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タマネギの話2
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「コタっ! コタ……あっ、ああ……いくっ!」
あの日から僕は、有り体に言えばコタにどハマりしてしまった。毎週土曜日、つまり彼の出勤日にこの店に訪れて一週間分の欲望をその口内へと吐き出すのだった。
もちろんその度に金銭の授受が発生する、つまりは商売の関係。僕自身が心の中で軽蔑していた金で身体を買う『スケベ親父』と同類って訳だ。
言い訳がましく弁解をするならば、僕はこんな性分に育った、いや生まれたというべきか……ともかく、結婚して子供を作るなんて望みは無いし、酒とタバコは嗜む程度でギャンブルはしない。これといって金の掛かる趣味がある訳でもない。だから遊んで暮らせる程ではないにしろ、使いどころのない金を持て余している。
それだったらこうして此処でコタのために、取り分が幾らかはわからないが、きっと半分か悪くても三分の一くらいは、この刹那の情事の代償として彼の懐を温めるというのは有意義じゃないか。あとそれにこの店は所謂格安店ってヤツだ。雄の獣人が口を使うだけ。そうなると客層も必然的に悪くなる。事実、彼らを道具か何かのように扱っている連中をパーティションの隙間から垣間見たこともある。コタもそんな奴等の……いや、僕だって結局のところは……
「もう……考え事ですか? ご主人様?」
尿道に残った精液も吸い出し終わっても尚、心ここに在らずといった僕に、頬っぺたを膨らませて拗ねた素ぶりをみせる。
「ご、ごめん……コタ、おいで」
そう言うといつものように僕の膝に乗ってしなだれかかる。毛皮が胸元の毛をくすぐって、バターが溶けるような体温と愛おしい匂いを運んできた。こうして互いに身体を密着させて鼓動を交換するひとときは、誇張抜きにこれまで体験したどんなものにも代えがたい。
「あ、そろそろ……」
テーブルの上に置かれた時計をチラリと眺めてから、幾分か申し訳なさそうな顔をしたコタが口を開く。そう、このめくるめく時間もたったの九十分……未練がましくもコタの首筋に顔を埋めて肺いっぱいに匂いを吸い込んでから、心臓よりももっと低い場所で脈打っているそこに手を伸ばして揉みしだく。
「あっ……も、もうっ! この後もあるから……」
今日も一番乗りで来たので閉店まではかなりの時間がある。だから、僕が帰った後に別の客をとって、そいつの機嫌を損ねないように勃たせて媚を売らなければならない。コタが見知らぬ相手のちんぽを咥えて尻尾を振るのを想像しただけで嫉妬がマグマのように沸き上がり無意識のうちに手に力が入ってしまう。
「ちょっと……店長を呼んできてくれるかな?」
困惑と動揺。何か失敗をしたのか、叱責を受けるのかと尻尾がみるみる間に萎えてだらりと垂れた。
「だいじょうぶだから、ね」
頬を揉みながら緊張を解いてやると、ヒゲが何度か揺れる。僕が引く気配をいっこうに見せないことに落胆と諦めのため息を小さく吐いてから、足取りも重く店の奥へと消えていった。
その間に軽く身支度だけは整えておく。さすがに下半身丸出しのまま交渉するのはいささか間抜けだからな。
「お客様大変お待たせしましたっ! コタくんが何かご迷惑をお掛けしてしまいましたか?」
愛想笑いをぴったりと張り付かせた猫なで声。同じオオカミでもこっちは好きになれそうにもない。
「ラストまで延長したいんだけど。」
誰にも渡してなるものか。
「はっ……? はいっ! もちろんよろこんでっ! ええと、それではお会計がですね……」
いそいそと頭の中でそろばんを弾いてからメモ帳に走り書きされた数字は想像していたよりも断然安かった。まあこの店の優良顧客の僕にこれからもどっぷりとのめり込んでもらうためのサービスといったところだろうか。
「カードで。あと、コタくんと店の外出てももいいよね?」
彼の今日の時間は全て僕が買ったのだ。だから、それをどう使おうが自由で、この店にいる必要も無いだろう。オオカミは二人して目を点にして顔を見合わせてから、店長の方が先に口を開いた。
「もっ、もちろんですとも! 店外デートもアフターも、大丈夫だよねコタくん!?」
コタは何か言いかけたものの、有無を言わさない店長の強い視線に押し切られるようにして小さく頷くと、さっそく準備してきますねと上機嫌でスキップでもしかねない店長に肩を押されて店の奥へと消えていった。我ながら強引なやり口だが背に腹は変えられない。こんな喧しい店の中では落ち着いて話もできないからな。
「おまたせしましたあ~っ! あ、首輪も付けさせますか?」
「……そのままでいい。早くしてくれ」
首輪なんて付けて歩いたらそれこそ奴隷じゃないか。あいにくのところそういった趣味は持ち合わせていない。それに何よりもコタはそんなことを望んじゃいないだろう。口では喜ぶ素振りを見せていたとしても、だ。
「ごめんね、無理やりこんなことして」
丁重なお見送りをされ店を出て、しばらく歩いて角を曲がって『監視の目』も行き届かなくなった頃合いになって、組まれていた腕を解いてコタに話しかけた。
