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49 私たちのハッピーエンド
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そして、文化祭の前日を迎えた。
「どう? 後夜祭には、出られそう?」
兄にそう問われ、私は頷いた。道具の設置を済ませ、準備はもう、万端である。
「ええ、きっと」
というよりも、ほぼ、確実に。ゲームでは、私たちはお化け屋敷を選択した時点で、後夜祭への参加が決まる。準備も終わっているから、あとは流れに任せれば良い。
私が頷くと、兄は「自信家だね」と笑った。
ゲームを抜きにしても、私たちが夏休みをかけて完成させたお化け屋敷は、かなりの出来だった。自信がある。
「お母様たちも、後夜祭には来てくれるのよね?」
「行くわ、今年も。楽しみにしてるからね、頑張って」
父は卒業生として、兄は元生徒会長として、それぞれ後夜祭に招待されている。例年通り参加すると聞いて、私は安堵した。
父も母も、海斗が他の女の子に本当に入れあげて、婚約破棄を言ってきているということを、信じてくれないでいる。信じさせるには、現場を見せるしかない。
百聞は一見にしかず、だ。そのために必要なのは、あとは私の、演技だけ。
翌朝。
「今まで、準備に協力してくれて、ありがとう。今日は頑張りましょうね」
会長たちが、そう挨拶をする。朝の集まりを終え、私たちはそれぞれ、持ち場につく。
結論から言うと、文化祭は、大成功であった。持ち場を離れる暇もないほどにたくさんのお客さんが来て、喜んで帰っていった。
放送で発表される優秀賞も見事に獲得し、私たちは、後夜祭への参加が認められた。慧のクラスも、見事に賞を受賞していた。
「やった!」
喜ぶ級友をよそに、私は胸を撫で下ろす。
この結果は、わかっていた。ゲームの通り進んでいることへの、安堵である。
ここからが、本当の、本番だ。
パーティ用のドレスは、予め学園に運んでおいた。更衣室で、シノとともに、着替えを進める。周りにも同様に、着替えをする女生徒が溢れていた。
「そのドレス、素敵ね!」
「ありがとう、泉さん」
私が来ているのは、赤と黒の、毒々しいドレスである。いかにも、悪役らしいもの。なぜこんな趣味に合わないドレスを着ているかというと、ゲームの中で、私はこれを着ていたからだ。
「わたし、そういう色のドレス、好きだなあ」
ゲームの中での私は、もしかしたら泉にこう勧められて、服を選んだのかもしれない。そんなことを思いながら、腹部を締め上げる圧に耐える。
「泉さんに、お願いがあるの」
「なあに?」
私は、予め考えておいた台詞を続ける。
「今日の後夜祭なんだけど……早苗さんが会場の外に出ようとしたら、教えてもらえないかしら」
「なんだ、そんなこと? 良いわ、もちろんよ!」
向日葵の咲くような泉の笑顔。彼女の善意を利用することには、若干の良心の呵責がある。けれど、必要なことなのだ。
後夜祭の時間が近づくと、会場へ、各学年の受賞クラスが移動する。皆煌びやかな服装だ。そんな中、同じ服を身につけた、目立つ集団がいた。皆揃って、黒の燕尾服のような上着に、蝶ネクタイをつけている。
その中に、慧がいた。隣の男子生徒と、笑顔で話している。あの、まるいえくぼ。
「慧先輩」
呼びかけると、彼はこちらを見る。
「ああ、藤乃さん。綺麗だね」
開口一番に褒められて、私は頬が薄らと熱を帯びるのを感じる。
「どうされたんですか、その服?」
「俺たちのクラスは、執事喫茶だったでしょう? もったいないから、この格好で後夜祭に出ることになったんだ。一応、失礼はない服装だから」
かっちりとしたジャケットに、真っ白なシャツ。漆黒の蝶ネクタイが、よく映えている。
「似合いますね」
「そうかな。ありがとう」
なんだか別人のような慧も、笑うと、いつものえくぼが出る。
「うわあ、すごいね」
講堂に入ると、慧が歓声を上げる。
広い講堂には、今日はたくさんの丸テーブルが、白いクロスをかけられて並んでいる。立食形式のパーティらしい。向こうには、美味しそうな料理が、数え切れないほど並んでいる。
