ケモホモ短編

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ちんぽソムリエ

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 落ち着かない。
 新幹線のグリーン車よりも柔らかい椅子に包まれながら、お尻の辺りにどうしようもないむず痒さを感じていた。
 高級ホテルの最上階。夜景の見えるフレンチレストラン。そんな所に男一人となれば明らかに場違いだ。ぼくの心中とは裏腹に、ゆったりとしたクラシック音楽が流れて大人の夜を演出している。
 やたらと広いフロアを見渡してみると、いかにもセレブといった出で立ちの男女がまばらに配置されている。
 この感じ、どこかで見たことがある。なんだっけ……。
 そう、そうだ。トレンディドラマでよくあるヤツ! クリスマスイブの夜に彼女を誘って待ち合わせ。ポケットの中には給料三ヶ月分の鉱物と金属片をしのばせて、プロポーズの言葉を何度も頭の中で反芻しながら心を落ち着かせて拳を握る。約束の時間がとうに過ぎた頃、心配したウエイターが「あの、お連れ様は……」なんて声をかけてくる場面。
 どこからどう見ても、そんな憐れな男じゃないか。
 そんなことを考えた途端、周囲の人たちがぼくを笑いものにしているかのような疑心暗鬼が湧き上がってくる。ちがう、違うんだ。慣れない一張羅のスーツを着ているのはドレスコードに合わせただけであって、プロポーズをしようなんて思ってはいないんだ。

「いらっしゃいませ。本日はご来店いただきありがとうございます」
 嫌な汗が背中を伝い始めた頃になってようやく、聞き慣れた声が降ってくる。
「マコトさん……」
 見上げると、タキシードに身を包んだオオカミが手で小さくゴメンねのジェスチャーをしてみせる。
「ちょっと他のお客さんに呼ばれちゃっててね。待たせちゃったね、カズマサくん」
 眉毛をハの字にしてみせる表情を見ていると、凝り固まっていた緊張がほぐれていく。
 高校に入学した初日、中学からの同級生を見つけたときの安心感。
「もう。ホントに待ったんですからね? ていうか、ぼく浮いてないですか?」
 体感としては数時間は針のむしろだった。時計を見るとまだ五分と経っていない。これが相対性理論ってヤツだろうか。
「全然そんなことないよ。ココは割とカジュアルな格好で来るお客さんも多いしね」
 そうは言っても、Tシャツとジーパンでは追い返されるだろう、多分。
「じゃあワイン、何飲むか決めた?」
 遡ること三日。
 ぼくの彼氏というか、恋人というか、相方でも連れでも呼び方はなんでもいいけれど、このオオカミの彼から「一度ウチの店に食べにおいでよ」と誘われたのだ。
 付き合って七年目にして知ったのだが、マコトさんはソムリエというやつだ。レストランで働いているとは聞いていたけれど、お互いにあまりプライベートな込み入ったことは話さないほうなので驚きの事実。
 中小企業でサラリーマンをしているぼくからすると全く未知の世界。どんな学校に行って、どういう事をすればソムリエになんてなれるのだろう。もっとも、オオカミという種族柄から鼻は利くだろうし、オオカミ界隈では割とありふれた就職先なのかもしれないけれど。
 高級フレンチとは縁の無い生活をしてきたぼくにとって、珍しい料理と仕事姿のマコトさんが見られるという一粒で二度美味しいお誘いだったから二つ返事で了承したものの、いざ来てみると場違いな自分が恥ずかしい。
「うーん……」
 メニューを開いてみても、洒落たフォントで印刷された英語(あるいはフランス語かもしれない。でもそれすら区別がつかないくらいにウネウネして格好良いミミズみたいな文字なのだ)と、小さく併記された日本語。値段はゼロがいっぱい。咄嗟に牛丼だと何杯か換算してしまう悲しい性。
「はは、値段は心配しなくてもいいよ」
 メニューの下の方に目をやるにつれて、どんどんインフレしていく戦闘力に怖じ気づいたのを悟られた。
 一応ぼくは彼から招待された身なので案ずるなということか。
 ただそれにしたってどれが良いのかわからない。ワインなんてコンビニに売っているのをたまに飲むくらいで、普段はビール党だし。けど、ソムリエの彼の前で「生一丁!」なんてとても言えない。
「あの、なにかおすすめとかって」
 そうだ、こういうときのソムリエじゃないか。ぼくが選んでしまっては彼の出る幕がない。
「もちろん、おまかせください」
 ニコリと微笑んでみせる姿に、少しだけときめきを感じる。
「本日の肉料理はフィレ肉のポワレとなりますので、ボディがしっかりとした赤ワインが良く合います。例えば、カベルネ・ソーヴィニヨンやシラーズ、メルローなどがおすすめです。当店では、フランスのボルドーやオーストラリアのバロッサ・ヴァレー、アメリカのナパ・ヴァレーなど、さまざまな産地のワインを取り揃えておりますので——」
 え、えっと。日本語で話してもらっていいですか?
