、2人は付き合わないのかなと少し思う。前に一度、山本が永井に告白し、振られたことがあり、その時は結構会社内で噂になったが、あれからかなり月日がたった。今はお互いどう思っているのだろうか。
「お前らは仕事も出来て、モテるけど、俺はそういうのとは無縁だからなぁ。俺にそういう話振るだけ無駄よ。」
昼ご飯のカレーを一口食べる。社員食堂のカレーは独特の甘みがあり、うまい。
「うーん、まあ田中がモテるかどうかは知らないけど、仕事は一番出来るんじゃないか?」
山本は割と真剣な表情で俺を見る。
「私もそれは思う。」
永井も同じような表情で俺を見た。
「いや、それはないだろ。ミスこそあんまりしないけど、お前らに比べたら俺なんてぺーぺーもいいところだよ。」
なんだか2人に褒められるのが恥ずかしくなり、俺は水を勢いよく飲み干した。
「いや、俺らはなんとなく、周りとコミュニケーションとってるから上手くいくのであって、お前みたいに一人で黙々と、正確に仕事をこなせないよ。」
「うん。田中さんって、そういういい意味で職人気質があるから、会社内でも結構人望厚いし、若いうちから社内トラブルとかも任されてるんだと思うよ?」
「……そうかぁ?」
正直、この2人にここまで褒められるほどちゃんと仕事をしてきた覚えはない。面倒ごとは最小限ですませ、興味のあるところに力を注ぎ、なるべく人と関わらずに済むよう定時に帰社していただけだ。それが評価されるのはどうと思う。
「俺は2人の方がよっぽど仕事出来ると思うけどなぁ。それに、他人とコミュニケーションそんなとってないから、人間関係上手くいってないし……それに最近チャットはじめたんだけど、それも上手くいってないし……」
「チャット?」
山本は疑問を浮かべ、永井は俺を見て、にやりといたずらに笑う。
「あっ、そうそう。田中さんチャット始めたんだって。浅~い関係の人と付き合っていきたいいらしくて。上手くいってないんだー?」
山本も永井につられて、にやりと笑う。
「なんだぁー、そうなのか!面白いなぁー。じゃあ俺らがコミュニケーションのコツってやつを教えてやるよ。な?永井?」
「うん。なんか面白そう。困ってるなら私たちが答えてしんぜよう。」
山本も永井も変なノリになってきた。
鬱陶しさとめんどくささはあったが、他人との関わりにおいて、この2人ほど上手く振舞う人も中々いないなと思ったため、俺は素直に2人に助言を求めることにした。
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