「あそこじゃ落ち着かないし……あ、もし嫌だったらこのまま帰ってもいいよ?」
それは本心からの提案ではあったが、コタなら、この状況下ならきっと、そんなことはしないという算段もあった。
「いっ、いえ、そんなこと……ご主人様と一緒にいられて嬉しいです!」
慌てて手を振って否定してみせる。初めて出会った時のスーツ姿でも、店にいるときの腰布一枚でもなく、随分とカジュアルな服装。庶民向けの廉価ブランドなのに外国人モデルが着ると格好良く見えるのと同じ効果が働いて、僕みたいな冴えない中年が隣に並んでもいいものかと恐縮してしまう。
「……優一。」
「えっ?」
片眉と耳が連動してピクリと跳ねた。
「僕の名前。さすがに外でご主人様ってのも、ね」
コタにとっては仕事なのだからどうってことないのかもしれないが、周りからは奇異の目で見られることは間違いないだろうし。
「こっ、小太郎、です。」
変わった源氏名だと思っていたが、そういうことか。頭の中でコタとの今までの思い出が再構築されていく。その名前はこの小心者で優しいオオカミをぴったりと体現しているように思えた。
「小太郎」
「は、はい。優一さん」
胸の内側から鼻先にかけてがむずむずとして思わず掻きむしってしまいそうな感触。名前を呼ぶことが、呼ばれることがこんなにもよろこびに満ちているなんて思いもよらなかった。
「じゃあどうしよっか。さっきの続きをしてもいいし、その前にどこかでご飯でも……」
皆まで言い終わる前に思わず吹き出してしまう。昔実家で飼っていた犬もそうだった。たとえ眠っていても『さんぽ』と『ごはん』が耳に入るとたちどころに飛び起きて、目を輝かせて尻尾を振っていた。コタ……小太郎は自らの意思に反してふりふりと揺れる尻尾を手で抑えながら小さく謝罪を口にした。
「いいって。僕もちょうどお腹が空いてきたところだったし。何か食べたいものある? 焼肉でも、お寿司でもなんでもいってよ」
この辺りの主要な高級店は事前にチェックしておいたのだ。中には目玉が飛び出るほど高級な店もあるが、どうせ使いどころもなく貯まっていくだけの金だ。それで小太郎が喜んでくれるなら安いものだ。
「え、えと……じゃあ…………」
おずおずと指差した先にあったのは所謂ファミレス。誰もが知っているような、家族でも安心してお腹いっぱい食べられるような……って。いや、ファミレス?
「あっ、ち、違うんです!」
訝しむ僕の目に気がついて、慌てて弁解を始める。こういう場合のセオリーは、客が見栄を張れるぐらいのグレードの店を選ぶのがセオリーだ。きっと、出かける前に店長からもそんなことを吹き込まれたに違いない。安い店を選ぶということは客に対して、お前の財布事情だったらこの程度だろうというメッセージに捉えかねられない。遠慮なんてしなくてもいいんだぞ。
「あそこの唐揚げ、好きなんです……」
思わず、思わず小太郎の手を握って抱きしめてしまいたい衝動にかられた。さすがにこの往来の中では想像するだけにとどまったのだが。たとえ彼のこの言動全てが計算ずくの演技だったとしても、僕は喜んで騙されてやろう。
「うん、じゃあ行こうか」
幸いにも空いていた店内の隅の方に座り、あそことは違って静かに流れるジャズの音色に身を任せながらメニューを二人して覗き込んで、普段なら一人では頼まないようなものも選択肢に入れられることにささやかな幸せを感じた。大人になった今はファミレスなんてただ食事をする場所という認識でしかないのだが、まだ小さい時分にはどうしようもない憧れがあった。家族で遊園地に行った帰り、誕生日やクリスマスといった特別な日、その実のところはこういうところで済ませてしまった方が食事の準備も片付けもしなくてもいいという事情はあるのだが、子供心にはナイフやフォークを使う食事は格別の……
「優一さん、決まりました?」
小太郎と目が合うだけで思わず笑みがこぼれてしまう。
「うん、じゃあ呼ぶね……あ。今度はかき揚げと間違えられないようにしないとね」
そう言うとぷくっと頬を膨らませて、もうっと拗ねてみせる。またファミレスが好きになりそうな気がした。
「ごちそうさまでした!」
会計時には伝票の奪い合いと、押し付けられる千円札を突き返す攻防。小太郎は本当にかわっている。ほんの一時間ばかし前にはあんな店に居たのが嘘のようだ。まるで、なんというか思い上がりかもしれないけれど、友達のような、もっと贅沢を言うと家族や恋人といるような錯覚を覚えてしまう。
「じゃあ……あの、その……」
指を絡めて手を握り、熱っぽい上目遣いで身体を密着させる。どこか心の中で、もしかしたらこのまま笑顔で『じゃあ今日はありがとうございました!』と手を振って帰ってしまうんじゃないかと心配していたのだが、幸いにも杞憂に終わったようだ。いつかテレビの動物番組でオオカミ同士がやっていたように僕に身体を擦り付けて、襟元に鼻先を寄せてクンクンと匂いを嗅いでみせる。僕は一度、小太郎の口の中に出したのもあって、興奮はしながらもまだ少しは冷静ぶっていられるものの、小太郎はつまりはその、溜まっていて早く出したくて仕方がないのだろう。
「ちょっ、ちょっとまってね」
