29 / 49
29 父からの評価
しおりを挟む
「ただいま」
「お帰りなさい、藤乃ちゃん」
帰宅すると、玄関ホールで、ちょうど母に会った。
母は、両手で大きなクッションを抱えている。花柄の刺繍が入っていて、かわいい。あれは、向日葵だ。
「それは?」
「書斎に置く、クッションよ。夏になるから、替えておこうと思って。今日は帰りが早いみたいだから、ご飯の前に、ね」
「そっか」
書斎とは、父の仕事兼趣味の部屋だ。大きな本棚がたくさん並んでいる、秘密の部屋。
いろいろと仕事上の書類もあるらしく、許可なく入室できるのは、母だけだ。
もちろん、父がいるときには、私たち家族も入ることができる。あのクッションは、ソファの片側に置かれているものだろう。
「今日は、お父様は早いのね」
「そう。夕飯を、一緒に食べましょう、って。桂一くんも早めに帰ってくるわ」
「ただいま」
母の言葉に合わせたかのようなタイミングで、兄が帰ってくる。
「おかえりなさい」
「藤乃も、今帰ってきたんだね」
「ええ」
白いシャツに、紺色のチノパン。こういう何気ない格好が様になる兄は、なんだか、ずるいと思う。
同じ血が流れているはずなのに。
兄は侍女に鞄を渡し、私たちの傍に立った。
「お母様、このクッションは?」
「これはね……」
私にしたのと同じ説明を母は繰り返し、そして「置いてこなくちゃ」と言い残してホールを出て行った。
「今日は、お父様が早くお帰りになるんですって」
「聞いたよ。だから僕も、早く帰ってきたんだ」
食堂に向かいながら、そんな話をする。
父もそのあとすぐ帰宅して、久しぶりに、4人揃った夕食となった。
「頂きましょう」
母の笑顔は、輝いている。この場にいる誰よりも嬉しそうだ。
こんな風に喜ぶのなら、家族の時間をもっと取った方が良いのかとも思うけれど、皆忙しくて、なかなかそうできないのが事実である。
「桂一は、もう夏休みに入ったのか?」
「まだだよ。今はちょうど、試験が終わったところ」
大学は、夏休みに入るのが早いらしい。
「単位は取れるのかな」
「まあ、1年生はね。だんだん、難しい講義も出てくるようだけれど」
「そうか。僕の頃とあまり変わりないんだな」
父は、皿に乗ったステーキを丁寧に切り分ける。
「藤乃ちゃんも、テストが終わったのよね?」
「あ……うん」
母に話を振られ、私は頷く。
「順位の発表が、もう済んだところ」
「そうか。何位だった?」
「……2位」
父に順位を伝えるときは、なんとなく緊張する。無意識に声のトーンを落としたことに、言ってから気づいた。
「また2位か。海斗くんはなかなか、超えられないね」
「そうなの」
私は今まで、海斗よりも良い点数を取れたことはない。残念ながら。
「千堂と僕も、いつもトップを争っていたなあ……」
懐かしそうに、目を細める。父は、海斗の父と同級生だった。親友であった彼のことを語るとき、父はいつも、嬉しそうだ。
「まあ、藤乃は2位でもいいんだよ。女の子だから」
「……うん」
「それに、海斗くんは将来の旦那様だからね。競う必要もない」
父は、厚切りのステーキを口に含む。
私も食べているこのステーキは、肉汁したたる、美味しいもの。父が同席する夕食なので、少し奮発するよう、母がシェフに頼んだらしい。
美味しいはずなのに、なんだか私は、味のない弾力のあるものを、ただ噛んでいる気分だった。
「良かったなあ、藤乃。あんな素敵な子が、君の婚約者で」
「そうね」
いたたまれなくなって、視線を逸らす。兄と目が合うと、彼は、眉尻を下げて笑った。
兄は、私と海斗の間にある、婚約破棄宣言について知っている。
父がもし知ったら、どんな反応をされるのだろうか。
「……あのね」
聞いてみようか。
私が言い出すと、父の視線がこちらを向く。
この優しげな目は、海斗が婚約破棄を申し出たことを知ったら、どう変わってしまうのだろう。
「どうした?」
「……ううん、何でもない」
言おうとした言葉が、瞬時に引っ込む。
怖くて、聞けなかった。
私は俯き、肉を口に含む。
やっぱりそれは、味のない、弾力のある、何かでしかなかった。
父にとって、私の価値は、海斗との婚約に依る。やはりそれは、確かなのだ。
いくら可愛い娘だと言われても。勉強していることを褒められても。2言目には、海斗を引き合いに出し、彼のことを褒める。
いつもそうだ。
「式はいつにしようね」
「気が早いわ、あなた」
嬉しそうな、両親の会話。
私と海斗の婚約の話をするとき、ふたりはいつも、嬉しそうだ。
もし、婚約を破棄されたら、この笑顔はなくなると思うと。
気持ちは重く、食事の味は感じられない。
