怪物は愛を囁く

三歩ミチ

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9.噂話

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「あの魔女が、『王太子を呪うよう命じたのはシェルトランド家だ』と証言したらしいぜ」
「追い詰められた人間は、あることないこと言うからな」

 地下牢のそばには騎士が出入りするから、その後の情報はよくわかった。俺を召喚した魔女はあのまま捕らえられ、情報を吐かされたようだ。

「あながち嘘でもないかもしれんぞ。王家の血筋は、王女殿下と王太子殿下だけだったろう? もし王太子殿下が呪いを受けたら、王女殿下の血縁から次の王太子が選ばれたはずだから──」
「お前、滅多なことを言うもんじゃねえ。反逆罪に処されるぞ」

 老婆が、シェルトランド公爵家に王太子の暗殺を依頼された?
 その噂は、全てを知る俺にはしっくり来た。

 もし、王太子が呪いによって命を落としたら。
 王太子が十五歳になるのは、来年だ。リーンとランドルフの結婚がなされてから、王太子が死ぬことになっていた。
 他に血を引く者がいなければ、次の王太子は当然、リーンとランドルフの子になる。その際、シェルトランド公爵家は大きな権威を持つことになる。

 どうして、その計画はそのまま進まなかったのだろう。俺はリーンに名付けられてしまったが、魔の者は俺一人ではない。他の者を呼びつけて、呪いを企てることは可能だったはずだ。何しろリーンの身柄は、ずっと学園にあって──ああ、そうか。
 そうだった。
 リーンは学園に来る時、城に強力な白魔法をかけて行った。リーンを上回る魔力を持つ者が召喚しないと、呼び出した魔の者が、あの障壁をくぐるのは不可能だっただろう。

 そうだ、きっとそうだ。
 王太子を呪い殺すことができないから。
 シェルトランド公爵家は、次の手を考えたのだ。
 王太子を守っていたリーンを反逆者に仕立て上げ、自身はその功として、王家に取り入る──という策を。

 リーンをこのまま、良いように利用させてたまるか。
 どうにかして、救い出さないと。
 どうにかして──。
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