良い匂いと、がやがやした話し声。学生だけでなく、その家族やOBのいる、雑然とした空間。
私の視界の端には、早苗の姿がある。ピンク色のドレスを着ていて、可愛らしい。その隣には泉がいて、その近くには、海斗が所在なさげに佇んでいる。
見れば、早苗は泉とばかり話していて、海斗が話しかけても、目もくれない。あれだけわかりやすい態度を取られているのに、諦めずに話しかけ続ける海斗もなかなかだ。
だからこそ、イベントのきっかけさえ作れば、あとはうまく流れるはずだ。
照明が切り替わり、会話のざわめきが少し落ちつく。
「お時間になりました。皆さん、ようこそ、後夜祭にお越し下さいました。今期生徒会長を務めております、神崎樹です」
「生徒会長は、相変わらず素敵ね」
スポットライトの当たるステージで、マイクを持ち、樹が喋っている。彼が名乗ると拍手が起こり、うっとりした女生徒の囁きがあちこちで聞かれる。
そのまま開会宣言がなされ、学園長からのお話がある。来賓の中でも偉い方々の挨拶の後、乾杯が告げられ、後夜祭が始まった。
途端に、人が行き来する。飲み物を取りに行く人、食べ物を取る人、知り合いに挨拶に行く人、立ち止まって会話を交わす人。
よくあるパーティの風景。慣れない慧は、顔が引きつっている。
「藤乃。ここにいたんだね」
「お兄様。……お母様と、お父様も」
横から話しかけられたと思ったら、そこには家族が勢揃いしていた。3人とも、着飾った姿が様になる。集まると、そこだけ映画の世界みたいだ。
「何だ、ひとりか」
ひとりかと言われて隣を見ると、慧の姿はなかった。人と人の間をすり抜け、離れてゆく背中が見える。
樹がいたのかもしれない。私の胸は、一拍、大きく鼓動した。
「……ええ。ちょっとね」
「海斗くんはどこだ? 一緒にいないのか
「あそこにいるよ、お父様。海斗!」
海斗を見つけた兄が手を振ると、人混みをかき分けて、彼がやってきた。
「お久しぶりです、小松原さん」
「堅苦しいなあ。いずれ家族になる仲じゃないか。なあ、海斗くん」
「はあ……」
歯切れの悪い、海斗の相槌。
私は改めて、辺りを見回した。ここまで役者が揃ったら、あとは早苗だけだ。
「ねえ、藤乃さん」
ドレスから出た腕を、軽く突かれる。見るとそこには、泉がいた。
「ごめんなさい。目を離した隙に、早苗さん、外に出ちゃったみたい。どこにもいないの」
「ありがとう、泉さん」
私は父たちに、「少しお花を摘みに行ってくるわ。ここにいてね」と伝える。
歩きながら、慧と一緒に考えた台本を、頭の中でなぞる。
「あ、ごめんなさい、通りますね」
人と人の間をすり抜け、廊下へ向かう。
早苗がいるはずの場所は、わかっているのだ。
扉をドアマンに開けて貰い、赤い絨毯の敷き詰められた廊下へ出る。涼しい風が、額に触れる。果たして、そこに、早苗は。
ーーいた。
窓にもたれ、風を浴びる立ち姿。靡く髪。美しい横顔。
それはまさに、ゲームそのものだ。
慧と一緒に、話し合った。早苗とは敵対しているのに、生徒会室の片付けは手伝ってもらえた。それは、彼女の求めるものと、私たちの求めるものが、結果的に同じだったから。
思い通りに動いて欲しいなら、彼女の求めるものを、ちらつかせればいい。
「早苗さん」
窓辺でアンニュイな横顔を見せる早苗に、声をかける。彼女は、ふわりと花の咲くような笑顔でこちらを見た。
「……何よ、藤乃さんじゃない」
先ほどの笑顔は、樹用だったらしい。私の顔を確認すると、笑顔がすっと消える。
「邪魔しないでよ」
「そこにいても、樹さんは来ないわ」
「はあ?」
早苗が、怪訝そうに眉をひそめる。
「樹先輩との香水のイベントは、樹先輩が言うはずの、途中の台詞が抜けたわよね」
黙りこくる早苗。その視線が、ぐらぐらと動いている。
私を相手に発動した樹のイベントは、あのとき、途中で終わった。私が拒否したからだ。
「海水浴のときは、アイテムがなかったでしょう? 何とかして、代用したみたいだけど」
はっ、と浅く息を呑む音。
あのときのアイテムは、事前に私たちが回収した。早苗はそれに気付いているはずである。ビー玉で、代用するくらいだから。