慌ててスマホを取り出して、この辺りで男同士でも、獣人連れでも入れそうなホテルの検索に取り掛かる。小太郎とどこで食事をするかばかりを考えていて、そのあとのことがすっかり頭からすっぽ抜けてしまっていた。もし小太郎にその気がなければこのまま別れるのも吝かではなかったのだが、ここまで強烈なアプローチをされてしまっては僕のちんぽもまた熱量を持ち始めている。
「僕の知っているところでよければ……」
ああ、そうだった……小太郎は、こんな言い方はしたくないけれど、そういう商売をしているプロだからその辺りの情報は心得ているのだろう。
小太郎の道案内でホテルへ向かう道中、そして慣れた手つきでチェックインを済ませて迷うことなくエレベーターへ向かう後ろ姿に、隠していた嫉妬心と独占欲がまた鎌首をもたげ始める。このオオカミを僕だけのものにしてしまいたい。捕食の衝動にも似たそれが喉元まで出かかって、ぐるると野獣じみた唸り声をあげた。
「それじゃあ、お風呂を……わっ!?」
バスルームに向かいかけた小太郎を背後から抱きしめて、そのままキングベッドに押し倒した。驚きの声はあがったもののさして抵抗はなく、憂いを孕んだ瞳の奥にあるタペタムが天井に吊り下げられた紛い物のシャンデリアの光を反射して薄緑色に輝いた。
「優一さん……」
何かを言いかけて半開きになったままの口。ちろりと少しだけはみ出している真っ赤な舌がどうしようもなく扇情的だ。いつも僕を、僕のちんぽを愛おしげに迎え入れてくれるマズル。白く光る半月のような犬歯はその見た目の凶悪さに反して、時折アクセントのように痛痒い疼きを与えてくれる。口元の柔らかい産毛とねっとりと熱い口内の肉壁とを隔てるゴムパッキンは、時折飲みきれずに溢れた精液で白く染まる。まだほんのりと唐揚げの油っぽい匂いがするそこへ唇を寄せて……
「っ! あっ、ご、ごめんなさい」
長く飛び出した上顎のヒゲに接触するまであと5ミリメートルを切り、空気越しにも体温が伝わってきそうな距離まで接近したところでとっさに顔を背けて、極めて遠慮気味な手が身体をそっと押し返した。
眉毛をハの字にして耳をぺたんこに伏せて謝罪する姿に、昆虫採集の注射針を心臓に突き立てられたような痛みが走る。小瓶に入った緑と赤の液体が動脈を伝わって全身の細胞に染み渡り、時間の流れを停止させていく。僕はなんて馬鹿なことをしてしまったのだろう。小太郎の気持ちなんて何一つ考えずに勝手に一人で浮かれて、まるで恋人かなにかのように……小太郎はきっと店の外でも僕のことを好きでいてくれるに違いないという根拠のない自信と、その恋人を他の誰にも渡したくないという嫉妬心に狂い、目の前の現実を何一つ見ようともしていなかった。
「僕の方こそごめん」
身体を起こして、急速に醒めていく頭の中からようやく絞り出せたのがその一言だった。そうだ、小太郎にとってはこれはただの仕事にすぎない。僕が彼とこうして居られるのは単に金を払いその見返りとして得ただけなのだ。
「嫌がることしてごめんね、もし……嫌だったら、このまま帰っても」
「ちち、ちがうんです! こういうのはその、好きなひとと……あ、いやそうじゃなくて」
混乱した様子で目をぐるぐると回して必死に弁解しようとするも自ら地雷を踏み抜いてしまい、次第に目が潤んでいってしまう。
「だいじょうぶ、もうしないから……」
ほっぺたにそっと手を当てて回転させるように揉んでやると、くうんと鼻声が漏れた。
そうだ、小太郎をこうしてわざわざ店から連れ出したのは彼に気持ちよくなってもらうためだったじゃないか。あやすように耳の裏を掻きながら、身体を委ねてうっとりと目を細め始めたオオカミの身体をなぞり、すっかり萎えてしまった股間をズボンの上からやわやわと揉みしだく。
「ゆっ……ごしゅじん、さま」
未だに芯を持つきざしのないちんぽを揉み続けていると、申し訳なさげに口を開く。
「あの、その、ぼく……Mというか、ご奉仕すると興奮するというか……えへへ」
苦し紛れの言い訳なのだろうか、それとも真実なのか。はたまた、金で買われた身として僕の機嫌を損ねたくないのか。
「ご主人様のちんちん食べさせて……」
結局、場所が変われども小太郎と、コタとヤることは同じだった。互いに服を脱ぎ去り、僕がベッドの端に腰掛けるとコタはちんぽの前に跪いてトロンとした顔をする。
「大好きなちんちんの匂い……んっ、ふっ」
店を出る前におしぼりで軽く拭いただけのちんぽは、乾いた唾液と精液がはりついてお世辞にもいい匂いとは言えないだろう。それでも恍惚とした表情でちんぽを嗅ぐその姿を見ると、頭では色々と理屈をこねくり回していても身体は憎たらしいほどに正直なもので、コタに匂いを嗅がれただけでパブロフの犬のように刷り込まれた情欲が血液を通わせる。それはコタとて同じようで、先ほどは揉みしだいても反応をみせなかったちんぽがムクムクと勃起していくのが見えた。
「おっきいちんちんすごい……ご主人さまあ……コタにちんちんでお仕置きしてください」
脳裏にチラついていた、唐揚げを頬張る小太郎の笑顔がぼんやりと滲んでいってカーペットの染みになって消えてしまう。
「コタはちんちん大好きだよねえ?」
ちんぽをつまんで先走りに濡れた亀頭を真っ黒な鼻に押し付けると、ブニッとしたゴムのような冷たい感触。必死にちんぽの匂いを取り込もうと大きく息が吸われ、鼻の穴と亀頭がチュッとキスをした。
