ケモホモ短編

@Y

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山小屋で出会ったのはオオカミでした。

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 それにしても寒い。
 なにしろこの山小屋の中には、ストーブはおろか毛布の一枚だって置いていないのだ。
 それでもまだ、先ほどからこの小屋の窓や扉を叩いている風雪を凌げるだけマシだろう。ポケットの中で氷のように冷たくなったスマートフォンを取り出して電源をつけてみても、そこにはただ圏外の二文字が虚しく表示されているだけ。バッテリー残量は半分を切っている。このまま電源をつけておいたところで救援を呼ぶには役立ちそうにないし、もし明日吹雪がやんで外に出られたら電波の届くところまで降りられるかもしれない。そんな合理的な判断の元に電源を落とし、モニタの光が消えるとあたりは一面真っ暗になった。
 そもそも、ソロキャンプだなんて意気込んでロクな装備も持たないまま登山をしたのが間違いだった。このご時世、休日とて街に出るのも憚られて家で動画配信サイトばかりを眺めていたのだが、そこでみたソロキャンプがこの上なく楽しそうだったのだ。
 本来であれば色々と装備を整えて準備を万全にしてから挑むところなのだが、なんせ思い立ったが吉日。どうせ日帰りだからとちょっとした厚着をして、リュックにコンビニで買い込んだ食料をいくつか詰めただけで飛び出して……そして今に至る。山の天気は変わりやすいというものの、まさかあんなに晴れていたのに吹雪になるなんて。
 そうして戻る道も白く塗りつぶされ、日も落ちてきて絶望が押し寄せ始めたころに奇跡的にこの山小屋を見つけたという訳だ。だけどこの土間と板張りの床があるだけの四畳半の空間で、明日の朝に凍死していない確率はどの程度だろうか。毛布や寝袋とまで贅沢は言わない。せめてマフラーか上着の一枚でも多めにもってくればよかったと後悔だけが募っていく。
 扉を叩く風の音がさらに大きくなる。まるで誰かが開けようとしているかのように、何度も何度も揺さぶられて木枠が軋んで悲鳴をあげる。やがて僕が息を呑みながら見守る中、それは本当に開け放たれたのだった。

「……先客がいたか」
 扉の閉まる音に続き低い男の声。この暗闇の中では10センチ先だって見えないが、人間の気配を察したのか男はそう呟いた。こんな押し入れに閉じ込められたような状況で一晩明かすのは正直恐ろしくてたまらなかったので、こうして同じ境遇の誰かが一緒にいてくれるというのは心強い。ただそう思う一方で、得体の知れない相手への恐怖も同時に湧き上がってくる。山好きに悪いヤツはいないと聞いたことがあるが、なんせ顔も見えないこの状況だ。万が一殺人鬼だったりしたら……いや悪い方向に想像するのはよせ。
「い、いやあ、すごい吹雪でまいっちゃいますよね」
 本当は相手が変な気を起こさないように凄んだ声でも出そうと思っていたのに、焦るあまり素のままで返してしまう。男は「そうだな」と短い返事をしてから床にドスンと腰を落とした。なんだか無愛想なヤツ。別に男同士で朝まで楽しくおしゃべりしたい訳じゃないけれど、黙っていたら寒さを余計に意識してしまう。このまま眠ってしまうのも危険だし、なんとかして気を紛らわせたい。
「ぼく、初めてこの山登ったんですよね。ていうか登山自体初めてなんですよ。」
 まずはこちらから話題を振って会話しやすい雰囲気を作るべし。相手は登山経験者だろうから、こうして切り出せば登山の蘊蓄でも話してくれるだろう。そしてもし相手も素人だったとしてもそれはそれで花が咲くことだろう。さあどう返してくる。
「だからそんな考えなしの軽装で来たのか」