「……そんなこと、なかったわ」
「嘘よ。どっちも私が、したことだもの。イベントって、私でも『横取り』できるのよ」
「なに、それ……!」
やはり早苗は、そこまでは気付いていなかったようで、目をむいて驚いている。
「今日のも、ね」
人差し指で、そっと唇に触れて見せる。樹とのキスシーンを含んだイベントを、想起させる仕草だ。
「な……どうして、そんなことするの? あたしと樹先輩のことは、関係ないじゃない」
「取引を持ちかけようと思って」
「取引?」
口角を片側だけ、持ち上げる。上手く、不敵に笑えているだろうか。
「そう。……実は私、海斗さんと昔からの婚約者なのよ。今日は親も来ているから、仲の良いところを見せないといけないの」
「は? 婚約者?」
ゲームにない情報を、彼女は知らない。混乱しているところに、畳み掛ける。
「海斗さんとのイベントを、私にくれない? あなたが、『私』の役をしてもらえないかしら」
「そんなの、あたしが悪役みたいじゃない」
「そう。だから取引なの。協力してくれたら、もう樹先輩のイベントに興味はないわ」
早苗の目が、左右に泳いでいる。海斗と手が切れることも、樹とのイベントを起こすことも、彼女の望みだ。
ただし後半は、全くの作り話なのだけれど。
正攻法で頼んでも、私の得にしかならないことを、早苗は絶対にしないだろう。だから、彼女の損得計算に、私の取引を載せる必要があった。たとえ、多少の嘘が含まれていても。
「……あたしが協力するはずないじゃない」
「いいけど、それなら私は、海斗じゃなくて樹先輩と仲良くさせてもらうわね」
そして、柔らかく微笑む。
早苗は、立ち止まっている。考え込んでいる表情だ。慧が樹を止めているから、いつまで待っても樹は来ない。こうしている間にも、彼女の自信はどんどんなくなっていき、言うことを聞くしかないと思うのでは……という、慧の予想だ。
「さ、戻りましょ」
考える隙を与えず、私は彼女に背を向ける。ふりではなく本当に、講堂へ向かう。
「……わかったわ」
屈した。
ぞくぞくした喜びが、背筋を込み上げる。
早苗と共に、会場へ戻る。彼女を先に、中へ入れた。重たい扉が閉まり、私たちは人混みの中を歩く。
「とりあえず、二人で話していて。私が割り込んで声をかけるから、あなたが文句をつけて頂戴」
「……うるさいわね。指図しないでよ」
渋々歩く早苗の後ろを、監視しながらついていく。
嘘をついて、ヒロインを陥れる。まるで本当に、悪役になったような気分だ。私の思惑通り、早苗は、海斗の方に行く。
海斗はまだ、父たちと話していた。彼の視線がこちらを向き、早苗を見て、そのあと、後ろにいる私を訝しげに見る。
「早苗、どこに行ってたんだ?」
海斗が、早苗に話しかける。
「ちょっとね」
自然な動作で、海斗が早苗の肩を引き寄せる。それが、彼らの自然な距離感なのだ。
「海斗くん、その子は?」
「ええと、彼女は僕の同級生で……」
父が見咎めると、海斗はそう説明する。
早苗が、ちらりとこちらに視線をやる。早く来い、という合図なのだろう。
私は1歩、踏み出す。ハイヒールの足音が、予想以上に高らかに響いた。
「本当にあなたたちは、いつもいつも……目障りなのよっ、どういうつもりなの?」
ゲームの通りの台詞を、言い放つ。
「え?」
早苗は、目を丸くした。当然だ。この台詞は、彼女が言うはずなのだから。
こんなに賑やかな会場なのに、思いの外、声がよく響く。周囲の視線が集まる。緊張して、顔の熱が増す。
早苗は表情を強張らせ、はっと口を開けた。
「騙したのね? あなた……」
「君こそ、どういうつもりなんだ? いい加減、認めろよ。僕たちは、こういう仲なんだから……」
これも、聞いたことのある台詞。早苗が怒っても、もうイベントのきっかけは作られている。
海斗は言うなり、傍の早苗を抱き寄せた。
そのままの勢いで、見せつけるように、唇を落とした。
早苗は、黙ってされるがままになっている。せめてもの抵抗だろう。残念ながら、そういう選択肢もあるのだ。
「僕は君が好きなんだ。わかってるよね? 君以外、考えられないよ。だから……」
