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第六話・交錯する追憶
しおりを挟む「おうふ!」
ここは東京郊外、零細デザイン事務所。一介の雇われ服飾デザイナーである私・尾先ゆらは、『休日? それ何語? 美味しいの?』状態。最後に休んだのっていつだっけ、先月あったかな?
「まったく、とんだブラック会社だよね……」
「まぁまぁ、先輩。部長なんか、初孫が誕生したってのにまだお家に帰れないんですし」
そうなんだよね。上司がクソならとっとと逃げるんだけど、ここの事務所は上に行けば行くほど可哀想になっていくので、部下のほうが逃げられないという蟻地獄。
「あ、美香ちゃんそこ……じゃなくて、ちょっと下」
「ここですか?」
後輩の美香ちゃんに肩を揉んでもらってる、ギリ二十代の乙女(らしくない)な私。
「あ、そこそこ! ををう、ほぇはわぁんん~ぬぇ」
変な声出た。
「なんつー声出すんですか……」
うーん、美香ちゃん呆れ顔です。しゃーないでしょ、一日十五時間はデスクワークだ。肩の筋肉なんて石化しちゃう。
「最初のうちはね、くっそどうしようもない抽象的な言葉で依頼しといてさ? お任せしますみたいな言質は確かに取ったんだけど、いざ最初の提案を見ると『思ってたんと違う』とかさ? いきなり要望が具体的になってあそこをこーしろ、ここをこーしろってさ? 最初から全部言えよっ!」
「私に言わないでくださいよぅ」
「塗り絵じゃないんだよ、このお仕事は。最初から描き直しになるわけ。わかる?」
「そりゃ同じ仕事してますから」
それもそうだ。
「お腹空いたな」
「ですね。出前頼みます?」
「何言ってんの。外に出て歩くという史上最強の贅沢ができる機会、逃してたまるもんですか!」
自分で言ってて涙が出る。美香ちゃんもホロリしてるんじゃないっ!
「今日は牛丼にしよかな」
ポツリとそうつぶやいたとき、電話がけたたましく鳴った。もう嫌な予感しかしない。
「部長! 私、ご飯休憩入ります!」
「待て尾先、俺も付き合う!」
こんな機会でもないと、運動する時間がない。トイレとの往復だけじゃ汗も出ない。
なので私のそのたくらみに、部長もまんまと乗っかる。ちゃっかりしてるな。
「あっ、お二人ともズルい!」
脱兎のごとく逃げ出した私と部長を恨めしげに見送りながら、逃げ遅れた美香ちゃんが電話を取った。
「えぇっ! 締め切りは来月でいいって言ったじゃないですかっ!」
って電話相手に対する、美香ちゃんの悲痛な叫び声。逃げて正解……ではないね。会社に戻ったら新しい地獄がカモンベイベーですよ、えぇ。
「尾先、あの様子じゃ……」
「えぇ部長。お店で食べてる暇なさそうですね。テイクアウトで」
「彼女の分も買ってきてあげるか」
今日は美香ちゃん、定時あがりのシフトだ。『定時あがり』という謎の単語が何語かは知らないが、まだ新人の美香ちゃんは今日は本来ならお家に帰れる日。
だけど私と部長がこんなだから、彼女も今日は会社泊まりになるんだろうなぁ。
「ねぇ、部長」
「何だ?」
「前の休み……いつだったか忘れたんですけど、目が覚めたら見慣れない天井だったんです」
「ほぅ。どこで寝てたんだ?」
「自宅アパートのベッドなんですけどね」
「……」
自宅の天井を見慣れてないって凄くない? よもや転生後のティアの人生でも同じ感想を持つことになるとは、そのときは想像だにしなかったけどさ。
「そういやお孫さん、男の子でしたっけ?」
「いや、女の子。本来ならここで『見るかい?』とか言って写真を取り出すんだろうね。でも、まだ顔は見れてないんだ」
泣ける。
牛丼屋の看板が見えてきて、何丼にしようかなーとか漠然と考えながら歩いてたら目の前にちょうど牛丼屋から出てきた二十代半ばくらいの青年が。
「バカッ、茉莉花! 来るな!」
そう叫ぶが早いが、道路向こうからトラックが来ているにも関わらず道路に飛び出した。飛び出す前に、チラとトラックを視認はしてた感じだった?
けたたましいクラクションの音、急ブレーキでタイヤが軋む音。
(あっ、轢かれる!)
そう思った瞬間、トラックの前にもう一つのシルエットが反対側から。ヘッドライトによる逆光でよく見えなかったが、セーラー服を着た女の子だ。
青年がその女の子を反対車線側に突き飛ばすのと、青年の身体がトラックに弾き飛ばされるのが同時だった。そしてよりにもよって、私たちが歩いている位置まで吹っ飛んできて。
「ちょっ⁉」
「お、お?」
私と部長、大パニック。轢かれた青年の頭部からは、どくどくと血が吹き出している。えーっと! こんなときどうするんだっけ⁉
周囲は息をのむ人、立ち尽くす人、顔を背ける人。でも誰もが青年に駆け寄らないでいる。
私も部長もそうだ。誰一人、青年に駆け寄らない。
『傍観者効果』――傍観者が多い環境での事件や事故で、一人一人が「誰かが行くだろう」「私が行かなくてもいいだろう」という心理状態に陥り、結果的に誰もが何もしないという悲しい結果を生み出してしまう。
かつてアメリカで起きた、婦女殺人事件。後に『キティ・ジェノヴィーズ事件』と語られるそれは、被害者の悲鳴を聴いた・目撃した者が合計三十八名。だがこの中の誰一人として助けに入ることもなければ、警察に通報した者もいなかったという。
この事件をきっかけにして、傍観者効果という言葉が提唱されたのだとか。
そして悲しいことに、ニホンでも同様の事件があった。二〇〇X年、特急電車の中で女性がトイレに連れ込まれ暴行された。女性がトイレに連れ込まれる過程で、被害者が泣いて嫌がる様を見た者聴いた者、その数約四十名。
だが誰一人として非常ボタンを押しもしなければ、車掌に伝えにいくでもなく助けるでもなく。
当時、センセーショナルなこの事件はワイドショーを大きく賑わせたものだった。
(だめだ、誰かが行かなきゃ!)
私は倒れている青年に駆け寄ると手をかざして、
「『神……』
――私、何しようとしたんだろ??? そうだ、こういうときは意識の確認だって、自動車学校の偉そうな講師が言ってた!
「もしもーし! 聴こえますか⁉」
頭部に怪我があるので、身体を揺すったりはしないほうがいいだろう。もどかしいけど、ここで使える手段は声だけだ。
私が駆け寄ったのがトリガーとなって、多くのやじ馬たちが周囲を囲み始める。あのですね? 何もしないなら来ないでください、邪魔です。んでもってスマホのカメラを向けてるアホ、お茶がヘソを沸かして(?)死ね!
必死で声をかけ続ける私だけど、青年の意識は……ところで、誰か通報してくれてるよね? いくらなんでもだよね?
そう思った次の瞬間だった。
「アルトお兄ちゃ、しっかり! しっかりして!」
そう叫ぶや否や、人垣をかき分けるようにしてセーラー服の女の子。さっき見た、反対側から飛び出してきた子かな?
ってよりにもよって、倒れた男性を起こそうとしてるうぅ~⁉ ダメよーダメダメ!
私は慌てて少女が起こしあげた青年の背に手を回し、その少女に注意喚起……する前に、部長が少女を羽交い締めにした。
「落ち着きなさい! こういうときは動かしちゃダメだ! おい、尾先! その男性はもう意識がない! 俺がこの子を抑えてる間に通報頼む!」
「わかりました部長、お願いします!」
ちょうど持ってきたポーチを枕代わりにして青年を寝かし、スマホを取り出す。職場で過労で倒れて救急車を呼ばれたことはあるけど、私が呼ぶ立場になったのは初めてだ。
なんとか人生初一一九番通報を終え、振り向くと。
「大丈夫かい?」
その女の子は落ち着いた?のかヘナヘナと座り込んでて、部長が声をかけてあげてた。
そしてそのとき、青年のまぶたがちょっと動いた?ような? やがて首がゆっくりと回り、その少女を見つめる。
「茉莉……良かっ……」
言葉にはならなかったが、優しい表情で少女を見つめていた。だからなんとなく、状況は察してしまう。
最初に車道に飛び出したのは、少女のほうなのだろう。それに気づいたこの青年……『あるとお兄ちゃん』さんとか呼ばれてたかな?が、自らも飛び出して。トラックが来てるのには気づいていそうだったから、その少女を助けるという明確な意思のもとに。
そしてその青年は、ゆっくりと意識を失った。
「アッ、アルトお兄ちゃん! ごめんなさい! ごめんなさい! ごめ……」
路上で倒れたままの青年に縋って泣きじゃくる少女。だから身体をむやみやたらに動かしちゃダメなんだってば!