 呆れたような嘲笑するようないいっぷりに温厚な僕とてカチンときた。そりゃあまあ事実なんだけどそんな言い方ないだろう。どの業界でも初心者には優しくしろって鉄則を知らないのだろうか。こんな風に素人を見下したりすると新規参入が無くなって廃れちゃうんだぞ。
 売り言葉に買い言葉で応戦しようとしたところで、ふとあることに気がついた。
「え? あの、見えるんですか? こんなに暗いのに」
 せめて月や星が出ていれば薄らとでも見えるのだろうが、空は分厚い雪雲に覆われて漆黒に包まれていて、おまけにこの小屋には豆電球の一つだってないんだから。こんな暗さでは、赤外線を使った暗視ゴーグルでもないと厳しいだろう。
「あ、ああ、夜目がきくからな」
 それにしたって。まあ、暗視ゴーグルを着けて山に登るなんて話聞いたこともないし、本人がそう言うのであればこれ以上追求の余地はないけども。
「へえ、そうなんですね。ええっと……あなたは」
 沈黙の時間。いやいや、流れ察してよ。
「ぼく、北原です。」
「……ジン。」
 わお。いきなりファーストネーム教えてくれるなんてフレンドリーなんだから。
「北原、北原綾です」
 かたや苗字でもう一方が名前で呼ぶというのもヘンテコだからな。
「ジン、さんはよくこの山に来られるんですか?」
 初対面の相手だし、声からして年下って風でもないから敬語が無難だろうか。
「まあ住んで……いや、近くに住んでるからな」
 それに相槌を打ったきり、次の言葉が浮かんでこない。
 普段だって誰かと話したりするのは得意ではないのだ。こう言う時にポンポン話題が出せたらと、自らのコミュ障ぶりには呆れてしまう。無言の時間が長引くにつれて気まずさが肥大していく。どうする、どんな家なんですかとか聞いてみるか? でもいきなりそこまでプライベートなところに突っ込むのも不自然だよな。登山歴とか聞いてみようか、それとも天気の話題のほうが無難だろうか。すごい雪降ってますねって、それ以上発展しなさそうだけど。ここはまず好きな食べ物とか……って、だからそうじゃなくて。
 グウ……キュルル……
 その音を聞いて、自分が朝から何も食べていなかったことに気がついた。せっかくだから山頂で食べようと思って腹を空かせてきたのだ。とは言っても、正直なところ寒さのあまり空腹は感じていないし、なによりこの音の出どころは僕からじゃない。
「食事にでもします?」
 その提案に対する回答はなかった。
 しかし轟々と風が吹き荒ぶ中でさえ、自らの存在を主張するべく一度鳴り出した腹の虫は収まる様子はなさそうだった。
「あの?」
 まるで動物が鳴いているかのようだ。
「いや、腹は減ってないからいい」
 その言葉に反抗するように一際大きな音が鳴った。
 いやいや、完全にお腹空いてますやん。もしかして食べ物を持っていないから遠慮しているのだろうか。
「少しだけなら持ってきているので一緒に食べましょ?」
 まだもごもごと弁解を続ける声をよそに、リュックを手繰り寄せて指先でコンビニ袋を創作する。あったあった、これだ。おにぎり2つとささみスティック。本当はバーナーと網でも買ってバーベキューなんてのを夢見ていたのだが、一度きりで飽きてしまうかもしれない趣味のために大枚を叩く気にはなれなかったのだ。
 いずれにしろ、袖振り合うも多生の縁ともいうし、何よりも明らかに腹を空かせている相手の前で自分だけ食事をする訳にもいかないだろう。
「おにぎりなんかでよければ。よいしょ……」
 手探りで声のした方向へと這い寄っていこうとすると。
「くっ、くるなっ!!」
 一際大きな声で拒絶され、思わず身体がすくんでしまう。なんだっていうんだ。
「わ、わるい。服が雪で濡れているから」
 だからといってそんな大声出さなくても。まあこの寒さの中で身体を濡らすのは命取りになるだろうから気を使ってくれたのだろうか。
「……じゃあ、ココに置いておきますね」
 おにぎりと、ささみスティックもサービスだ。今の僕にはおにぎり一つでも手に余りそうだからな。
