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スーパーフラワーブラッドムーン(笑)
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いやいや、ネーミングセンスが小学生並みかよって話な。色々詰め込みすぎだってば。
それでもニュースでは大真面目に取り扱っているのだから仕方がない。なんでもスーパームーンの皆既月食は24年ぶりで、次は2033年だっていうんだからそれなりには珍しい天文ショーなのだ。
「さて、あと1分か」
散々こき下ろしておいてなんだけど、この日をどれだけ待ち侘びたか。
この小汚い四畳半の部屋の中心にでかでかと描かれた魔法陣。フローリングの上に油性マジックで直接描いたものだから、ちょっとやそっとじゃ落ちないだろう。これは退去するときに大家と揉めそうだな。
って。そうじゃなくて。こんなオカルトじみた、いやオカルトそのものな儀式をしているのには訳がある。
「あとは合わせ鏡の間にロウソクを灯して、っと」
いわゆる召喚の儀式ってやつ。小学生ぐらいの頃にはみんな本気で信じてたでしょ? まあ、こんないい歳した大人になってから信じているのは僕ぐらいだとは思うけど。
正直なところ、半信半疑。たまたま古本屋で見つけた怪しい本に書いてあったから試してみようかなって。仕事でストレスが溜まりまくるとこういう頭おかしいことやってみたくなるんだよね。
「あー、明日も仕事かあ」
現実逃避しかかっていたところに急に理性が割り込んでくる。まったく何やってるんだろ。コンビニでビールでも買ってきて、ロウソクの炎を眺めながら晩酌でもするかな。でも、あわよくばこの魔法陣から悪魔でも天使でもいいから出てきて願い事を叶えてくれないかなあ。一生遊んで暮らせるくらいのお金がドッサリ出てきたり、イケメン俳優みたいに格好良くなったり、あとはアレが20センチくらいになったり。そしてソイツが僕の好みだったりしたらエッチなことだってしちゃったりして。むふふ。
「うおっ!? まぶしっ!」
え、なに。なんかめっちゃ光ってるんだけど。
「え、マジ? ヤバくね?」
コギャルってもう死語なんだっけ。そんな語彙力しかなくなってしまった。
だって、いま目の前にいるのは。
「着ぐるみ? マン○ィズ? って、うわっ、イヌくっさ!」
でっかいイヌ。いや、多分だけどオオカミかな、毛の色的に。それが二本足で立っていた。
獣人とか狼男、さもなくば人狼とか表現したほうが的確かもしれない。オオカミの頭に人間の身体で、全身毛がモッサモサに生えていて、エジプト神話か何かに出てきそうな極めて肉体美を強調するような服装。布切れだけでほぼ裸みたいなレベル。にわかには信じられない未知との遭遇。そしてなんといってもイヌ臭い。幻覚や夢なんかじゃない、生々しい生き物のソレ。
「…………」
オオカミは一言も発さず、身じろぎもせず、ただ僕をじっと見ている。訂正。睨んでいる。
臭いと言ったのを相当根に持っているのだろうか。そりゃそうだよな、生まれつきこの身体だから本人にはどうしようもないものな。学生の頃にワキガが原因で虐められていた同級生を思い出した。
「あー、あ! カッコいいっすね! なんか強そうだし」
メデューサに睨まれたかのように動かない。睨まれているのは僕の方だけど。
「そ、そそ、それにお兄さん、結構僕のタイプっす!」
まあ臭いはシャワーでも浴びればなんとかなるだろうし、見た目は結構いい男だ。顔が動物そのまんまなのも慣れでなんとかなるかな……。男も好きで、オオカミもまあ割と好き。好きな要素が合体したからといって、例えばカレーライスとシュークリームを混ぜてもとても食べられたもんじゃないけど、目の前のそれはなかなかに良い組み合わせだ。
「人間、話はそれだけか?」
低い唸りが混じった声。思わず吹き出しそうになってしまう。ニンゲンだなんて呼び方されるなんて漫画の中だけだと思ってたよ。でもよかった日本語は通じるようだ。英語ならまだ翻訳アプリでなんとかなるにしても、アラビア語とかギリシャ語、果てはガウガウしか言えなかったらどうしようかと思っていた。まあ、今の今までコミュニケーションが取れるかどうかなんて考えてなかったけど。