 マコトさんは顎に指を当てて真剣な表情で、頭の中のデータベースから最適なワインを検索している。決してぼくの前で格好つけようと気取っている訳ではなさそうだ。
 普段、一緒にネトフリを観たりしているときなんかとはまるっきり違う表情。
「で、では、口当たりが軽めの……そうだな、赤ワインでフルーティなものをお願いできますか?」
 あまり素人感を出してマコトさんに恥をかかせてしまってはいけないと、ぼくなりに精一杯通ぶってみせる。
「もちろんです。フルーティーな赤ワインといたしましては、カリフォルニアのカベルネ・ソーヴィニヨンがおすすめです。例えば、ナパ・ヴァレー産のケンダル・ジャクソン グランド・リザーヴ カベルネ・ソーヴィニヨンは、フルーティーで豊かな味わいが特徴で、お肉との相性も抜群です。ブラックカラントやブラックベリーの香りが豊かで、タンニンもしっかりとしております。また、オーク樽での熟成によって、バニラやトーストのニュアンスも感じられるワインです。これにより、お肉のジューシーさや香ばしさを引き立てることができます」
 普段なら十回以上は聞き返しているところだ。
 ともかく、できるだけ表情を取り繕って、わかった風に相づちを打つ。
「ああ良いですね。ではそちらで」
 これっぽっちもわからないし、名前も復唱できる気がしない。なんとかジャクソンほにゃららソーヴィニヨン。呪文の詠唱かよ。
 どんな味かも想像すらつかないが、ぼくの好みは熟知してくれているハズ。

「こちら、相席よろしいですか?」
 一通りのコースを終えて、食後のコーヒーを堪能していた頃。
 飲みきれなかったワインは持ち帰りできるのか検索しようと考えていると声がかかる。
「今日はもう上がって良いよって言われてね」
 いつもの口調でウインクしてみせるオオカミ。
「恋人に高級フレンチのぼっち飯をさせる意地悪オオカミ用の席ならひとつ空いてますよ」
 一応、他の客がもう捌けてぼくだけになっているのを確認してから精一杯の抗議をしてみせる。
「ごめんって。そんなつもりは……」
 マコトさんに悪意がないのはわかっている。ぼくだって彼の働く姿を見たくて了承したのだし、現に料理以上にその姿を堪能できた。
「晩酌に付き合ってくれるなら許してあげますよ」
 まだ半分くらい残っているワインボトルを指さすと、彼は苦笑いをしながらジャケットを脱いだ。
「もちろんよろこんで」
 百万ドルの夜景(なのかどうかはわからないけど。最近は電気代も上がっているからもっとするかも)を見ながらワイングラスを傾ける。ドラマの中の世界だ。
「料理は楽しめた?」
 金色の眼が夜景の光をたたえて、満月のように輝いている。
「うん、とっても美味しかったですよ」
 本当は緊張で味なんてちっとも覚えていない。
 オマケに、お皿にチマチマした飾り付けで小出しに来るものだからまいった。ぼくみたいな庶民には牛丼とかのほうが性に合っている。
「でも、せっかくなら二人で食べたかったです」
 家で映画を観ながら一緒に食べた宅配ピザのほうが何倍も美味しく感じたのは本当だ。
「そうだね、今度は一緒に食べようね」
 この場所の雰囲気がそうさせるのか、いつにもまして魅力的な大人の顔。
 もし彼が今、指輪を取り出してプロポーズしてきたら誰だって頷いてしまうだろう。
「あ。てか、本当に良いんですかお金……」
 あらかじめお金は払っておくからと聞いていたが、万一を考えてお金はいくらか下ろしてきた。足りるかどうかは微妙なところだけど。
「いいのいいの」
 彼は手をヒラヒラと振ってみせる。
 今度何かでお返ししなきゃな。
「あと、マコトさんご飯食べました?」
 ぼくがフルコースに舌鼓を打っている間も、マコトさんは働いていたのだからそれが心配だ。
「さっきまかない食べたから大丈夫だよ。ありがとう」