そう思って少女をどかそうと思って一歩進みかけたんだけど、部長がそれを止めた。
「部長?」
「あれは、もうもたない」
「……」
まぁね。もう呼吸をしていないのは、素人目にもわかった。くわえてこの出血量だ、AEDとかなんの役にも立たないだろう。
まぁがくがく揺さぶってるわけじゃなく、青年の身体に顔を埋めているだけだから……最期のお別れになるかもしれないから。
「うっ、うっそだぁ?」
少女が、呆然としてつぶやく声が聴こえた。少女もまた、青年の『死』を感じとったのだろう。
救急車が来るまでの間、少女を励まそうと言葉をかけるのだけど、でもどんな声も届かなくて。『私が死ねばよかった』とか『ごめんなさい』とか、そればかりで。
なんとか聞き出せたのは、その青年の名前が小津有人さんという二十四歳の社会人であること。少女の名前が久遠茉莉花ちゃんという高校生だということ。
姓が違うね。つまり二人は、兄妹ではない。茉莉花ってなんだっけ、確かジャスミンの和名だっけか。
救急車が到着し、テキパキと青年を搬送していく。遠ざかる救急車のサイレンと入れ違いに、今度はパトカーのサイレン。
「どなたか、お話をお聞かせください! 事故を目撃された方はいらっしゃいませんか?」
そんなことを叫びながら、お巡りさんが駆けずり回っている。
私は青年の枕代わりに使っていた血まみれになったポーチを拾いあげると、
「お巡りさんこっちです!」
まさかこのネットスラング、こんな重い気持ちでリアルで使うことになるなんて想像だにしなかったよ。
私は少女から聞き出した青年の名前、この少女・茉莉花ちゃんが青年の知り合いであることなどを話し、連絡先を渡してお巡りさんにあとを任せる。渡した連絡先が自宅じゃなくて会社なのが悲しい。
「尾先、ひどい格好だな」
「部長も」
私は直接、部長は間接的に少女からのそれで青年の血痕だらけだ。
(さっき私、何言おうとしてたんだろう)
まるでファンタジー物語に出てくるような魔法使いみたいに、手をかざして。
「うーん?」
とりあえず、ただの傍観者ではもういられないな。その後、警察からの連絡で改めて事情を話したり、亡くなった有人君のご両親からお礼言われたり。そう、結局助からなかったんだって。
特にそうする義務はなかったんだけど、このままこれで終わりというのも後味が悪くて、有人君の通夜にちょっとだけ顔を出すことに。
「何しに来た! 来るな! 帰れ!」
玄関先で泣き叫びながら半狂乱になって靴やらスリッパやらを次々と投げつけているのは、有人君のお母様。通報してくれたことのお礼と、衣服やポーチが血痕でダメになったことを侘びてくれたときの弱々しさはどこにもなく、悪鬼羅刹の表情だ。さながら鬼子母神。
「茉莉花ちゃんのせいで有人は! この人殺し!」
その視線の先には、セーラー服のあの少女・久遠茉莉花ちゃん。そしてお母様は、今度は花瓶を手に取る。ちょっ、それシャレにならない!
お母様が投げた花瓶が、茉莉花ちゃんの頭部に直撃して割れる。ちょっと切ったみたいで、顔に一筋の血が垂れて流れて……大変!
それを後ろから抱き留めるように阻止したのは、靴も履かずに慌てて飛び出してきた有人君のお父様。
「ママ落ち着け! 落ち着くんだ!」
「返して! 有人を返して!」
それでも恨み骨髄、我が子を失って鬼子母神と化したお母様の憤懣は治まらない。
「申し訳ありませんでした! 申し訳ありませんでした!」
だが茉莉花ちゃんは流れる血を拭いもせず、土下座をしたまま何度も泣き叫ぶ。
「茉莉花ちゃん、今は家内がこんな状態だ。大変もうしわけないが、しばらく我が家に来るのは控えてもらいたい」
有人君のお父様はそう言って、半ば強引に奥さんを玄関内に押し込むと後ろ手でピシャンッと強く扉を閉めた。
そりゃお父様としても思うところはあるんでしょうよ。でも泣きながら土下座している中学生女子に、それはちょっと大人気なくない?
いつまでも土下座したまま、ただ『申し訳有りません!』を念仏のように繰り返す茉莉花ちゃん。それを、周囲の弔問客が固唾を呑んで無言で見守っている。
やれやれ、ここでも傍観者効果か。私は茉莉花ちゃんに歩み寄る。
「茉莉花ちゃん、立てる?」
「あ、あのときのお姉さん……」
覚えていてくれたのか。
「今はこの場にはいないほうがいいと思う。小津さんのご両親が落ち着くまで、そっとしといてあげましょう。ね?」
茉莉花ちゃんは無言でうなずくと、フラフラとその場を後にする。大丈夫かな? 送ってあげたほうがいいのかしらん。
迷ったけど、結局お線香の一本でもと私は小津さん宅に入った。泣き崩れているお母様を、お父様が介抱している。
「茉莉花ちゃんだけが悪いんじゃないんだ、わかるだろう?」
「わかるけど……わかっているんだけど……」
いたたまれないな。やるべきことをやって、私は速やかに小津さん宅をあとにした。
その数カ月後、死神の大鎌は今度は私に刃を向ける。私を呼んだのは死神か、それともティアの魂か。ううん違うな。
「リリィディア……」
私がティアに転生する度に現れる、あの魔法少女。何の根拠もないけど、あの世界に私を毎回導いているのは、リリィと名乗ったあの少女だ。それは間違いないって、確信にも似た自信が沸き起こる。
そして何故なんだろうね? あのお蕎麦が大好きな水色ちゃんとリリィという少女、何か関係があるような気がしてならないんだ。
『オッズワッルドッ様! おはようございます!』
今日も今日とて朝の挨拶、バイト前のルーティン。思わず海霊語であいさつしちゃったので、
「オハヨ、ゴザマス!」
うーん、朝からオズワルド様の尊顔を拝見できてご機嫌な私。って自分から会いにきてるのだけどね。
「やぁ、おはようジャスミン」
そしていつものように、あいさつを返してくれるオズワルド様。最初のころのぎこちなさはもうお互いになくなってて、むしろ微笑みかけてくれるようになった。
といってもカレカノの関係に進展したわけじゃない。仲のいいご近所さんて感じで、私もそれ以上を望んでいない。
(っていうか)
すっかり忘れてたけど、最初にオズワルド様に感じてた言葉で説明できないあの感情……まだなくなったわけじゃない。いやむしろ、強くなってると思う。
『う~ん?』
「どうしたんだい?」
「エト、オズワルドサマ、ワタシ、シッテル?」
何をだ。アホかな私。
「?」
「エト、ムカシ、アッタ、アル?」
うーん、この。帝国語は難しい。
「私が君と昔、会ったことあるかと訊いているのかい?」
「ソウ」
え、自分で言っておいてなんだけどなんでわかるの。エスパーか何かですか。
「うーん?」
そう言いながら、私の顔を覗き込むオズワルド様。ちょっ、顔近い近い! おもわず赤面して、顔をそらしてしまった。
「ふむ、覚えがないな。いつごろの話だい?」
「エト、ワカンナイ、デス」
さっきから何を言っているのか、私は私がわからない。オズワルド様も困ったように笑うと、それ以上はもう何も聞かれなかった。
「ア、ソロソロ、バイト……」
無念のタイムアップ。今度からは、ちゃんと言いたいことをまとめてからにしよう……。
「行ってらっしゃい、気を付けて!」
「ハイ、オズワルド、サマモ」
恋人みたいにお互いに手を振り合って、私はバイト先の花屋さんへ。
(もうそろそろ一ヶ月になるのかな?)
念願のお給料日が間近である。ソラさんは友達だからいいって言ってくれたけど、やっぱり借りたお金はお返ししたい。っても一ヶ月分の給料じゃ全然足りないのだけど、少しずつでも。
「オハヨ、ゴザマス!」
「やぁ、アメルちゃん。おはよう」
オズワルド様にジャスミンと愛称をつけてもらう前から働き始めたので、ここでの私はアメルだ。
人間族の店長さんとあいさつを交わし、いそいそと開店準備。店長さんは中年の男性で、たった一人でこの店を切り盛りしている……さすがに手が足りなくなってきたので、バイト先を探していた私と出会えたのはお互いに僥倖だった。
「テンチョ、オクサン、イマスカ?」
植木鉢の花に水をやりながら、語学学習も兼ねて世間話。
「いやぁ、男やもめでね」
「ヤモメ?」
「あぁ、わからないか。奥さんと死に別れた夫って意味になるかな」
知らなかったとはいえ、地雷を踏んじゃった!
「ゴ、ゴメナサ!」
「いやいや、気にしないで。昔は妻と二人きりでここをやっていたんだけどね。妻が病気で亡くなって……どうしようもなく落ち込んでいるとき、この花屋をやろうって最初に言いだしたのが妻だったことを思い出したんだ」
「オクサン、カタミ、デスカ?」
「そういうことになるのかな。でもずっと一人で働いているとね、そこに妻がいるんじゃないかっていつも……あ、すまない」
店長さん、ちょっと目がうるうるしてる。思い出させちゃった私が悪いね。
「ホント、モシワケ、ナイデス……」
オズワルド様もそうだったけど、愛する人との別れは本当にきついのだと思う。ましてやこの場をこのムードにしちゃったのは、私の失言が故だ。申し訳なくて……私もついつい泣いちゃったんだけど。
『コン、コロコロコロコロ……』
ん?
「え?」
「ア……」
何コレ? 私の目から出た出汁……じゃなかった涙が、床に落ちたとたんに丸い小さな石になって転がっていく。私はいつからそんなバケモノになったのだ。
転がっていったそれを、店長さんが追いかけてつまみあげる。五つぐらいあるかな。
「これは……真珠か?」
「シンジュ?」
って何だろ?
