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6.出会い
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「王女殿下は、次は黒魔法の講義ですか」
「ええ」
「あまり黒魔法に傾倒しては、良い顔をしない者もおりますよ」
リーンの隣を歩くランドルフが、心配そうな顔をする。
この案じるような顔で、ランドルフはリーンの行動を制限するのだ。口調も、仕草も、親しくする友人も。
「危ういものほど、正しい知識を得た方が良いかと思っていましたけれど……あなたが、そう言うのなら」
「いえ。結局は、王女殿下のご判断ですから」
リーンに判断を委ねると言っておきながら、口は出してくる。リーンは結局、ランドルフの言うことに従うのだ。
黒魔法の講義を受けてみたいと言ったのは、俺なのに。
結局は、ランドルフが優先される。
ざわ、とうごめく胸の感覚が「嫉妬」であることを、俺はいい加減認めていた。
「ランドルフが受けている、剣術の授業でも受けてみましょうか」
「受けているのは、荒くれ者ばかりですよ。刺繍なんていかがですか?」
「刺繍……刺繍、ねえ」
きっとリーンは、刺繍の授業を受けるのだ。裁縫になんて、一分の興味もないのに。
ランドルフは、リーンのことを何もわかっていない。わかろうともしていない。婚約者のくせに。
「きゃっ!」
女の声が上がって、ランドルフの姿が視界から消えた。
「あら、大丈夫ですか?」
「ごめんなさい! ぶつかってしまって──や、やだっ! ランドルフ様!」
リーンが屈んだことで、起きたことが見えた。ランドルフは、床に転がされている。上には、リーンと同じ制服を着た女子がのしかかっていた。この女子がぶつかり、ランドルフが転んだらしい。
「だ、大丈夫だ。どいてくれ……」
「い、痛くないですか? 頭は打ってませんか?」
女子はランドルフの上に乗ったまま、あれやこれやと世話を焼く。いいのだろうか。傍から見れば、その光景は、まるで。
リーンの手が、俺をポケットの上から押さえた。その手のひらが震えている。
「人前で、みだりに抱きつくのはおやめになってくださる?」
声だけは、凛として響いた。リーンの緊張に気づいたのは、俺だけだったろう。
「あっ! ご、ごめんなさいっ」
女子が漸く退き、俺からも、隠れて見えなかったランドルフの顔が見えた。
「大丈夫だ。気に、するな」
何だ、その顔は。
ランドルフの頬は、真っ赤に上気していた。
「ええ」
「あまり黒魔法に傾倒しては、良い顔をしない者もおりますよ」
リーンの隣を歩くランドルフが、心配そうな顔をする。
この案じるような顔で、ランドルフはリーンの行動を制限するのだ。口調も、仕草も、親しくする友人も。
「危ういものほど、正しい知識を得た方が良いかと思っていましたけれど……あなたが、そう言うのなら」
「いえ。結局は、王女殿下のご判断ですから」
リーンに判断を委ねると言っておきながら、口は出してくる。リーンは結局、ランドルフの言うことに従うのだ。
黒魔法の講義を受けてみたいと言ったのは、俺なのに。
結局は、ランドルフが優先される。
ざわ、とうごめく胸の感覚が「嫉妬」であることを、俺はいい加減認めていた。
「ランドルフが受けている、剣術の授業でも受けてみましょうか」
「受けているのは、荒くれ者ばかりですよ。刺繍なんていかがですか?」
「刺繍……刺繍、ねえ」
きっとリーンは、刺繍の授業を受けるのだ。裁縫になんて、一分の興味もないのに。
ランドルフは、リーンのことを何もわかっていない。わかろうともしていない。婚約者のくせに。
「きゃっ!」
女の声が上がって、ランドルフの姿が視界から消えた。
「あら、大丈夫ですか?」
「ごめんなさい! ぶつかってしまって──や、やだっ! ランドルフ様!」
リーンが屈んだことで、起きたことが見えた。ランドルフは、床に転がされている。上には、リーンと同じ制服を着た女子がのしかかっていた。この女子がぶつかり、ランドルフが転んだらしい。
「だ、大丈夫だ。どいてくれ……」
「い、痛くないですか? 頭は打ってませんか?」
女子はランドルフの上に乗ったまま、あれやこれやと世話を焼く。いいのだろうか。傍から見れば、その光景は、まるで。
リーンの手が、俺をポケットの上から押さえた。その手のひらが震えている。
「人前で、みだりに抱きつくのはおやめになってくださる?」
声だけは、凛として響いた。リーンの緊張に気づいたのは、俺だけだったろう。
「あっ! ご、ごめんなさいっ」
女子が漸く退き、俺からも、隠れて見えなかったランドルフの顔が見えた。
「大丈夫だ。気に、するな」
何だ、その顔は。
ランドルフの頬は、真っ赤に上気していた。
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