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第三章
できるだけ丁寧にリボンを結ぶ日 2
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「うーん」
色とりどりに飾られたショーウィンドウを一つ一つじっくりと見ながらアオは益々悩んでしまった。
(実際にものを見れば決まるかと思ったけど、もっと分かんなくなっちゃうとはな・・・・)
アオが暫くデパートの中を彷徨っていると、通路の一角にきらきらと光る空間を見つけた。特設されたブースにはガラス製の万年筆がずらりと並んでいる。どうやら、期間限定での出店らしい。アオが幾つかの万年筆を眺めていると、職人の超絶技巧による見た目の美しさだけではなく機能性も優れていることを店員が告げてきた。
「御自宅用ですか?」
愛想の良い笑みを浮かべた、女性がアオへと訊ねた。彼女はアオより幾らか歳下に見えた。
「えっと、プレゼントを探していて、でもまだ何を贈るか決められないんです・・・・」
アオはつい正直に答えてしまった。
「あら、そうなんですね。デパートって色々なものが溢れていて悩み始めたら終わらなくなってしまいますよね。」
女性店員は未だに購入の意思が定まらないアオを邪険に扱うことなく丁寧な対応をしてくれた。その態度にアオの気分も幾分か和らいだ。
「あはは。まさにその通りなんです。」
「ちなみに万年筆はよく使われる方なんですか?」
アオは佐伯の原稿がいつも手書きなのを、青木との受け渡しの時に確認していた。
(でも、万年筆じゃなくてボールペンだったりするのかな?)
「よく手書きで文字を書いている方なんです。」
「貴重な御方ですね。もしかしてこだわりがあったりするのですか?」
「それがまだよく分からなくて。あまり物に頓着しないように見えることが多いんですけど、もしかしたら筆記具にはとてつもないこだわりがあったりしたらと思ったら・・・・」
彼女の柔和な雰囲気も影響したのか、アオは不安をそのまま話してしまった。むしろ、全く売り上げに貢献しなさそうな男を相手にしている女性店員に申し訳ない気持ちが募るくらいだった。
「私個人といたしましては、まだ御相手の御趣味が分からないうちは購入なさらない方が良いかと思われます。」
「えっ・・・・!!」
「筆記具はどうしても持ち主と共にある物ですから。誰かを思ってぴんと来たのならばそれをお迎えすることをお勧めいたしますが、誰かを思って迷われるのならば、それはまだその時ではないのです。」
「た、確かに・・・・」
「と師匠が申し上げておりました。」
彼女はアオに向かってぱちりとウィンクをした。
その仕草が年相応に見えてアオの彼女への好感度は更に増した。
結局、減るものが一番だなと考えアオは紅茶の専門店で数種類のハーブティーを購入することにした。
(ハイビスカスは酸味が強いからステビアとブレンドしようかな。ステビアがあるならアイブライトも買おうかな・・・・)
佐伯は今も締め切り地獄で書斎に篭っていることが多い。眼精疲労に効くものを中心に集めていく。
(僕もそろそろ働かないとなぁ)
アオはぼんやりと思った。佐伯と共に暮らすようになってから生活費全般を佐伯が担っている。アオが折半しようと提案した時もあったが、あっさりと却下された。
「今はきみの快復が第一だ。金は有り余るほどあるんだ。正直持て余していたが、きみとの生活に使えるなら本望だよ。」と言って見せられた2つの通帳の預金額にアオが唖然としたのは、つい最近の出来事である。