「何でアメル君の涙が真珠に⁉」
あ、シンジュか! っていやほんと、何で?
「ワタシ、ナミダ、シンジュ、ナッタ?」
「あ、あぁ……」
店長さんが、不思議そうな目で……いや、ちょっと訝し気に私を見つめる。私は私で心当たりがないので、頭の中はハテナマークでいっぱいだ。
「アメル君、君はいったい?」
「シッ、シラナイ! ワタシ、ワカラナイ!」
何かね、店長さんの目つきが……ちょっとイヤだったの。これは、異端な者を見る視線だ。私はバケモノじゃない、ホントよ?
「オ、オミセ、アケマス!」
その場を誤魔化すように、店長さんに背を向けて入り口の扉に小走りで向かう。もしもこのとき、少しでも後ろを振り向いていたら……とはあとですっごく後悔するんだけど。
「へぇ……涙が真珠に、ね」
店長さんが右の口角をあげて厭らしく嗤うのを、不覚にも私は見逃してしまっていたんだ。
『ジャスミンさん』
『はい?』
『念の為にお聞きしますけど、この先を聞いたらすごくイヤな気分になりますか?』
っていうか悪い予感しかしません、ホントに。
『えーと、えへへ!』
ジャスミンさんが、困ったように笑う。冷や汗、たら~りしてますよ?
「でもティア、ここで話が終わりってのもないでしょ」
そうなんだけどね。ていうかもうやめてってお願いしても、かの副作用はジャスミンさんに強制的に語らせるんだろうな。
なんで私のこのクソスキルは、ことごとく私のマインドをはっ倒しにやってくるのか。解せぬ。
『わかりました、続けてください』
『はい、お覚悟を!』
……この人の性格、よくわからなくなってきた。
結局、その話はその場限り。いつもと同じ、変わらぬ一日が始まる。
「あぁ、アメル君。ちょっと出かけたいんだが、一人でお店を頼めるかい? 小一時間ほどで戻ってくるのだけど」
お昼すぎ、店長さんにそう頼まれた。いや、それは構いませんけれども。
「デモ、オカネ、アル。ワタシ、アヤシイ、ナイデスカ?」
うーん、たかだか一ヶ月じゃ語学もそんなに上達しないな。
「ええと、それはつまり?」
「ワタシ、オカネ、トッテニゲル」
何言ってるんですかね、私。
一瞬ギョッとした店長さんだったけど、すぐに合点がいった表情に戻った。
「あぁ、君がお金を持って逃げるかもしれない。信用できるのか?という意味かい?」
「ソデス、ソデス!」
良かった、通じた!
「ははは、大丈夫。信用しているよ。ただお客さんの言葉がわからなかったとき、その場では時間をおいて来るように伝言しておいてもらえるかい?」
「ワカリマシタ」
「ありがとう、頼むよ」
もしこのとき、……いややめよう。『たら・れば』はいくら言ってもキリがないから。
そして店長さんが外出する時間になって。
「イッテキマス」
おいおいそれはお出かけするほうが言う言葉だってば、って今ならわかるんだけど。
「あぁ、留守中は頼むよ」
私が言い間違えてることをスルーしてくれた店長さん、この心遣いが逆に心に痛いです……。
店長さんを扉で見送って、一人店番に。うーん、もうメラクでの生活も一ヶ月だけど、一人で店番は初めてだ。うまく務まるだろうか?
『カラン♪ コロン♪』
さっそく客である。
「イ、イラシャイマセ!」
「やぁ、ジャスミン一人かい?」
「オズワルドサマ!」
ぽわわわわ~んと私から昇るハートマーク。いや、だから恋じゃないってば。
お店に入ってきたのは、オズワルド様だった。勤務途中なのもあって、鎧姿が凛々しい。
「すまない、客じゃないんだ。ジャスミンに伝言があってね」
「ワタシニ、デスカ?」
ちょうどそのとき、別のお客さんが入ってきた。
「イラシャイマセ! エト、オズワルド、サマ。マッテテ、クダサイ」
「あ、いや。仕事の邪魔をしてすまない。詳しいことは私の家でしよう。今日仕事が終わったら来てくれるかい?」
何故かオズワルド様は小声だ。入ってきたお客さんに聴かれたくないことなのかな?
「ワカリマシタ、イキマス」
オズワルド様とは、結局それだけ。そのお客さんとはやり取りがスムーズに進み、私は初めて自分一人で接客できた喜びに打ち震える。我ながら単純だなぁ。
(にしても何だろ? 何か大事な話があるのかな)
もしかして告白とか?
それは困る。いや、困らないけど困る。いやでもでも、そうだったら嬉しい。
(……嬉しい? 私が?)
自分の中で忙しない私。いやほんと、嬉しい、のかな?
『うーん? よくわからないや』
それはそうとして、朝の真珠事件。あれは結局何だったのだろう?
(もし私の涙が地上では真珠になるのだとして……オズワルド様の自宅前でも泣いたよね、私?)
そして思い出すのは、一人バカウケして大笑いのオズワルド様。
(……)
はい、やめやめ。答えがわからないことは、いつまで考え込んでもしょうがない。ソラさんにでも訊いてみようかな?
そんなこんなで、店長さんも帰ってきてほっと一安心。
「オカイモノ、デシタカ?」
「あ、あぁ、ちょっとね」
店長さんは、買い物袋いっぱいに何やら買ってきたみたいなのだけど。ロープみたいなのが見えるな。お店のディスプレイにでも使うのかな?
とりあえず夕刻までいつもどおり働いて、アッという間に終業時間だ。このお花屋さんは、夕刻すぎたらもう閉店なのである。
(外はもうすっかり暗くなってきたな)
帰り支度をしながら、窓の外を伺う。あまりオズワルド様を待たせてはいけない。
花屋の前は街灯があるものの、道の少し先はもう真っ暗だ。まるで魔物でも出そうな、えもいわれぬ不気味な雰囲気を醸し出している。
(こういうの、確か逢魔が時っていうんだっけ)
何だか怖いな。早くオズワルド様のところに行こう。
「ちょっとアメル君、いいかい?」
いざ帰ろうとした段階で、店長さんが話しかけてきた。もしかして残業だろうか? うぅ、どうやって断ろう。
「ちょっとこっちへ」
「ハ、ハイ」
店長さんに導かれるままに、お店の地下倉庫へ。ここには、お店に出すお花の植木鉢やら種子やらが保管されている。
「アノ、テンチョ、ゴメナサ。キョウ、ハヤク、カエル」
「あぁ大丈夫、『すぐに済む』から」
「エ?」
次の瞬間、私は派手に吹っ飛んでいた。顔が、熱い。
鼻から、ボタボタと血が流れているのがわかった。私、殴られた……の?
「いやいや、すまないね」
店長さんはそう言うと、ロープで手早く私の両手を縛りあげる。そして天井の梁にロープの片方を投げて通し、落ちてきたそれをグイッと引っ張った。
「イタイ!」
両手首が強制的に持ち上げられる形となり、店長さんはロープをドアノブに結びつけて固定する。私は、つま先がギリギリ着く状態で吊り下げられる形になった。
「ナ、ナニスル、デスカ⁉」
「うるせぇ! 騒ぐな!」
何が起こったのだろう? 怖くて足が震える。店長さんは、今までに見たことがない凶悪な表情だ。そしてゲスびた笑みを浮かべると、
「いやはや、お金の成る木がこんなところに落ちていようとはな。俺の運もようやく上向いてきたぜ!」
そう言いながら、私の顎をガッと掴む。
「ナ、ナンノコト。ハ、ハナシテ!」
店長さんは狼狽える私を見て、無言で嗤う。
「で、どうやったら泣くんだ? 痛いと泣くのか?」
その言葉で、私はすべてを察した。真珠に変わる私の涙を搾取する気だ!
「ヤメテ! ダレカ! ダレカ、タスケテ!」
「黙れって言ってるだろうが!」
またしても、店長さんの鉄拳が私の顔……ではなく、今度は無防備なお腹にめり込む。
「ゲホッ! ゴホッ! オェッ!」
少し、お昼に食べたものが出てしまった。
「うげっ、きったねぇな」
「ナッ、ナニヲ……!」
ギロリと、店長さんを睨む。その態度が気にくわなかったのか、腹に二発目が来た。
続いて顔に三発目……いや、最初のを含めると四発目になるのか。どうでもいいけど。
そして――。
『コロコロコロ……』
「おっ、出た!」
無念だ、殴られた痛みで涙が出ちゃったらしい。それが床に落ちて、真珠に変わる。
「ヤメテ、クダサイ! ロープ、ハズシテ!」
店長さんは能面のような無表情で、スッと拳をあげる。
「ヒッ!」
ついつい、怯んでしまった。
「黙ってりゃ殴らねえよ。それよりもっと涙、出ねえのか?」
「ワカラナイ、ムズカシイ……」
いかん、涙が出そうになる。我慢、我慢だ! こんなやつに人魚の涙なんてやるものか!
「ふん、しゃーねぇな。このままじゃ効率が悪い」
そう言って店長さんが、部屋を後にする。一人取り残されちゃった安堵で、またもや涙が出そうになる。
私は負けない。負けてたまるか。
店長さんはすぐに戻ってきたのだけど、お茶のポットを手にして……る?