父の好みで濃い目に淹れたコーヒーは、ただ苦くて、美味しくない。
やっぱり私は、家族のために、海斗との婚約を続けるべきなんだろうか。
答えを求めて兄を見ると、彼はぼんやりした顔で、両親の会話を聞いていた。
兄が答えを教えてくれるわけではない。自分のためになることは、自分で判断しなくてはならない。
両親の笑顔のために、海斗との婚約を継続する。ふたりが悲しむよりも、ふたりが笑ってくれる方が、私は嬉しい。
そうなの、だけれど。
「……うーん」
「お嬢様、何かお悩み事ですか?」
机に頬杖をついて考え込んでいると、シノがそう言いながら、目の前に紅茶を置いてくれる。
「……ありがとう」
私は、カップを取って香りを嗅いだ。
どこかひんやりとした、爽快な香りがする。
「ミントティー、好きなのよね」
「存じております。何か考え込んでいるご様子でしたので」
「いつもありがとう」
温かいのに、清涼感のある紅茶。
この不思議な感覚が、何とも好きなのだ。
「考えることがいくつもあって、頭が疲れちゃったわ」
両親が、私と海斗との婚約に寄せる期待。
早苗の、「樹ルートに入れたら海斗は譲る」という趣旨の発言。
兄から示された、2択。
何から考えたらいいのかわからなくて、ただ、いろいろな思考が散発的に浮いては消えていく。
そのせいで、頭の中がごちゃついている。
「シノは、どうしてる? 考えたいことがいくつもあって、考えがまとまらないとき」
「そうですねえ……」
紅茶を飲んで、ひと息つき、そう質問する。
シノは、お盆を両手に持ったまま、首を傾げた。
「……考えたいことというか、考えなければいけないことがいくつもあるときは、優先順位をつけますかね」
「そう……」
勉強だって、優先順位をつけるのが大事。勉強なら優先順位をつけられても、現状に優先順位をつけるのは、難しい。
「……どんな風に? どれも同じくらい大切な、気がしているのよね」
「同じくらい大切、ということはあまりなくて……それはきっと、情報が足りないのですよ」
シノは、人差し指を立てて微笑む。垂れ目の目が、さらに垂れる柔和な表情。シノは何かを教えてくれるとき、こうして、指を立てるのだ。
かつてはシノに、様々な教えを受けていたものだ。なんだか、懐かしい気持ちになる。
「きちんと調べて、詳しくわかったら、多くのことは、優先順位がつけられます……私の、狭い経験からですが」
「それでも同じくらい大切、ってこともあるの?」
「もちろん、ありますよ。そのときは、頑張るしかありませんでしたね」
我が家で長年勤めるにあたって、たくさんのタスクをこなしてきた彼女。
経験豊富な彼女の語る、経験談は頼もしい。
「情報量が、足りない、か……」
私はちょっと、考えてみる。
両親が、私と海斗との婚約に寄せる期待。
早苗の、「樹ルートに入れたら海斗は譲る」という趣旨の発言。
兄から示された、2択。
両親のことは、今まで近くで見てきたから、よくわかっている。
兄から示された2択は、選ぶだけだ。
しかし、早苗の発言に関しては、彼女の意図するところ、真意がよくわからない。
「……たしかに、情報量が少ないかもしれないわ。ありがとう」
わからないのに悶々と考えているから、ずっとわからないのだ。
「お嬢様の参考になったのなら、嬉しく存じます」
「シノの言うことは、いつも参考になるのよ」
シノといい、山口といい。
私の従者は優秀で、彼らの言葉には、いつも学びがある。
「シノたちがそばにいて、本当に良かった」
例えばこれが父なら、評価が怖くて、なかなか相談に踏み切れない。母なら、心配されるから、なかなか話せない。兄は親身になってくれるものの、最近は忙しくて、迷惑をかける。
いつも傍にいて、相談に乗ってくれる人々。
「いつもありがとう、シノ」
「まあ……もったいないお言葉です」
シノの、細く消える優しげな目尻。
言葉では言われなくても、喜んでくれているのが、よくわかる。
こんな風に、改まってシノに感謝を伝えたことは、あまりなかったかもしれない。
気持ちは、伝えないと、伝わらない。
そう教えてくれたのは、泉だ。
そして、逆も然り。
気持ちを知りたいなら、伝えて貰わないといけない。
「ありがとう、シノ。すっきりして眠れそうだわ」
シノと就寝の挨拶を交わし、私はベッドに向かう。
早苗の気持ちがわからないなら、早苗に聞くしかない。
シノの助言の通り、まずは情報を集めて、それから考えよう。
「お帰りなさい、藤乃ちゃん」
帰宅すると、玄関ホールで、ちょうど母に会った。