主治医の嘉月にも、リハビリ程度に一人で買い物に行くことは許可されているが、働くことはまだ賛成してもらえていない。佐伯のプレゼントを買うためのお金は、僅かな貯金を切り崩してどうにか工面できたが、来年も、とは怪しいところだった。
(オメガでも大学を卒業できたら、そこそこいい会社にも行けたんだけどな・・・・)
何となく思考がマイナスな方へと向かって行ったのでアオはため息と共にその思考を吐き出した。
ちょうど良いタイミングで、ピロンとジーンズのポケットに入れた携帯が音を立てた。思い当たる人物は一人しかいないが、アオは慌てて確認した。
「用事が終わる頃に連絡をくれ。迎えに行く。」
その簡素なメッセージにアオの口元は緩む。
「ついでに夕飯の買い物もして来ます。30分後には終わると思います。場所は東京駅のデパートです。」
アオがメッセージを送るとすぐに返信が来た。
「了解」
◇◇◇
「お包みいたしますか?」
選んだハーブティーを渡すと店員に聞かれたので、プレゼント用の袋に包んでもらうだけにした。持ち運ぶための紙袋に、店員が結ぶはずだったリボンをそのまま入れてもらった。
プレゼントのリボンは自分で結ぶ、アオの密やかなこだわりであった。
地下で食材を買い終えて外に出ると、見慣れたシルバーのボディの車が停まっていた。アオが急いで助手席に回り込むと佐伯がドアを開けてくれた。
「すごい荷物だな。デパートの中まで呼んでいいんだぞ。」
佐伯がアオの荷物を受け取り後部座席へと乗せていく。
「あ、なんか自分で最後まで買いたくって・・・・」
「そうなのか・・・・?」
佐伯は訝しけな顔をしていたが、アオがぶんぶんと肯くのでそれ以上の詮索はやめた。
アオはほっと息をついて助手席へと深く腰掛ける。そして、自分がとんでもないミスをおかしていることに気づく。
「あっ!!!!!!」
意図せず大きな声をあげてしまう。
「どうした?」
佐伯が益々心配そうにアオへと声をかける。
(ケーキ、買い忘れた・・・・!!!!)
「う、あ、いや、何でもないです。急に大声出してごめんなさい。」
アオは自分の不甲斐なさに涙が出そうだった。
佐伯は俯いてしまったアオのシートベルトを代わりに着けてやると、ぽんぽんとアオの頭を撫でて緩やかに車を発進させた。
沈黙を破ったのは佐伯だった。
「そういえば、青木からケーキをもらった。なんだか宝石みたいなやつだと言っていた。帰ったら食べようか。」
理由は分からないが、見るからに落ち込んでいるアオが少しでも喜べばと思って選んだ言葉だ。
「あの、青木さんはなんでケーキを持って来たんですか?」
意外なところに食いついたアオを不思議に思いながら佐伯は応える。
「ああ、特別な日だとか言っていたな。」
「特別な日」
「多分、あれだ。今日の原稿で今回の話が完結したからだろうな。」
(違うよ。雅史さん。多分、それ、誕生日ケーキなんです。あなたの。)
アオは真意が伝わらなかった青木に同情しながらも、佐伯の誕生日を一番に祝えるのが自分であることに喜びも感じていた。
一方、佐伯は突然機嫌が良くなり「帰ったら、その宝石みたいなケーキ食べましょうね。」と可愛らしい笑みを浮かべるアオの姿に一段と愛しさを募らせていたのだった。
◇◇◇
「アオ、その白い塊はなんだ?」
「これですか?今日ね、とってもいいお肉を買ってきたから塩釜焼きにしようと思って。」
「塩釜焼き?」
「ええ、卵白と塩を混ぜたものでこうやってお肉を包むんです。あ、お肉には香草やスパイスもしっかり塗しておくといいですよ。ふふ、この家のオーブンすごく性能がいいから塩釜焼きは一度やってみたかったんですよね。」