「へへ、綺麗な足をしてるじゃねーか。もったいねぇなぁ」
「ナ、ナニスル、ツモリ⁉」
店長さんはおもむろに私の靴を脱がすと、私の足首から……ポットの熱湯を注いだ。
『熱い熱い熱い! やめて! やめて! お願い、許して!』
不意打ちだった。帝国語なんて使ってる余裕ない!
足首は縛られていないものだから、その場でジタバタと高速で足踏みするようなリアクションになってしまう。店長さんはそれを見て面白がりながら、私の足にどんどんお湯を注ぐ。
『やめて! お願いです、やめてください! 誰か助けて!』
さっきまでの反骨精神は、ポッキリと折れてしまった。涙がポロポロとこぼれては落ちる、のだけど。
「ゲッ、なんだコレは!」
『な、何……?』
私の目からこぼれた涙は床で真珠になり……足元にたまった熱湯で、濁った色に変色を始める。
「これじゃ売り物にならねぇじゃねえか!」
そう言って、私にポットを投げつけてくる店長さん。太ももに当たり、蓋が取れて落ちる。その際に熱湯を膝元から被る形になってしまったが、痛みの感覚が麻痺していてもう悲鳴も出ない。
(何でこんな目に遭わないといけないの?)
ただ荒い息だけが、私の口から出る。涙は相変わらず流れ出るのだけど、床に落ちては変色していく。
そしてそれが店長さんの逆鱗をさらに逆なでしたようで、
「今は泣かんでいい! 床を拭くまで待ってろ!」
そう言って部屋の片隅にあったモップを持ってくると、こぼれた熱湯を丹念に拭き取っていく。
真っ赤に腫れ上がった私の足首足甲に遠慮なくガッガッとモップを当ててくるのだが、火傷の痛みでよけることもままならない。拭くのに邪魔だからどけろってことなんだろうけど。
なんとか床を綺麗にし終えた店長さんだったけど、さっきまでと表情は一変していた。まるで親の仇でも見るような、そんな視線。
「お前が悪いんだぜ? ちゃんと泣かないから、さ」
そう言って店長さんが取り出したのは……刃渡りが十センチほどの、ナイフだった。
「ジャスミン、遅いな」
私は、もうすっかり暗くなった窓の外を伺う。
今日は、ジャスミンに逢って確かめないといけないことがある。亡き妻の憂いを、晴らすためにも。
妻が病院の窓から飛び降りて自殺した、その連絡を受けたときは驚天動地もいいところだった。お腹の子を流してしまい、一人自責の念にかられて妻はやせ細っていく。私は私で、妻と子を守れなかった悲しみに暮れて……結果的に、妻が一人心を病んでいくのを見逃した。
自分を責める妻に対して、私はどう声をかけるべきだったのか。夫婦二人して、お互いが自分が悪いのだと叫声をあげる。そこに、伴侶への配慮はあっただろうか?
(いや、妻は悪くない)
悪いのは私だ、私だけなのだ。
最初は、衝動的に飛び降りたのだと思った。だが、妻の葬儀が終わったころに一通の手紙が届く。それは、『亡き妻から』だった。
悪戯かと思った。だってそうだろう、何故死者から手紙が届く? 質の悪すぎる悪戯だ。しかし、消印を見て愕然とする。
「あいつが……飛び降りた日に投函されてる?」
慌てて封を切り、中を改める。間違いない、妻の文字だ。
ところどころ、涙で濡れて乾いたあとがある……私は、読むのが怖かった。
手紙の中にびっしりと書かれていたのは、謝罪の言葉。だが、子どもを守れなかったことについては少ししか触れられておらず……その謝罪の大部分を占めたのは、『私を騙したこと』についてだった。
あの冬の日、訓練船が氷山に衝突して座礁。そして沈没した。私は奇跡的に難を逃れ、砂浜に打ち上げられて。
そこを助けてくれたのが、亡き妻だった。重い鎧を脱がし、濡れた服を脱がし、そこからどうしたのかは話してくれなかったが……身体が冷えないように、適切な処置を施してくれて。そうして私は、九死に一生を得たのである。
しかし、多くの仲間や部下を失った。私一人だけが、生き残った。
何故? どうして私だけが生きている? そう自分を責める私に、まだ結婚する前の妻がかけてくれた言葉は今も覚えている。
『オズワルド様が今回助かったこと、死ねなかったこと。それにはきっと、何か意味があるのです。もしも……その意味を見つけられないで一人彷徨い続けるなら、迷いつづけるなら。私と一緒に探してみませんか?』
彼女は、看護師の仕事をしていた。だからその言葉は、患者に投げかけただけの励ましだったのかもしれない。だけどまるでプロポーズのようなその言葉に、私は明日を向いて歩く決意を固めることができた。
私が妻に惚れるまでにそう時間はかからず、恋人になってから逢瀬を重ね、指輪を送ってプロポーズ。そして結婚して間もなく妊娠したことがわかり、すべてが順風満帆だった。
だがその幸せを乗せた船も、やはり不運な航海に見舞われる。
最初、妻は衝動的に飛び降りたのだと思っていた。だが、妻は覚悟の上での自殺だったのだ。
そして手紙の中に書かれていたのは、あの船が座礁した日に私を助けたのは本当は妻じゃなったこと、騙すつもりではなかったが私が強くそう信じていたために言い出せなかったこと。
ずっとずっと気に病んで、身に覚えのない恩人となったことの重圧。私を騙しつづけていることの後ろめたい気持ち。
それらを小さな両肩に乗せて、それでも私と夫婦になれたこと、子どもができたことは何よりも幸せだったと。この幸せを手放したくはなかったと。
だから、あの冬の日に階段から足を滑らせてお腹の子を流してしまったことは罰なのだと。嘘つきで卑怯で裏切り者である自分への罰を、何の罪もない子が受けてしまったのだと。
(お前はそんなにも……苦しんでいたのか)
何故だ? 何故わかってやれなかった? 手紙の最後に書かれていたのは、『本当の恩人』のことだった。
「人魚……?」
人魚の女性が、一糸まとわぬ姿で私を朝陽が昇るまで抱きしめ続け、身体を温めていてくれたのだと。その様子に自分が気づいたときに、後を託すように人魚は海へ帰ってしまったのだと。
追伸、として記されていたのは、
『あの人魚の方のお忘れ物です。いつかお返ししなければならないと思っていたのですが、私ではもう無理なようです。愛するあなたに、それをおまかせしてもよろしいでしょうか?』
妻の手紙は、そこで終わっていた。そして同梱されていたのは、貝殻ビキニのブラ。
貝には詳しくないが、ビーチや浅瀬では決して見ることのできない品種。深海に棲む品種の貝殻なのだろうことは簡単に予測できた。
(じゃあ、本当に人魚が……?)
確かに恩人かもしれない。名前も知らぬ彼女にも、いつかは絶対にお礼を言わないといけないだろう。そしてこれを返さねばなるまい。
だが妻よ、君もまた私の恩人なのだ。同僚や部下を失ってささくれ立った私の心を慰めてくれたのは、生き残った理由を二人で探してみようと言ってくれた恩人は君ではないか。
だがもう、あの幸せな日々は戻ってはこない。だからせめて……せめて、君の最後の頼みだけは。
しかし、何の手がかりもなくいたずらに年月がすぎていく。本気で探していなかったかもしれない。私に関われば不幸になるのだと勝手に世を拗ねて、自暴自棄に生きてきたような気がする。
そんなある日、突然私の目の前に私の世界に現れたのは。カタコトの言葉をしゃべる、異国の少女だった。
何故か朝晩と家の前で不自然なぐらい出くわし、挨拶だけかわしていく。明らかに私に会いに来ているのは明白であったが、それもただただ鬱陶しいだけだった。
泣かしてしまうつもりはなかった。いくらイラついていたとはいえ、年端もいかない少女に怒鳴るなんて騎士の風上にもおけない行為だ。
「どうでもいい。私に近づくと、皆不幸になるのだ。だから私には、自分の幸せを願う権利なんてない……巻き込まれたくないだろう? だからもう私には、近寄らないでくれっ!」
「ソンナ、チガウ! オズワルド、サマ、シアワセ、スル!」
鬱陶しいし、煩わしい。本当にそのときは、そうとしか思っていなかった。だから、選択肢は一つだけ、ただただ拒絶のみ。
「もういいから行きなさい。そしてもう二度と……え?」
少女が、ポロポロと落涙する。唇を噛んで必死で涙をこらえようとしているのは、見てとれた。だが抵抗空しく、少女の涙はとどまるところを知らず。
「君、何故泣いて……」
だが少女は、あくまで泣いていないと、自分のその気持ちに抗う。
「チガウ、ナミダ、チガウ! メカラ、ダシガ! ニンギョノ、ダシガ!」
……いや、ちょっと待て。出汁?