自分の世界に浸っている海斗が、そう早苗に囁く。早苗は、おかしな表情をしている。
「……そういうことだ」
吐き捨てるように、私に言う。
水を打ったような沈黙。父は唖然としている。兄もだ。いくらイベントとはいえ、人前で、こんな行為に及ぶなんて。やはり、見ていられない。
恥ずかしさが沸き起こって来たとき、ふと視界に入った慧が、頬に手を当てていた。きっと、私の顔が緩んでいるのだ。頬を引き締め、私は海斗たちを見て、それから父を見る。
「ご覧になりました?」
「……ああ」
唇が、震えている。驚いているのか。ショックなのか。そこまでは、わからない。
「海斗さんは、こんな風に人前で他の方と睦まじく振る舞って、私には婚約破棄を言い渡すような……そんな方なのよ。それでもお父様は、ひと前でこんなことをされても、私が悪いんだから我慢しろとおっしゃるの?」
同情を引くように、できるだけ切実に。このタイミングで慧を見ると変なので、父だけをまっすぐに見つめる。視界の端にわずかに見切れる慧が、頷いているのがわかった。
「……藤乃」
絞り出すような、父の声。
「これでも、信じてもらえないのかしら……」
「いや……わかったよ、藤乃。君の気持ちは、よくわかった。最初から、疑ってなんかいなかったよ」
それは嘘だ。最初から信じてもらえていれば、こんなとこにはなっていない。
ここには、父の知り合いもたくさんいる。今のは、外面を守るための嘘。
だけどしっかり、言質は取った。
「ですって、お兄様。私、嬉しいわ」
「聞いたよ。良かったね、藤乃」
私の言葉はひっくり返せても、兄の言葉はひっくり返さない。父がそういう人だと知っているから、私は兄に話を振った。
父は誤魔化すように愛想笑いを浮かべ、「参りましたなあ」と誰にともなくアピールしている。
海斗は早苗を抱きしめて離さない。早苗は厳しい目つきで私を睨んでいる。父と母は周りの大人に事情を聞かれ、兄が隣で補足している。周囲の生徒たちからは、注目の眼差しが浴びせかけられている。
きっと、暫くは噂になるだろう。それは、仕方がない。私は廊下に向かった。溢れる人が、さっと左右に分かれて道を作ってくれる。気を遣われているらしい。
扉から廊下に出ると、向こうの扉が同時に開く。そこから顔を出したのは、慧であった。
「別々に出ないと、藤乃さんが何か言われそうだからね」
そう言って、合流してくる。
「……うまくいったね」
そして、人のいない夜の中庭へ。
本当ならば、早苗と樹がいるはずの中庭。そこに、私と慧がいる。
静かな中庭に、囁き声。風が吹き、葉の擦れる音。ここなら、誰もいないし、落ち着いて話ができる。
「うまくいきました。完璧に」
成功の余韻を噛みしめ、そう答える。
樹と早苗の邪魔をし、海斗とのイベントを起こさせ、それを父に見せて婚約破棄をする。
あのときの、早苗の悔しそうな顔と言ったら。
私は悪役であり、あれは早苗の思惑よりも私の企てが勝った、私なりの「ざまぁ」の瞬間であった。
「これで藤乃さんは、晴れてフリーになったわけだ」
「フリー?」
「恋人のいない女性、ってこと」
慧に言われ、首を傾げる。
「恋人なんて、最初からいませんでしたよ」
「まあ……気持ちの上ではそうでも、建前上はいたでしょう。俺は俺なりに、我慢してたんだよね。いろいろ際どいときもあったけど、一応、節度というか」
「お気遣い頂いて……すみません」
私が海斗との婚約をうまく破棄できないせいで、ずっと気を遣わせていたのだ。つい謝罪すると、慧が控えめに喉を鳴らす。
「これに乗じて、後釜に座る気もないんだ。それは卑怯だからね。……でもこれからは、気兼ねなく藤乃さんと一緒にいられるし、出かけられるし、連絡も取り合える。俺は嬉しいよ」
闇の中でも、慧が微笑んでいるのがわかる。その頬に浮かぶ、まるいえくぼも。
「私も、嬉しいです」
ヒロインを邪魔する悪役令嬢として、私が掴み取ったハッピーエンドが、これだ。そしてここからは、新しい物語が始まる。
「これからもよろしく、藤乃さん」
薄暗い中から慧の手が出てきて、私の手を取った。ひんやりとした夜風に、温かな手のひら。こんな風に彼の手に触れるのは、あの海岸以来だ。