「誰のちんちん見てもそうやって尻尾振っちゃうんでしょ」
「ちっ、ちがっ! ご主人様だけだからあっ!」
半べそをかきながら首を振ると、先走りの糸が床に垂れた。その『ご主人様』は何人いるんだ、喉元まで出かかった言葉が鼻をツンと刺激する。
「ほら、上手におねだりできたら食べさせてあげるからね」
だらしなく半開きになったマズルが涎の糸を引き、まさにちんぽを咥え込もうと熱い吐息が撫で上げたところで、ひょいとちんぽをつまんで口元から遠ざける。
「ああっ……ご主人様のちんちん…………大きくてエッチなちんちん食べさせてください……」
尻尾を振りちんぽを勃たせて、おまけに犬のように片手を持ち上げて精一杯にアピールしてみせる。媚びるような上目遣いは僕の視線と一瞬交錯したあと、すぐに目の前のちんぽに釘付けになった。ビクビクとちんぽが脈打つたびに黒点のような瞳孔がそれを追う。承認の合図とばかりにコタの頭を撫でてから後頭部に手を回し
「んぶっ!?」
思い切り引き寄せて、一気にマズルの中にちんぽを押し込んだ。
ぐぼっ、がぽ、がぽっ
「~っ!! っ! んんっ!!」
目を白黒させながら悲鳴にも似た声を上げるオオカミ。カリ首を犬歯が引っ掻いて鋭い痛みを走らせるが、おかまいなしに頭をぐいぐいと押し付けてやる。
ちゅぼ、じゅぼっ! ごぶ、ごぷっ
「ほら、大好きなちんちん食べさせてもらって嬉しいよねえ?」
何かを喋ろうと喉仏が動くが、ゴボゴボと液体と空気とが攪拌される音が響いただけだった。もしコタが本気で嫌がっていれば手を弛めようとも思ったのだが、オオカミのちんぽはこれまでに見たことのないくらいに張り詰めて、内臓のような赤い表面に青黒い血管がトグロのように巻きついている。そして興奮と悦びを体現するべくそれは脈動するたびにピュッピュと先走りを噴き出してカーペットを黒く変色させていった。
「ああ気持ちいい、ちんちんイかせるエッチな口だね」
また先走りが飛び出した。
コタはよろこんでいる。ぼくもきもちいい。なんだ、はじめっからこうすればよかったんじゃないか。
にゅぶっ、ぬこっ! ぬこ、ぶりゅ
射精の準備が着々と整い、その本能に突き動かされるようにちんぽを押し付けるペースが早まっていく。もっと、もっと気持ちよくなりたい。もっと奥までちんぽをねじ込んで僕の精液を胃の中に直接たっぷりと注ぎ込んでしまいたい。
「キャンッ!」
耳障りな甲高い声。頭を掴んで動かし続けるのは意外と重労働で筋肉に乳酸が溜まり悲鳴をあげはじめたため、目の前にあった丁度手頃なハンドル、張り付くように寝かされていた両耳を掴んでグイッと引き寄せた。
「ああっ、はあ……コタの口の中たまんないわ……今まで何本も咥え込んできたんでしょ?」
にゅぶ、ぬちっ、ちゅこぬぶっ!
許しを乞う鼻声がピーピーと笛のように鳴る。よほどうれしかったのか、先走りに混じって白く濁った液体がどろりと垂れ落ちた。
「コタ……コタッ! いく、いくっ……ご褒美のちんちんミルクこぼさず飲めよっ!!」
できるだけ奥まで、一番奥まで。長いオオカミのマズルをもってしても息ができなくなるくらいまでねじ込んで、胃の中にある唐揚げも、ポテトフライも全部僕の精液で白く塗りつぶして、この柔らかな毛並みを、金色に輝く瞳を、硬い犬歯を造るための栄養にしてしまいたい。
びゅぶっ! びゅるっびゅーっ!
嘔吐にも似た嗚咽があがるが、吐き出させる訳にはいかない。鼻の穴が僕の腹の肉に埋まってしまう程に強く押し付ける。
びゅっ……ぴゅ…………
極めて原始的な生理的反応として横隔膜が痙攣を繰り返している。まだ尿道は精液で満たされており、ちんぽが脈動するとそれに合わせて徐々に押し出されていく。
やがて、コタの痙攣が弱々しく震える頃になって、ようやくちんぽをズルリと引き抜いた。カヒュッという音と共に大きく空気が吸い込まれ、それからこれまでよりも一層大きく腹がへこんだかと思うと、胃の内容物が音を立ててせり上がってくる。床に向かって大きく開かれた口。行き場を失ったそれがあと一秒以内に吐き出されんとしたタイミングを見計らって、両手をつかってマズルを握り塞いでやった。信じられないものを見る目に嗜虐心が刺激される。両頬が餌をたらふく溜めこんだリスのように膨らんで、歯の隙間から訳のわからない液体がにじみ出る。それから、ブッと鼻血を吹き出すようにして鼻水と精液と、色々が混ざった白みがかった粘液が真っ黒な鼻を彩った。ゆっくり、ゆっくりと舵を切るかのごとく、掴んだマズルを天井の方に向かせてやると、嚥下する音が静かに部屋の中に響き渡った。
「コタ……」
ぐしゃぐしゃに濡れた顔。酷い臭い。
「コタ、がんばったね」
コタを抱きしめると、その体温が僕の心をドロリと溶かしてしまった。
翌日目を覚ますと、コタはどこにもいなかった。まるで初めから存在しなかったかのように何もかもが……いや、この銀色に光る一本の毛と、布団の中から香る愛おしい匂い。天井を見上げて、何かを考えかけたが、何もかもがどうでもよくなってもう一度目をつぶった。