あんなに笑ったのは、お腹がよじれるくらい笑ったのはいつ以来だろう。結局、平静を取り戻した私は泣かせてしまったお詫びも兼ねて、少女にお茶をご馳走することになった。
他愛もない会話で笑わせ笑い、そのさざ波のような穏やかな時間は私の心を何倍にも癒した。
少女は、明日の朝も来たいという。もう、鬱陶しいとも煩わしいとも思えなかった。むしろ楽しみにすら思っていたかもしれない。
誰かとの次の出会いを待ちわびる、それは妻と死別してからは久しく自分の中になかった感情だった。私のせいで誰かが不幸になる、もうそういう考え方はやめるべきなのかもしれない。それが亡くなった同僚たちへの、妻への手向けになるのではないだろうか。
そして何より、アメ……なんと言ったかな。私がジャスミンと呼ぶことにしたその少女に、また怒られてしまうな。
『オズワルド、サマ、シアワセ、スル!』
ジャスミンはそう言ってくれた。私はもう、幸せになっていいのかもしれない……いや違うな、私の手で幸せにしてやりたい。
この甘い、茉莉花の香りがする少女を。
(それにしても遅いな。仕事がたてこんでいるのだろうか)
センチな感傷に浸ってしまった。今日、ジャスミンに我が家にくるように言ったのには理由がある。というか来てくれと言わなくても、偶然を装った大根演技でいつものように家の前に現れるんだろうが。
今私の目の前には、十数粒の真珠がある。ジャスミンと初めて逢った日に、自宅玄関前の芝生にたくさん落ちていた。どれもが見事なクォリティで、とてもじゃないが平民には手の出せないレベルに思えた。
ジャスミンの落とし物かと思ったが、一粒で家の一軒二軒は立ちそうな価値のある代物だ。彼女のものではないだろう。そう思って、保安局に遺失物として届けでたのだが……。
「おいおいオズワルド、これをどこで見つけたって⁉」
顔なじみのアンドリュー。宝石店の倅ながら、三男であるために店を継げないのもあるだろうが騎士を目指す変わり者。私の大事な友人の一人だ。
宝石鑑定士としての資格を持っているので、保安局の職務として宝石の真贋鑑定も請け負っている。なので、鑑定用のルーペを常に持ち歩いているのだ。
「いや、だから自宅前に落ちてたんだ」
「んなわけないだろう! これは『人魚の涙』だ‼」
「え?」
アンドリューが話してくれたのは、とてつもなくスケールがでかくミステリアスで、そして哀しい話だった。
『人魚の涙』――海霊族の人魚種の涙から成る真珠で、通常の真珠の数百倍は値が張る。人魚種自体が亜人でありながらその多くが海中深くに棲んでいるので、滅多に宝石市場に出回ることはない。なので、各国の王侯貴族が黄金を山と積んでも入手は困難だという代物なのだとか。
そしてこの『人魚の涙』には哀しい歴史があって……その真珠の持つ価値から、亜人でありながら『乱獲』の憂き目に遭ったのだと。
多くの人魚がその涙を搾取されるために捕まり、死ぬまで真珠を産み落とすことを強制され続け、ときには行きすぎた拷問で命を落とした。まったく反吐が出る話だ。
「もう数百年も前のことだけどな。今そんなことやったら、よくて終身刑。普通なら死刑だ」
……私は、何か大事なことを忘れていないか? 思い出せ、思い出すんだ。
ジャスミンが確か、何だったかな。何か。
『チガウ、ナミダ、チガウ! メカラ、ダシガ! ニンギョノ、ダシガ!』
「なぁ、オズワルド?」
「何だ? アンドリュー」
「その思い出し笑いをしたくてこらえてる顔は何なんだよ!」
いやいやそうじゃない、それどころじゃない。しっかりしろ、私よ。
「人魚の出汁…じゃなくて涙?」
だがジャスミンには、脚があった。彼女は人間だ。でも……だが……。
「なぁ、アンドリュー。人魚種というのは下半身を人間態に変化させることはできるのか?」
「何言ってるんだか、無理に決まってるだろう? 俺らが下半身を魚にできるか?」
アンドリューが、呆れたように溜め息をつきながら言う。それもそうか。
「大体そんなの、専用の魔導具がないと無理だっつーの」
「魔導具? 魔導具があれば可能なのか?」
「可能、という話は知っている。ほら、うちの国の塔の賢者さん。名前なんつーたっけ?」
「デュラ師だろう?」
我が国メラクの天璇の塔に住まう、真祖の吸血鬼の女性賢者。たった一人で国一つを簡単に滅ぼせてしまうレベルのバケモノだ。
だが同時に、デュラ師が我が国に居を構えているからこそ諸外国へのけん制になっているのもあり、良くも悪くもメラクの象徴的存在である。
「それそれ、そのデュラ師の……なんつーたかな、仲のいい大商会の会長さ」
「ソラ師か?」
隣国フェクダの、天璣の塔の魔女・ソラ師。魔女というよりは呪術師として著名な存在らしいのだが、このメラクでは魔導具を販売する大商会の会長として知られている存在だ。
実際に私も、かの商会から大陸で名うての鍛冶師・ターニー師が鍛えた剣を購入したことがある(貯金が全部吹っ飛んだが)。
「そうそう。彼女の商会で、そういうのを可能にするという魔道具が売ってんだ。つーても城の三つや四つ簡単に建っちゃう値段な上、人魚種は帝国のお金なんて持ってないから一般的じゃないんだけどな」
何でお前が、そんなことを知っているんだ?
「各国の魔導具師や商会が商品を発表する、品評会みたいなイベントみたいなのがあってさ。実際は非売品ばかりなんだが、商談できないわけじゃない。俺も真贋鑑定士として、招待されたことがあるんだ」
本当にこいつ、騎士志望なのか? もったいないような気がするな。
「でもそれがあれば、人魚種でも人間の足が手に入るのか?」
本当にそんなことが可能なのだろうか? いくら魔導具とはいっても……『そう見せる』という視覚を惑わせるためのものならわかるが、実際に歩くにはそれでは用を成さない。
「実際に使われたところを目撃したことはないけどな。何かこう、手首の大きさギリギリの継ぎ目のないブレスレットでさ。あれ、どうやってハメてんだろって不思」
「ちょっと待て! 今なんと言った⁉」
「え、いやだから手首の大きさギリギリの継ぎ目のないブレスレットで……どうかしたか?」
ジャスミンが……彼女がいつも腕にはめているブレスレット。あれがまさしく『そう』じゃなかったか⁉
結局、この真珠が『人魚の涙』ということだけははっきりした。それにしても――。
「なぁ、人魚種の亜人を目撃したことはあるか?」
「ないな。書物の写し絵で見たことがあるだけだ。オズワルドはあるのか?」
ある……のかもしれない。
「人魚種なんて、海溝深くに棲んでてて地上には出てこない。過去に人間族に搾取された歴史もあってなかなかな」
かの船が氷山にぶつかった場所は、岸から数百メートルの沖合だ。とてもじゃないが海溝深くといえる場所ではない。
(なぜ、あんな場所に人魚が?)
思わず考え込む自分を意に介さず、アンドリューが続ける。
「ああ、でもミザール王国の貴族のところに人魚種の奥さんが嫁いだって話は聞いたことあるな。俺が写し絵で見たのもその婦人だ。コーラルビーズさんとかいったか」
「ふむ、まったく姿を現さないわけじゃないんだな」
それどころじゃない、亡き妻が目撃しているのだ。
「なぁ、もしも、もしもなんだが」
「何だ?」
「人生で人魚種二人に出会う可能性て、どのくらいあると思う?」
確信はない。ないのだが……私の中に一つの疑念が湧き上がる。
「あっははは! そんなことあるわけないだろう。かろうじてあるとしたら、同一人物に二回会うぐらいだろうよ」
「……そうか、ありがとう」
そんなやり取りがあり、アンドリューには『落とし主に心当たりがある』とだけ告げて真珠は私が自宅に持ち帰った。
(ジャスミン……私を助けてくれた人魚は、君だったのか?)
まずはそれの確認。そしてこの真珠を返し……。
「こんな高価な物を持っていたら、狙ってくれって言ってるようなもんだな」
さて、どうしようか。
(そしてもう一つ……)
かの人魚が忘れていったという貝殻のブラ。それを握りしめている私は、傍から見たらとっても不気味な変態に見える違いない。もしこれをジャスミンに渡して、
「これは君のかい?」
もしそうだったとしたら、彼女は顔を真っ赤にして恥ずかしがるに違いない。恥ずかしさのあまり、私の前から姿を消してしまうかも。
ではもし、ジャスミンの物じゃなかったら?
「この変態!」
と言って殴られてしまうかもしれない。うーん、損しかしないではないか。
「そんなことも言ってられないな」
私を意を決して家を出る。いくらなんでも、ジャスミンの来訪が遅すぎる。
すっかり外は暗くなり、夜の帳が降りてきていた。女性一人が出歩いていい時間帯ではない。
ときおり、家なしのチンピラとすれ違う。私から金品を奪えるかどうかを勘案し、騎士隊長としての鎧姿を見て諦めたように目をそらしていく。
「迎えに来て正解だったな」
やがて、ジャスミンの働く花屋が目に入ってきた……のだが、照明が消えてる。もう閉店しているのか?
(確か住み込みだと言っていたな)
だが花屋の二階もどこの窓も、灯りは点いていない。行き違いになったのだろうか?
とりあえず店の前まで来てみる。ノックをするが、返事がない。ただの留守のようだ。
「ふむ、どうするかな」
そのとき、微かに聴こえてきたのは……悲鳴? 気のせいかもしれない。だが気のせいじゃなかったら? この店は、普段は男性の店長とジャスミンだけのはずだ。
「何ごともなかったら弁償するので、許せよ」
私はドアノブを腕力だけでねじり切った。そして扉を開けて店内の、かすかに音のする方向へ急ぐ。
(地下室か?)