「はい、もちろんです」
私たちは、闇の中で、優しい握手を交わした。
「どう? 後夜祭には、出られそう?」
兄にそう問われ、私は頷いた。道具の設置を済ませ、準備はもう、万端である。
「ええ、きっと」
というよりも、ほぼ、確実に。ゲームでは、私たちはお化け屋敷を選択した時点で、後夜祭への参加が決まる。準備も終わっているから、あとは流れに任せれば良い。
私が頷くと、兄は「自信家だね」と笑った。
ゲームを抜きにしても、私たちが夏休みをかけて完成させたお化け屋敷は、かなりの出来だった。自信がある。
「お母様たちも、後夜祭には来てくれるのよね?」
「行くわ、今年も。楽しみにしてるからね、頑張って」
父は卒業生として、兄は元生徒会長として、それぞれ後夜祭に招待されている。例年通り参加すると聞いて、私は安堵した。
父も母も、海斗が他の女の子に本当に入れあげて、婚約破棄を言ってきているということを、信じてくれないでいる。信じさせるには、現場を見せるしかない。
百聞は一見にしかず、だ。そのために必要なのは、あとは私の、演技だけ。
翌朝。
「今まで、準備に協力してくれて、ありがとう。今日は頑張りましょうね」
会長たちが、そう挨拶をする。朝の集まりを終え、私たちはそれぞれ、持ち場につく。
結論から言うと、文化祭は、大成功であった。持ち場を離れる暇もないほどにたくさんのお客さんが来て、喜んで帰っていった。
放送で発表される優秀賞も見事に獲得し、私たちは、後夜祭への参加が認められた。慧のクラスも、見事に賞を受賞していた。
「やった!」
喜ぶ級友をよそに、私は胸を撫で下ろす。
この結果は、わかっていた。ゲームの通り進んでいることへの、安堵である。
ここからが、本当の、本番だ。
パーティ用のドレスは、予め学園に運んでおいた。更衣室で、シノとともに、着替えを進める。周りにも同様に、着替えをする女生徒が溢れていた。
「そのドレス、素敵ね!」
「ありがとう、泉さん」
私が来ているのは、赤と黒の、毒々しいドレスである。いかにも、悪役らしいもの。なぜこんな趣味に合わないドレスを着ているかというと、ゲームの中で、私はこれを着ていたからだ。
「わたし、そういう色のドレス、好きだなあ」
ゲームの中での私は、もしかしたら泉にこう勧められて、服を選んだのかもしれない。そんなことを思いながら、腹部を締め上げる圧に耐える。
「泉さんに、お願いがあるの」
「なあに?」
私は、予め考えておいた台詞を続ける。
「今日の後夜祭なんだけど……早苗さんが会場の外に出ようとしたら、教えてもらえないかしら」
「なんだ、そんなこと? 良いわ、もちろんよ!」
向日葵の咲くような泉の笑顔。彼女の善意を利用することには、若干の良心の呵責がある。けれど、必要なことなのだ。
後夜祭の時間が近づくと、会場へ、各学年の受賞クラスが移動する。皆煌びやかな服装だ。そんな中、同じ服を身につけた、目立つ集団がいた。皆揃って、黒の燕尾服のような上着に、蝶ネクタイをつけている。
その中に、慧がいた。隣の男子生徒と、笑顔で話している。あの、まるいえくぼ。
「慧先輩」
呼びかけると、彼はこちらを見る。
「ああ、藤乃さん。綺麗だね」
開口一番に褒められて、私は頬が薄らと熱を帯びるのを感じる。
「どうされたんですか、その服?」
「俺たちのクラスは、執事喫茶だったでしょう? もったいないから、この格好で後夜祭に出ることになったんだ。一応、失礼はない服装だから」
かっちりとしたジャケットに、真っ白なシャツ。漆黒の蝶ネクタイが、よく映えている。
「似合いますね」
「そうかな。ありがとう」
なんだか別人のような慧も、笑うと、いつものえくぼが出る。
「うわあ、すごいね」
講堂に入ると、慧が歓声を上げる。
広い講堂には、今日はたくさんの丸テーブルが、白いクロスをかけられて並んでいる。立食形式のパーティらしい。向こうには、美味しそうな料理が、数え切れないほど並んでいる。
良い匂いと、がやがやした話し声。学生だけでなく、その家族やOBのいる、雑然とした空間。