 当たり前の気づかいにも微笑んでくれる優しさが好きだ。

 次の休日。
 ぼくたちはいつものようにソファに並んで腰掛けてテレビを眺めていた。
 同棲こそしていないものの、休みはどちらかの家で過ごすというのが常になっている。
 お互いに体重を預け、手を握りながら過ごす時間。どこかテーマパークなんかにデートに出かけたり、それこそ高級レストランへ食事に行くようなのも良い。恋人と過ごす特別な時間。家族や友達とは違う、恋人だからこそ特別を求める。それも素敵なことだと思う。これまでもこれからも、マコトさんと一緒に居られる限りは、二人で沢山の素敵な思い出を紡いでいきたい。でも特別な日だけでなく、当たり前の日常。こうしてぼんやりとテレビを眺めたり、日用品の買い物に行ったり、ゴロゴロ過ごすだけの休日を共にするのもそれに負けないくらいに良いものだ。
「あ。これって」
 全国ニュースが終わり、地方の情報番組。
 レポーターが立っているその場所には、見覚えがあった。
「ああ、そう言えば取材されたっけ」
 マコトさんが感慨無く呟いた。
「えっ!? すご、マコトさんテレビ出たの!?」
 若手ソムリエに取材。そんな内容。
「今日は、ソムリエの月森真さんにお話を伺いたいと思います」
 液晶画面の向こうで女性レポーターが語りかける。
「このレストランでおすすめのワインをテイスティングしていただき、その魅力を視聴者の皆さんにもお伝えいただけますか?」
 あー、観たことある展開。
 画面に映っているのはマコトさんに違いないのに、別世界の住人のように感じてしまう。
「それでは、こちらのシャトー・ムートン・ロートシルトをテイスティングさせていただきますね。まずは、ワインをグラスに注ぎます。注目していただきたいのは、ワインの色合いです。美しいルビー色が特徴的で、ワインの若さと熟成のバランスが感じられます」
 この間レストランであったような饒舌さ。
「……チャンネル変えていい?」
 食い入るように見つめるぼくとは対照的に、居心地が悪そうなマコトさん。
「テレビ出るならなんで教えてくれなかったんですか! これ録画間に合うかな」
 オオカミの顔がどんどん渋くなっていく。
「次に、香りを確かめるためにグラスを優しく回転させます。こうすることで、ワインの香り成分が広がり、より多くの香りを感じることができます。このワインの香りは、カシスやプラム、そして繊細なスパイスが感じられますね」
 すご、プロっぽい! というか実際にプロなんだけど!
 ニヤニヤと彼の顔を見つめると、少しだけすねたような表情を見せる。
 テレビの彼は、テレビカメラを前にしているにも関わらずこれっぽっちも緊張している様子を見せない。これ、ぼくが見過ごしているだけで今まで他にも取材されたな。
「さて、実際にテイスティングしてみましょう。まずは、一口含んで、ワインが口の中でどのように広がるかを確かめます。このワインは果実味が豊かで、タンニンが力強いことがわかります。そして、長い余韻が感じられ、高い品質のワインであることが伝わります」
 テレビの向こうのすました顔のオオカミと、目の前の居心地悪そうなオオカミを見比べる。
 少しばかりの優越感。もちろん本気で嫌がらせをしたり困らせたい訳じゃない。ぼくよりも大人で、感情をあまり出さない彼が照れくさそうにしているのが可愛いのだ。ギャップ萌え的な? あるいは授業参観に来た親の気分か。
 彼はリモコンを掴んで電源を消した後、唇を尖らせながら呟いてみせる。
「なあ、今日も、いいだろ?」
 オオカミの目はギラついていた。

 ソファに座ったままのぼくの前にひざまずいて、鼻先で股間をムニムニと突いてせがむ。
 要は、欲しいときの合図だ。
 手慣れた行為。もはや日常のルーティンに組み込まれている。ズボンを下ろす頃にはぼくはすっかり勃起していた。このオオカミのマズルとの交尾を身体が覚えている。