灯りが、地下室扉から漏れている。そして悲鳴が気のせいではないことを確信した。
「ジャスミン! そこにいるのか⁉」
扉を蹴破って……私は自分の目を疑った。何だこれは。何だこれは‼
ジャスミンが、ロープで吊り下げられている。天井の梁を介して、こちらとは反対側の扉のドアノブにその端が結ばれていて。
鮮血に血濡れたワンピースのスカートが、柳の枝のように縦にザクザクと裂かれている。足のつま先がギリギリ床に着いていたが、足首から先が真っ赤に腫れ上がっていた。力が入らないのか、足指は足裏部分ではなく足甲側の爪先が接地している。
『オズ、オズワルド様……た、助けて……』
海霊語はわからなかったが、涙でボロボロの顔で私を縋るように見つめるジャスミンと……そのそばで、小瓶を持ったまま何が起こったのかわからず立ち尽くす男。その小瓶には、無数の真珠らしき物が詰められていて。
何だ? いったい何が目の前で起こっているのだ?
「な、何をしている……んだ?」
「ああん、誰だよてめぇ!」
そしてその男は、ジャスミンの……『太ももに埋まっていたナイフ』を抜いた。
『あああぁっ‼』
ジャスミンの悲痛の呻き声と同時に鮮血がほとばしって、壁を、床を深紅の返り血に染める。
その男――おそらく店長だろう。私の鎧姿を見てまずいと思ったのか、とたんにヘコヘコと頭を下げながら、こちらの顔色をうかがうように厭らしく嗤って。
「いえね、うちの店員の教育をちょっと?」
「お……」
「お?」
おおおおおおおおおおっっっ‼
ダッシュで駆け寄ると、その男の顔面に鉄拳をぶち込む。その男が吹っ飛んでいくが、上から多い被さり続けて二発三発……四発、五発、十発、二十発。
私は、ただひたすらに殴り続けた。完全にそいつの頭蓋が砕けて、もはや人間の頭部の形を成していなかったが関係ない。
『オズワルド様っ、ダメです! それ以上やったら死んでしまいます!』
ジャスミンが海霊語で何ごとか叫んでいるが、殴り続けるこの腕が止まらない、怒りが治まらない、涙が止まらな……え? 私は、私は泣いているのか?
「オズワルドサマ、オチツク! ワタシ、ダイジョブ!」
不意に目の前の暗雲が晴れたかのように、ジャスミンの声が明瞭に聴こえてきた。
「あ……」
「オズワルドサマ、ダメ、ナグル。ツカマル! ダカラ、ダメ!」
涙をボロボロこぼしながら、ジャスミンが叫んでいる。床に落ちた彼女の涙が、次々と真珠に変わる。
「ジャスミン……あぁ、ジャスミン!」
私はフラフラと、ジャスミンに歩み寄っていった。
「……」
「……」
『というわけで、私はすんでのところでオズワルド様に助けていただいたんです』
すんでのところ、ってそういう意味だっけ? というかあまりにも陰惨すぎて、言葉が出てこなかった。
『ジャスミンさんには申し訳ないけどさ、オズワルドさんも悪い人じゃないのはわかってるんだけどさ』
「ティア、それ今言うこと違う!」
私が何を言うか察したターニーが、止めに入る。
「言わせてよ!」
『何でしょう?』
お願いだから言わせてよ。言わずにはいられないよ。
『やっぱり人間はクソだ! クソ以下の生き物だ!』
ターニーがちょっと苦虫を噛み潰したような表情になり、ジャスミンさんの顔色をうかがう。ジャスミンさんはターニーに、大丈夫とばかりにニコッと笑って私に向き直ると。
『ティアさん……でも、人間の誰もが悪い人じゃないんです。いい人だっていっぱいいます。現に、オズワルド様は助けにきてくださいました!』
わかってるよ、わかってるんだよ。わかりたいんだよ、でもわからないよ……。
もう心の中が滅茶苦茶だ。一番つらい思いをしたのはジャスミンさんなのに、この場で私が一番泣いている。
とてつもない悲憤と慟哭の涙が、後からあふれてあふれて止まらない。
『ジャスミンさん、ティアは……』
『わかっています。妖精族が人間族から過去に何をされたか、姉から聞きました』
……。
『仲間、ですね!』
……はい?
『人魚種も、過去に人間族に酷い憂き目に遭いました』
あ、はい。
『でも私、人間好きです。オズワルド様、好きです』
うん……。
『そっ、そういやさ! そのオズワルド様って今何してんの? ジャスミンさんと結婚しちゃったりなんかして?』
ターニーが空気を変えたいとばかりに、半ば強引におどけて見せるのだけど。あ、でもそれは私も気になるや。
『あ……オズワルド様は、逃げちゃいました』
「へ?」
「は?」
そういや私ら、ずっと温泉に浸かったままです。茹っちゃいます。
特にジャスミンさんと私は、全身が赤く火照ってます。ターニーは褐色肌なのでわかりづらいけど。
『このまま温泉にずっと入っていると、あの日の私の足みたいになっちゃいますね!』
いえいえジャスミンさん、その冗談笑えません。
なので続きは私とターニーの部屋でということになって、私たちは温泉からあがることにしたのでした。
「あれ?」
『ターニーさん、どうしましたか?』
私とターニーの部屋に、ジャスミンさんを招いての女子会。前世ニホンでの、ってもう言い飽きたのでズバッと言うね? 畳の上で背もたれ付きの座椅子に座って女子三人。浴衣姿でヤーマ独特の透き通った湧き水のようなお酒(つーかニホン酒じゃないですかコレ)で一杯やりながら、お酒の感想を言い合ったりなんかして。
なかなか始まらない温泉での続きだったんだけど、
「何よ、ターニー」
「あ、うん。ボクもティアも、温泉のときから帝国語話したり海霊語話したり自分らでもよくわからない状態になってたけど、ジャスミンさんて帝国語を聞き取るのは大丈夫なの?」
そういえば。
『ほとんどわかります。ただ、どうしてもわからないことは聞くので、そちらも私の言葉でわからないことがあったら遠慮なく!』
というわけなので私とターニーは帝国語で、ジャスミンさんは海霊語で話すことになった。
「それでジャスミンさん、改めて聞きたいんだけどさ」
『何でしょう?』
「その、真珠の涙について」
ターニーのその台詞がきっかけになり、温泉での続きが始まってしまった。
「オズワルド様に最初に逢いにいく前、バーでオズワルド様のこれまでのことを聞いて泣いちゃったとか言ってたような?」
『えぇ、言いましたね。それがどうかしましたか?』
あ、なるほど。気づかなかった。
「そのバーでは涙の真珠はどうなったんですか?」
ターニーに代わり、私が後を引き継ぐ。まさか酔客が持ち帰った? それともバーの店主がちょろまかしたとか?
『あぁ!』
ジャスミンさんは心当たりがあるようで、特に慌てた様子はなくて。
『お酒が入っていたからですね!』
「へぇ?」
「お酒が入っていると真珠化しない……?」
『みたいです。まぁ見ててください。フンッ!』
そう言ってジャスミンさんは、二本の指で自分の両目を突いた。
『ウグッ! ぐをををををををっ!』
へっ?
「ちょっ、ジャスミンさん何やって⁉」
『うぅっ、痛い! 痛ぁーい!』
え、何々? いったい全体何がどうしてそうなったの? 自分の両目を手で抑え、床を七転八倒のジャスミンさんだ。
「だっ、大丈夫ですか⁉」
「何で自分を目潰し⁉」
困惑する私とターニーをよそに、ジャスミンさんは涙をポロポロと流しながら真っ赤な目でニッコリと笑い、
『ね?』
「何が⁉」
やっぱりこの人はわけがわからない。しかもですよ?
『コンッ、コロロロ…コンッ、コロロ……』
テーブルの化粧板に落ちて転がる、二粒の真珠。
「……」
「……」
『……』
真珠になったんですけど。
「えーと」
「やばい、全力でツッコミたい」
『あれ? あの、じゃあ……お一つずつ、どうぞ?』
なんかバツが悪そうにそれでも笑いながら、ジャスミンさんが真珠を手渡してくる。
「あ、ありがとうございます」
待て待てターニー、簡単に受け取るな。これって、お家が一つ二つ建つお値段とか言ってませんでしたっけ?
そして一瞬の静寂のあと、全員で腹を抱えて笑い転げたのでした。
(話しの続きが始まらなーいっ!)
女子三人、お酒を囲んでの夜はなんだか長くなりそうです。
いつからそうしていたのだろう。目が覚めたら、見知らぬ天井……慌てて周囲を確認する。ここは、病室?
だけど、脚が痛くて痛くて立ち上がれない。ふとベッド脇を見ると、水差しとグラス。そして、小さなハンドベル。
とりあえず上半身のみをうんしょうんしょと頑張って、水を一口。
(これ、呼ぶための物だよねぇ?)