私の視界の端には、早苗の姿がある。ピンク色のドレスを着ていて、可愛らしい。その隣には泉がいて、その近くには、海斗が所在なさげに佇んでいる。
見れば、早苗は泉とばかり話していて、海斗が話しかけても、目もくれない。あれだけわかりやすい態度を取られているのに、諦めずに話しかけ続ける海斗もなかなかだ。
だからこそ、イベントのきっかけさえ作れば、あとはうまく流れるはずだ。
照明が切り替わり、会話のざわめきが少し落ちつく。
「お時間になりました。皆さん、ようこそ、後夜祭にお越し下さいました。今期生徒会長を務めております、神崎樹です」
「生徒会長は、相変わらず素敵ね」
スポットライトの当たるステージで、マイクを持ち、樹が喋っている。彼が名乗ると拍手が起こり、うっとりした女生徒の囁きがあちこちで聞かれる。
そのまま開会宣言がなされ、学園長からのお話がある。来賓の中でも偉い方々の挨拶の後、乾杯が告げられ、後夜祭が始まった。
途端に、人が行き来する。飲み物を取りに行く人、食べ物を取る人、知り合いに挨拶に行く人、立ち止まって会話を交わす人。
よくあるパーティの風景。慣れない慧は、顔が引きつっている。
「藤乃。ここにいたんだね」
「お兄様。……お母様と、お父様も」
横から話しかけられたと思ったら、そこには家族が勢揃いしていた。3人とも、着飾った姿が様になる。集まると、そこだけ映画の世界みたいだ。
「何だ、ひとりか」
ひとりかと言われて隣を見ると、慧の姿はなかった。人と人の間をすり抜け、離れてゆく背中が見える。
樹がいたのかもしれない。私の胸は、一拍、大きく鼓動した。
「……ええ。ちょっとね」
「海斗くんはどこだ? 一緒にいないのか
「あそこにいるよ、お父様。海斗!」
海斗を見つけた兄が手を振ると、人混みをかき分けて、彼がやってきた。
「お久しぶりです、小松原さん」
「堅苦しいなあ。いずれ家族になる仲じゃないか。なあ、海斗くん」
「はあ……」
歯切れの悪い、海斗の相槌。
私は改めて、辺りを見回した。ここまで役者が揃ったら、あとは早苗だけだ。
「ねえ、藤乃さん」
ドレスから出た腕を、軽く突かれる。見るとそこには、泉がいた。
「ごめんなさい。目を離した隙に、早苗さん、外に出ちゃったみたい。どこにもいないの」
「ありがとう、泉さん」
私は父たちに、「少しお花を摘みに行ってくるわ。ここにいてね」と伝える。
歩きながら、慧と一緒に考えた台本を、頭の中でなぞる。
「あ、ごめんなさい、通りますね」
人と人の間をすり抜け、廊下へ向かう。
早苗がいるはずの場所は、わかっているのだ。
扉をドアマンに開けて貰い、赤い絨毯の敷き詰められた廊下へ出る。涼しい風が、額に触れる。果たして、そこに、早苗は。
ーーいた。
窓にもたれ、風を浴びる立ち姿。靡く髪。美しい横顔。
それはまさに、ゲームそのものだ。
慧と一緒に、話し合った。早苗とは敵対しているのに、生徒会室の片付けは手伝ってもらえた。それは、彼女の求めるものと、私たちの求めるものが、結果的に同じだったから。
思い通りに動いて欲しいなら、彼女の求めるものを、ちらつかせればいい。
「早苗さん」
窓辺でアンニュイな横顔を見せる早苗に、声をかける。彼女は、ふわりと花の咲くような笑顔でこちらを見た。
「……何よ、藤乃さんじゃない」
先ほどの笑顔は、樹用だったらしい。私の顔を確認すると、笑顔がすっと消える。
「邪魔しないでよ」
「そこにいても、樹さんは来ないわ」
「はあ?」
早苗が、怪訝そうに眉をひそめる。
「樹先輩との香水のイベントは、樹先輩が言うはずの、途中の台詞が抜けたわよね」
黙りこくる早苗。その視線が、ぐらぐらと動いている。
私を相手に発動した樹のイベントは、あのとき、途中で終わった。私が拒否したからだ。
「海水浴のときは、アイテムがなかったでしょう? 何とかして、代用したみたいだけど」
はっ、と浅く息を呑む音。
あのときのアイテムは、事前に私たちが回収した。早苗はそれに気付いているはずである。ビー玉で、代用するくらいだから。
「……そんなこと、なかったわ」
「嘘よ。どっちも私が、したことだもの。イベントって、私でも『横取り』できるのよ」
「なに、それ……!」
