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やばいって
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「てんちょ?」
ドアを開け、内側からノックをしてみたが、やっぱり反応がない。
玄関は狭いが清潔で、スニーカーが一足、きちんと揃えて置かれている。
右手が靴箱で、天板の上に花器があり、青紫の造花の桔梗が三輪飾ってあるのが意外に映る。
「うん?」
よく聞くと、かすかにシャワーの音がする。
( あ、お風呂入ってんだ )
アパートのお風呂というと、玄関すぐのイメージがあったが、ここの間取りでは、玄関を入るとすぐに細い廊下があって、シャワーは、その奥の方から聞こえてくるようだ。
これじゃあ、シャワーを浴びていたら、インターホンも聞こえないかもしれない。
( どうするかな )
そう考えていると、いきなり背後から、男の人がぬっとあらわれた。
「はふっ、えっ」
「あれ、こんにちは」
彼だっ。
警察官のお客様!!
「あ、あれ、たしかお店の方ですよね?」
近い。
やばい。
やヴぁい。
なんか、いい香りするし、なにより、高身長の色香が、圧倒的にこっちを包囲してくる。
手には袋。
差し入れかしら。
「あ、はい、そう。あの、店長の忘れ物を、、いや別に忘れてないか、あの、店長の私物をお届けにっ」
「ああ、それは喜びますよ。さあ、さあ、中へどうぞ」
「え、え、え、いえ、え、でも」
なんとなく抗えずに、流れのままに靴を脱いでしまっていた。
「今、スリッパ出しますんで。そう、お店で買った物だから見覚えあるかもしれない」
「いえいえ、あの、あの、すぐに帰りますんで」
「まあ、彼に挨拶でもしてやってくださいよ。すっかり回復しましたよ」
「あ、そうなんですか? あー、それはホントよかった」
「コーヒー淹れますので、そこのソファーにでも」
そう言うと、彼はリビングの引き戸を閉めて、その向こうのキッチンの方へ消えた。
黒い、ギュッギュというレザーのソファーで、ガラス天板のローデスク。
フローリングの床に広めのラグだけが敷かれてあり、四方の壁には、グリーンの植物の写真の額縁が何個も掛けられている。
テレビは50はありそうな大きなもので、今は消えていて、勝手に見るのには躊躇する。
なんとなく手持無沙汰で、スマホを手に取り、フリマアプリなんかを開く。
( まあた、くだらん質問コメ・・・ )
苛立ちを隠し、お上品に返信。
ギリギリのお値段設定ですので、大変申し訳ございませんが、お値引きは致しかねます。
( ふーっ )
「あ、だめだよ」
「え?」
「だめだって、ひろき」
彼 の 声 だ 。
ひろき、、、浩紀は、たしか店長の下の名前。
「・・・・・・・・・・・・。」
ちっちゃな雷電。
雷の子供のようなものが、一直線に身体の芯を走る。
なあんか、、、なんか。
「ちょ、ちょ、お前、病み上がりだろ」
「いいから、こいよ」
店長の声だ。
これ、やばいよ。
これ、やばいやつの気がする。
引き戸に二人のシルエットが現れた。
一人は裸。
え、しかも全裸じゃない???
もう一人はさっきの服の色。
彼だ。
裸の店長が上にのしかかり、彼が下になっている。
なに、二人の関係って、こっち系だったの??
「や ら せ ろ」
いつもの、あの店長の声。
だけど、耳を疑うようなフレーズ。
なんで彼、わたしの存在を知らせて、諭さないの?
その彼のシルエットが肌色になった。
ーーー つまり、そういうことだ。---
どちらも全裸。
( や ば い )
一人が四つん這いになった。
( や ば い っ て )
「ああぁぁ、、、、、浩紀ぃっっ」
「・・・・・・・・・・。」
ドアを開け、内側からノックをしてみたが、やっぱり反応がない。
玄関は狭いが清潔で、スニーカーが一足、きちんと揃えて置かれている。
右手が靴箱で、天板の上に花器があり、青紫の造花の桔梗が三輪飾ってあるのが意外に映る。
「うん?」
よく聞くと、かすかにシャワーの音がする。
( あ、お風呂入ってんだ )
アパートのお風呂というと、玄関すぐのイメージがあったが、ここの間取りでは、玄関を入るとすぐに細い廊下があって、シャワーは、その奥の方から聞こえてくるようだ。
これじゃあ、シャワーを浴びていたら、インターホンも聞こえないかもしれない。
( どうするかな )
そう考えていると、いきなり背後から、男の人がぬっとあらわれた。
「はふっ、えっ」
「あれ、こんにちは」
彼だっ。
警察官のお客様!!
「あ、あれ、たしかお店の方ですよね?」
近い。
やばい。
やヴぁい。
なんか、いい香りするし、なにより、高身長の色香が、圧倒的にこっちを包囲してくる。
手には袋。
差し入れかしら。
「あ、はい、そう。あの、店長の忘れ物を、、いや別に忘れてないか、あの、店長の私物をお届けにっ」
「ああ、それは喜びますよ。さあ、さあ、中へどうぞ」
「え、え、え、いえ、え、でも」
なんとなく抗えずに、流れのままに靴を脱いでしまっていた。
「今、スリッパ出しますんで。そう、お店で買った物だから見覚えあるかもしれない」
「いえいえ、あの、あの、すぐに帰りますんで」
「まあ、彼に挨拶でもしてやってくださいよ。すっかり回復しましたよ」
「あ、そうなんですか? あー、それはホントよかった」
「コーヒー淹れますので、そこのソファーにでも」
そう言うと、彼はリビングの引き戸を閉めて、その向こうのキッチンの方へ消えた。
黒い、ギュッギュというレザーのソファーで、ガラス天板のローデスク。
フローリングの床に広めのラグだけが敷かれてあり、四方の壁には、グリーンの植物の写真の額縁が何個も掛けられている。
テレビは50はありそうな大きなもので、今は消えていて、勝手に見るのには躊躇する。
なんとなく手持無沙汰で、スマホを手に取り、フリマアプリなんかを開く。
( まあた、くだらん質問コメ・・・ )
苛立ちを隠し、お上品に返信。
ギリギリのお値段設定ですので、大変申し訳ございませんが、お値引きは致しかねます。
( ふーっ )
「あ、だめだよ」
「え?」
「だめだって、ひろき」
彼 の 声 だ 。
ひろき、、、浩紀は、たしか店長の下の名前。
「・・・・・・・・・・・・。」
ちっちゃな雷電。
雷の子供のようなものが、一直線に身体の芯を走る。
なあんか、、、なんか。
「ちょ、ちょ、お前、病み上がりだろ」
「いいから、こいよ」
店長の声だ。
これ、やばいよ。
これ、やばいやつの気がする。
引き戸に二人のシルエットが現れた。
一人は裸。
え、しかも全裸じゃない???
もう一人はさっきの服の色。
彼だ。
裸の店長が上にのしかかり、彼が下になっている。
なに、二人の関係って、こっち系だったの??
「や ら せ ろ」
いつもの、あの店長の声。
だけど、耳を疑うようなフレーズ。
なんで彼、わたしの存在を知らせて、諭さないの?
その彼のシルエットが肌色になった。
ーーー つまり、そういうことだ。---
どちらも全裸。
( や ば い )
一人が四つん這いになった。
( や ば い っ て )
「ああぁぁ、、、、、浩紀ぃっっ」
「・・・・・・・・・・。」
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