「俺はきみと暮らしてから舌が肥えたよ。」
「それならばよかった。この前、結局ピザは焼けなかったから今日こそは焼きますよ。30分釜焼きしている間に生地を形成してトッピングしますね。」
「俺は何をすればいいかな?」
「本当は今日は特別な日だから、座って待っていて欲しい気もするんですけど。そうだな、デパ地下で買ってきたサラダを盛り付けてくれませんか?」
「アオ、俺はこれまでに何度も作品を完結させてきたんだ、そんなに気を遣わなくていいんだぞ。」
真剣な表情で佐伯が伝えてくるものだから、アオもつられて「はい」と言ってしまった。
いつもの食卓に、塩釜焼きで作られた分厚い和牛と佐伯が盛り付けたアオリイカのカルパッチョ、温野菜と生ハムのカルボナーラサラダ、手作りのトマトソースにモッツァレラチーズとパルミジャーノチーズをのせバジルを飾ったマルゲリータ、トマトと生ハムに沢山のルコラをのせたピザ、そして青木がプレゼントしてくれたシャインマスカットに装飾されているケーキが並んだ。
「すごい豪勢だな。きみが突然トンカチを持ち出して塩の塊を叩き割った時は驚いたが。」
「ふふっ。雅史さん席について。」
アオは佐伯を促すと、グラスを二つ持ち寄って佐伯が気に入って飲む白ワインを注いだ。
「「乾杯」」
カチンとグラスを合わせる。
「雅史さん」
「どうした?」
一口白ワインを嗜んだ佐伯がふわりと笑う。
「お誕生日おめでとうございます。」
アオは佐伯にプレゼントを渡す。
「これは?」
淡いワインレッドの袋には丁寧に結ばれた苗色のリボンが飾られていた。その健気な形を崩してしまうことに佐伯は躊躇ったが、しゅるりとほどいて中を見た。
「ハーブティーです。最近、執筆で忙しかったでしょう。眼精疲労に効くものを選びました。」
「きみらしいな。とても嬉しいよ。正直、きみに祝ってもらうまで自分の誕生日なんて忘れていた。」
「あはは。やっぱりそうだと思いました!」
「青木にも後日、礼を言わないとな。」
「でも僕、一番最初に雅史さんのことお祝いできて嬉しかったです。」
アオは少し俯いて微笑んだ。
11月のはじめ。
色とりどりに飾られたショーウィンドウを一つ一つじっくりと見ながらアオは益々悩んでしまった。
(実際にものを見れば決まるかと思ったけど、もっと分かんなくなっちゃうとはな・・・・)
アオが暫くデパートの中を彷徨っていると、通路の一角にきらきらと光る空間を見つけた。特設されたブースにはガラス製の万年筆がずらりと並んでいる。どうやら、期間限定での出店らしい。アオが幾つかの万年筆を眺めていると、職人の超絶技巧による見た目の美しさだけではなく機能性も優れていることを店員が告げてきた。
「御自宅用ですか?」
愛想の良い笑みを浮かべた、女性がアオへと訊ねた。彼女はアオより幾らか歳下に見えた。
「えっと、プレゼントを探していて、でもまだ何を贈るか決められないんです・・・・」
アオはつい正直に答えてしまった。
「あら、そうなんですね。デパートって色々なものが溢れていて悩み始めたら終わらなくなってしまいますよね。」
女性店員は未だに購入の意思が定まらないアオを邪険に扱うことなく丁寧な対応をしてくれた。その態度にアオの気分も幾分か和らいだ。
「あはは。まさにその通りなんです。」
「ちなみに万年筆はよく使われる方なんですか?」
アオは佐伯の原稿がいつも手書きなのを、青木との受け渡しの時に確認していた。
(でも、万年筆じゃなくてボールペンだったりするのかな?)