「はいはい……あ、コタくん? おつかれさま~…………えっ!? あの客を出禁に!? ちょっ、なんかあったの……もしもーし、コタくん? コタくん…………切れちゃった」
あの日から僕は、有り体に言えばコタにどハマりしてしまった。毎週土曜日、つまり彼の出勤日にこの店に訪れて一週間分の欲望をその口内へと吐き出すのだった。
もちろんその度に金銭の授受が発生する、つまりは商売の関係。僕自身が心の中で軽蔑していた金で身体を買う『スケベ親父』と同類って訳だ。
言い訳がましく弁解をするならば、僕はこんな性分に育った、いや生まれたというべきか……ともかく、結婚して子供を作るなんて望みは無いし、酒とタバコは嗜む程度でギャンブルはしない。これといって金の掛かる趣味がある訳でもない。だから遊んで暮らせる程ではないにしろ、使いどころのない金を持て余している。
それだったらこうして此処でコタのために、取り分が幾らかはわからないが、きっと半分か悪くても三分の一くらいは、この刹那の情事の代償として彼の懐を温めるというのは有意義じゃないか。あとそれにこの店は所謂格安店ってヤツだ。雄の獣人が口を使うだけ。そうなると客層も必然的に悪くなる。事実、彼らを道具か何かのように扱っている連中をパーティションの隙間から垣間見たこともある。コタもそんな奴等の……いや、僕だって結局のところは……
「もう……考え事ですか? ご主人様?」
尿道に残った精液も吸い出し終わっても尚、心ここに在らずといった僕に、頬っぺたを膨らませて拗ねた素ぶりをみせる。
「ご、ごめん……コタ、おいで」
そう言うといつものように僕の膝に乗ってしなだれかかる。毛皮が胸元の毛をくすぐって、バターが溶けるような体温と愛おしい匂いを運んできた。こうして互いに身体を密着させて鼓動を交換するひとときは、誇張抜きにこれまで体験したどんなものにも代えがたい。
「あ、そろそろ……」
テーブルの上に置かれた時計をチラリと眺めてから、幾分か申し訳なさそうな顔をしたコタが口を開く。そう、このめくるめく時間もたったの九十分……未練がましくもコタの首筋に顔を埋めて肺いっぱいに匂いを吸い込んでから、心臓よりももっと低い場所で脈打っているそこに手を伸ばして揉みしだく。
「あっ……も、もうっ! この後もあるから……」
今日も一番乗りで来たので閉店まではかなりの時間がある。だから、僕が帰った後に別の客をとって、そいつの機嫌を損ねないように勃たせて媚を売らなければならない。コタが見知らぬ相手のちんぽを咥えて尻尾を振るのを想像しただけで嫉妬がマグマのように沸き上がり無意識のうちに手に力が入ってしまう。
「ちょっと……店長を呼んできてくれるかな?」
困惑と動揺。何か失敗をしたのか、叱責を受けるのかと尻尾がみるみる間に萎えてだらりと垂れた。
「だいじょうぶだから、ね」
頬を揉みながら緊張を解いてやると、ヒゲが何度か揺れる。僕が引く気配をいっこうに見せないことに落胆と諦めのため息を小さく吐いてから、足取りも重く店の奥へと消えていった。
その間に軽く身支度だけは整えておく。さすがに下半身丸出しのまま交渉するのはいささか間抜けだからな。
「お客様大変お待たせしましたっ! コタくんが何かご迷惑をお掛けしてしまいましたか?」
愛想笑いをぴったりと張り付かせた猫なで声。同じオオカミでもこっちは好きになれそうにもない。
「ラストまで延長したいんだけど。」
誰にも渡してなるものか。
「はっ……? はいっ! もちろんよろこんでっ! ええと、それではお会計がですね……」
いそいそと頭の中でそろばんを弾いてからメモ帳に走り書きされた数字は想像していたよりも断然安かった。まあこの店の優良顧客の僕にこれからもどっぷりとのめり込んでもらうためのサービスといったところだろうか。
「カードで。あと、コタくんと店の外出てももいいよね?」
彼の今日の時間は全て僕が買ったのだ。だから、それをどう使おうが自由で、この店にいる必要も無いだろう。オオカミは二人して目を点にして顔を見合わせてから、店長の方が先に口を開いた。
「もっ、もちろんですとも! 店外デートもアフターも、大丈夫だよねコタくん!?」
コタは何か言いかけたものの、有無を言わさない店長の強い視線に押し切られるようにして小さく頷くと、さっそく準備してきますねと上機嫌でスキップでもしかねない店長に肩を押されて店の奥へと消えていった。我ながら強引なやり口だが背に腹は変えられない。こんな喧しい店の中では落ち着いて話もできないからな。
「おまたせしましたあ~っ! あ、首輪も付けさせますか?」
「……そのままでいい。早くしてくれ」
首輪なんて付けて歩いたらそれこそ奴隷じゃないか。あいにくのところそういった趣味は持ち合わせていない。それに何よりもコタはそんなことを望んじゃいないだろう。口では喜ぶ素振りを見せていたとしても、だ。
「ごめんね、無理やりこんなことして」
丁重なお見送りをされ店を出て、しばらく歩いて角を曲がって『監視の目』も行き届かなくなった頃合いになって、組まれていた腕を解いてコタに話しかけた。
「あそこじゃ落ち着かないし……あ、もし嫌だったらこのまま帰ってもいいよ?」
それは本心からの提案ではあったが、コタなら、この状況下ならきっと、そんなことはしないという算段もあった。