 まだ遠慮しているのか、いつまで経っても動く気配はない。まったく手がかかるんだから。僕がわざとらしいくらいに音を立てておにぎりのフィルムを剥がすと、やがてジンさんも観念したのか手に取ったようだった。
「いただきます。」
 暖房も灯りもない山小屋の中で冷えてカチカチになったおにぎりを食べるなんて人生最悪の日だろう。一人だったならば。でも、顔も姿もわからないけど誰かと一緒ならば少しだけ気持ちも前向きになった。
 冷や飯を口の中でほぐしていると、向こうからはクンクンという鼻息。匂いを嗅いでいるのだろうか。おにぎりなんて別に珍しくもないし、それに毒なんて入っているわけないのだからなんで匂いを嗅いでいるのだろうか。具の中身でも確認しているのかな。そんなことを考えていると、やがてパリパリと海苔の裂ける音。
「うまい」
 どういたしまして。心の中でそう呟いた。
 そうして多少のカロリーを摂取したことで気持ちばかりの熱が生産された。だが、それを上回る速度で空気から床から体温が奪われていく。寒い。寒すぎる。息を吸うごとに鼻の穴がツンと痛むし、身体は熱を作り出そうと僕の意思とは関係なくブルブルと震えている。
 何かを喋ろうと口を開きかけても顎を開くのもままならず、おまけに思考は霞がかってぼんやりとしている。今何時ぐらいだろうか。外は依然として暗く、陽が昇るまでたっぷりと時間はありそうだ。明日は晴れるだろうか。もし天候が回復しなかったらどうしようか。
「……大丈夫か?」
 座っているのもしんどくなって横になると、それまで主に尻と靴底から吸収されていた体温が腕や脇腹からも奪われて加速度的に身体が凍りついていく。
「おい、寝るな!」
 寝たら死ぬぞー! ってね。でも、わかっていても、いつ終わるとも知れない寒さに耐え続けるのはもはや拷問だ。このまま意識をシャットダウンして、次に目覚めたときはできれば暖かい毛布の中にいたいものだ。
「リョウ! おい!!」
 寒さで震えているのか、あるいは揺さぶられているのかどちらだったのだろうか。

 次に意識が戻ったときあの願いが叶ったのか僕は毛布に包まれていた。
 寒さはもう感じず、じわりと解きほぐすような熱が全身を包んでいる。これが天国ってやつだろうか。ふわふわの……いや、ちょっとゴワゴワしていて硬いし、なんだか雨に濡れたイヌみたいな匂いもする。それでも温もりに追い縋ろうと、上等とは言えないその毛布に抱きつくと身体中を筆でくすぐられた。なんだこの感触。まるで全裸で布団に入っているかのようだ。それにしても臭い。死後の世界ってこんな匂いなのか?
「わるかったな、くさくて」
 頭上から降り注いだ声には聞き覚えがあった。
「え……あれ? ジンさん?」
 なんで天国に。二人して死んだから一緒にあの世にご招待されたってことか? しかしそれにしても、なんだろうこのリアルな感触は。意識が覚醒していくにつれて、これが夢なんかじゃなく現実なのではという疑念が浮かんでくる。
 目を開けても依然として闇、闇、闇。自分の手すら視認できない。手を伸ばして辺りの形を探っていく。一体全体なにがどうなっているんだ。
「お、おいっ」
 手当たり次第に撫で回したり引っ張ったりしているとジンさんが慌てて制止する。なにこれ、ジンさんの身体? ちょっと体毛が濃いなんてレベルを超えて毛むくじゃらそのもの。毛皮のコートでも着ているのかと上から下まで触ってみても繋ぎ目は見つからない。
「えっ!? 耳でっか!」
 恐らく顔の辺りに差し掛かった時、頭頂部の辺りに耳らしきものを見つけた。毛に覆われているものの、薄べったく突き出たそれの先端は尖っている。
「うわ、何これ口もでかいし……とんがってる」
 口のあるべき場所はニュッと突き出していて、指を入れてみると大きくてギザギザの歯。
「うぉい、ひゃめろって!」