「えーっと、あの、なんていうか、願い事とかって叶えてもらえたり?」
そう、それが重要。せっかく召喚に成功したのに、楽しくお茶して終わりってんじゃあ意味がない。こういうのはランプの魔神みたいに願い事を叶えてもらえるっていうのが相場なのだ。
「まあよかろう。ただし代償として貴様の――」
「なんでも僕の言いなりになれっ!」
見開かれる目。
「おすわりっ!」
唖然とした表情のまま、オオカミは見事なおすわりを披露した。
こういうのは攻略法が決まっているのだ。願い事の数が有限であれば、それを『無限にする願い』を叶えてもらえばいい。
「なっ! き、きさまっ!」
理屈は通ってもそれが本当にうまくいくなんて補償はなかった。けれども、ちょこんとおすわりをしながら、僕を食い殺さんばかりの形相で睨みつけるオオカミを見るに、目論見は見事に成功したのだと悟った。
「じゃあ、ナニしてもらおうかなあ?」
決まってる。こんなエロゲーみたいなシチュエーションでヤることはひとつ。
「汚らわしいっ、ものを、しまえ!」
ははーん。こんな人間離れした存在でも、これから自分がどういう目にあうのかはわかるらしい。結構マセてるんだな。それとも魔術だか神通力だかその手の類で心の中でも読んだのだろうか。
「いやあ、ここ最近ご無沙汰でたまっちゃってて」
すでに半分ほど勃起したちんぽを鼻っ柱に乗せてやった。頭の上に乗せてチョンマゲなんていう遊びがあるけれど、この場合はなんて言うんだろうか。
「こ、殺すっ! 必ずや八つ裂きにしてやるからな……」
そんなオークに捕まった女騎士みたいなこと言われても。喜ばせようとしてわざと言ってんのか? それなら大したものだが。
「こら、ご主人様のちんぽおいしそうだワン、でしょ?」
口の中に生えたギザギザの牙が全部砕けてしまいそうな程の歯軋り。
「言えよ」
自分が根っからのSなのか、それともSを演じることに興奮しているのか、どちらだろうか。
「ご主人、さまの、ちんぽ……おいしそうだ、ワン」
よく言えました、と頭を撫でてやるかわりに、亀頭で鼻先をペシペシと叩いてやる。
「次はちんぽに忠誠のキスだな。あ、ちゃんと匂いもクンクンして覚えるんだぞ?」
グルグルグル。今にも雷が落ちてきそうなほどに低い唸り声が響く。嬉しそうにしろ、というのを注文し忘れたからだな。なんでも自由にできる操り人形とは言え、意思や人格までは変えられないのかもしれない。だとすれば、表情から口ぶりから何から何まで色々と指示をする必要があるが、それはまた骨が折れる作業だ。
「よしよし、しっかり嗅げてえらいぞ」
課題はたくさん残っているが、目下コレを鎮めるのが先だ。
「じゃあ口開けろ。オナホみたいに使ってやるからな」
にゅぶりゅっ
憎まれ口が返ってくる前に一気にちんぽを突っ込んだ。
じゅぼっ、ぐぼ、ちゅぼくぽっ
「んぐっ! んっ! ゲッ、ゴホッ!」
泡を食う、いやちんぽを食って目を白黒させるオオカミ。
オナホみたいに、とは言ったものの、比べ物にならない。ねっとりとした体温がちんぽを包み込む。多少の起伏があるだけのシリコンと違って、上顎や頬の肉、舌や歯と、複雑な造形の中で非対称の刺激がちんぽを痺れさせる。
「あー、やば、これは病みつきになる。ワンちゃんはちんぽ食べるの上手だねえ?」
そう煽ってみたものの、当の本人はそれどころじゃないらしい。むせ返るたびに鼻水か、逆流した唾液だかを鼻から吹き出して、ズビズビと鼻ちょうちんを作っている。
気持ちはいい。かなり。でも、石膏像みたいに硬直したまま微動だにしない相手に向かって腰を振り続けるというのも結構疲れる。頭を前後にピストンさせてちんぽを気持ちよくさせろと命令したとしても、力加減や舌の動かし方、吸い上げるようにすることなど事細かに伝えないと上手くいきそうにもない。ならば。
ぐぼぐぼ! ごっぽ! ちゅくっちゅくっ!