「まずは、色合いからチェックするんでしたっけ?」
 その言葉にピクリと片耳が起き上がる。
 上目遣いにぼくの顔を見てから、視線はちんぽに戻り、うっとりと吐かれるため息。
「……ああ。真っ赤に腫れ上がって我慢汁でテカテカの亀頭がいやらしいな。裏筋にも血管が浮き出ていて、大きなちんぽの逞しさを強調していて……はぁ……素晴らしい」
 怒られるかもしれないとヒヤヒヤしていたが、割と乗ってくれるオオカミ。
 アダルトビデオなんかでも、所謂職業モノは人気のジャンルだ。ナースとか教師は特に需要が大きい。見る側としては、普段とは違うシチュエーションが新鮮だし、真面目でお堅い職業をしている相手がいやらしいことをするギャップに興奮する。
 ただ当事者からすれば、仕事は仕事、エッチはエッチ。自分なりに誇りを持っている仕事や職場を、性の飾り付けのために茶化されるのは気分が良くないだろうし、萎えたりするかもしれない。だから、マコトさんが嫌がる素振りを見せるなら即座に辞めようと思っていたのだけれど。
「次は匂いですよね」
 腰を突き出すと、黒い鼻先がピタリとちんぽにあてがわれる。息を吸う度に負圧が発生し、吸盤となった鼻が獲物を逃すまいと吸い付く。だらしなく半開きになった口からは長い舌がはみ出してしまい、断続的に吐き出される湿った空気が陰毛をくすぐった。
「はあ……ああ、いい。ちんぽ。カズマサのちんぽ……エッチな匂いでいっぱいだ」
 蕩けきった表情。
 テレビに映っていた顔とは似ても似つかないのに、確かに同じ顔。
 レポーターの前で饒舌に語っていた彼が、すっかりちんぽのことで頭がいっぱいになって語彙力を大幅に喪失している。
 もっとも、ここで「蒸れた汗が醸し出す酸味と、先走りの生臭さがブレンドされて……」なんて大真面目に語られると笑ってしまってエッチな気分も萎えてしまうかもしれないから、これぐらいが良いのかも。
「ほら、ちんぽのテイスティングもお願いしますね」
 はやる気持ちをなんとか押しとどめてプレイに徹する。
 この口の中に突っ込みたい。マズルを掴んでちんぽで犯したい。
 我慢、我慢。エッチなことは大好きだ。気持ち良くなるのも、気持ち良くなってもらうのも好き。無我夢中でひたすらに快楽を貪る時間は何物にも代えがたい。
 でも、なんて言えばいいのか、このがっつりとエッチをする直前の時間も大好きなのだ。有り体に言うと前戯ってヤツだろうか。お互いにもう、ちんぽのことしか考えられなくなって、バカになっちゃうのがたまらない。
「ん。しょっぱい……ちんぽおいしい。エッチな雄の味。ちんぽエッチですき……」
 言語野までちんぽに犯されてしまったらしい。
 あれだけ長いワインの銘柄をスラスラと答えられる頭が、素人にはわからない匂いを嗅ぎ分けられる精密な鼻が、アルコールでもちっとも鈍らない味蕾を持つ舌が、ちんぽで満たされている。
 ああ、テレビの向こうで多くの視聴者が憧れの視線を送っている。ソムリエなんて格好良い仕事に釘付けになっているはずだ。何人かは、自分も真似事をしようと目の前にあるワインか、ビールか、麦茶なのか、ともかく手頃な飲み物を嗅いだり舐めたりしているのだろう。皆が注目しているその鼻も口も、今はぼくのちんぽを食べるためだけに存在している。ぼくだけのモノ。ぼくのちんぽ専用の、ちんぽソムリエ。
「たべて……ちんぽ食べて」
 そう言うのが早いか、待ちわびた歓喜がちんぽを包み込んでいく。
 熱い。痛い。焼け付きそうな疼き。おおよそ快楽とはほど遠い感覚が、全て興奮へと昇華されていく。
 にゅぷっ。じゅぷぷっ。
「ああっ、すごっ! ちんぽ熱い……ちんぽ気持ちいいぃ……」
 これまで何回も、何百回も味わってきたのに、これっぽっちも色あせない感覚。