「いっ、いえ、そんなこと……ご主人様と一緒にいられて嬉しいです!」
慌てて手を振って否定してみせる。初めて出会った時のスーツ姿でも、店にいるときの腰布一枚でもなく、随分とカジュアルな服装。庶民向けの廉価ブランドなのに外国人モデルが着ると格好良く見えるのと同じ効果が働いて、僕みたいな冴えない中年が隣に並んでもいいものかと恐縮してしまう。
「……優一。」
「えっ?」
片眉と耳が連動してピクリと跳ねた。
「僕の名前。さすがに外でご主人様ってのも、ね」
コタにとっては仕事なのだからどうってことないのかもしれないが、周りからは奇異の目で見られることは間違いないだろうし。
「こっ、小太郎、です。」
変わった源氏名だと思っていたが、そういうことか。頭の中でコタとの今までの思い出が再構築されていく。その名前はこの小心者で優しいオオカミをぴったりと体現しているように思えた。
「小太郎」
「は、はい。優一さん」
胸の内側から鼻先にかけてがむずむずとして思わず掻きむしってしまいそうな感触。名前を呼ぶことが、呼ばれることがこんなにもよろこびに満ちているなんて思いもよらなかった。
「じゃあどうしよっか。さっきの続きをしてもいいし、その前にどこかでご飯でも……」
皆まで言い終わる前に思わず吹き出してしまう。昔実家で飼っていた犬もそうだった。たとえ眠っていても『さんぽ』と『ごはん』が耳に入るとたちどころに飛び起きて、目を輝かせて尻尾を振っていた。コタ……小太郎は自らの意思に反してふりふりと揺れる尻尾を手で抑えながら小さく謝罪を口にした。
「いいって。僕もちょうどお腹が空いてきたところだったし。何か食べたいものある? 焼肉でも、お寿司でもなんでもいってよ」
この辺りの主要な高級店は事前にチェックしておいたのだ。中には目玉が飛び出るほど高級な店もあるが、どうせ使いどころもなく貯まっていくだけの金だ。それで小太郎が喜んでくれるなら安いものだ。
「え、えと……じゃあ…………」
おずおずと指差した先にあったのは所謂ファミレス。誰もが知っているような、家族でも安心してお腹いっぱい食べられるような……って。いや、ファミレス?
「あっ、ち、違うんです!」
訝しむ僕の目に気がついて、慌てて弁解を始める。こういう場合のセオリーは、客が見栄を張れるぐらいのグレードの店を選ぶのがセオリーだ。きっと、出かける前に店長からもそんなことを吹き込まれたに違いない。安い店を選ぶということは客に対して、お前の財布事情だったらこの程度だろうというメッセージに捉えかねられない。遠慮なんてしなくてもいいんだぞ。
「あそこの唐揚げ、好きなんです……」
思わず、思わず小太郎の手を握って抱きしめてしまいたい衝動にかられた。さすがにこの往来の中では想像するだけにとどまったのだが。たとえ彼のこの言動全てが計算ずくの演技だったとしても、僕は喜んで騙されてやろう。
「うん、じゃあ行こうか」
幸いにも空いていた店内の隅の方に座り、あそことは違って静かに流れるジャズの音色に身を任せながらメニューを二人して覗き込んで、普段なら一人では頼まないようなものも選択肢に入れられることにささやかな幸せを感じた。大人になった今はファミレスなんてただ食事をする場所という認識でしかないのだが、まだ小さい時分にはどうしようもない憧れがあった。家族で遊園地に行った帰り、誕生日やクリスマスといった特別な日、その実のところはこういうところで済ませてしまった方が食事の準備も片付けもしなくてもいいという事情はあるのだが、子供心にはナイフやフォークを使う食事は格別の……
「優一さん、決まりました?」
小太郎と目が合うだけで思わず笑みがこぼれてしまう。
「うん、じゃあ呼ぶね……あ。今度はかき揚げと間違えられないようにしないとね」
そう言うとぷくっと頬を膨らませて、もうっと拗ねてみせる。またファミレスが好きになりそうな気がした。
「ごちそうさまでした!」
会計時には伝票の奪い合いと、押し付けられる千円札を突き返す攻防。小太郎は本当にかわっている。ほんの一時間ばかし前にはあんな店に居たのが嘘のようだ。まるで、なんというか思い上がりかもしれないけれど、友達のような、もっと贅沢を言うと家族や恋人といるような錯覚を覚えてしまう。
「じゃあ……あの、その……」
指を絡めて手を握り、熱っぽい上目遣いで身体を密着させる。どこか心の中で、もしかしたらこのまま笑顔で『じゃあ今日はありがとうございました!』と手を振って帰ってしまうんじゃないかと心配していたのだが、幸いにも杞憂に終わったようだ。いつかテレビの動物番組でオオカミ同士がやっていたように僕に身体を擦り付けて、襟元に鼻先を寄せてクンクンと匂いを嗅いでみせる。僕は一度、小太郎の口の中に出したのもあって、興奮はしながらもまだ少しは冷静ぶっていられるものの、小太郎はつまりはその、溜まっていて早く出したくて仕方がないのだろう。
「ちょっ、ちょっとまってね」
慌ててスマホを取り出して、この辺りで男同士でも、獣人連れでも入れそうなホテルの検索に取り掛かる。小太郎とどこで食事をするかばかりを考えていて、そのあとのことがすっかり頭からすっぽ抜けてしまっていた。もし小太郎にその気がなければこのまま別れるのも吝かではなかったのだが、ここまで強烈なアプローチをされてしまっては僕のちんぽもまた熱量を持ち始めている。