「よく手書きで文字を書いている方なんです。」
「貴重な御方ですね。もしかしてこだわりがあったりするのですか?」
「それがまだよく分からなくて。あまり物に頓着しないように見えることが多いんですけど、もしかしたら筆記具にはとてつもないこだわりがあったりしたらと思ったら・・・・」
彼女の柔和な雰囲気も影響したのか、アオは不安をそのまま話してしまった。むしろ、全く売り上げに貢献しなさそうな男を相手にしている女性店員に申し訳ない気持ちが募るくらいだった。
「私個人といたしましては、まだ御相手の御趣味が分からないうちは購入なさらない方が良いかと思われます。」
「えっ・・・・!!」
「筆記具はどうしても持ち主と共にある物ですから。誰かを思ってぴんと来たのならばそれをお迎えすることをお勧めいたしますが、誰かを思って迷われるのならば、それはまだその時ではないのです。」
「た、確かに・・・・」
「と師匠が申し上げておりました。」
彼女はアオに向かってぱちりとウィンクをした。
その仕草が年相応に見えてアオの彼女への好感度は更に増した。
結局、減るものが一番だなと考えアオは紅茶の専門店で数種類のハーブティーを購入することにした。
(ハイビスカスは酸味が強いからステビアとブレンドしようかな。ステビアがあるならアイブライトも買おうかな・・・・)
佐伯は今も締め切り地獄で書斎に篭っていることが多い。眼精疲労に効くものを中心に集めていく。
(僕もそろそろ働かないとなぁ)
アオはぼんやりと思った。佐伯と共に暮らすようになってから生活費全般を佐伯が担っている。アオが折半しようと提案した時もあったが、あっさりと却下された。
「今はきみの快復が第一だ。金は有り余るほどあるんだ。正直持て余していたが、きみとの生活に使えるなら本望だよ。」と言って見せられた2つの通帳の預金額にアオが唖然としたのは、つい最近の出来事である。
主治医の嘉月にも、リハビリ程度に一人で買い物に行くことは許可されているが、働くことはまだ賛成してもらえていない。佐伯のプレゼントを買うためのお金は、僅かな貯金を切り崩してどうにか工面できたが、来年も、とは怪しいところだった。
(オメガでも大学を卒業できたら、そこそこいい会社にも行けたんだけどな・・・・)
何となく思考がマイナスな方へと向かって行ったのでアオはため息と共にその思考を吐き出した。
ちょうど良いタイミングで、ピロンとジーンズのポケットに入れた携帯が音を立てた。思い当たる人物は一人しかいないが、アオは慌てて確認した。
「用事が終わる頃に連絡をくれ。迎えに行く。」
その簡素なメッセージにアオの口元は緩む。
「ついでに夕飯の買い物もして来ます。30分後には終わると思います。場所は東京駅のデパートです。」
アオがメッセージを送るとすぐに返信が来た。
「了解」
◇◇◇
「お包みいたしますか?」
選んだハーブティーを渡すと店員に聞かれたので、プレゼント用の袋に包んでもらうだけにした。持ち運ぶための紙袋に、店員が結ぶはずだったリボンをそのまま入れてもらった。
プレゼントのリボンは自分で結ぶ、アオの密やかなこだわりであった。
地下で食材を買い終えて外に出ると、見慣れたシルバーのボディの車が停まっていた。アオが急いで助手席に回り込むと佐伯がドアを開けてくれた。
「すごい荷物だな。デパートの中まで呼んでいいんだぞ。」
佐伯がアオの荷物を受け取り後部座席へと乗せていく。
「あ、なんか自分で最後まで買いたくって・・・・」
「そうなのか・・・・?」
佐伯は訝しけな顔をしていたが、アオがぶんぶんと肯くのでそれ以上の詮索はやめた。
アオはほっと息をついて助手席へと深く腰掛ける。そして、自分がとんでもないミスをおかしていることに気づく。
「あっ!!!!!!」
意図せず大きな声をあげてしまう。
「どうした?」
佐伯が益々心配そうにアオへと声をかける。
(ケーキ、買い忘れた・・・・!!!!)