 抗議の声も無視してもっとよく観察しようと顔を近づけて目を凝らすと、金色の輪っかが二つ。動揺に揺れるそれはどうみても作り物には見えなかった。
「も、もも、もしかしてジンさんって……」
 間違いない。あまりにも現実離れしているが、どう考えても現実なのだ。
「い、イヌ」
「オオカミだっ!!!」
 あ、はい。もはやここまできたら、僕としてはどっちでも一緒だと思うんだけど、こうまで力強く反論するからには本人、本狼? には譲れないトコロがあるのだろう。
「えっと、あの、所謂狼男ってやつ?」
「……まあ、そんなところだな」
 ホラー映画に出てくる狼男って、満月の日に変身して人間を……
「ぼ、ぼく食べても美味しくないですよ?」
「食わねえよ!」
 まあそう言うなら。その言葉にどれだけの信憑性があるのかは疑問が残るところだが、もし僕のことを食べようと思っていたならば寝ている間に食べられただろう。恐怖に怯える人間をいたぶりながら惨殺するのが趣味でなければ、だけど。それになによりの証拠は。
「凍死しないように温めてくれたんですね」
「ま、まあ、メシの礼だ」
 意外と義理堅いんだな。第一印象はぶっきらぼうで無愛想だったけど、案外いい人なのかもしれないな。
「それにしても、なんでお互い裸なんです?」
「そそ、それはだな、まず服が濡れている場合は体温を奪われてしまうし、こうして直接密着することでより熱を伝える効率が上がるからであって」
 確かに聞いたことあるけど、なんでこんなに焦ってんの。急に饒舌になったし。
 まあ別に相手が女性だったら変な気も起こしてしまうかもしれないけれど、男同士だしこんな状況下では別にどうってことないか。

「……って。なんで勃ってるんですかジンさん」
「そ、そっちこそ……!」
 お互いの身体に隙間ができると冷たい空気が差し込むのでより密着した結果。全身の毛が擦れて、その、つまり、物理的な反射によって血が通い初めてしまったのだ。生死がかかっている状況というのも手伝ったのだろう。どちらからともなくちんぽが大きくなると、その刺激が引き金となってお互いの興奮を増幅させていく。
 ちゅく、くちゅ
「あっ、やめっ……擦り付けるなっ」
 これは暖を取るためにくっ付いているだけなんだと言い聞かせながらも、目的は違い方向へシフトしていく。筆先で撫でられるような微量の快楽にもどかしさを覚えて、刺激を求めるように腰を動かすとちんぽ同士が擦れ、先端から分泌された粘液によって水音が鳴り始める。
 ジンさんは口ではああ言いながらも貪欲に腰を振り、先走りにまみれた狼男のちんぽを僕のちんぽに絡ませる。これが兜合わせってやつか。
 にゅちっ、ずりゅっ……にちゃ
 止めどなくちんぽから湧き出る天然のローションによって下腹部はじっとりと濡れそぼり、そこから立ち登る蒸気はこのオオカミの匂いも相まってかなり臭い。普段なら顔をしかめて鼻をつまんでしまうだろう。それなのにこの興奮の最中にあってはなんとも甘美な極上のスパイスとなっている。
「あっ、ああ……ぐるるっ」
 それはジンさんとて同じことで、なんのかんのと言っていたのもかかわらず今は鼻息も荒く快感に溺れ、ヘコヘコと腰を振る獣そのものだ。男同士、ちんぽで口付けを交わすその様に気が狂ってしまいそうだ。だけどもどかしい。オナニーとは比べ物にならない気持ちよさはあるのだが、さざ波のように繰り返されるごく弱い刺激だけでは射精に至る決定打にはならない。いっそのこともう自分の手で2本まとめて扱き上げてしまいたい。
「なっ、なあっ」
 僕が提案をするよりも前に、ジンさんの口が開かれた。
「こっ、これ以上濡れたら身体が冷えちまうよなあ?」
 確かに股間は二人分の先走りでびしょ濡れだ。このまま射精までしたら、お互いに密着していたとしても厳しいかもしれない。
「だからしょうがねえよな、うん」
 これは不可抗力、やむを得ないのだとそう自分に言い聞かせている。一体何をする気なんだ?
