小話シリーズ

take

文字の大きさ
上 下
6 / 12

変わらないこと

しおりを挟む
どんよりと曇った空に、ほぼ散りかけた桜。春としてはまだ少し寒い空気。
性懲りも無くまた同じ日々が始まるのかと思うとうんざりするが、同時に安堵する。
始まったばかりの高校生活にうきうきとしている両隣の生徒はしっかりと前をみつめている。何度も繰り返ししているからかこなれた雰囲気を醸し出す教師たちは対照的に上の空といった感じだ。校長の話は壊れたスピーカーのように長々と同じように続き前に立っている中浦は話が始まってから何度もあくびをしていた。
 85回目の入学式もいつもと相も変わらず冴えない朝に行われたのだった。
当たり前といえば当たり前である。全く同じ日に全く同じ人たちで行われる式だ。これが少しでも変化があるのなら面白いと思うが今回も寸分違わず同じ時間が流れている。家を出る時点で気づいてはいたが、それでも入学式には何か変化があるのではないかと期待していた。
しおりを挟む

処理中です...