ハンドベルを鳴らしてみる、間を置かずに足音が聴こえてきて。ノックをして入ってきたのは、オズワルド様と同じくらいの年齢の男性と……鳥獣人の女性? コウモリの羽っぽいのが付いてる。本で見たことしかないけど、吸血種だろうか。
というかね、その女性いや女の子といったほうがいいのかな。私よりちょっと年上な感じ。末広がりの金髪のショートヘア。
ちょっと勝ち気そうな顔立ちではあるけど、そこが逆にチャーミングだ。深紅の瞳もミステリアスで。
「目が覚めたかい、ジャスミンさん。足はどうかい、痛むかね?」
「ア、ハイ」
さすがに大丈夫ですと高楊枝はできない痛みだったので、やせ我慢はしない。
「アノ、オズワルドサマ、ドコ?」
「……」
その男性はちょっと黙り込んだが、
「名前を言っていなかったね。私はアンドリュー、君の聴取を担当する保安局員だ」
「ホアン、キョ?」
『保安局。まぁ事件とか悪い奴を逮捕してくれるところさ』
そう助け船を出してくれたのはその少女、海霊語だ!
『海霊語! 話せるんですか⁉』
『ま、ね』
そう言って少女はアンドリューさんに向き直り、
「私の海霊語、通じるみたい」
「それはよかった。通訳頼めるか?」
「高いよ?」
そう言って、人差し指と親指でマルを作るジェスチャー。あれ、どういう意味だろ?
「ちゃっかりしてんな!」
以下、通訳してもらいながらこんな会話を交わした。
『それで、オズワルド様は今どこに?』
「君は…オズワルドを助けたいかい?」
……助ける? 助けてもらったのは私、では。
『オズワルド様に何が、何かあったんですか⁉』
「君をそんな目に遭わせた犯人を……彼は立場上、拘束して尋問しなければいけなかった。やりすぎたんだ」
『それはどういう……』
「このままでは、過剰防衛か……それともオズワルドもまた立件されてしまうかもしれない」
『店長さんは、どうなったのですか』
「かろうじて息をしているが、息をしているだけでそれ以上でもそれ以下でもなくなってる。脳死、って言葉知ってるかな? このままじゃ、オズワルドの暴行という事実だけが残る」
『違います! オズワルド様は私を助けてくれたんです! 見て! 見てください! 店長さんは私の脚をこんな目に!』
私は勢いよく掛け布団を取った。ほとんど包帯が巻かれている両脚。包帯にはナイフで刺されたあたりが血で滲んでいる。そして、
「わ、わかっている! だから布団をかけなおしてくれ!」
アンドリューさんは顔を真っ赤にして、自分の手で自分の顔の前に壁を作り、そして視線を逸らす!
『もっとよく見てください! ホラ! ホラ!』
私は必死だった。だからその女の子が苦笑いを浮かべ布団をかけ直してくれながら、
『キミ、下はパンイチなんだよ。妙齢の男性には刺激が強いね?』
って言われるまで気づかなくて。
『あっ……』
私は脚に包帯が巻かれているとはいえ、パンツ一丁で何言ったっけ……『もっとよく見てください、ホラ!』とかなんとか。もう穴を掘って埋まりたい……。
赤面して俯いちゃった私が立ち直るまでちょっと時間をもらい、改めて話を聞く。
「――というわけで、犯人からの証言は取れない。なので被害者である君の口から、あの場であったことをすべて証言してほしい。その内容次第では、オズワルドも軽い罪で済むかもしれないんだ」
軽い罪も何も、オズワルド様は悪いことは何もしていない! そう叫びたかったけど、ここはオズワルド様のために我慢だ。
『わかりました……でも、私の証言だけで大丈夫なのでしょうか? 信じてもらえるのですか?』
死人に口なし、だっけ?(死んでないけど) オズワルド様の味方である私の証言など、信用してもらえるのだろうか?
「それについては心配いらない。聴取はこの方、デュラ師に担当してもらう。君はデュラ師には、絶対に嘘がつけなくなるんだ」
『はぁ……』
どういうことだろう? そしてここからは、そのデュラさんという女の子との会話。
『私の目をよく見てくれる?』
『ハイ』
そして、その吸い込まれそうな深紅の瞳を凝視する。何やら遠くからキーンという金属音が聴こえた気がして。何だろう、デュラさんのことを考えると胸がバクバクして頬が上気する。
『オーケー。では聞くけど、キミとオズワルドとの関係は?』
関係……そういや、何だろう?
『わからないです』
『わからない?』
『好きなのかどうなのか。あ、いや大好きです。でもこれが恋なのかっていわれると、私は恋ってものを知らなくて……』
『そう。じゃあ私よりもオズワルドのことが好き?』
『デュラさんよりも、ですか?』
『そう』
この人は何を言っているのだろう。さっき初めて逢ったばかりなんだよ? しかもあなた、女性ですよね⁉
『もちろん、オズ……ううん、私は本当はデュラさんのことが、デュラさんのほうが好きなのかもしれません!』
何言ってんの私。
「よし、かかったよアンドリュー」
「相変わらず凶悪ですね、あなたの『魅了眼』」
「凶悪とか言うな!」
デュラさんは私に向き直ると、
『これから私の言う質問に正直に応えてほしいんだ。絶対に嘘をついちゃいけない』
『ハイ……♡』
何故だか私はデュラさんに気に入ってほしくて、ベラベラといろいろ喋ってしまう。もちろん、嘘を付いたら嫌われるので、本当のことしか言ってない。
『ありがとう、子猫ちゃん。参考になったよ』
『こっ、子猫ちゃんだなんてそんな♡ できれば、小魚ちゃんて呼んでほしいです♡』
私、何言ってるんだろうね? すっかりデュラさんにメロメロになっている私は、もうオズワルド様のことなんかアウトオブ脳内になってた。
『じゃあもう一回、私の目を見て?』
『ハ、ハイ! ……ん?』
『お疲れ様、気分はどう?』
『何か頭の中がボーッとして……』
いやほんとに、何がなんだかわからなくて。
『確認だけど、私とオズワルドのどちらが好き?』
この人は何を言っているのだろう?
『おっしゃってる意味がよく……?』
「アンドリュー、終わったよ。私の役目はここまでだ」
「お疲れ様です、デュラ師」
『???』
いったい何が起きたのだろう?
「まさか、ソラだけじゃなくデュラにまで逢ってたとはね」
ターニーは苦笑いだ。私も、不意のデュラ登場でびっくりした。
「デュラのあれは『魅了眼』。私の『真実の瞳』と似たようなスキルで、相手に強制的に惚れさせて真実を喋らせる凶悪な手段なんだ」
「え、ティア。『真実の瞳』のことジャスミンさんにばれていいの?」
あっ……。
『それ、何です?』
自爆してしまった。しかも上手く言いつくろえばいいものを、『とっさの嘘がつけない』という妖精族独特のそれで言い淀んでしまい、結局。
『――なるほど、私がティアさんにベラベラとプライベートなことを自発的にしゃべってしまうのはそういう……』
「ごっ、ごめんなさい!」
もう土下座だ! 謝っても許してもらえるかどうかはわからないけど。
『あ、頭をあげてください』
ジャスミンさんは困ったように土下座した私の半身を起こすと、
『故意にかけることのできないスキルなんですよね? だったら仕方ないです。それにデュラさんは自発的に使えるみたいですけど、デュラさんがいたからこそ結果的にいい方向に進んだんです。だから気にしないで!』
「ありがとう、そして本当にごめんなさい!」
私もターニーも、一安心といった顔でとりあえず安堵する。
ちなみにですが。デュラの『魅了眼』は私に効かないし、私の『真実の瞳』もデュラには効かない。以前、お酒の席でふざけて対決したことがあるんだけど、そのときはどちらも泡吹いて倒れちゃったんだよね。
『続けますね? 私の証言によって、オズワルド様は懲戒解雇で済んだ……というか、それもどうなのかと私は思うのですが。とりあえず、前科は付かない形になりました』
それは何より。
『でも私の入院中、オズワルド様とは全然会えず……なんとか歩けるまでに快復して、いよいよ退院というところまできたのですが』
ちょっとだけ、ジャスミンさんの表情が曇った。
『え?』
「オズワルドは、もうここには……この国にはいない、と言ったんだ」
「ド、ドウシテ。オズワルドサマ、ドコ?」
退院の際に、アンドリューさんから告げられた事実。そして手渡されたのは一通の封筒。
「君あての手紙だ」
「ヨ、ヨメナイ、デス」
「あ、そうか」
ヒアリングはなんとか、話すほうはたどたどしいながらだけど、文章にはちょっと自信がない。
手紙の中に書かれていたのは、こんな別れの言葉だった。
『ジャスミンへ。
君があの海で助けてくれた人魚であることは、妻から聞いた。
ありがとう、本当にありがとう。
そして仲間を失い家族を失った私の前に現れてくれて、それにもお礼が言いたい。
君との穏やかな凪いだ海のような日々は、とても楽しかった。
私は生きてていいのだ、そう思えた。
私のせいで誰かが不幸になるなんて、もうないのだ、そう信じることができそうだった。
だけどダメだな。私は学習しない愚かな男だった。
だから君を、私のせいで不幸にしてしまった。
まただ、またやってしまったんだ私は。
もうこれ以上、誰かが私のせいで不幸になるのは耐えられない。
君の『人魚の涙』だけで生活していくには十分な金に換えられるだろうが、それでも。
私の所持する不動産、財産すべてを君に譲渡する書類をアンドリューに託す。
君がこの手紙を読むころ、もう私はメラクにはいないだろう。
たとえ遠くとも、同じ星が見える空の下で君の幸せを祈っている。どうか、達者で』
「ソ、ソンナ」
違う、違う! そんな言葉が聴きたかったんじゃない。
『そんなのってないっ! オズワルド様、ひどい! どこに、どこに行っちゃったんですか!』
「お、落ち着きたまえ!」
私の涙から落ちた涙が、真珠となって病室の床を転がっていく。
「ジャスミンさん、君は……オズワルドを追いかけたいかい?」
『もちろんです!』
あ、つい海霊語で返答しちゃった。
「よかった。ぜひ追いついてくれ。俺も彼の友人として、あいつがこれ以上自らを追い詰めていくのはイヤなんだ」
「アンドリュ、サン……」
「とりあえず、隣国フェクダへ入国したことは調べがついている。そこから先は不明だが」
「イエ、ダイジョブ、デス! オイカケル、スル!」
そこからの私の行動は早かった。オズワルド様は私の後見人という形で戸籍に登録してくれてもいたらしくて、これが外国への入出国にかなり役に立った。
脚の怪我がまだ完全じゃないので、いくら脳筋な私でも人魚に戻って泳いでいくわけにはいかなかったからだ。幸い、旅資金は潤沢にある。
フェクダでは、ソラさんに協力してもらった。そしてソラさんから得たのは、今度は南下してメグレズ王国に入ったということ。そこから先は苦労するだろうな、と思ったらソラさんがいいことを教えてくれてた。
オズワルド様は、戸籍上は後見人という私の保護者にあたる立場だ。役所に行くと、簡単に入出国記録を教えてくれる。メグレズから今度はアリオト王国、アリオト公国からミザール王国。
(いやはや、どこまで行くつもりなんだろ?)