 頭の中にハテナマークをたくさん浮かべていると、密着していたジンさんの身体がすっと離れた。暗闇の中に独り放り出された孤独感がにわかに襲ってくる。まさかここまでやっておいてこれで終わりですハイサヨウナラなんてあんまりだぞ。幸いにも荒い息遣いはまだ僕のそばにあって、それはどうやら足元の方へ移動していっているらしい。
 ちゅぶっ……にゅぶぶぶっ
「うそっ!? あ、はあっ……ああ」
 火傷を免れない程の熱がちんぽを覆い尽くした。それまでの刺激とは比べ物にならない暴力的な快楽。亀頭の先端から竿の根本まで満遍なく灼熱の粘膜で包まれた。
 驚きのあまり股間に手を伸ばすと、そこにはあの大きな耳があり、そしてそこから自らのちんぽの方を探ると、突き出た大きなオオカミの口吻の中にちんぽがすっぽり飲み込まれていた。口の中に生えていたギザギザの牙が思い出され、捕食されてしまうのではないかという恐怖が背中を駆け抜ける。
 ちゅこっ、ぬっぽじゅぶぶっ
 けれど肉を切り裂く痛みは訪れず、ちんぽを射精に導く蠕動運動だけが繰り返される。オオカミに、狼男にフェラされている信じがたい光景。口内では触手のように舌が這いずり回り、カリ首に溜まった汚れをこそげ落とし、尿道口をほじられ、そして溢れた先走りをチュッチュと吸われるのだ。
 ぬぽっ、ぬこぬこっ、くぽ
 たまらずちんぽに食らいついているそのマズルを両手で掴み、オナホールでも扱うようにして激しく前後に動かして腰を突き出す。オモチャなんかとは比べ物にならない。
 ずこっ、じゅぼっじゅぼ、ぐぶぶ
 射精が近づきキンタマが上がってくるにつれて速度が早まる。気持ちいい、このまま口の中に全部出してしまいたい。もっと、もっと……!
「あっ、あ! いくっ、いく! ぜんぶのんでっ!!」
 びゅるっ! びゅーっびゅ! ぴゅぶっ
 オオカミの体温に負けないくらいの熱量が口内にほとばしる。一滴もこぼさないように、両手で口輪を作って締め上げながら引き寄せる。
 ごくっ……ぴゅっ、ごく、ごくっ
 精液を飲み下す喉の動きがちんぽに伝わってくる。もはや吐精しているのかただ空撃ちの痙攣をしているだけなのかはわからない。
 長い長い射精の余韻を貪ったあと、やっと握っていた手を開放するとチュボッという音と共にちんぽが引き抜かれた。
 そして毛繕いをするかのように、ちんぽとその周囲の先走りを丁寧に舐めとる音だけが響くのだった。


「じゃあな」
「うん」
 翌朝、昨日の吹雪が嘘だったかのように空は澄み渡っていた。
 雪はそこそこ積もっているものの、これぐらいの量なら僕でもなんとかなるだろう。
「気を帰れよ、リョウ。」
「ジンさんもね」
 山を降り、市街地に出る道を進みながら僕は昨夜の出来事を思い返していた。
 まさか狼男と出会うなんて。しかも、その、フェラされて口内射精をして……そして僕も狼男の精液を飲むなんて。とても信じられない夢みたいな出来事だった。ああ思い出しただけでまた勃ってしまう。
 ポケットの中に忘れ去られていたスマートフォンを取り出して電源を入れる。買い物サイトを開き、検索をして、次々とカートに放り込む。テントにランタン、あとバーナーに……マグカップは二つ。あと他には何がいるんだっけ。そうそう、美味しい精肉店も探しておかないといけないな。
 これからは忙しい日が続きそうだ。
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