「僕の知っているところでよければ……」
ああ、そうだった……小太郎は、こんな言い方はしたくないけれど、そういう商売をしているプロだからその辺りの情報は心得ているのだろう。
小太郎の道案内でホテルへ向かう道中、そして慣れた手つきでチェックインを済ませて迷うことなくエレベーターへ向かう後ろ姿に、隠していた嫉妬心と独占欲がまた鎌首をもたげ始める。このオオカミを僕だけのものにしてしまいたい。捕食の衝動にも似たそれが喉元まで出かかって、ぐるると野獣じみた唸り声をあげた。
「それじゃあ、お風呂を……わっ!?」
バスルームに向かいかけた小太郎を背後から抱きしめて、そのままキングベッドに押し倒した。驚きの声はあがったもののさして抵抗はなく、憂いを孕んだ瞳の奥にあるタペタムが天井に吊り下げられた紛い物のシャンデリアの光を反射して薄緑色に輝いた。
「優一さん……」
何かを言いかけて半開きになったままの口。ちろりと少しだけはみ出している真っ赤な舌がどうしようもなく扇情的だ。いつも僕を、僕のちんぽを愛おしげに迎え入れてくれるマズル。白く光る半月のような犬歯はその見た目の凶悪さに反して、時折アクセントのように痛痒い疼きを与えてくれる。口元の柔らかい産毛とねっとりと熱い口内の肉壁とを隔てるゴムパッキンは、時折飲みきれずに溢れた精液で白く染まる。まだほんのりと唐揚げの油っぽい匂いがするそこへ唇を寄せて……
「っ! あっ、ご、ごめんなさい」
長く飛び出した上顎のヒゲに接触するまであと5ミリメートルを切り、空気越しにも体温が伝わってきそうな距離まで接近したところでとっさに顔を背けて、極めて遠慮気味な手が身体をそっと押し返した。
眉毛をハの字にして耳をぺたんこに伏せて謝罪する姿に、昆虫採集の注射針を心臓に突き立てられたような痛みが走る。小瓶に入った緑と赤の液体が動脈を伝わって全身の細胞に染み渡り、時間の流れを停止させていく。僕はなんて馬鹿なことをしてしまったのだろう。小太郎の気持ちなんて何一つ考えずに勝手に一人で浮かれて、まるで恋人かなにかのように……小太郎はきっと店の外でも僕のことを好きでいてくれるに違いないという根拠のない自信と、その恋人を他の誰にも渡したくないという嫉妬心に狂い、目の前の現実を何一つ見ようともしていなかった。
「僕の方こそごめん」
身体を起こして、急速に醒めていく頭の中からようやく絞り出せたのがその一言だった。そうだ、小太郎にとってはこれはただの仕事にすぎない。僕が彼とこうして居られるのは単に金を払いその見返りとして得ただけなのだ。
「嫌がることしてごめんね、もし……嫌だったら、このまま帰っても」
「ちち、ちがうんです! こういうのはその、好きなひとと……あ、いやそうじゃなくて」
混乱した様子で目をぐるぐると回して必死に弁解しようとするも自ら地雷を踏み抜いてしまい、次第に目が潤んでいってしまう。
「だいじょうぶ、もうしないから……」
ほっぺたにそっと手を当てて回転させるように揉んでやると、くうんと鼻声が漏れた。
そうだ、小太郎をこうしてわざわざ店から連れ出したのは彼に気持ちよくなってもらうためだったじゃないか。あやすように耳の裏を掻きながら、身体を委ねてうっとりと目を細め始めたオオカミの身体をなぞり、すっかり萎えてしまった股間をズボンの上からやわやわと揉みしだく。
「ゆっ……ごしゅじん、さま」
未だに芯を持つきざしのないちんぽを揉み続けていると、申し訳なさげに口を開く。
「あの、その、ぼく……Mというか、ご奉仕すると興奮するというか……えへへ」
苦し紛れの言い訳なのだろうか、それとも真実なのか。はたまた、金で買われた身として僕の機嫌を損ねたくないのか。
「ご主人様のちんちん食べさせて……」
結局、場所が変われども小太郎と、コタとヤることは同じだった。互いに服を脱ぎ去り、僕がベッドの端に腰掛けるとコタはちんぽの前に跪いてトロンとした顔をする。
「大好きなちんちんの匂い……んっ、ふっ」
店を出る前におしぼりで軽く拭いただけのちんぽは、乾いた唾液と精液がはりついてお世辞にもいい匂いとは言えないだろう。それでも恍惚とした表情でちんぽを嗅ぐその姿を見ると、頭では色々と理屈をこねくり回していても身体は憎たらしいほどに正直なもので、コタに匂いを嗅がれただけでパブロフの犬のように刷り込まれた情欲が血液を通わせる。それはコタとて同じようで、先ほどは揉みしだいても反応をみせなかったちんぽがムクムクと勃起していくのが見えた。
「おっきいちんちんすごい……ご主人さまあ……コタにちんちんでお仕置きしてください」
脳裏にチラついていた、唐揚げを頬張る小太郎の笑顔がぼんやりと滲んでいってカーペットの染みになって消えてしまう。
「コタはちんちん大好きだよねえ?」
ちんぽをつまんで先走りに濡れた亀頭を真っ黒な鼻に押し付けると、ブニッとしたゴムのような冷たい感触。必死にちんぽの匂いを取り込もうと大きく息が吸われ、鼻の穴と亀頭がチュッとキスをした。
「誰のちんちん見てもそうやって尻尾振っちゃうんでしょ」
「ちっ、ちがっ! ご主人様だけだからあっ!」