やはり早苗は、そこまでは気付いていなかったようで、目をむいて驚いている。
「今日のも、ね」
人差し指で、そっと唇に触れて見せる。樹とのキスシーンを含んだイベントを、想起させる仕草だ。
「な……どうして、そんなことするの? あたしと樹先輩のことは、関係ないじゃない」
「取引を持ちかけようと思って」
「取引?」
口角を片側だけ、持ち上げる。上手く、不敵に笑えているだろうか。
「そう。……実は私、海斗さんと昔からの婚約者なのよ。今日は親も来ているから、仲の良いところを見せないといけないの」
「は? 婚約者?」
ゲームにない情報を、彼女は知らない。混乱しているところに、畳み掛ける。
「海斗さんとのイベントを、私にくれない? あなたが、『私』の役をしてもらえないかしら」
「そんなの、あたしが悪役みたいじゃない」
「そう。だから取引なの。協力してくれたら、もう樹先輩のイベントに興味はないわ」
早苗の目が、左右に泳いでいる。海斗と手が切れることも、樹とのイベントを起こすことも、彼女の望みだ。
ただし後半は、全くの作り話なのだけれど。
正攻法で頼んでも、私の得にしかならないことを、早苗は絶対にしないだろう。だから、彼女の損得計算に、私の取引を載せる必要があった。たとえ、多少の嘘が含まれていても。
「……あたしが協力するはずないじゃない」
「いいけど、それなら私は、海斗じゃなくて樹先輩と仲良くさせてもらうわね」
そして、柔らかく微笑む。
早苗は、立ち止まっている。考え込んでいる表情だ。慧が樹を止めているから、いつまで待っても樹は来ない。こうしている間にも、彼女の自信はどんどんなくなっていき、言うことを聞くしかないと思うのでは……という、慧の予想だ。
「さ、戻りましょ」
考える隙を与えず、私は彼女に背を向ける。ふりではなく本当に、講堂へ向かう。
「……わかったわ」
屈した。
ぞくぞくした喜びが、背筋を込み上げる。
早苗と共に、会場へ戻る。彼女を先に、中へ入れた。重たい扉が閉まり、私たちは人混みの中を歩く。
「とりあえず、二人で話していて。私が割り込んで声をかけるから、あなたが文句をつけて頂戴」
「……うるさいわね。指図しないでよ」
渋々歩く早苗の後ろを、監視しながらついていく。
嘘をついて、ヒロインを陥れる。まるで本当に、悪役になったような気分だ。私の思惑通り、早苗は、海斗の方に行く。
海斗はまだ、父たちと話していた。彼の視線がこちらを向き、早苗を見て、そのあと、後ろにいる私を訝しげに見る。
「早苗、どこに行ってたんだ?」
海斗が、早苗に話しかける。
「ちょっとね」
自然な動作で、海斗が早苗の肩を引き寄せる。それが、彼らの自然な距離感なのだ。
「海斗くん、その子は?」
「ええと、彼女は僕の同級生で……」
父が見咎めると、海斗はそう説明する。
早苗が、ちらりとこちらに視線をやる。早く来い、という合図なのだろう。
私は1歩、踏み出す。ハイヒールの足音が、予想以上に高らかに響いた。
「本当にあなたたちは、いつもいつも……目障りなのよっ、どういうつもりなの?」
ゲームの通りの台詞を、言い放つ。
「え?」
早苗は、目を丸くした。当然だ。この台詞は、彼女が言うはずなのだから。
こんなに賑やかな会場なのに、思いの外、声がよく響く。周囲の視線が集まる。緊張して、顔の熱が増す。
早苗は表情を強張らせ、はっと口を開けた。
「騙したのね? あなた……」
「君こそ、どういうつもりなんだ? いい加減、認めろよ。僕たちは、こういう仲なんだから……」
これも、聞いたことのある台詞。早苗が怒っても、もうイベントのきっかけは作られている。
海斗は言うなり、傍の早苗を抱き寄せた。
そのままの勢いで、見せつけるように、唇を落とした。
早苗は、黙ってされるがままになっている。せめてもの抵抗だろう。残念ながら、そういう選択肢もあるのだ。
「僕は君が好きなんだ。わかってるよね? 君以外、考えられないよ。だから……」
自分の世界に浸っている海斗が、そう早苗に囁く。早苗は、おかしな表情をしている。
「……そういうことだ」
吐き捨てるように、私に言う。