本当にオナホのようにすればいい。マズルを両手で握り込んで、オオカミの頭ごと力任せにちんぽをしごきあげる。
「すごっ、ああっ、きもちいいっ! いきそう! ちんぽ射精しそう!」
途端、それまで心を殺してされるがままだったオオカミの顔から血の気が引いていく。耳を伏せて怯え切った表情。目にはうっすらと涙すら滲み始めている。嗜虐心が頂点に達して爆発した。
「飲めっ! ぜんぶ、のめよっ!」
びゅぶ! びゅっ、びゅー! びゅるるっ!
異物を排除しようと横隔膜が激しくこみ上げる。
ごくっ、ごく……ぴゅっ……ごく
それでも、命令は絶対らしい。
フッと暗闇に包まれた。ロウソクの炎が消えたらしい。
そうだ、電気をつけないと。そう思った刹那、背中に激しい痛みが走った。
「ゲホッ…………ハア、ハア……こ、これで、もう、命令はできないな……」
首を絞める大きな手に力が込められていく。肉球の感触。
ロウソクが消えたら失効するなんてきいてないぞ。事前に各種条件をしっかりと確認するべきだったな。
皆既月食で隠された月の代わりに、二つの満月が血の色に染まっている。
「…………だった……ぞ!」
口元には青白い三日月。
まあ、殺されても文句は言えないわな。絞め殺されるか、食い殺されるか、どっちが先だろうか。できればあんまり痛くないほうでお願いします。
「はっ、はじめて、だったんだぞっ!!」
けれど、トドメの一発はまだやってこない。温かい雫が月からこぼれ落ちて僕の頬を濡らした。
「せきにん、取れよなっ!!」
いつのまにか、空には大きな満月が輝いていた。
それでもニュースでは大真面目に取り扱っているのだから仕方がない。なんでもスーパームーンの皆既月食は24年ぶりで、次は2033年だっていうんだからそれなりには珍しい天文ショーなのだ。
「さて、あと1分か」
散々こき下ろしておいてなんだけど、この日をどれだけ待ち侘びたか。
この小汚い四畳半の部屋の中心にでかでかと描かれた魔法陣。フローリングの上に油性マジックで直接描いたものだから、ちょっとやそっとじゃ落ちないだろう。これは退去するときに大家と揉めそうだな。
って。そうじゃなくて。こんなオカルトじみた、いやオカルトそのものな儀式をしているのには訳がある。
「あとは合わせ鏡の間にロウソクを灯して、っと」
いわゆる召喚の儀式ってやつ。小学生ぐらいの頃にはみんな本気で信じてたでしょ? まあ、こんないい歳した大人になってから信じているのは僕ぐらいだとは思うけど。
正直なところ、半信半疑。たまたま古本屋で見つけた怪しい本に書いてあったから試してみようかなって。仕事でストレスが溜まりまくるとこういう頭おかしいことやってみたくなるんだよね。
「あー、明日も仕事かあ」
現実逃避しかかっていたところに急に理性が割り込んでくる。まったく何やってるんだろ。コンビニでビールでも買ってきて、ロウソクの炎を眺めながら晩酌でもするかな。でも、あわよくばこの魔法陣から悪魔でも天使でもいいから出てきて願い事を叶えてくれないかなあ。一生遊んで暮らせるくらいのお金がドッサリ出てきたり、イケメン俳優みたいに格好良くなったり、あとはアレが20センチくらいになったり。そしてソイツが僕の好みだったりしたらエッチなことだってしちゃったりして。むふふ。
「うおっ!? まぶしっ!」
え、なに。なんかめっちゃ光ってるんだけど。
「え、マジ? ヤバくね?」
コギャルってもう死語なんだっけ。そんな語彙力しかなくなってしまった。
だって、いま目の前にいるのは。
「着ぐるみ? マン○ィズ? って、うわっ、イヌくっさ!」
でっかいイヌ。いや、多分だけどオオカミかな、毛の色的に。それが二本足で立っていた。