半べそをかきながら首を振ると、先走りの糸が床に垂れた。その『ご主人様』は何人いるんだ、喉元まで出かかった言葉が鼻をツンと刺激する。
「ほら、上手におねだりできたら食べさせてあげるからね」
だらしなく半開きになったマズルが涎の糸を引き、まさにちんぽを咥え込もうと熱い吐息が撫で上げたところで、ひょいとちんぽをつまんで口元から遠ざける。
「ああっ……ご主人様のちんちん…………大きくてエッチなちんちん食べさせてください……」
尻尾を振りちんぽを勃たせて、おまけに犬のように片手を持ち上げて精一杯にアピールしてみせる。媚びるような上目遣いは僕の視線と一瞬交錯したあと、すぐに目の前のちんぽに釘付けになった。ビクビクとちんぽが脈打つたびに黒点のような瞳孔がそれを追う。承認の合図とばかりにコタの頭を撫でてから後頭部に手を回し
「んぶっ!?」
思い切り引き寄せて、一気にマズルの中にちんぽを押し込んだ。
ぐぼっ、がぽ、がぽっ
「~っ!! っ! んんっ!!」
目を白黒させながら悲鳴にも似た声を上げるオオカミ。カリ首を犬歯が引っ掻いて鋭い痛みを走らせるが、おかまいなしに頭をぐいぐいと押し付けてやる。
ちゅぼ、じゅぼっ! ごぶ、ごぷっ
「ほら、大好きなちんちん食べさせてもらって嬉しいよねえ?」
何かを喋ろうと喉仏が動くが、ゴボゴボと液体と空気とが攪拌される音が響いただけだった。もしコタが本気で嫌がっていれば手を弛めようとも思ったのだが、オオカミのちんぽはこれまでに見たことのないくらいに張り詰めて、内臓のような赤い表面に青黒い血管がトグロのように巻きついている。そして興奮と悦びを体現するべくそれは脈動するたびにピュッピュと先走りを噴き出してカーペットを黒く変色させていった。
「ああ気持ちいい、ちんちんイかせるエッチな口だね」
また先走りが飛び出した。
コタはよろこんでいる。ぼくもきもちいい。なんだ、はじめっからこうすればよかったんじゃないか。
にゅぶっ、ぬこっ! ぬこ、ぶりゅ
射精の準備が着々と整い、その本能に突き動かされるようにちんぽを押し付けるペースが早まっていく。もっと、もっと気持ちよくなりたい。もっと奥までちんぽをねじ込んで僕の精液を胃の中に直接たっぷりと注ぎ込んでしまいたい。
「キャンッ!」
耳障りな甲高い声。頭を掴んで動かし続けるのは意外と重労働で筋肉に乳酸が溜まり悲鳴をあげはじめたため、目の前にあった丁度手頃なハンドル、張り付くように寝かされていた両耳を掴んでグイッと引き寄せた。
「ああっ、はあ……コタの口の中たまんないわ……今まで何本も咥え込んできたんでしょ?」
にゅぶ、ぬちっ、ちゅこぬぶっ!
許しを乞う鼻声がピーピーと笛のように鳴る。よほどうれしかったのか、先走りに混じって白く濁った液体がどろりと垂れ落ちた。
「コタ……コタッ! いく、いくっ……ご褒美のちんちんミルクこぼさず飲めよっ!!」
できるだけ奥まで、一番奥まで。長いオオカミのマズルをもってしても息ができなくなるくらいまでねじ込んで、胃の中にある唐揚げも、ポテトフライも全部僕の精液で白く塗りつぶして、この柔らかな毛並みを、金色に輝く瞳を、硬い犬歯を造るための栄養にしてしまいたい。
びゅぶっ! びゅるっびゅーっ!
嘔吐にも似た嗚咽があがるが、吐き出させる訳にはいかない。鼻の穴が僕の腹の肉に埋まってしまう程に強く押し付ける。
びゅっ……ぴゅ…………
極めて原始的な生理的反応として横隔膜が痙攣を繰り返している。まだ尿道は精液で満たされており、ちんぽが脈動するとそれに合わせて徐々に押し出されていく。
やがて、コタの痙攣が弱々しく震える頃になって、ようやくちんぽをズルリと引き抜いた。カヒュッという音と共に大きく空気が吸い込まれ、それからこれまでよりも一層大きく腹がへこんだかと思うと、胃の内容物が音を立ててせり上がってくる。床に向かって大きく開かれた口。行き場を失ったそれがあと一秒以内に吐き出されんとしたタイミングを見計らって、両手をつかってマズルを握り塞いでやった。信じられないものを見る目に嗜虐心が刺激される。両頬が餌をたらふく溜めこんだリスのように膨らんで、歯の隙間から訳のわからない液体がにじみ出る。それから、ブッと鼻血を吹き出すようにして鼻水と精液と、色々が混ざった白みがかった粘液が真っ黒な鼻を彩った。ゆっくり、ゆっくりと舵を切るかのごとく、掴んだマズルを天井の方に向かせてやると、嚥下する音が静かに部屋の中に響き渡った。
「コタ……」
ぐしゃぐしゃに濡れた顔。酷い臭い。
「コタ、がんばったね」
コタを抱きしめると、その体温が僕の心をドロリと溶かしてしまった。
翌日目を覚ますと、コタはどこにもいなかった。まるで初めから存在しなかったかのように何もかもが……いや、この銀色に光る一本の毛と、布団の中から香る愛おしい匂い。天井を見上げて、何かを考えかけたが、何もかもがどうでもよくなってもう一度目をつぶった。
「はいはい……あ、コタくん? おつかれさま~…………えっ!? あの客を出禁に!? ちょっ、なんかあったの……もしもーし、コタくん? コタくん…………切れちゃった」
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