水を打ったような沈黙。父は唖然としている。兄もだ。いくらイベントとはいえ、人前で、こんな行為に及ぶなんて。やはり、見ていられない。
恥ずかしさが沸き起こって来たとき、ふと視界に入った慧が、頬に手を当てていた。きっと、私の顔が緩んでいるのだ。頬を引き締め、私は海斗たちを見て、それから父を見る。
「ご覧になりました?」
「……ああ」
唇が、震えている。驚いているのか。ショックなのか。そこまでは、わからない。
「海斗さんは、こんな風に人前で他の方と睦まじく振る舞って、私には婚約破棄を言い渡すような……そんな方なのよ。それでもお父様は、ひと前でこんなことをされても、私が悪いんだから我慢しろとおっしゃるの?」
同情を引くように、できるだけ切実に。このタイミングで慧を見ると変なので、父だけをまっすぐに見つめる。視界の端にわずかに見切れる慧が、頷いているのがわかった。
「……藤乃」
絞り出すような、父の声。
「これでも、信じてもらえないのかしら……」
「いや……わかったよ、藤乃。君の気持ちは、よくわかった。最初から、疑ってなんかいなかったよ」
それは嘘だ。最初から信じてもらえていれば、こんなとこにはなっていない。
ここには、父の知り合いもたくさんいる。今のは、外面を守るための嘘。
だけどしっかり、言質は取った。
「ですって、お兄様。私、嬉しいわ」
「聞いたよ。良かったね、藤乃」
私の言葉はひっくり返せても、兄の言葉はひっくり返さない。父がそういう人だと知っているから、私は兄に話を振った。
父は誤魔化すように愛想笑いを浮かべ、「参りましたなあ」と誰にともなくアピールしている。
海斗は早苗を抱きしめて離さない。早苗は厳しい目つきで私を睨んでいる。父と母は周りの大人に事情を聞かれ、兄が隣で補足している。周囲の生徒たちからは、注目の眼差しが浴びせかけられている。
きっと、暫くは噂になるだろう。それは、仕方がない。私は廊下に向かった。溢れる人が、さっと左右に分かれて道を作ってくれる。気を遣われているらしい。
扉から廊下に出ると、向こうの扉が同時に開く。そこから顔を出したのは、慧であった。
「別々に出ないと、藤乃さんが何か言われそうだからね」
そう言って、合流してくる。
「……うまくいったね」
そして、人のいない夜の中庭へ。
本当ならば、早苗と樹がいるはずの中庭。そこに、私と慧がいる。
静かな中庭に、囁き声。風が吹き、葉の擦れる音。ここなら、誰もいないし、落ち着いて話ができる。
「うまくいきました。完璧に」
成功の余韻を噛みしめ、そう答える。
樹と早苗の邪魔をし、海斗とのイベントを起こさせ、それを父に見せて婚約破棄をする。
あのときの、早苗の悔しそうな顔と言ったら。
私は悪役であり、あれは早苗の思惑よりも私の企てが勝った、私なりの「ざまぁ」の瞬間であった。
「これで藤乃さんは、晴れてフリーになったわけだ」
「フリー?」
「恋人のいない女性、ってこと」
慧に言われ、首を傾げる。
「恋人なんて、最初からいませんでしたよ」
「まあ……気持ちの上ではそうでも、建前上はいたでしょう。俺は俺なりに、我慢してたんだよね。いろいろ際どいときもあったけど、一応、節度というか」
「お気遣い頂いて……すみません」
私が海斗との婚約をうまく破棄できないせいで、ずっと気を遣わせていたのだ。つい謝罪すると、慧が控えめに喉を鳴らす。
「これに乗じて、後釜に座る気もないんだ。それは卑怯だからね。……でもこれからは、気兼ねなく藤乃さんと一緒にいられるし、出かけられるし、連絡も取り合える。俺は嬉しいよ」
闇の中でも、慧が微笑んでいるのがわかる。その頬に浮かぶ、まるいえくぼも。
「私も、嬉しいです」
ヒロインを邪魔する悪役令嬢として、私が掴み取ったハッピーエンドが、これだ。そしてここからは、新しい物語が始まる。
「これからもよろしく、藤乃さん」
薄暗い中から慧の手が出てきて、私の手を取った。ひんやりとした夜風に、温かな手のひら。こんな風に彼の手に触れるのは、あの海岸以来だ。
「はい、もちろんです」
私たちは、闇の中で、優しい握手を交わした。
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