獣人とか狼男、さもなくば人狼とか表現したほうが的確かもしれない。オオカミの頭に人間の身体で、全身毛がモッサモサに生えていて、エジプト神話か何かに出てきそうな極めて肉体美を強調するような服装。布切れだけでほぼ裸みたいなレベル。にわかには信じられない未知との遭遇。そしてなんといってもイヌ臭い。幻覚や夢なんかじゃない、生々しい生き物のソレ。
「…………」
オオカミは一言も発さず、身じろぎもせず、ただ僕をじっと見ている。訂正。睨んでいる。
臭いと言ったのを相当根に持っているのだろうか。そりゃそうだよな、生まれつきこの身体だから本人にはどうしようもないものな。学生の頃にワキガが原因で虐められていた同級生を思い出した。
「あー、あ! カッコいいっすね! なんか強そうだし」
メデューサに睨まれたかのように動かない。睨まれているのは僕の方だけど。
「そ、そそ、それにお兄さん、結構僕のタイプっす!」
まあ臭いはシャワーでも浴びればなんとかなるだろうし、見た目は結構いい男だ。顔が動物そのまんまなのも慣れでなんとかなるかな……。男も好きで、オオカミもまあ割と好き。好きな要素が合体したからといって、例えばカレーライスとシュークリームを混ぜてもとても食べられたもんじゃないけど、目の前のそれはなかなかに良い組み合わせだ。
「人間、話はそれだけか?」
低い唸りが混じった声。思わず吹き出しそうになってしまう。ニンゲンだなんて呼び方されるなんて漫画の中だけだと思ってたよ。でもよかった日本語は通じるようだ。英語ならまだ翻訳アプリでなんとかなるにしても、アラビア語とかギリシャ語、果てはガウガウしか言えなかったらどうしようかと思っていた。まあ、今の今までコミュニケーションが取れるかどうかなんて考えてなかったけど。
「えーっと、あの、なんていうか、願い事とかって叶えてもらえたり?」
そう、それが重要。せっかく召喚に成功したのに、楽しくお茶して終わりってんじゃあ意味がない。こういうのはランプの魔神みたいに願い事を叶えてもらえるっていうのが相場なのだ。
「まあよかろう。ただし代償として貴様の――」
「なんでも僕の言いなりになれっ!」
見開かれる目。
「おすわりっ!」
唖然とした表情のまま、オオカミは見事なおすわりを披露した。
こういうのは攻略法が決まっているのだ。願い事の数が有限であれば、それを『無限にする願い』を叶えてもらえばいい。
「なっ! き、きさまっ!」
理屈は通ってもそれが本当にうまくいくなんて補償はなかった。けれども、ちょこんとおすわりをしながら、僕を食い殺さんばかりの形相で睨みつけるオオカミを見るに、目論見は見事に成功したのだと悟った。
「じゃあ、ナニしてもらおうかなあ?」
決まってる。こんなエロゲーみたいなシチュエーションでヤることはひとつ。
「汚らわしいっ、ものを、しまえ!」
ははーん。こんな人間離れした存在でも、これから自分がどういう目にあうのかはわかるらしい。結構マセてるんだな。それとも魔術だか神通力だかその手の類で心の中でも読んだのだろうか。
「いやあ、ここ最近ご無沙汰でたまっちゃってて」
すでに半分ほど勃起したちんぽを鼻っ柱に乗せてやった。頭の上に乗せてチョンマゲなんていう遊びがあるけれど、この場合はなんて言うんだろうか。
「こ、殺すっ! 必ずや八つ裂きにしてやるからな……」
そんなオークに捕まった女騎士みたいなこと言われても。喜ばせようとしてわざと言ってんのか? それなら大したものだが。
「こら、ご主人様のちんぽおいしそうだワン、でしょ?」
口の中に生えたギザギザの牙が全部砕けてしまいそうな程の歯軋り。
「言えよ」
自分が根っからのSなのか、それともSを演じることに興奮しているのか、どちらだろうか。