母は、両手で大きなクッションを抱えている。花柄の刺繍が入っていて、かわいい。あれは、向日葵だ。
「それは?」
「書斎に置く、クッションよ。夏になるから、替えておこうと思って。今日は帰りが早いみたいだから、ご飯の前に、ね」
「そっか」
書斎とは、父の仕事兼趣味の部屋だ。大きな本棚がたくさん並んでいる、秘密の部屋。
いろいろと仕事上の書類もあるらしく、許可なく入室できるのは、母だけだ。
もちろん、父がいるときには、私たち家族も入ることができる。あのクッションは、ソファの片側に置かれているものだろう。
「今日は、お父様は早いのね」
「そう。夕飯を、一緒に食べましょう、って。桂一くんも早めに帰ってくるわ」
「ただいま」
母の言葉に合わせたかのようなタイミングで、兄が帰ってくる。
「おかえりなさい」
「藤乃も、今帰ってきたんだね」
「ええ」
白いシャツに、紺色のチノパン。こういう何気ない格好が様になる兄は、なんだか、ずるいと思う。
同じ血が流れているはずなのに。
兄は侍女に鞄を渡し、私たちの傍に立った。
「お母様、このクッションは?」
「これはね……」
私にしたのと同じ説明を母は繰り返し、そして「置いてこなくちゃ」と言い残してホールを出て行った。
「今日は、お父様が早くお帰りになるんですって」
「聞いたよ。だから僕も、早く帰ってきたんだ」
食堂に向かいながら、そんな話をする。
父もそのあとすぐ帰宅して、久しぶりに、4人揃った夕食となった。
「頂きましょう」
母の笑顔は、輝いている。この場にいる誰よりも嬉しそうだ。
こんな風に喜ぶのなら、家族の時間をもっと取った方が良いのかとも思うけれど、皆忙しくて、なかなかそうできないのが事実である。
「桂一は、もう夏休みに入ったのか?」
「まだだよ。今はちょうど、試験が終わったところ」
大学は、夏休みに入るのが早いらしい。
「単位は取れるのかな」
「まあ、1年生はね。だんだん、難しい講義も出てくるようだけれど」
「そうか。僕の頃とあまり変わりないんだな」
父は、皿に乗ったステーキを丁寧に切り分ける。
「藤乃ちゃんも、テストが終わったのよね?」
「あ……うん」
母に話を振られ、私は頷く。
「順位の発表が、もう済んだところ」
「そうか。何位だった?」
「……2位」
父に順位を伝えるときは、なんとなく緊張する。無意識に声のトーンを落としたことに、言ってから気づいた。
「また2位か。海斗くんはなかなか、超えられないね」
「そうなの」
私は今まで、海斗よりも良い点数を取れたことはない。残念ながら。
「千堂と僕も、いつもトップを争っていたなあ……」
懐かしそうに、目を細める。父は、海斗の父と同級生だった。親友であった彼のことを語るとき、父はいつも、嬉しそうだ。
「まあ、藤乃は2位でもいいんだよ。女の子だから」
「……うん」
「それに、海斗くんは将来の旦那様だからね。競う必要もない」
父は、厚切りのステーキを口に含む。
私も食べているこのステーキは、肉汁したたる、美味しいもの。父が同席する夕食なので、少し奮発するよう、母がシェフに頼んだらしい。
美味しいはずなのに、なんだか私は、味のない弾力のあるものを、ただ噛んでいる気分だった。
「良かったなあ、藤乃。あんな素敵な子が、君の婚約者で」
「そうね」
いたたまれなくなって、視線を逸らす。兄と目が合うと、彼は、眉尻を下げて笑った。
兄は、私と海斗の間にある、婚約破棄宣言について知っている。
父がもし知ったら、どんな反応をされるのだろうか。
「……あのね」
聞いてみようか。
私が言い出すと、父の視線がこちらを向く。
この優しげな目は、海斗が婚約破棄を申し出たことを知ったら、どう変わってしまうのだろう。
「どうした?」
「……ううん、何でもない」
言おうとした言葉が、瞬時に引っ込む。
怖くて、聞けなかった。
私は俯き、肉を口に含む。
やっぱりそれは、味のない、弾力のある、何かでしかなかった。
父にとって、私の価値は、海斗との婚約に依る。やはりそれは、確かなのだ。
いくら可愛い娘だと言われても。勉強していることを褒められても。2言目には、海斗を引き合いに出し、彼のことを褒める。
いつもそうだ。
「式はいつにしようね」
「気が早いわ、あなた」
嬉しそうな、両親の会話。
私と海斗の婚約の話をするとき、ふたりはいつも、嬉しそうだ。
もし、婚約を破棄されたら、この笑顔はなくなると思うと。
気持ちは重く、食事の味は感じられない。
父の好みで濃い目に淹れたコーヒーは、ただ苦くて、美味しくない。
やっぱり私は、家族のために、海斗との婚約を続けるべきなんだろうか。