「う、あ、いや、何でもないです。急に大声出してごめんなさい。」
アオは自分の不甲斐なさに涙が出そうだった。
佐伯は俯いてしまったアオのシートベルトを代わりに着けてやると、ぽんぽんとアオの頭を撫でて緩やかに車を発進させた。
沈黙を破ったのは佐伯だった。
「そういえば、青木からケーキをもらった。なんだか宝石みたいなやつだと言っていた。帰ったら食べようか。」
理由は分からないが、見るからに落ち込んでいるアオが少しでも喜べばと思って選んだ言葉だ。
「あの、青木さんはなんでケーキを持って来たんですか?」
意外なところに食いついたアオを不思議に思いながら佐伯は応える。
「ああ、特別な日だとか言っていたな。」
「特別な日」
「多分、あれだ。今日の原稿で今回の話が完結したからだろうな。」
(違うよ。雅史さん。多分、それ、誕生日ケーキなんです。あなたの。)
アオは真意が伝わらなかった青木に同情しながらも、佐伯の誕生日を一番に祝えるのが自分であることに喜びも感じていた。
一方、佐伯は突然機嫌が良くなり「帰ったら、その宝石みたいなケーキ食べましょうね。」と可愛らしい笑みを浮かべるアオの姿に一段と愛しさを募らせていたのだった。
◇◇◇
「アオ、その白い塊はなんだ?」
「これですか?今日ね、とってもいいお肉を買ってきたから塩釜焼きにしようと思って。」
「塩釜焼き?」
「ええ、卵白と塩を混ぜたものでこうやってお肉を包むんです。あ、お肉には香草やスパイスもしっかり塗しておくといいですよ。ふふ、この家のオーブンすごく性能がいいから塩釜焼きは一度やってみたかったんですよね。」
「俺はきみと暮らしてから舌が肥えたよ。」
「それならばよかった。この前、結局ピザは焼けなかったから今日こそは焼きますよ。30分釜焼きしている間に生地を形成してトッピングしますね。」
「俺は何をすればいいかな?」
「本当は今日は特別な日だから、座って待っていて欲しい気もするんですけど。そうだな、デパ地下で買ってきたサラダを盛り付けてくれませんか?」
「アオ、俺はこれまでに何度も作品を完結させてきたんだ、そんなに気を遣わなくていいんだぞ。」
真剣な表情で佐伯が伝えてくるものだから、アオもつられて「はい」と言ってしまった。
いつもの食卓に、塩釜焼きで作られた分厚い和牛と佐伯が盛り付けたアオリイカのカルパッチョ、温野菜と生ハムのカルボナーラサラダ、手作りのトマトソースにモッツァレラチーズとパルミジャーノチーズをのせバジルを飾ったマルゲリータ、トマトと生ハムに沢山のルコラをのせたピザ、そして青木がプレゼントしてくれたシャインマスカットに装飾されているケーキが並んだ。
「すごい豪勢だな。きみが突然トンカチを持ち出して塩の塊を叩き割った時は驚いたが。」
「ふふっ。雅史さん席について。」
アオは佐伯を促すと、グラスを二つ持ち寄って佐伯が気に入って飲む白ワインを注いだ。
「「乾杯」」
カチンとグラスを合わせる。
「雅史さん」
「どうした?」
一口白ワインを嗜んだ佐伯がふわりと笑う。
「お誕生日おめでとうございます。」
アオは佐伯にプレゼントを渡す。
「これは?」
淡いワインレッドの袋には丁寧に結ばれた苗色のリボンが飾られていた。その健気な形を崩してしまうことに佐伯は躊躇ったが、しゅるりとほどいて中を見た。
「ハーブティーです。最近、執筆で忙しかったでしょう。眼精疲労に効くものを選びました。」
「きみらしいな。とても嬉しいよ。正直、きみに祝ってもらうまで自分の誕生日なんて忘れていた。」
「あはは。やっぱりそうだと思いました!」
「青木にも後日、礼を言わないとな。」
「でも僕、一番最初に雅史さんのことお祝いできて嬉しかったです。」
アオは少し俯いて微笑んだ。
11月のはじめ。
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