「ご主人、さまの、ちんぽ……おいしそうだ、ワン」
よく言えました、と頭を撫でてやるかわりに、亀頭で鼻先をペシペシと叩いてやる。
「次はちんぽに忠誠のキスだな。あ、ちゃんと匂いもクンクンして覚えるんだぞ?」
グルグルグル。今にも雷が落ちてきそうなほどに低い唸り声が響く。嬉しそうにしろ、というのを注文し忘れたからだな。なんでも自由にできる操り人形とは言え、意思や人格までは変えられないのかもしれない。だとすれば、表情から口ぶりから何から何まで色々と指示をする必要があるが、それはまた骨が折れる作業だ。
「よしよし、しっかり嗅げてえらいぞ」
課題はたくさん残っているが、目下コレを鎮めるのが先だ。
「じゃあ口開けろ。オナホみたいに使ってやるからな」
にゅぶりゅっ
憎まれ口が返ってくる前に一気にちんぽを突っ込んだ。
じゅぼっ、ぐぼ、ちゅぼくぽっ
「んぐっ! んっ! ゲッ、ゴホッ!」
泡を食う、いやちんぽを食って目を白黒させるオオカミ。
オナホみたいに、とは言ったものの、比べ物にならない。ねっとりとした体温がちんぽを包み込む。多少の起伏があるだけのシリコンと違って、上顎や頬の肉、舌や歯と、複雑な造形の中で非対称の刺激がちんぽを痺れさせる。
「あー、やば、これは病みつきになる。ワンちゃんはちんぽ食べるの上手だねえ?」
そう煽ってみたものの、当の本人はそれどころじゃないらしい。むせ返るたびに鼻水か、逆流した唾液だかを鼻から吹き出して、ズビズビと鼻ちょうちんを作っている。
気持ちはいい。かなり。でも、石膏像みたいに硬直したまま微動だにしない相手に向かって腰を振り続けるというのも結構疲れる。頭を前後にピストンさせてちんぽを気持ちよくさせろと命令したとしても、力加減や舌の動かし方、吸い上げるようにすることなど事細かに伝えないと上手くいきそうにもない。ならば。
ぐぼぐぼ! ごっぽ! ちゅくっちゅくっ!
本当にオナホのようにすればいい。マズルを両手で握り込んで、オオカミの頭ごと力任せにちんぽをしごきあげる。
「すごっ、ああっ、きもちいいっ! いきそう! ちんぽ射精しそう!」
途端、それまで心を殺してされるがままだったオオカミの顔から血の気が引いていく。耳を伏せて怯え切った表情。目にはうっすらと涙すら滲み始めている。嗜虐心が頂点に達して爆発した。
「飲めっ! ぜんぶ、のめよっ!」
びゅぶ! びゅっ、びゅー! びゅるるっ!
異物を排除しようと横隔膜が激しくこみ上げる。
ごくっ、ごく……ぴゅっ……ごく
それでも、命令は絶対らしい。
フッと暗闇に包まれた。ロウソクの炎が消えたらしい。
そうだ、電気をつけないと。そう思った刹那、背中に激しい痛みが走った。
「ゲホッ…………ハア、ハア……こ、これで、もう、命令はできないな……」
首を絞める大きな手に力が込められていく。肉球の感触。
ロウソクが消えたら失効するなんてきいてないぞ。事前に各種条件をしっかりと確認するべきだったな。
皆既月食で隠された月の代わりに、二つの満月が血の色に染まっている。
「…………だった……ぞ!」
口元には青白い三日月。
まあ、殺されても文句は言えないわな。絞め殺されるか、食い殺されるか、どっちが先だろうか。できればあんまり痛くないほうでお願いします。
「はっ、はじめて、だったんだぞっ!!」
けれど、トドメの一発はまだやってこない。温かい雫が月からこぼれ落ちて僕の頬を濡らした。
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いつのまにか、空には大きな満月が輝いていた。
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