答えを求めて兄を見ると、彼はぼんやりした顔で、両親の会話を聞いていた。
兄が答えを教えてくれるわけではない。自分のためになることは、自分で判断しなくてはならない。
両親の笑顔のために、海斗との婚約を継続する。ふたりが悲しむよりも、ふたりが笑ってくれる方が、私は嬉しい。
そうなの、だけれど。
「……うーん」
「お嬢様、何かお悩み事ですか?」
机に頬杖をついて考え込んでいると、シノがそう言いながら、目の前に紅茶を置いてくれる。
「……ありがとう」
私は、カップを取って香りを嗅いだ。
どこかひんやりとした、爽快な香りがする。
「ミントティー、好きなのよね」
「存じております。何か考え込んでいるご様子でしたので」
「いつもありがとう」
温かいのに、清涼感のある紅茶。
この不思議な感覚が、何とも好きなのだ。
「考えることがいくつもあって、頭が疲れちゃったわ」
両親が、私と海斗との婚約に寄せる期待。
早苗の、「樹ルートに入れたら海斗は譲る」という趣旨の発言。
兄から示された、2択。
何から考えたらいいのかわからなくて、ただ、いろいろな思考が散発的に浮いては消えていく。
そのせいで、頭の中がごちゃついている。
「シノは、どうしてる? 考えたいことがいくつもあって、考えがまとまらないとき」
「そうですねえ……」
紅茶を飲んで、ひと息つき、そう質問する。
シノは、お盆を両手に持ったまま、首を傾げた。
「……考えたいことというか、考えなければいけないことがいくつもあるときは、優先順位をつけますかね」
「そう……」
勉強だって、優先順位をつけるのが大事。勉強なら優先順位をつけられても、現状に優先順位をつけるのは、難しい。
「……どんな風に? どれも同じくらい大切な、気がしているのよね」
「同じくらい大切、ということはあまりなくて……それはきっと、情報が足りないのですよ」
シノは、人差し指を立てて微笑む。垂れ目の目が、さらに垂れる柔和な表情。シノは何かを教えてくれるとき、こうして、指を立てるのだ。
かつてはシノに、様々な教えを受けていたものだ。なんだか、懐かしい気持ちになる。
「きちんと調べて、詳しくわかったら、多くのことは、優先順位がつけられます……私の、狭い経験からですが」
「それでも同じくらい大切、ってこともあるの?」
「もちろん、ありますよ。そのときは、頑張るしかありませんでしたね」
我が家で長年勤めるにあたって、たくさんのタスクをこなしてきた彼女。
経験豊富な彼女の語る、経験談は頼もしい。
「情報量が、足りない、か……」
私はちょっと、考えてみる。
両親が、私と海斗との婚約に寄せる期待。
早苗の、「樹ルートに入れたら海斗は譲る」という趣旨の発言。
兄から示された、2択。
両親のことは、今まで近くで見てきたから、よくわかっている。
兄から示された2択は、選ぶだけだ。
しかし、早苗の発言に関しては、彼女の意図するところ、真意がよくわからない。
「……たしかに、情報量が少ないかもしれないわ。ありがとう」
わからないのに悶々と考えているから、ずっとわからないのだ。
「お嬢様の参考になったのなら、嬉しく存じます」
「シノの言うことは、いつも参考になるのよ」
シノといい、山口といい。
私の従者は優秀で、彼らの言葉には、いつも学びがある。
「シノたちがそばにいて、本当に良かった」
例えばこれが父なら、評価が怖くて、なかなか相談に踏み切れない。母なら、心配されるから、なかなか話せない。兄は親身になってくれるものの、最近は忙しくて、迷惑をかける。
いつも傍にいて、相談に乗ってくれる人々。
「いつもありがとう、シノ」
「まあ……もったいないお言葉です」
シノの、細く消える優しげな目尻。
言葉では言われなくても、喜んでくれているのが、よくわかる。
こんな風に、改まってシノに感謝を伝えたことは、あまりなかったかもしれない。
気持ちは、伝えないと、伝わらない。
そう教えてくれたのは、泉だ。
そして、逆も然り。
気持ちを知りたいなら、伝えて貰わないといけない。
「ありがとう、シノ。すっきりして眠れそうだわ」
シノと就寝の挨拶を交わし、私はベッドに向かう。
早苗の気持ちがわからないなら、早苗に聞くしかない。
シノの助言の通り、まずは情報を集めて、それから考えよう。
11
あなたにおすすめの小説
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
死にたがりの黒豹王子は、婚約破棄されて捨てられた令嬢を妻にしたい 【ネコ科王子の手なずけ方】
鷹凪きら
恋愛
婚約破棄されてやっと自由になれたのに、今度は王子の婚約者!?