私は、もうなんだか楽しくなってきていた。絶対追いつく! そしてビンタの一発でもくれてやらないと気が済まない!
宿の部屋で大陸の地図を広げて。
「思えば遠くに来たもんだなぁ」
このままだと、大陸最東端のベネトナシュ行きかな? そこから先は何もない(と思う)。海はあるけど、はるか遠くまで海上で足を延ばせば知らない大陸に着くとも、大陸の最西端であるドゥーベ市国やメラクに繋がってるとも言われてるけど、不確かな情報で冒険はできない。
「さて、どうしようか」
とりあえず、役所に言って確認! したら、
「アルコル諸島へ向かわれていますね」
『アルコル?』
脳内で地図を広げて確認。東隣の隣国はベネトナシュだが、南にある港湾都市の海向こうにあるという小さな島国だ。
「アルコル、イク、ドウスル、デスカ⁉」
ベネトナシュは同じ帝国領だが、アルコルはこれまでに通過してきたどの国とも違う『完全な外国』だ。今までどおりにはいかないだろう。
……と思ったら、あっさりと旅券と査証が出た。メラクの元騎士隊長の後見というのは本当に伊達じゃない。一介の人魚では、とうてい成しえなかっただろう。
いよいよだ、いよいよオズワルド様に逢える。そう思って、港へ急ぐ。
港へは、魔石寝台特急というのに乗ってみた。列車はここに来るまでに何度か利用したから知ってはいたけど、列車の中にお布団があるのが不思議だ。とは言っても、別に列車の中で寝たいわけじゃないから一般座席のチケットを購入。いざ、港へ!
『で、港に着いたんですけどね。一般座席の車両は港停まりだったらしくて』
「あー……」
そうだ、魔石寝台特急『なると』は寝台客車のみが連絡船に積み込まれ、そこで切り離された一般座席のみの車両は折り返し運転になるのだ。
『そして私、慌ててしまって。船のチケットを買えばいいのか、寝台特急の切符を買えばいいのかわからないから。パニックになってたのもあって上手く帝国語が話せず、切符を買い損ねちゃって。その連絡船は出航してしまったんです』
「それで次の船に乗ったのね?」
『いいえ、何だか先行した連絡船でフレア肺炎?とかいう病気が船内でまん延したらしくて』
……もしかして、私たちが乗ってきた連絡船だろうか。
『何だかその日は、もう出航が自粛されたんです。次の日以降も出航するかどうか不明っていうことなので、久々に人魚に戻りました』
「それって、寿命が二十年縮んじゃうとかいう……」
ターニーがちょっと暗い表情で応じるのだけど、
『そんなもん、オズワルド様をひっぱたいたら十分お釣りがきますよ!』
そう言って笑うジャスミンさん、なかなか剛毅なお人柄だ。
『それで船を追いかけたんですけど、何故か途中で海上に停まったまんまで?』
あぁ、船内は大変だったんだよ。アンさんという聖女さんと一緒に、船内を駆けずり回ってたんだ。
『別にこの船にオズワルド様がいるとは限らず、もうアルコルにいる可能性もあったんですが。一応確認しようと思って、こちらの港に先回りしたんですね』
でも、こっちに上陸してまた人間の脚に……これで、ジャスミンさんは四十年寿命が縮んだことになる。最初の変身と合わせると六十年だ、恋する乙女は命がけだなぁ。
「あ、ティア。ジャスミンさんが海中から降船客をチェックしてたのって?」
「それか!」
合点がいった。一人一人を凝視して確認していたけど、最後の降船客だった私とターニーは女性二人連れ。オズワルドさんでないことは明らかだったから、さっさとどっか行っちゃったんだ!
『まぁ結局、オズワルド様はいなかったんですけどね。ついでだから、アルコル諸島をかたっぱしから探して回ろうと思って』
うーん、アクティブな人だなぁ。
「で、『なう』なわけね」
「なう? ティア、何それ」
「あぁ、何て言えばいいんだろ。えーと?」
『なう、わかりますよ。今の状況がこうですよってことですよね。ニホンでも使ってました』
……はい? 今、何て?
『とりあえず明日は、このシュラの国を探して回ろうと思います。私、負けませんよ!』
そう言って怪気炎をあげるジャスミンだったんだけど。
(今ジャスミンさん、確かに『ニホン』て言った…よね?)
ジャスミンさんの話もそこまでだったので、あとは女子三人でくだらないネタで盛り上がる。コインを入れて視聴できるエッチなチャンネルを見ては騒ぎ、お酒が足りないと言っては次々と栓を開ける(主にターニーが)。
「ねぇ、あそこの床の間にかけてある掛け軸の絵、何だろ?」
キャッキャウフフもひとしきり、今は落ち着いて皆でニホン酒をちびちびと。私はここぞとばかり、ちょっと『餌を撒いて』みた。
「トコノマ? カケジク? 何それー、ティア~」
何がおかしいのか、酔っぱらってるターニーがけたけた笑う。やっぱりか、いくらニホン風な国だからといって、すべての物の名前がニホンとは合致しないようだ。
そして、ジャスミンさんのお猪口を持つ手がピタリと止まったのも見逃さない。多分『当たり』なんだろうな。
結局その場はお開きとなり、ジャスミンさんは自分の部屋へ。ターニーは布団の中へ。私は寝る気にもなれず、酔い覚ましも兼ねて旅館の開放されている屋上へ足を向ける。
満天の星空は、今にも降ってきそうだ。懐かしいニホン風の温泉や食事だったが、知らない星座ばかりで。やはり世界が違うんだよねぇと、当たり前のことに思い耽る。
私は満天の星を抱きかかえるように、両手を空に向けて思いっきり広げて。
「夏は夜。月のころはさらなり、闇もなほ、ほたるの多く飛びちがひたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。雨など降るもをかし」
清少納言が随筆『枕草紙』で、夏を述べた部分だ。久しぶりにニホン語喋ったな。
(夏が終わるな……)
夜風も涼しくなって、秋はもうすぐそこに来ている。
そして、ゆっくりと両手を降ろす私の後ろから聴こえてきたのは。
「秋は夕暮れ。夕日のさして山の端いと近うなりたるに、烏の寝所へ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛び急ぐさへあはれなり」
それはそれは綺麗なニホン語で……ジャスミンさんだ。
「『冬』は何でしたっけ?」
そう言って、笑う。
「『つとめて』、ですね」
そう応じる私は、何故か心穏やかでいた。
「つとめて……ええと?」
と問うジャスミンさんに、
「冬は早朝がいい、てなところですかね」
なるほど、と納得顔のジャスミンさん。そして、
「驚かないんですね?」
いや、十分驚きましたけどね?
「ジャスミンさんが自分で言ったんですよ、『ニホン』て」
「そうでした」
お互いに元ニホン人だと判明したというのに、穏やかな時間だけがここに流れている。
「掛け軸とか床の間とか。私、してやられました?」
いたずらっぽく笑いながら、ジャスミンさんが訊いてきた。
「どうなんでしょうね?」
「ひどいなぁ」
恥ずかしそうに笑うジャスミンさんの瞳に、月が映る。私は無言で笑って応じるが、できるだけジャスミンさんの目は見ないように視線を逸らす……のだけど。
「いいですよ、話しても」
そう言うジャスミンさんの表情は、とっても穏やかだ。
「え?」
「前世での私のこと、すべて。別に隠すようなことでもないですし」
うーん、それだと私も話さなくちゃいけなくなる流れになっちゃうじゃないか。
「ティアさんに嘘がつけなくなるっていうスキルでしたっけ、『真実の瞳』。私の魔眼がうずくぜ!とか言っちゃったりなんかして。アニメみたいですよね!」
「そんな中二病みたいなこと言いませんてば!」
結局その日は深夜遅くまで、ジャスミンさんと懐かしいニホン語トークで盛り上がったのでした。
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