「もぐもぐして? ちんぽもぐもぐ……あっ、ああ、はあっ……」
 口内にびっしりと生えた牙。白い山脈のように連なった歯。それらがちんぽの肉を優しく圧迫する。とりわけ大きく長い犬歯がカリ首を擦り、その度に尿道口から肉汁があふれ出す。
 にゅぶぶっ。ちゅぽ。にゅぽ、にゅぷっ。
 すっかりへたり込んでいた両耳を乱暴に掴み、こみ上げてくる射精感を成就させようと無我夢中になる。
 水音に交じり、甘い鼻息。
 いつの間にかズボンを脱いでいたマコトさんが、尻尾を振りながら自らのちんぽをしごいていた。
 オオカミの威厳はとうの昔に吹き飛んでしまっている。
「いきそう、ちんぽ食べられていっちゃう……ワンちゃんの好きなちんぽミルクあげるからね?」
 端から見れば陵辱しているようにしか見えないだろう。
 千切れんばかりに耳を引っ張られて、喉奥にちんぽを打ち付けられる度にピーピーと情けない鼻声が漏れる。それでも彼の真っ赤なソーセージのようなちんぽからは先走りがとめどなく床にしたたり、尻尾は埃を巻き上げるばかり。
「いく、いくっ!」
 びゅーっ! びゅ、びゅっびゅるっ!
 吐き出される精液は一滴たりともこぼされることなく、オオカミのマズルの中に注がれた。
 徐々に硬さを失っていくちんぽを名残惜しそうに舌がなで回し、尿道に残っている精液をも搾り取ろうと躍起になる。
「まっ、まだ飲んじゃダメだからね? ちゃんと味わって」
 口角から白い泡が垂れ、生理的な反射からか喉仏が上下している。
 律儀にぼくの言いつけを守っているオオカミの頭を二、三度撫でてから、ゆっくりとちんぽを引き抜いた。「まだ口に含んでおきたかったのに」そんな抗議の目。
 あやすように耳の付け根をわしゃわしゃと揉んでから、まだ精液がにじんでいる亀頭を鼻に押し当てて、美容パックでもするかのように塗り込んでやる。
 それからマズルを両手で掴み、貝を剥くような心持ちで慎重に指を口内に滑り込ませ、ゆっくりと開いていく。
 真っ赤な肉の中にまき散らされた白い液体。唾液と混じり泡立って、生臭さが鼻を突く。
「舌をレロレロって動かして、ちゃんと味を覚えてからごっくんしようね?」
 床を叩く音に目をやると、パンパンになったオオカミのちんぽから勢いよく精液が放たれていた。

「……あの、マコトさん」
 汚れた床を簡単に拭いた後、ぼくたちはドロドロの身体のままソファの上で抱き合っていた。
 甘い倦怠。大きな胸がゆるやかに上下する度、乾いた体液の匂いが鼻腔を刺激する。
「シャワー、浴びる?」
 肯定とも否定ともつかぬ曖昧な声を出して、しなだれかかるオオカミの体重。
 汚れを落としてサッパリとしたいというのもあるが、それ以上に気がかりなのは……。
「ほら、ココ、商売道具でしょ?」
 長いマズルをトントンと指で叩く。
 勢いにまかせてあんなことをしたものの、ソムリエなんて職業柄、鼻が利かなくなってしまっては商売あがったりだ。
「手でしてもらうのも好きだから、無理しなくても——わっ!?」
 それまで黙っていたオオカミがぼくの腕を掴んでのしかかるなり、頬をベロリと舐めた。
「カズマサのちんぽは、今の仕事する前からずっと食べてたし、それに」
 ポリポリと鼻を掻いて、どこか恥ずかしそうにそっぽを向く。
「それに、このちんぽのおかげでソムリエになれたのかも、な?」
 そんな訳あるかと思わず吹き出してしまった。
「い、いや、ほら。嗅いだり舌を使ったりが、トレーニングになった、みたいな?」
 慌ててそんな風に弁解する姿が尚更可笑しい。
「はいはい。これからもよろしくお願いします」
 ゴムのように弾力のある鼻がぼくの鼻を押し、それから唇を割って入ってきた舌が絡まり合った。
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