幼馴染の侯爵から地味で華がない顔だと罵られ、伯爵令嬢スーリアは捨てられる。
彼女にとって、それは好機だった。
「お父さま、お母さま、わたし庭師になります!」
幼いころからの夢を叶え、理想の職場で、理想のスローライフを送り始めたスーリアだったが、ひとりの騎士の青年と知り合う。
身分を隠し平民として働くスーリアのもとに、彼はなぜか頻繁に会いにやってきた。
いつの間にか抱いていた恋心に翻弄されるなか、参加した夜会で出くわしてしまう。
この国の第二王子としてその場にいた、騎士の青年と――
※シリーズものですが、主人公が変わっているので単体で読めます。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
『婚約破棄された瞬間、前世の記憶が戻ってここが「推し」のいる世界だと気づきました。恋愛はもう結構ですので、推しに全力で貢ぎます。
放浪人
恋愛
「エリザベート、貴様との婚約を破棄する!」
卒業パーティーで突きつけられた婚約破棄。その瞬間、公爵令嬢エリザベートは前世の記憶を取り戻した。 ここは前世で廃課金するほど愛したソシャゲの世界。 そして、会場の隅で誰にも相手にされず佇む第三王子レオンハルトは、不遇な設定のせいで装備が買えず、序盤で死亡確定の「最愛の推し」だった!?
「恋愛? 復縁? そんなものはどうでもいいですわ。私がしたいのは、推しの生存ルートを確保するための『推し活(物理)』だけ!」
エリザベートは元婚約者から慰謝料を容赦なく毟り取り、現代知識でコスメ事業を立ち上げ、莫大な富を築く。 全ては、薄幸の推しに国宝級の最強装備を貢ぐため!
「殿下、新しい聖剣です。使い捨ててください」 「待て、これは国家予算レベルだぞ!?」
自称・ATMの悪役令嬢×不遇の隠れ最強王子。 圧倒的な「財力」と「愛」で死亡フラグをねじ伏せ、無能な元婚約者たちをざまぁしながら国を救う、爽快異世界マネー・ラブファンタジー!
「貴方の命も人生も、私が全て買い取らせていただきます!」
辺境の侯爵令嬢、婚約破棄された夜に最強薬師スキルでざまぁします。
コテット
恋愛
侯爵令嬢リーナは、王子からの婚約破棄と義妹の策略により、社交界での地位も誇りも奪われた。
だが、彼女には誰も知らない“前世の記憶”がある。現代薬剤師として培った知識と、辺境で拾った“魔草”の力。
それらを駆使して、貴族社会の裏を暴き、裏切った者たちに“真実の薬”を処方する。
ざまぁの宴の先に待つのは、異国の王子との出会い、平穏な薬草庵の日々、そして新たな愛。
これは、捨てられた令嬢が世界を変える、痛快で甘くてスカッとする逆転恋愛譚。
【完結】モブの王太子殿下に愛されてる転生悪役令嬢は、国外追放される運命のはずでした
Rohdea
恋愛
公爵令嬢であるスフィアは、8歳の時に王子兄弟と会った事で前世を思い出した。
同時に、今、生きているこの世界は前世で読んだ小説の世界なのだと気付く。
さらに自分はヒーロー(第二王子)とヒロインが結ばれる為に、
婚約破棄されて国外追放となる運命の悪役令嬢だった……
とりあえず、王家と距離を置きヒーロー(第二王子)との婚約から逃げる事にしたスフィア。
それから数年後、そろそろ逃げるのに限界を迎えつつあったスフィアの前に現れたのは、
婚約者となるはずのヒーロー(第二王子)ではなく……
※ 『記憶喪失になってから、あなたの本当の気持ちを知りました』
に出てくる主人公の友人の話です。
そちらを読んでいなくても問題ありません。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる